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第三章 ~戦闘狂の水晶使い~
第101話 宣戦布告②
しおりを挟む『ここまで来れば……』
「――魔物がどうやってこの町に入った?」
事件のあった家からかなり離れた場所にある路地裏にて、2人の男が対峙していた。
殺人犯とオレだ。
「お前はさっき、目的を果たしていない、と言ったな。目的はなんだ?」
『ふん! 言わないし、これでさよならだ。だが、ここまで付いてきたお前に敬意を表し、名を名乗ろう』
何様のつもりだ、おい?
それに、オレが逃がすわけないじゃねぇか……。
男の周りに『晶弾』を殻のように配置させる。
それだけではなく、その外側に『晶装・剣』を数本配置させる。
「これで逃げられまい」
『魔物連合第九隊隊長、セイレーン。……ケミー』
セイレーン。
海に住む、歌声で船乗りを惑わし、殺す半人半鳥の魔物だ。
だがそれは前世のセイレーン。
こちらのセイレーンは、いまいち習性が判明していない、超希少種だ。
そう名乗ると、男は幻術を解き、化け物の姿となった。
人間より一回り小さい体躯。
姿は人がベースだ。背中からは羽が生え、体中も羽毛に覆われている。
「まさかの隊長がお出ましとはな……。だが好都合! 連合初の、殉職隊長の称号を授けてあげよう」
『目的は果たせなかったが、果たす必要もない。それじゃあな……』
その瞬間、セイレーンの姿が掻き消えた。
透明化ではないようだ。魔力探知に何も映らない。
『探しても無駄だ。それは幻術だ』
どこからか声がしたが、何も生き物が見えない。
路地裏のため、視界も狭い。
「ちっ! 逃げられた!!」
と思った矢先、少し離れた上空に雷が落ちた。
天気は晴天。となると……
「――騎士団長か、【魔導士】か……。と、なると……」
雷は何もいない空中で止まり、ナニカを焼いた。
そのナニカは、黒焦げになりながら落ちて行った。
落ちた先に向かうと、やはりそこには先ほどのセイレーンが落ちていた。
路地裏なのは不幸中の幸いか。
『ぐ……幻術が解けたか』
「――我が前に幻術は無意味だと知れ」
そう言って現れたのは、雷を纏った騎士団長だった。
「騎士団長、なぜここへ……?」
「この町は私の手の中……ということだ」
「……なるほど…………?」
この町で起きていることはすべて理解できているということか?
でも、騎士団長は加護持ちじゃないよな。
……となると、電気の力か?
『特級が2人、か……。これは分が悪いな。あの人間を殺さなければ……』
「なあ、なぜあの老人を殺したんだ?」
『……私には、『人』など顔で判断できない』
こいつの目には『人』を細かく区別できないのか。
……となると――
「――あの老人は人違いで殺したということか。真の標的は誰だ?」
『もう諦めた。話す必要はない』
犯人はあの老人に似ている誰か……?
1人しか思い浮かばない。
そう、吸血鬼の元・間者。
今はこちら側の監視下にあり、大人しくしている。
『ああ、お前らに、我らが盟主からの伝言だ。その鼻かっぽじてよく聞け』
鼻じゃない。耳だ、バカ。
鼻かっぽじっても鼻くそが出るだけだ。ああ、耳も一緒か。
『そう遠くない未来、お前らと連合は全面戦争を行う。そして――』
まるでこれまでのは余興と言いたげだな。
まだ札を用意しているのか?
『――今日はその第一段階だ。エルフの都市一つを襲っている』
「!?」
「嘘だ。そんな報告は来ていない。都市に魔物が攻撃を仕掛けて来たら、各国各都市に連絡が行く仕組みが確立されている」
ああ、そんな仕組みができてるんだ。なら、嘘か?
この情報は魔物に知られても問題は……ない。
『まあ、自分で確認するんだな。お前たちに敬意を表し、都市の名を教えよう。――その都市の名はメギオン。それじゃあな』
エルフの都市、メギオン。
その都市の名前はよく知っている。他の国の都市の名前は全くと言っていいほど興味のないオレでもわかる。
その都市は、冒険者学校時代の同期、リーイン・ケミスの出身地にして、現在の活動地。
「連合の隊長をここで逃がすと思うか?」
『いいや……逃げる。――『霧隠』』
その瞬間、路地中に濃い霧が溢れた。
霧が魔力を濃いく含んでいるため、魔力探知が使えない。肉眼も使えない。
ダサい魔法だ。
「騎士団長、追えますか?」
あれ……騎士団長がいない?
