戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第124話  【水晶使い】ラインVS【六道】龍人③

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「がっ……ぁ……く……あ、ああ……」
『何が起きたのですか?』

 龍人は苦しむオレを心配してくれたのか、動きを止めていた。

「ああ、大丈夫……だ」

 オレは【理解】した。そう、【理解】だ。

 目に映るすべてが情報として脳内に入ってくる。
 酔いはしない。脳も正常だ。処理もできている……はずだ。

 画期的だな、この力は。
 大分【知】の完全解放に近づいたと見ていい。最も叡智に近いところにある能力だ。

 そして、【理解】した。
 あと一つ、能力を解放すれば、神器が完全に解放される。

 どうやら、能力の解放は熟練度によって起こるもののようだ。オレはこれまで、敵を理解しようとしてきた。
 それで熟練度が溜まっていたのだろう。
 能力の中では最も(かどうかは断言できないけど)高スペックな能力だ。溜まるのに時間はかかるだろうよ。

 体を動かしてみる。
 ……体が軽い。身体能力上昇率も他より高いようだ。

 目にするものが情報として、頭に入ってくる。
 これはあれか? 異世界転生・転移系おなじみのあれか? ……鑑定。

「さあ、続きをしようか!」

 一通り、試したいことを試したオレは、戦闘再開を宣言した。
 このやりとり、遊んでいるみたいだな、ほんと。

『いいでしょう。少し強くなったようですしね』

 龍人が薙刀を構える。

 龍人。
 歴代の龍の中でも最上位に位置する強さ。

 進化、なんて言ってたが、龍が人の形に収まっただけのようだ。
 足元の地面は若干陥没し、先ほどこいつが着地した、川の向こう岸は大きなクレーターを作り、川の水がそこへ流れ、池を作っている。

 あり得ない密度に圧縮された筋肉。
 それが、こいつの強さの原因だ。

 それを補佐する、龍特有の技術スキル
 鎌鼬かまいたち以上の厄介さ。餓者髑髏がしゃどくろ……は戦ったことないからわかんねえや。

「――『晶装・剣』」

 オレは周りに水晶製の無数の剣を出現させる。
 攻防一体の技だ。維持魔力はそこそこ取られるが、一日中発動させるわけではないし、問題はない。 

『――『龍撃』』

 龍人が地面を捲り上げ、突進してくる。
 オレは棍にしたオリハルコンで受け止め、吹き飛ばしノックバック効果のある『重撃』を込めた右足で蹴り上げた。
 それに合わせ、体を後ろに傾ける。
 棍を回し、棍で龍人の腹を突く。

『ぐっ!』

 やはり入った!
 攻撃中の防御力は落ち、防御中の攻撃力は特に極端に落ちる。

 そして後ろを向き、

「――『音砲ショックキャノン』」

 範囲を極限にまで絞った防御無視の『音砲ショックキャノン』を放つ。
 1発1発を短くし、連射する。
 すべて、龍人の体を通過し、龍人を内部から破壊する。

『ぐっ……が……げほっがぼっ!』

 龍人が大量に吐血する。
 やはり、硬いのは鱗だけで、内部は普通の魔法と同じようだ。この貫通攻撃、便利だな。
 まあ、完全に相手を滅することができないのがデメリットか。

『く……』

 そのとき、龍人の体が膨れ上がり、そこに巨大な龍が現れた。

「それがお前の元の姿か」
『ああそうだ。やはり、慣れたこちらの姿の方がいいな』

 オレの何十倍もある巨大な龍。
 皮膜のある翼、大木よりも太い尾。見る者を委縮させる瞳。
 そして、その体に纏うは炎。

「ああ、伝承にいたな。炎龍えんりゅうなんて存在が」
『ああ、そうであろうな』

 炎龍。
 強者のみを追い求め、切り札と呼ばれた存在を悉く滅し、それに伴う戦闘で辺りを焼き尽くし、灰燼と化したという。
 そして何者かにより、討伐された、と……。

「伝説じゃ、討伐されたってなってるけどな」
『ふん! あながち間違っていないかもしれぬな。現に、私はこの世から消えた。あのままにされていたら、死と変わりない』

 ふむ……たしかに、そうかもな。
 永遠の封印とは死と同義……とまでは行かずとも、ニアリーイコールで結ぶことはできるだろう。

 それに、口調が変わった? どうでもいいか。

 考えにひと段落着いた。
 両足に力を込め、思いっきり引き絞った。

 相手が巨体なら、その上から直に攻撃してみるか。

 水晶の剣を纏いながら、龍に迫る。
 目指すは龍の心臓!

 ――パァン!

