戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
106 / 168
第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第100話  宣戦布告

しおりを挟む

 宿で一休みし、朝になった。
 連合はみんなで旅行にでも行っているのだろう、と考える余裕までできている。
 素晴らしい! こんな日がずっと続いていればいいのに……。

 今日は久しぶりに町をぶらついてみるか。
 ここ数年、忙しくてどこも観光なんてできなかったしな。
 クラーク村はなんにもなかったからノーカウントだ。

 そうと決まれば、さっそく!
 仮面を着け、【水晶使い】スタイル!



 町を、仮面と白いコートを着た変質者が歩く。
 言わずもがな、オレだ。
 
 さてさて、今日はのんびり過ご――

 …………やれやれ、久々の戦闘ナッシングデイなのに……。



 ある家に騎士が数人、慌てた様子で入って行った。
 これだけならオレは無視して方向転換するところだが、運の悪いことに、騎士の1人と目が合った。
 ……否、合ってしまった。

「【水晶使い】様ですね。どうか、貴方様の知恵をお貸しください」
「……嫌だと言ったら?」
「……どうしようもありません。私共で頑張ります」

 うむ……台詞はいい。
 が、目は口程に物を言う。
 と言うより、顔はまったく頑張るとは言っていない。

 むしろ、「手伝いやがれ」と言う顔だ。隠そうともしていない。
 オレの方が上司――明確に定義されているわけではないが――だから言えないんだろう。

「……まあいい。手伝ってやるよ……」
「! ありがとうございます!!」

 ってか、あの流れで受けないなんて言えるはずがない。卑怯な野郎だ。
 こんなに悪知恵が働くなら、オレが知恵を貸す必要ないんじゃないか……?
 まあ、手伝うって言ってしまった以上、後には引けぬ。

 騎士に連れられるまま、家の中へ入った。
 周辺は冒険者により規制が敷かれている。

「こちらです」

 通された部屋には、1人の老人が横たわっていた。
 背中から血が流れている。この様子じゃ、すでに事切れているようだ。
 だが、問題は……

「……なぜ、人狼がここにいて、しかも死んでいるんだ?」

 老人の側で、人狼が老人と同じく事切れていた。

「はい。この人狼は遺体の第一発見者の彼が討伐しました」

 その件の彼。
 白金級冒険者だった。詳しく言うなら、白金Ⅱ級。

「彼――ルベーグ・ジャンはこの老人――ガンド・イアさんとは旧知の仲だったらしく、今日も朝から老人を訪ねてきたらしいです」

 ルベーグとやらは騎士に尋問されていた。
 
「そして、返事がないし玄関は開いているため、入ってみたら倒れている老人を発見し、人狼と出くわし、殺した、と?」
「!! さすがは【水晶使い】様! そこまでお見通しとは! 感服しました」

 ミステリーものの王道じゃねぇか。
 
「まあ、あいつが話したことが真実であれば、だろ?」
「え、まあ……。何かご不明な点がおありで?」

 ご不明な点だらけだ、バカヤロー! 
 オレの観察眼なめんなよ? 度重なる戦闘で観察眼は鍛えられたからな!

「まず、あの老人の斬り口だ」

 斬り口は、3本線。服も破られている。

「その一。斬り口がきれいすぎる。爪で斬られたのであれば、あんなに服がスッパリ斬れるはずがない」

 綻びがなく斬られている。

「その二。斬り傷の長さ、向きに統一性がない」

 爪に斬られたのなら、真ん中の斬り傷だけ若干長くなるはずだが、老人の傷は逆に短い。
 3本とも焦点――消失点がない。雑過ぎる。

「その三。そもそも武器はなんだ? 騎士や覚醒者であれば、出し入れ可能のオリハルコン製の武器がある。だが、奴は覚醒者じゃない」

 オリハルコンの武器防具を所持していれば、町への武器の持ち入れが可能となる。だが、所持が許されるのは覚醒者のみ。
 
 武器は不明。斬撃武器であるのは確かだ。包丁は武器として使うなら刺突。

「その四。なぜ人狼がここにいるのか。隠密能力に優れてはいるが、ここまで侵入はできないはずだ」

 人狼は隠密能力には長けているが、町に入るには門を通る必要がある。
 隠密で通ることはできない。
 へラリア王都には裏道があるが、 近衛騎士が見張っているし、こちらに協力している。