「騎士団長? 団長ーー?」
呼びかけるが、誰も答えない。
騎士団長は追えている?
すると、徐々に視界が晴れてきた。
それと同時に、路地から騎士団長が歩いてきた。
「騎士団長、奴は……?」
と問うと、騎士団長は首を横に振った。
『やつは町の外へ逃げた。殺せなかった』
騎士団長の話によると、あのセイレーンを追いかけ、路地から出たが、それは偽物で、本物は町の外へ羽ばたいて行ったそうだ。
騎士団長を騙す……気配をも作り出す幻術だったらしい。
本物に向け、騎士団長は雷を落としたらしいが、さすがは魔物連合隊長。
逃げられたらしい。
「ライン、念のため覚醒アヌースと共に外に出ていてくれ。あの魔物の言葉が真実かどうかを確認してくる」
「は!」
「それと、あの魔物について知っていることを教えてくれ」
「はい。連合の第九隊隊長で、名はケミー。種族は見た通り、セイレーンで、幻術の使い手です」
「わかった。情報の真偽を確かめた後、『通話』を送る。それまで、外で待機だ」
「は!」
オレはフレイを迎えに、宿まで走る。
魔物連合第九隊は隠密部隊。情報収集も担っている。
その隊長が幻術使いなのは必然だろう。
気配までも幻術で作り出すとは驚いたが。
騎士団本部
騎士団長は、たくさんある中の一つの魔法具を起動させる。
相手は、アグカル国の一都市、メギオンの騎士団本部。
だが、応答がない。
誰か一人は待機しているはずだ。
応えてくれないと、繋がらないし、向こうの様子を知ることもできない。
諦めかけたその時、
『――はい、こちらアグカル近衛騎士団、都市メギオン』
画面に一人の男が映った。
服を見る限り、たしかに騎士のようだ。
『へラリア騎士団長だ。そちらの状況を聞かせてくれ』
『何もありませんよ。魔物の襲撃も、連合との衝突も。何も……』
『……そうか……。では、失礼。何、少々悪い悪寒がしたものでね』
『そうですか。では……』
接続が切れる。
一見、何も問題はない背景と言葉。だが、騎士団長は確証を得た。
『通話』を起動させる。
相手は、町の外で待機中の【水晶使い】ライン・ルルクス。
『――ライン、大至急だ。大至急、メギオンへ向かえ!!』
『は!』
『【放浪者】数人にも伝達はするが、来るのは遅れる』
『わかりました!』
そして、『通話』を解除する。
騎士団長が確信を得たのは、奇跡にも近かった。
常人ならともかく、覚醒者が覚醒している状態でも見逃すであろう、たった一つの違和感。
だが、騎士団長はそれに気づき、一切顔には出さなかった。
違和感。その正体は、騎士の耳。
エルフの耳は、通常、身体強化、覚醒につれて長くなる。
だが、騎士の耳は通常状態にしては長かった。長さは目算で身体強化時のものだった。
普通のエルフより耳が長い……にしては長すぎた。
ラインを派遣させた要因は、違和感7割、用心2割、勘が1割。
時間はそろそろ夕暮れ。ラインが都市に到着するのは、単純計算で翌日の早朝だろう。
覚醒アヌースであれば、一日ぐらい眠らなくても飛ぶことができる。
『頼んだぞ、ライン……!』
騎士団長は職務上、ここを離れることができない。副騎士団長も然り。
放浪者である、【双剣士】ターバはへラリア国内でのみ活動。
第三隊隊長も国内活動。
であれば、用心を重ね、【魔導士】アーグを送るべきか。
信頼の置け、かつ、強い人間はラインを除いてその3人のみ。
そうと決まれば、アーグに『通話』を繋げる。
そして、話は終わった。
幸いにも、アーグは鬼の国、フェンゼル国の東部にいた。
その場所は、へラリアから見て東北東。エルフの国と接している付近だ。
1日半もあれば到着する。
覚醒アヌースでも、飛び続けるのは少々厳しいが、アーグが魔力を共有すれば大丈夫だろう。
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