137 / 168
番外編 【最強】の過去
番外編 【最強】の過去10
しおりを挟むシドーの放った漆黒の炎が神を包み込んだ。
そして次第に炎は収まったが、神の体にはところどころに黒い痣が生まれていた。それも少しずつ消えているが、痣が広すぎ、消えるスピードも微々たるものだった。
「――『魂――』 これは……魔法が……!」
神は魔法が使えなくなっていた。
(魔法を封じたのに浮かんだまま? なぜ……)
神は動揺してはいるが、尚も宙に浮いていた。魔法を封じたはずなのに、宙に浮かび続ける神に、シドーは疑問を抱いていた。
「な……ぁ……」
しかしそのすぐあと、神は真っ直ぐに地面へ向かって落ちて行った。
(なるほど……時間制で体内完結での魔法だったか)
生物の体内に浸透するのに時間がかかったのだろう、という結論に至った。
黒い炎は、『封』の闇と炎を組み合わせた魔法だ。『封』によって、相手は魔法を封じられる。
チート級の魔法のため、持続時間が短いのが欠点だが、相手は発動し直す必要があった。
シドーは神を追いかけ、飛行魔法でスピードを上げて落ちて行った。
防御魔法をかけることを忘れない。
「――がはっ」
神を受け止める木々はすべてシドーが焼き尽くしていたため、神はそのまま地面に激突した。
そのすぐそばにシドーが落ちてきた。その足元に転がっていた水土風の精霊は、その衝撃で粉砕された。
「回復を……! いつの間に……」
神は珠に手を伸ばすが、オーブはまったく輝かなかった。
「魂が尽きたか?」
「そんなところですね。…………………………今回は見逃して――」
命乞いをしようとする神の右足に炎の槍が刺さり、神の体を内からも外からも焼く。
「が……あ゛あぁぁああ゛ああ」
「これまで長い間、ふざけたことやって来たんだ。信者の魂を蓄え、バラバラにして!」
「う゛ぅうぅ……」
「挙句の果てには俺たちの世界まで……俺たちのクラスまで巻き込んでよぉ! 自分で呼んでおいて……邪魔だから殺す? 実の師匠まで手にかけ? 何がしたいんだ!!」
シドーが今までの不満をぶちまけるが、神は痛みに苦痛の悲鳴を上げるばかりで、聞いていなさそうだった。
シドーは意識してはいなかったが、そこには魔王の意志があった。怒りの大半は魔王の意志からだった。
「もういい……長い因縁、ここで断つ!」
シドーは爪を剣に変え、神の右胸に刺した。
「がはっ!」
神が吐血する。
『シドー、最期にいいか?』
「ああ。……魔王が変わりたいって言うから、変わるぞ」
シドーが目を瞑ると、神が白くなって伸び、肌も浅黒くなった。
「ま……おう……」
『久しぶりだな、アル。今は神、だったか?』
「貴方を……越えたかっ」
『――嘘を吐くな。お前がしたかったのは“世界征服”。自分を捨てた者たちへの復讐はもう済んでいるのに、変わらず活動を続ける理由は、いつかお前が話したそれしかない』
魔王はそう吐き捨てると、右手を上げた。
それに合わせ、無数の剣や槍などの武器が生成された。
「ま……まて……」
『これで、457年にわたる因縁も終わりだ。――『反逆者』』
無数の武器は、神に一撃を当てる度に消えて行った。しかし、それらは【無限の魔力】によって生み出され続ける。
「が……ぁ……やめ゛!」
神は斬られ、殴られ…………。
攻撃が終わると、神の体は見るも無残に潰れていた。もはや、形を成していなかった。神ではなく、肉塊となっていた。
「――『終焉ノ天柱』」
天空の雲が一部開け、そこから神に向かって光が落ちてくる。
その光が神を包み込むと、
――ドジュゥゥゥゥゥ
と音がし、光は中が見えないほど濃くなった。
光が収まると、そこには大穴が開いていた。穴を覗き込むが、底が見えなかった。
この魔法は、高熱の塊。
その高熱の中では、如何なる物質も存在することはできない。シドーが最初に派生させた熱属性。
