138 / 168
最終章 ~最強の更に先へ~
第122話 【水晶使い】ラインVS【六道】龍人
しおりを挟む8月1日、明け方。
――人類vs魔物。
その一大合戦が今日、開かれようとしていた。
各地――魔物連合側から指定された土地――へ、選出された者たちが集まっていた。
オレ、ラインはワインド国の野原に来ていた。
近くには川が流れており、その先には森林が広がっている。
オレ以外にこの場にいるのは、オレと選出された近衛騎士、冒険者が数人。
「お前たちはここで、自分の命を最優先に、待機していてくれ」
オレは付いて来ていた人たちに、コマンド「命大事に」を出した。
「かしこまりました。では、こちらをお持ちください。我々もいくつか予備は所持しております」
「わかった。であるなら尚更だ。攻撃を受けぬように、より後方で待機していてくれ」
「「はは!」」
オレも偉くなったもんだな……。
近衛騎士や冒険者は後ろの後方へ下がって行った。
あいつらは去り際に、小さな袋をオレに預けて行った。
その口を軽く開けると、薄桃色の石が3つ入っていた。
これはミスリル……それも、『全快』――体力、魔力ともに回復させる魔法――の込められたミスリルだ。
…………3つ!? 回復術師がぶっ倒れてようやく使える魔法を込められたミスリルを!?
うんで、しかも、予備があります!? オレらレベルで、回復術師も頑張ってたんだな……。
オレたちは今日まで、必死の……それこそ、命懸けの実戦訓練を積んできた。
おかげで、オレはもう1つ、【感覚強化】を手に入れた。
アグカル副騎士団長メティ・ジュケの加護と同じだ。メディはオレの眷属ってことになるのか?
今頃、他のメンツも目的の場所で待機中だろう。
指定は全部で7か所。ここがそのうちの1か所。
そして暫くすると、森の中に火柱が出現した。
その火柱の直径は、村1つ覆えそうなほどだった。
そして火柱が収まると、森の中から3つの影が現れた。
『魔物連合第第四隊、伝令部隊隊長、ダグネリウス』
『『魔物連合第二隊所属』』
『――ヴァン』
『――デネ』
現れた影はそう名乗る。
ダグネリウスと名乗ったのは、背中から翼を生やした、人型のカラスだった。
ヴァンとデネは、体が粘液で覆われた人型の生物だった。……スライムか?
「そうか……オレは【水晶使い】ライン・ルルクスだ」
オレは仮面を着けていない。素顔公開だ。
オレは、と言うか、ほぼぜんいん着けていないはずだ。必要ないからな。
まあ、視界不良になったら着けるために懐に忍ばせてあるけどな。
『それでは、始めるとしよう。……お前たち『人』が滅びる道作りを!』
ダグネリウスがそう吠えると、ヴァンとデネはそれぞれ、右手と左手に剣を出した。
ダグネリウスも2本の短剣を取り出した。しかも、それはオリハルコン製だった。
「オリハルコンなんて、いいもの持ってるな。――『晶弾・龍』」
魔物3体に向かってそれぞれ、『晶弾・龍』を放つ。
――しかしそのとき、再び火柱が出現し、収まるよりも早く、魔物たちの生命が失われた。
それは、他の場所でも同じだった。
ターバと敵対していた第九隊隊長とその部下も、ヤマルとヨウファンと敵対していた魔物連合第二隊と第三隊の兄妹隊長も、不意を突かれ、一瞬で死んだ。
全7か所で、それは起こった。
味方であるはずの連合を殺したのは
『『魔物連合盟主直轄【六道】が一体』』
オレの前に現れたのは、
『【六道】が一体、龍人』
それは人型のドラゴンだった。胸のあたりに痣がある。龍人はとても物静かな声をしていた。
しかし、感じる気配は竜ではなく、それよりも……
「龍……」
竜の上位種、龍だった。
『そう。私は竜の上位種、龍……の更に上位、龍人』
「龍人……まさか、伝説以上の存在がいるとはな……」
伝説で語られるのは、精々が龍レベルだった。
『盟主様に力を授かり、龍人へ至ったのだ』
「ってことは、お前たち【六道】も、他の隊長たち同様に盟主に絶対的な忠誠を誓ってんのか?」
『……どうなんだろうな。少なくとも、私はそうではないな。感謝こそすれ、あの者はいけ好かん。実際に、こうして仲間を手に掛けることになった』
「そいつらを殺したのも、盟主の指示だったのか?」
『そうだ』
盟主ってのは、どうも最悪なやつなんだな。
絶対に殺さないといけないな、絶対。
『さあ、我を高みへ連れて行ってくれ、【水晶使い】よ!!』
龍人はそう言うと、オリハルコンを薙刀に変形させる。
先ほど、3体の魔物を斬り伏せたときは、大太刀だったが、こちらの方が得意なのか?
