戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第125話  【水晶使い】ラインVS【六道】炎龍④

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 避ける間もなく、炎龍の赫い光が『晶殻』の穴から零れ出し――

 炎龍の放った息吹ブレスはラインのいた地点を通り越し、その先にあった森も直線状に焼き尽くした。
 地面も燃え――溶けていた。



 あっっっっついなぁぁああああああ!
 意識飛んだぞ。

 まあ、なんとか『全快フルポーション』のミスリルのおかげで回復できた。
 体力も魔力も全快しなかったけどな。回復量が足りなかったか。
 攻撃を受けると同時に使ったせいなのかね? 使ってなかったら今頃あの世かもな。はっはー、笑えない。
 我ながらよく耐えたよ。

 煙が立ち昇る中、最大硬度にまで高めた『晶装・剣』を作りながら炎龍に向かって駆け進む。

『な!? なぜ生きて――』

 その炎龍の心臓に、水晶の剣を打ち込んだ。

「これで……終われぇええええ!」
『ぐ……まだだ! ――『炎龍えんりゅう』』

 炎龍の体が炎に包まれる。その火力は『炎蜥蜴サラマンダー』の比じゃなかった。

「ぐ……」

 熱い……けど、離すわけにはいかない!
 見た感じ、この魔法は外よりも中だ。体内でバカみたいな火力を生み出し、その余熱が外へ出ているもののようだ。
 熱が剣を通して伝わってくることはない。

「あ……ああああああああああ!!」

 剣を斬り上げ、炎龍の体を大きく斬り裂いた。
 間髪入れず、その傷に『晶装・槍』を突き刺す。剣より長いため、水晶の槍は剣より深くまで刺さる。

『ぐ……がふっ』

 炎龍は吐血する。だがオレは抜かない。

『死なば諸共!! ――『暴発流星弾群クレイジーシューティングプロミネンス』!!』

 炎龍を中心に、四方八方に炎の塊が飛び交う。
 一発一発が地面にクレーターを作り出す。

「「ぐあああああ!!」」

 な!? あいつらに直撃したのか!? く! 
 今オレが助けに向かっても、生きている保証もないし、ここを離れたらまたラウンドリセットだ。
 完全に回復しきらないミスリル。

 これらを考えると、ここを離れるわけにはいかない。あいつらが生きている可能性を……。

『ふん! 一撃で潰れたか。油断して覚醒などしていな――がほっ』

 ――ブチンッ

 そのとき、脳の奥で何かが切れた音がした。
 それに伴い、道が開ける感覚……。今なら【理解】できる。
 これは、神器からの力の奔流。その欠片。

 かろうじて冷静さを保っているが、危うい。意識が飛びそうだ――!

 その力を使い、槍を炎龍の心臓へ――

「――潰れろぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

 ズブ……ずぶり……

 少しずつ、水晶の槍が中へ侵入する。
 そして……

『な……あ……ぐぁああああああああああああ………………』

 くく……柔らかい心臓……だ。
 貫いたぁ……!

 炎龍の体を覆う火が消え、炎龍は地面に倒れる。
 その体は徐々に小さくなっていき、やがて元の人型に戻った。

『くく……やはり、私の最終到達地点は最強には至らなかったようだ…………無念!』

 オレは薄い意識の中で、それを聞いていた。

『ああ……さらばだ。お前なら、あの盟主ですら………………』

 そう言い残すと、炎龍は灰となって消えた。
 
 それよりも……く……!
 まずい! 意識が持っていかれる!

 ――ガキンッ!!

 薄れかかった意識の中で、何かが埋まった感覚がした。

 ああ、そうだ……回復をしないと……回復すれば意識も幾分かまともになるだろ……うぅ。

 腰に提げた袋の中に……ああ、あった。まだ2つ残ってる。
 2つとも割り、回復する。

「ふ……ふぅうう……」

 なんとか、意識を保てるようになるまで回復はしたが……頭痛がひどい。
 前世の記憶が戻ったときの比じゃない。

 く……意識が持ってかれそうなのは相変わらず変わらない。
 だが、今はとりあえずあいつらの無事を確かめないと……。

 ふらふらしながら、あいつらが待機しているはずの地点に向かった。
 炎龍の攻撃のせいで地形が変わっている。
 そして、その地点も……。

「そうか……やはり死んでいたか」

 そこには、大人数人分の骨が転がっていた。オレと共に来た人数と一致する。
 だが、『全快フルポーション』のミスリルだけは助かっていた。
 死ぬ寸前に、ミスリルの入った袋を上に投げたのだろう。

「これは……ん? なんだこりゃ……!」

 袋の中身は、ミスリルではなく、ただの石ころだった。

「くくく……いいですねぇ、その表情……苦悶に満ち、更に絶望を与えられたその顔……くくく……」
「誰だ!?」

 どこからともなく、男の物らしき声が聞こえてきた。
 辺りを見渡したが、誰もいない。
 ここら辺は炎龍の攻撃のせいで、遮蔽物が何もない。なのに生命の影がない。

「くくく……いい表情だ……なあ、【器】よ……なあ!」
「誰だお前は……?」
「……魔物連合を率いる者……お前を・・・滅ぼす者」

 お前を……? お前たち、じゃなく?
 最悪の事態だ!

 敵の目的は、『人』の殲滅じゃない。これは【六道】や盟主の言動から薄々気づいていた。
 そして、同じく【六道】や盟主の言動から、その本当の目的の渦の中にオレが関係していることも……。
 けど……!

 ――まさか、目的がオレ自身だったとはな! 渦の中は中でも、その中心だったわけか!

「出てこい! オレが直々に……ぐっ!」
「そんなボロボロの状態で何ができる? 炎龍との戦闘で負ったダメージは回復したようだが……」
「いいから姿を現せ! 魔物連合盟主!!」

 頭痛のことまで見破られている。
 冷静さを保て。

 ――ドクンッ!

「がッ!」

 くそ……何が起きているというんだ? ただ、悪いものではない。それだけはわかる。
 だが! ……苦しい。

「……いいだろう。見せてやる」

 そのとき、オレの背後に漆黒の塊が現れた。
 それは徐々に消え、人の形が現れてきた。

 それは、今までの悪行には似つかわしくない、天然パーマの美青年だった。

「どうだ。他人に見せるのはこれが初めてだ。配下には誰も――【六道】にすら見せたことはないんだ……」

 それがどうしたというのか。

 頭痛が少しずつ激しくなってきている。
 ただ、何かが足りていない感じがする。小さなねじが足りていないかのような感覚。
 はっ! 【知】の器のくせに感覚頼りとはな……笑えるゼ。

「……頭痛でそれどころじゃないか。ふむ……どうしたものか……。殺して器を、と思ったのだがな。まだ覚醒していないのか?」
「知らね――」
「――覚醒していないようだな。なるほどなるほど……なら、我が直々に高みへ導いてやろうか!」

 来る!
 頭痛で集中力が乱されるが……やらねばあとはない!
 まずい……この状態じゃ、【六道】にすら勝てそうにねぇ……。

「……っと、その前に……これは言っておこう。――久しぶり!」

 そう言うと盟主は、さわやかな笑みを浮かべた。

「あ?」
「これならわかるか? ん?」

 そう言うと盟主の来ていた服が変化した。 
 黒いコートから、冒険者学校の制服へ。

「――な!? 嘘だろ……なんで! ……死んだはずじゃ」

 茶色の髪。 
 冒険者学校の制服。

 それは、かつての友人。
 だが、肉塊となって死んだはずだ。

「………………ミル!!」



 

 
 
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