光は、熱の温度によって生み出されたものだった。
天からの太陽のエネルギーを吸収し、ベースを築いた。
それを見届けると、シドーの体から光の球が飛び出し、穴の上で人の形をとった。
それと同時にシドーの体は元通りになった。
この光の球は、魔王の魂ではない。魔王の“意志”だ。念という呼び方が一般的なあれだ。
『神の肉体は消滅した。ありがとう。しかし、よかったのかい?』
「何が?」
『神権を使って、世界の魔力レベルを上げただろう? きっと世界は今頃大混乱しているだろうし、生態系も狂い始めているかもしれない』
「問題ない。このことを想定していたやつが……やつらがいるからな」
シドーは自信をもって、そう言い切った。
対する魔王は首をかしげると、
『そうか? まあ、君がそう言うならそうなのだろうな』
「大丈夫だ」
『しかし、神権にはあのような権利もあったんだな。これからどうするつもりだ? 人々でも導くか?』
「いや、どうせ死ねないんだ。それより、器の持ち主だけが行ける場所に行きたい」
シドーは、死なないことの辛さを知らない。しかし、前世で読んだ漫画で、いいことはないことを知っている。
『この世界から外れるつもりか?』
「その通りだ」
『この世界に戻ってこれなくなるぞ?』
「器の本当の場所はあそこだろ? そもそもこの世界に器の所持者が居続けていいのか、疑問だ」
『なるほど……それはそうかもな』
辺りに、シドーと魔王の笑い声が静かに広がる。
シドーは神と魔王から、器の所持者……器の本来の居場所は、ある空間にあると考えた。
『なるほど……たしかに、器の力はこの世界には過ぎた代物かもな』
「現に、今すぐにでもこことは違う場所に転送させられそうだ」
『そうか。ああ……。私も、この世界から消えるときがきたようだ』
魔王の体は、末端から少しずつ消えかかっていた。
「ここも修復しておいた方がいいかな」
『あーー……それは【魔】の仕事じゃないからな。そうだな。私の力をここに少しばかり撒こう。それで、再生も早くなるだろう』
「いいのか?」
『構わない。元器の所持者として、予備の力は持っているんだ。神の能力が能力だからな。意志にすら魔力を備蓄することぐらいできてなきゃあな』
魔王はこれでも、数百年も神から逃げ続けた。
魔王は、その気になれば神と直接戦闘に入ることができた。
しかし、元とはいえ、弟子だった神を殺しに行くことはできなかった。
『それじゃ、私はもう行く。世話になったな。……とどめを刺させてくれてありがとうな』
「こっちこそ、いろいろ教えてくれてありがとな」
魔王は、光を散らしながら天へ昇って行った。
辺りに、濃密な魔力が満ち溢れる。大穴が気がかりだが、そこまで大きな穴ではなかったため大丈夫だろうと判断した。
それを見届け、シドーもその場から消え去った。
シドーが目を開けると、そこは真っ暗な空間だった。
しかし、ちゃんと足は着いているし、奥には円卓と7つの椅子が置かれていた。
「ここが……」
シドーは適当な椅子に座った。
すると、円卓がどこかの景色を映し出した。
「これは……ああ、あの世界か」
シドーが意識すると、映像は思うままに動いた。
その先で街を見つけ、それがシドーが拠点にしていた王都だとわかった。
人の動きから、魔物の動きまで自由自在に見ることができた。
上空からも、横からも、下からのアングルも自由自在だった。
それこそ、一軒一軒の中まで見ることができた。さすがに、人の中までは見れなかったが。
あくまでシドーが見れる範囲内だ。
これが、駿の半生……【最強】の秘められた物語か……。
「さあ、器を持つ者よ! 我のために……死んでくれ!!」
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる