戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第122話  【水晶使い】ラインVS【六道】龍人

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 8月1日、明け方。
 
 ――人類vs魔物。
 
 その一大合戦が今日、開かれようとしていた。

 各地――魔物連合側から指定された土地――へ、選出された者たちが集まっていた。





 オレ、ラインはワインド国の野原に来ていた。
 近くには川が流れており、その先には森林が広がっている。
 オレ以外にこの場にいるのは、オレと選出された近衛騎士、冒険者が数人。

「お前たちはここで、自分の命を最優先に、待機していてくれ」

 オレは付いて来ていた人たちに、コマンド「命大事に」を出した。

「かしこまりました。では、こちらをお持ちください。我々もいくつか予備は所持しております」
「わかった。であるなら尚更だ。攻撃を受けぬように、より後方で待機していてくれ」
「「はは!」」

 オレも偉くなったもんだな……。
 近衛騎士や冒険者は後ろの後方へ下がって行った。


 あいつらは去り際に、小さな袋をオレに預けて行った。
 その口を軽く開けると、薄桃色の石が3つ入っていた。

 これはミスリル……それも、『全快フルポーション』――体力、魔力ともに回復させる魔法――の込められたミスリルだ。
 …………3つ!? 回復術師がぶっ倒れてようやく使える魔法を込められたミスリルを!?
 うんで、しかも、予備があります!? オレらレベルで、回復術師も頑張ってたんだな……。


 オレたちは今日まで、必死の……それこそ、命懸けの実戦訓練を積んできた。
 おかげで、オレはもう1つ、【感覚強化】を手に入れた。
 アグカル副騎士団長メティ・ジュケの加護と同じだ。メディはオレの眷属ってことになるのか?

 今頃、他のメンツも目的の場所で待機中だろう。
 指定は全部で7か所。ここがそのうちの1か所。




 そして暫くすると、森の中に火柱が出現した。
 その火柱の直径は、村1つ覆えそうなほどだった。

 そして火柱が収まると、森の中から3つの影が現れた。

『魔物連合第第四隊、伝令部隊隊長、ダグネリウス』
『『魔物連合第二隊所属』』
『――ヴァン』
『――デネ』

 現れた影はそう名乗る。
 ダグネリウスと名乗ったのは、背中から翼を生やした、人型のカラスだった。
 ヴァンとデネは、体が粘液で覆われた人型の生物だった。……スライムか?

「そうか……オレは【水晶使い】ライン・ルルクスだ」

 オレは仮面を着けていない。素顔公開だ。
 オレは、と言うか、ほぼぜんいん着けていないはずだ。必要ないからな。
 まあ、視界不良になったら着けるために懐に忍ばせてあるけどな。

『それでは、始めるとしよう。……お前たち『人』が滅びる道作りを!』

 ダグネリウスがそう吠えると、ヴァンとデネはそれぞれ、右手と左手に剣を出した。
 ダグネリウスも2本の短剣を取り出した。しかも、それはオリハルコン製だった。

「オリハルコンなんて、いいもの持ってるな。――『晶弾・龍』」

 魔物3体に向かってそれぞれ、『晶弾・龍』を放つ。



 ――しかしそのとき、再び火柱が出現し、収まるよりも早く、魔物たちの生命が失われた。

 それは、他の場所でも同じだった。
 ターバと敵対していた第九隊隊長とその部下も、ヤマルとヨウファンと敵対していた魔物連合第二隊と第三隊の兄妹隊長も、不意を突かれ、一瞬で死んだ。
 全7か所で、それは起こった。

 

 味方であるはずの連合を殺したのは

『『魔物連合盟主直轄【六道】が一体』』



 オレの前に現れたのは、

『【六道】が一体、龍人』

 それは人型のドラゴンだった。胸のあたりに痣がある。龍人はとても物静かな声をしていた。
 しかし、感じる気配は竜ではなく、それよりも……

「龍……」

 竜の上位種、龍だった。

『そう。私は竜の上位種、龍……の更に上位、龍人』
「龍人……まさか、伝説以上の存在がいるとはな……」

 伝説で語られるのは、精々が龍レベルだった。

『盟主様に力を授かり、龍人へ至ったのだ』
「ってことは、お前たち【六道】も、他の隊長たち同様に盟主に絶対的な忠誠を誓ってんのか?」
『……どうなんだろうな。少なくとも、私はそうではないな。感謝こそすれ、あの者はいけ好かん。実際に、こうして仲間を手に掛けることになった』
「そいつらを殺したのも、盟主の指示だったのか?」
『そうだ』