 目の前が真っ暗になったかと思うと次の瞬間、体を衝撃が襲っていた。 
 しっぽで攻撃されたか、くそ。完全にノーマークだった。
 地面に当たる前に、防御魔法を何個か掛けたおかげでダメージは少ない。

 オレの着地地点は大きなクレーターができていた。
 少し遅れて水晶の剣が降りて来た。しっぽに弾かれ、まあまあの数が破壊されたようだけど、また作ればいいか。
 
 起き上がり、再び龍を見上げる。

『ふむ……やはり、筋肉量が大幅に増えたようだな。私はここまで大きくなかったのだが……』
「そうなのか。伝説にゃ、巨大な龍と書かれていたんだけどな」

 伝承上じゃ、炎龍は「他の龍より一回りも二回りも大きい」と記されていた。
 【史上最強の龍】こそが炎龍だ。

 それが進化し、今、敵としてオレの目の前で、オレと戦闘中だ。
 オレの人生、どうなってんだ。

 普通の家庭に生まれ、中の中ぐらいの成績を維持し、中学からは運動部に入り、引退後は受験勉強を見据え始めていた。
 そんな折、異世界に転生し、強さを追い求め……。――魔物を殺しまくった。

 前世じゃ、動物虐待で非難されてもおかしくないな。
 魔物も、前世じゃ動物認定だ。

『ふむ……他の龍と会う機会がなかったのでな。普通がわからんのだよ。にしても、『炎龍』か……水や土、風なんかもいるのか?』
「一応、いたけど……強さじゃ炎龍こそ最強だったはずだ。伝承の中の話だがな」
『そうか……なら、より強き者は歴史上に数えるほどしか存在しない、ということか……お前は、どうなんだろうな?』
「さあな。だからこうして、確かめてるんだろ?」
『ああ、そうだな。さて、続きといこうか』

 炎龍が鎌首を持ち上げる。
 炎に包まれた細身の体。長い首。赤い鱗。

『――『炎蜥蜴サラマンダー』』

 炎龍の体が炎に包まれた。けど……――駿の炎には遠く及ばない! 対処は可能だ。

 周りに待機させていた『晶装・剣』を炎龍の首に向かって向かわせる。

 ……若干溶けているか?
 駿のを基準にするのは危険ってことか。なら!

 手元に残っている水晶の剣に、余分に魔力を込める。密度が高くなり、溶けにくくなるだろう。

 現に、今度の水晶は溶けずに炎龍の首に刺さった。

『ぐっ!』

 やはり、人型時に水晶が刺さらなかったのは高密度の筋肉のせいか。
 
『――『炎の息吹』』

 炎龍の首が赤く輝き、口から炎が放たれる。

「ちっ! ――『晶壁』 ――『晶殻』」

 水晶の壁を3枚と、自身を覆う水晶の殻で身を守る。密度は最大まで高めてある。

 攻撃が止んだ。
 『晶殻』は必要なかった――

 ――ドンッ!

 そのとき、『晶殻』に衝撃と共に罅が入った。
 こいつ、しっぽで攻撃してやがるな! どんどん罅が入ってきてやがる。そして、ついに――

 ――バキン

 穴から炎龍の爪が入ってきた。
 オレは咄嗟に『晶殻』を解除し、後退した。
 その直後、爪から炎が吹き荒れ、辺りを焦がした。

『避けたか』
「嫌な予感がしたのでな。第六感は馬鹿にできないもんだ」
『――『炎拡大爆発』』

 炎龍が魔法を唱えると、オレの服に着いた火が一気に膨れ上がり、オレを包み込む。

「――『自由化』」

 オレは咄嗟に魔力を解放し、火を吹き消した。

「熱いなぁ……げほっ」

 服は魔力を込めれば修復できるけど。体の方は……いや、まだ使う場面じゃない。
 幸い、ダメージはまだ少ない。

『ほう……判断力は高いようですね』
「ああ、頭には自信があってな」
『ふぅ……』

 炎龍はため息を吐いた。

『すぅーーーー』

 息を大きく吸い込んだ。
 喉の奥に高密度の魔力を感じる……。

『――『殲滅の息吹』』

 ――カッ

 炎龍は首を落とし、炎の息吹を吐きだした。
 灼熱の炎はすべてを溶かさんと、オレに迫る。【思考加速】と【理解】のおかげで、脳は反応できているが、体は間に合わない。
 水晶で……耐えきれるかどうか……だが、やらないと後はない!

 無詠唱で、『晶壁』を3枚、『晶盾』を2枚、『晶殻』を出した。

 しかし、範囲を絞ることで熱量を最大にまで上げているおかげで、少しずつ破られてきている。
 
『ア゛ァ!』

 逃げようと考えていると、炎龍が声を上げた。それに合わせ、炎の火力が上がった。
 そして『晶殻』が溶けて薄くなり、やがて赫《あか》い光が顔を出し―― 


 

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