見た感じ、こいつはパワー型。受け流しからの反撃がテンプレだが……とりあえず、それで試してみるか。
『来ないのか?』
「お先にどうぞ」
『そうか……――『飛撃』』
龍人は薙刀を右上から左下へほぼ水平方向で向かって薙ぎ、今度はその逆向きで薙いだ。
そして薙刀を引き、突き出す。
それらすべての攻撃が魔力となってオレへ迫る。
受ける、流す? そんなことする必要はないな、こりゃ。
オレは駆け出し、跳躍して龍人の放った『飛撃』を避け、そのまま龍人へ迫る。
オリハルコンを出し、刀へ変化させる。そして斬り上げ――
――ようとしたところで、オレはわけもわからないうちに吹き飛ばされていた。
背後にあった川に入り、ようやく勢いは収まった。
龍人の方を見ると、右ストレートを繰り出していたようだ。
衝撃そのものはあまり大した効果がないのか、大してダメージはなさそうだ。
『重撃』でも乗せていたのか? 正直、情報が0だ。
封印前で龍だったのが、進化して龍人? 龍の伝承なんて、1つや2つじゃすまない。どれだ、まったく。
……封印前は龍だった……? つまり、人形態での戦いは素人同然?
それすら凌駕するほどの身体能力というわけか……、厄介なやつを送ってくれたもんだな。
他の【六道】は鎌鼬と餓者髑髏しか知らないから断言はできないけど、こいつはオレの天敵となり得る存在だ。
「――『晶弾・龍』」
目には目を。歯には歯を。ハンムラビ法典だったか。
この理論で……
「龍には龍を」
いつもより『晶弾』の量を多めで提供しております。
この与えられた期間で、オレの魔法技術も格段に上達した。
今のオレの水晶は、前よりも硬い!
密度が多いせいで『晶弾・龍』が本物の龍のような姿をしていた。鱗や目まで見える気がする。
『ふん!』
龍人が横に跳び、裏拳で『晶弾・龍』の顔の部分を殴ると、そこにあった水晶が粉砕された。
龍の顔が半分になった。生の龍じゃなくてよかった。
しかし、それだけでは終わらない。
龍のしっぽが、空中で身動きの取れない龍人に迫る。
そして――直撃。
龍人は吹き飛び、森の中へ消えて行った。
しかし、オレの魔力探知がまだ龍人を捕捉している。
『晶弾・龍』が、龍人のいる場所へ向かって、突撃していった。
――ズドドドドドドッド!!
森の中から土煙が上がり、木々が倒れる。
しかし数秒後、無傷の龍人が出てきた。
『この程度で、私の鱗を傷つけられると思わないことだ』
龍人の体に、水晶の細かい破片がくっついていたが、龍人が体を軽く払うと落ちて行った。
硬すぎるな、あの鱗。下手な鎧より硬いんじゃないか?
素の状態だと、突破できるだろうが……そう上手くいかないか。
魔力で強化されている。
龍限定の力なのか、オレたちにも使えるのか……シンプルに『土衣』の可能性もあるか……。
『来ないのか? ならば!』
龍人は腰を落とし、地面を捲り上げ、こちらへ猛スピードで迫ってくる。
オレはオリハルコンを棍に変え、龍人の突進を受け止めた。
受け止めた瞬間、足元にあった川の水がなくなる。
そして、雨となって降ってきた。
「く……!」
なんて力と威力してんだ、こいつ!
ただの突進なのに、なんでまだ進み続けようとして……これもなにかしらの技術か!
『――『龍撃』。龍のみが扱える、突進に特化した技だ。受けるのは初めてでしょう? これを受けて立っていた者は数えれるほどしかいない』
足元から『晶棘』を出し、龍人の腹に当てる。
技術だと言うなら、妨害してしまえばいい。
それに、この状態で、防御が完璧なはずがない! 攻撃の瞬間は必ず、防御力は落ちているはずだ!
龍人は吹っ飛んだ。
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる