戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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番外編  【最強】の過去

番外編  【最強】の過去4

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 自身をこの世界に強制転生させた神と遭遇したシドーは、その圧倒的な力を前に――表面上のみではあるが――服従を選択した。
 だが、その選択は正解だった。

 転生者は【神兵】と呼ばれていた。そう、神が呼ばせていた。
 転生者という概念はなく、神が【神兵】と呼んだ者が【神兵】だ、と。
 そう、認知されているが故に、神はシドーに援助をした。
 【神兵】に特別援助をすることで、【神兵】の価値と希少性、天性を世に知らしめることができると考えた。




「それはオリハルコン。ミスリルよりも魔法純度の高い物質です。使っているうちに上手く使えるようになるでしょう」

 そう、神がシドーに説明を加えた。

「その壁に魔力を集中させてみなさい。自身に釣り合う量のオリハルコンがあなたのものとなるでしょう」
「……あんたのその武器もそうなのか?」

 シドーはシューゲルの腰に差さっている剣に目をやり、尋ねた。
 
「ああ、実を言うとな。これは外の・・人間にばらさないように。人間には過ぎた技術だ」

 お前も人間だろうが! と言いたかったが、シドーは完全に抑え込んだ。首の上辺りまで出かかったが。
 その代わり、シドーはシューゲルへの評価を最低にまで下げた。

「…………まあいい。ここに魔力を込めるといいんだな」
「はい」

 シドーはシューゲルに軽蔑の目を向けるも、シューゲルは顔を下げているため、視線に気づかない。

 シドーは蒼い壁に手を添え、魔力を込めた。
 すると、オリハルコンの壁がごっそりと抉り取られた。
 抉られたオリハルコンはシドーの中に入っている。

「……嘘……だろ?」
「やはり【神兵】。それも、過去最大級ですね。シューゲル、よく連れてきてくれましたね。褒美を授けましょう」
「おお…………もったいない……ありがとうございます」

 そんな会話をよそに、シドーはオリハルコンの使い方について試行錯誤していた。
 しかし、その使い方は魔力と同様であったため、理解するのに時間はかからなかった。

「扱い方は理解できましたか?」
「ああ」

 そう言って、シドーはオリハルコンを剣や盾に変化させた。

「……問題なさそうですね。魔法の才が高いようで安心しました。…………あなたは私の希望です」

(怪しい勧誘か? なにかあるな)

 急に始まった神の言葉にシドーは前世の知識から警戒を抱いた。
 それと同時に、シドーの心の奥底で「魔王を探し出して倒せ」と誰かが囁いた。しかしそのことにシドーは不自然さを感じなかった。
 むしろ、受け入れていた。それが自然なんだ、と。

「とは言え、改良の余地はなさそうですね…………では、シューゲル」

 なんかぼそぼそと呟き、神はシューゲルへ向き直った。
 その手の中には小さな光の塊が浮かんでいた。それをシューゲルの方へ向けると、光の球がシューゲルの中へ入った。

(あれは……?)

 そして、光の球が完全に取り込まれると――

「――ぐっ……あ゛ぁああ……お……おぉあ゛っ」

 ――シューゲルが体を抱いて苦しみ始めた。
 そして徐々に、その顔に赤い痣・・・が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返し、その頻度が徐々に早くなってきた。
 そして、完全に赤い痣が浮かぶと、

「はっ……はっ……はぁあああああ…………素晴らしい」
「上手くいったようですね」
「これほどのものを授けて頂き、ありがとうございます! 必ずや魔王を見つけ出し、私が倒してみせます!」
「頼もしいですね」

 その赤い痣を見て、シドーは不気味さを覚えた。

「その赤い痣は…………?」
「これは私が力を授けた証ですね。残念ながら、あなたにはできません。ですが、私が力を与えるまでもない潜在能力を有しています」

 シドーは安堵した。
 ドーピングに似ているように……ドーピングよりやばいと感じた。
 そんなもんお断りだ。

「さて、ではもう用はありませんね。では、魔王をよろしく頼みますよ」
「は!!」

 神がいかにもな光に包まれると、部屋全体が眩しく輝いた。
 天井や壁、床までも発光しているようだった。

 次の瞬間、神は姿を消していた。

「行ってしまわれたか……」

 シューゲルの目は虚ろになっていた。
 狂信者はかくもこうなのか、とシドーは嫌悪感を覚えた。

「あんたはこれからどうするんだ?」

 わずか10歳の少年が大人に対してこの口調で話しているのには違和感を覚えるが、誰も見ていない。つまり、NO PROBLEMだ。

「仲間は?」
「全員、殺したさ。あいつらは【赤痣】を殺すことを最優先にしていたからな。隙を見て殺すつもりだった。それが昨日だっただけだ」
「…………まあいい。それじゃ」

 シドーはこれ以上シューゲルと一緒にいたくなかったため、早々に別れを告げた。

「行く当てはあるのか?」
「ない。が、街まで行けばどうにかなるだろ。あんたらみたいな傭兵集団にでも入れるだけの質力はあるだろうよ」
「街まで送ろう。お前を万が一にも死の危険に置くわけにはいかないからな」

 しかし、神を妄信的に信仰しているシューゲルが【神兵】であるシドーを森のど真ん中に放置するわけがなかった。
 自分がシドーに嫌われていることにはまったく気づいていない。

 それよりも、自分の敬虔する人知を超えた主人に授かった力に酔っていて、そんなことに頭が回らなかった。
 脳内割合は、新しい力酔いが44パーセント。
 シドーが【神兵】であることに対する嫉妬、尊敬もろもろ込みで50パーセント。
 その他が僅か1パーセント。

「さて、街に連れて行くとしてどこに預けるべきか……お前、年は?」
「…………10」
「んじゃ、施設にでも……いや、子供売りに格好の的…………」
「返り討ちにするから、放っておいてくれ」

 シドーは一刻も早くこの妄信的狂信者シューゲルから離れたかった。
 離れられれば、施設でも問題なかった。

 誘拐されても、返り討ちにできる自信があった。
 あの忌々しい神にもらったものとはいえ、オリハルコンを持っているから、装備は問題ない。
 全身鎧フルプレートアーマーに武器を1、2個作れるだけの量はある。
 普段は魔力として、体内――なのかはわからないが、とにかく中――にあるため、移動に差し支えない。

「そうだな……まあ、教会にでも――」
「――それは最終手段にしてくれ。どうせ信仰してんのはあのさっき会った神だろ?」
「いや? 偶像崇拝という愚かな連中だよ」
「それならいい。あとは頼んだ」
 
 シドーと同じような境遇の子は、ラインの時代よりもよっぽど多かった。
 都市に2、3は施設があるのが普通だ。

 村が魔物に襲われたが、何かしらの理由で生き残った子。
 賊に誘拐されたところを逃げ出してきて保護された子。
 戦争で両親を失った子。 

 他にもいろいろな理由で孤児となった子はたくさんいる。
 戦争も現在は停戦中だが、薄氷の上にある。人間対エルフ。
 いつ他の国――鬼の国、リザードマンの国が参戦してくるとも限らない。
 ケモミミの国は中立の立場も今のところ守っているが、裏で動いているという噂がある。





 妄信的狂信者シューゲルに連れられ、近くにあった都市の孤児院に、シヴァは預けられた。

 シヴァ・ハンダイラン。
 秘められた強大な力は周りに、魅力カリスマとして広まる。
 ……が、それは一般の話。

 シヴァの場合、秘められた力の桁が違い、魅力カリスマではなく、恐怖、畏怖として広まった。
 だから、いじめられることもなかったが、関わられることもなかった。

 大人たちからも、敬遠されていた。
 だが、前世で中学3年まで育った精神プラス、こちらの世界で育った10歳。
 精神年齢はおおよそ高校生レベルまで成長していた。
 戦闘面においては、比べるものがないため省略する。漫画レベルだった。




 そして、15になったのを機に、冒険者として登録し、孤児院を出た。
 冒険者シドー・ハンダイラン。
 それが後世に残った、彼の最初の記録だった。

 そして、戦争に巻き込まれるのを避けるため、各国を放浪し、仮面とローブで体を隠した。 
 冒険者は国境なき傭兵とも呼ばれるため、国家間の行き来は安易だったことも一因し、後の【最強】は神出鬼没となった。 
 



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