戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
105 / 168
第三章 ~戦闘狂の水晶使い~

第99話  帰る③

しおりを挟む

 王都で再会した、【貴公子】ザイン・ハーバーと、模擬戦を行うこととなった。
 お互い暇な身としては、ちょうどいい暇つぶしにはなるだろう。

「本当は別の人を誘っていたんだけど、相手が日付を間違えてね……。里帰りしているよ」
「ちゃんと伝えたのか?」
「そのはずだったんだけどね……。まあ、ちょうどいいじゃないか」

 まあ、そうだけど……。

 近衛騎士や冒険者が模擬戦を行える場所は限られている。
 森の中などの、人がいない場所だ。

 だが、オレたちは森に入るわけではない。それ専用の施設があるのだ。
 
「受付をしてくるから、ラインは先に入っていて」
「おお、わかった」

 ここは、最強決定祭の開かれる、コロッセウム。
 ここでは冒険者や近衛騎士がよく訪れる。

 ここだと、本気で戦える。
 まず、この広さだ。
 そして、ここには回復術師が数人、在中している。そのため、怪我は――怪我の度合いにもよるが――すぐに完治する。

 以上の理由から、騎士の訓練施設としても使われる。
 隊として共同で活動することは少ないが、やはり隊の中で仲は深まる。

 よくここを利用するのは、第一隊と第三隊、第七隊だ。
 第一隊は精鋭部隊のため、第三隊は遊撃部隊のため、第七隊は魔法攻撃部隊のため、戦闘は自然と派手になる。
 騎士団長と副騎士団長も、ストレス解消や運動不足解消のためによく訪れる。

 これほど人気のため、完全予約制だ。
 上司だから、集団だから優先される、なんてことはありえない。
 だから、雑兵でしかないザインでも予約を取れていた。



「いいよ、ライン。時間は1時間ある」
「ああ、わかった。さて……るか?」

 準備運動なしでも問題はない。
 実戦じゃ、準備運動なんかする暇はないしな。体を温めながら戦うことが準備運動だ。

「よし!」
「それじゃあ……」

 オリハルコンを棍に変え、構える。
 ザインは2本の短剣だ。
 そして、防具を着用している。だが、オレは着けない。
 実戦じゃないからっていうのもあるけど、魔法で代用が効くし、魔法の籠った服だから、すぐに直る。

「ライン、防具はなくていいの?」
「ああ。問題ない!」
「そう……か!」

 ザインは、短剣を2本ともオレ目掛けて飛ばす。

 避けることなど、造作もない。前に走りながら左右に跳んで避ける。
 そのまま距離を詰めるが、ザインの手にはすでに短剣が握られていた。さっき投げた短剣だ。

 仕組みは簡単。
 オレが短剣を避けた時点で、短剣を消し、再び手の中に出す。
 オリハルコン製の武器にのみ許される戦い方だ。

 今回オレは、防御魔法は使わない! 
 最初は棍じゃない方がいいかな……。

 棍を拳銃に変える。そして『晶弾』を発射する。
 連射はしない。できないしな。引き金を引くことで発射する仕組みだし。

 全弾、狂うことなく命中する。
 その間も、短剣が投げられ続けていたが、所詮2つずつ。避けるのは簡単だ。
 距離も取っているしな。





 勝者がどちらなのか、誰の目にも明らかだった。
 攻撃が当たるラインと、攻撃を避けられるザイン。
 手数の多さもラインの方が倍以上。
 費用対効果もラインの方が良い。

「……オレの勝ちだな」
「ちぇーー、負けた~~」
「すみません、回復をお願いします」
「はーーい」

 回復術師を呼び、『回復ヒール』をザインにかけてもらう。
 オレはかすり傷も負っていない。
 体力も魔力もほとんど消費していない。
 数分あれば回復するレベルだ。

 回復したようだ。

「ありがとうございました。……ライン、付き合ってくれてありがとう」
「ああ、こっちもいい暇つぶしになった」
「それじゃ、僕はもう行くよ。打ち合わせがあるから」
「おう!」

 ザインと別れ、コロッセウムを出る。
 仮面は外した、冒険者スタイルのままだ。

 そのとき、騎士団長から『通話トーク』が入った。
 歩きながら会話をする。心の中での会話ができるからな。

『どうしました?』
『ああ、ミュイから話は聞いているだろうが、情報共有だ』

 情報共有? 

『ああ、封印に関する情報だ』

 封印に関する情報? 封印の解き方とか?

『封印の間には、白い石と石柱があっただろう?』
『はい』
『石柱は魔物を封じる大本。そして、それを封じる――封印を強化するのが、あの白い石』

 つまり、石柱に魔物を封印。その封印を維持するのが、あの白い石ということだろう。

『実はな……この事は国王陛下と私、ミュイしか知らされていないのだが、これら封印の道具はある』

 ――!?

『封印の道具がある!? つまり、再封印も可能ということですか?』
『いや、そうではない。道具はあっても、やり方がわからない状態でな。まあいい。それより、本題だ』

 本題じゃなかったんだ、これ。極秘情報をついでで話すなヨ……。

『封印を解く方法は、石をすべて割ること』
『それだけ……ですか?』
『だが封印者でない限り、石を割る度にとてつもない、回避不能、威力減少化の攻撃魔法が浴びせられるらしい』

 うわぁ……趣味悪い~~。
 封印を解こうとするんだから、それぐらい当然だろうけど。

『あと、一つの石を割って5秒以内に次の石を割らないと、石は復活する。痛みで悶絶している間に、5秒なんてものはあっという間に過ぎる』
『それが、最低でも2つ、解かれた……と』
『ああ、そうだ』
『たとえば、一つの石に1人着かせて順番に割れば……?』
『いや、すべて同じ者がやらないと、封印は解かれない。石も割れない』

 頑丈な封印だな。
 封印は技術だ。それが失われてしまったのは大きい。

『とりあえずの情報はこんなものだ。封印された魔物に関しては、封印を解こうとする愚か者を出さないようにするため、情報は意図的に排除されている』
『情報は0、ですか……。それが私たちにとって仇となるとは……滑稽ですね』
『まさに、そうだな……。さて、話は終わりだ。今日中にあと3人には話をしておかないとならないから――』

 最後まで言い終わらないうちに『通話トーク』が切れた。
 せっかちな人だ。可哀そうに……。
 オレは絶対騎士団長や副騎士団長にはならないと決めた。





 とある場所

「調子はどうだ? お前たち」

 そこに座るのは魔物連合盟主。
 そして側には、ぼろぼろのフードで全身を覆っている何か。
 2人の前には、跪いている5体の魔物。いずれも姿は隠れていて見えない。

 この場所は、『人』はおろか、魔物の誰も見つけられなかった場所。
 そこの更に奥深くにある。

「こいつらで全部か?」

 盟主は側に立つ者に尋ねた。

『はい。この者たちこそ、現代まで封印されていた選り抜きたちです』
「そうかそうか。さて、諸君。我が配下となってくれたこと、感謝するよ」

 盟主はにこやかにそう言った。

「お前たちは、今後こう名乗るといい。【六道ろくどう】。『人』どもに報いを……」
『『は!!』』

 5体の魔物は部屋から出て行った。が、外に出たわけではない。
 盟主に待機と命令されている以上、この場所から出ることはできない。

『盟主様。一つ、よろしいでしょうか?』

 側に立っていた者が盟主に声をかけた。
 他の配下の中でも一等礼儀正しいのと、元いた側近が死んだため、こうして側近となっている。
 そしてなにより、配下の中で一番強かった。

「どうした?」
『あの魔狼フェンリルですが、あれでよろしかったのでしょうか?』
「構わんさ。あれは脳をやられていたからな。どこぞの馬鹿が精神に細工をしたのだろうよ。それがなければ、お前とあれだけで十分だったのだがな」

 当初の予定では、魔狼フェンリルを仲間に加え、この側近と魔狼フェンリル、そして盟主の3人で『人』を滅ぼす予定だった。

 しかし、封印から解かれた魔狼フェンリルは、封印を解いた前・側近を殺し、逃亡。

 その場に盟主も居合わせたが、話が通じないとみると、撤退を下した。
 前・側近は一瞬遅れたため、死んだ。

「とはいえ、あのラインが魔狼フェンリルを倒すとはな。とうとう、器の所持者として目覚めたか……?」



 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...