 盟主ってのは、どうも最悪なやつなんだな。
 絶対に殺さないといけないな、絶対。

『さあ、我を高みへ連れて行ってくれ、【水晶使い】よ!!』

 龍人はそう言うと、オリハルコンを薙刀に変形させる。
 先ほど、3体の魔物を斬り伏せたときは、大太刀だったが、こちらの方が得意なのか? 
 見た感じ、こいつはパワー型。受け流しからの反撃がテンプレだが……とりあえず、それで試してみるか。

『来ないのか?』
「お先にどうぞ」
『そうか……――『飛撃』』

 龍人は薙刀を右上から左下へほぼ水平方向で向かって薙ぎ、今度はその逆向きで薙いだ。
 そして薙刀を引き、突き出す。

 それらすべての攻撃が魔力となってオレへ迫る。
 受ける、流す? そんなことする必要はないな、こりゃ。

 オレは駆け出し、跳躍して龍人の放った『飛撃』を避け、そのまま龍人へ迫る。
 オリハルコンを出し、刀へ変化させる。そして斬り上げ――

 ――ようとしたところで、オレはわけもわからないうちに吹き飛ばされていた。

 背後にあった川に入り、ようやく勢いは収まった。
 龍人の方を見ると、右ストレートを繰り出していたようだ。

 衝撃そのものはあまり大した効果がないのか、大してダメージはなさそうだ。
 『重撃』でも乗せていたのか? 正直、情報が0だ。

 封印前で龍だったのが、進化して龍人? 龍の伝承なんて、1つや2つじゃすまない。どれだ、まったく。

 ……封印前は龍だった……? つまり、人形態での戦いは素人同然? 
 それすら凌駕するほどの身体能力というわけか……、厄介なやつを送ってくれたもんだな。
 他の【六道】は鎌鼬かまいたち餓者髑髏がしゃどくろしか知らないから断言はできないけど、こいつはオレの天敵となり得る存在だ。

「――『晶弾・龍』」

 目には目を。歯には歯を。ハンムラビ法典だったか。
 この理論で……

「龍には龍を」

 いつもより『晶弾』の量を多めで提供しております。
 この与えられた期間で、オレの魔法技術も格段に上達した。
 今のオレの水晶は、前よりも硬い!

 密度が多いせいで『晶弾・龍』が本物の龍のような姿をしていた。鱗や目まで見える気がする。

『ふん!』

 龍人が横に跳び、裏拳で『晶弾・龍』の顔の部分を殴ると、そこにあった水晶が粉砕された。
 龍の顔が半分になった。生の龍じゃなくてよかった。

 しかし、それだけでは終わらない。
 龍のしっぽが、空中で身動きの取れない龍人に迫る。 
 そして――直撃。

 龍人は吹き飛び、森の中へ消えて行った。
 しかし、オレの魔力探知がまだ龍人を捕捉している。

 『晶弾・龍』が、龍人のいる場所へ向かって、突撃していった。

 ――ズドドドドドドッド!!

 森の中から土煙が上がり、木々が倒れる。



 しかし数秒後、無傷の龍人が出てきた。

『この程度で、私の鱗を傷つけられると思わないことだ』

 龍人の体に、水晶の細かい破片がくっついていたが、龍人が体を軽く払うと落ちて行った。
 硬すぎるな、あの鱗。下手な鎧より硬いんじゃないか?
 素の状態だと、突破できるだろうが……そう上手くいかないか。
 
 魔力で強化されている。
 龍限定の力なのか、オレたちにも使えるのか……シンプルに『土衣』の可能性もあるか……。
 
『来ないのか? ならば!』

 龍人は腰を落とし、地面を捲り上げ、こちらへ猛スピードで迫ってくる。
 オレはオリハルコンを棍に変え、龍人の突進を受け止めた。

 受け止めた瞬間、足元にあった川の水がなくなる。
 そして、雨となって降ってきた。

「く……!」

 なんて力と威力してんだ、こいつ!
 ただの突進なのに、なんでまだ進み続けようとして……これもなにかしらの技術スキルか!

『――『龍撃』。龍のみが扱える、突進に特化した技だ。受けるのは初めてでしょう? これを受けて立っていた者は数えれるほどしかいない』

 足元から『晶棘』を出し、龍人の腹に当てる。
 技術だと言うなら、妨害してしまえばいい。
 それに、この状態で、防御が完璧なはずがない! 攻撃の瞬間は必ず、防御力は落ちているはずだ!

 龍人は吹っ飛んだ。







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