「そして、その五。この魔物が、なぜこんな――失礼だが――老人を殺すのか。どう見ても元冒険者や元騎士ではないだろう?」
「はい、単なる一般人です」

 そう、人狼がわざわざ命のリスクを冒してまでこの老人を殺す動機が見当たらない。

「その六。に来て、返事がなくて、鍵が開いているから入った? 急用があったわけでもないだろう? 理由に納得がいかない」

 朝にジョギングするが、鍵をかけ忘れただけだったりするだろう。
 周辺に血の匂いが漂っていたわけでも、腐敗臭があったわけでもない。

「以上の点から、この人狼は外で討伐され、持ち帰られ、ここに置かれた。犯人は、第一発見者のあの男だ」
「おお、なるほど」
「が……」
「?」

 言ってもいいのかわからないが、言ってみよう。

「雑過ぎる。あの男に牢獄に行きたいという願望があるならまだしも、白金級まで昇りつめた冒険者だぞ?」
「なるほど、たしかに……。武器も依然、不明なままですし……」
「犯人があの男の可能性は十分ある。が、100%じゃない」

 この雑さも、計算のうちなのかもしれない。
 あの男に罪を被せたい、第三者かもしれない。

 ここまで答えは出ているのに、肝心の犯人が確定しない。なんともどかしい。
 器が完全に解放されたら、一瞬で犯人がわかるのに……。己の力量不足か……。

「……さてさて、どうしたものかねぇ」
「町内での殺人事件など、滅多に起きるものではありませんので……」

 そうだよなぁ……。
 ここは王都だし。冒険者組合本部も、へラリア近衛騎士団の本部もある。
 逃走ルートを探しているうちに死んでしまうよ。

「あの冒険者の身元は調べがついているのか?」
「はい。彼はここ一週間、冒険者活動を怪我のため、停止中で、今は療養中です」
「怪我?」

 たしかに、良く見ると服の下に包帯が巻かれている。 
 
「はい。一週間前、森に入った際に連合と遭遇し、戦闘に入ったようです。その戦闘で仲間は全員死亡。彼自身、深手を負っていました」

 全滅、か……。
 治癒術師のいるこの世界でも、心の回復はできないのか。
 
 今この男の取っている療養は、心のケアが目的か。

「そこを、偶然通りかかった別の冒険者パーティーに助けられ、一命を取り留めた、とのことです」
「その情報の出どころは?」
「組合です」

 出どころが組合であるなら、信憑性が持てる。
 それに、状況としては十分ありえる。

 それに、さっきからあの男がオレの方をチラチラ見てくるんだが……。

「……なんだ?」
「いえ、珍しい恰好なので……つい……」

 怪しい。とにかく怪しい。

 何かわかるかもしれないと思い、魔力探知を発動させる。
 あの男の魔力はほぼ0だ。そんなとき、男が立ち上がった。

 そのとき、一部がほんの一瞬だけぶれた・・・
 
 そのぶれた部分は、濃い色だった。偽装工作している証拠だ。
 その色は、隊長級の色だった。つまりこいつは……。

「――おい」

 刀を喉元に突きつけ、男の周りに無数の『晶弾』を待機させる。

「んな! これは一体……?」
「――お前は白金級じゃない。正体を明かせ」
「い、一体何を根拠に……」
「さっき一瞬、お前の纏う魔力がぶれた」

 そんなことを言うわりに、冷や汗一つかいていない。
 瞳には怯えの色が見える。上手な演技……いや、幻術か。

「ふぅーーー……」

 息を吐き、こちらを人睨みすると、バッと外へ飛び出ようとするが……オレがさせない。……つもりだった。

『目的を果たす前にこれでは……。それじゃあな!』

 そう言うと男は魔力を解放し、それと同時に辺りに羽が舞う。
 次の瞬間、部屋から男は消えていた。
 だが、消えたのは男だけではなかった。

 もう一人……【水晶使い】も姿をくらましていた。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...