戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
141 / 168
最終章 ~最強の更に先へ~

第125話  【水晶使い】ラインVS【六道】炎龍④

しおりを挟む

 避ける間もなく、炎龍の赫い光が『晶殻』の穴から零れ出し――

 炎龍の放った息吹ブレスはラインのいた地点を通り越し、その先にあった森も直線状に焼き尽くした。
 地面も燃え――溶けていた。



 あっっっっついなぁぁああああああ!
 意識飛んだぞ。

 まあ、なんとか『全快フルポーション』のミスリルのおかげで回復できた。
 体力も魔力も全快しなかったけどな。回復量が足りなかったか。
 攻撃を受けると同時に使ったせいなのかね? 使ってなかったら今頃あの世かもな。はっはー、笑えない。
 我ながらよく耐えたよ。

 煙が立ち昇る中、最大硬度にまで高めた『晶装・剣』を作りながら炎龍に向かって駆け進む。

『な!? なぜ生きて――』

 その炎龍の心臓に、水晶の剣を打ち込んだ。

「これで……終われぇええええ!」
『ぐ……まだだ! ――『炎龍えんりゅう』』

 炎龍の体が炎に包まれる。その火力は『炎蜥蜴サラマンダー』の比じゃなかった。

「ぐ……」

 熱い……けど、離すわけにはいかない!
 見た感じ、この魔法は外よりも中だ。体内でバカみたいな火力を生み出し、その余熱が外へ出ているもののようだ。
 熱が剣を通して伝わってくることはない。

「あ……ああああああああああ!!」

 剣を斬り上げ、炎龍の体を大きく斬り裂いた。
 間髪入れず、その傷に『晶装・槍』を突き刺す。剣より長いため、水晶の槍は剣より深くまで刺さる。

『ぐ……がふっ』

 炎龍は吐血する。だがオレは抜かない。

『死なば諸共!! ――『暴発流星弾群クレイジーシューティングプロミネンス』!!』

 炎龍を中心に、四方八方に炎の塊が飛び交う。
 一発一発が地面にクレーターを作り出す。

「「ぐあああああ!!」」

 な!? あいつらに直撃したのか!? く! 
 今オレが助けに向かっても、生きている保証もないし、ここを離れたらまたラウンドリセットだ。
 完全に回復しきらないミスリル。

 これらを考えると、ここを離れるわけにはいかない。あいつらが生きている可能性を……。

『ふん! 一撃で潰れたか。油断して覚醒などしていな――がほっ』

 ――ブチンッ

 そのとき、脳の奥で何かが切れた音がした。
 それに伴い、道が開ける感覚……。今なら【理解】できる。
 これは、神器からの力の奔流。その欠片。

 かろうじて冷静さを保っているが、危うい。意識が飛びそうだ――!

 その力を使い、槍を炎龍の心臓へ――

「――潰れろぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

 ズブ……ずぶり……

 少しずつ、水晶の槍が中へ侵入する。
 そして……

『な……あ……ぐぁああああああああああああ………………』

 くく……柔らかい心臓……だ。
 貫いたぁ……!

 炎龍の体を覆う火が消え、炎龍は地面に倒れる。
 その体は徐々に小さくなっていき、やがて元の人型に戻った。

『くく……やはり、私の最終到達地点は最強には至らなかったようだ…………無念!』

 オレは薄い意識の中で、それを聞いていた。

『ああ……さらばだ。お前なら、あの盟主ですら………………』

 そう言い残すと、炎龍は灰となって消えた。
 
 それよりも……く……!
 まずい! 意識が持っていかれる!

 ――ガキンッ!!

 薄れかかった意識の中で、何かが埋まった感覚がした。

 ああ、そうだ……回復をしないと……回復すれば意識も幾分かまともになるだろ……うぅ。

 腰に提げた袋の中に……ああ、あった。まだ2つ残ってる。
 2つとも割り、回復する。

「ふ……ふぅうう……」

 なんとか、意識を保てるようになるまで回復はしたが……頭痛がひどい。
 前世の記憶が戻ったときの比じゃない。

 く……意識が持ってかれそうなのは相変わらず変わらない。
 だが、今はとりあえずあいつらの無事を確かめないと……。

 ふらふらしながら、あいつらが待機しているはずの地点に向かった。
 炎龍の攻撃のせいで地形が変わっている。
 そして、その地点も……。

「そうか……やはり死んでいたか」

 そこには、大人数人分の骨が転がっていた。オレと共に来た人数と一致する。
 だが、『全快フルポーション』のミスリルだけは助かっていた。
 死ぬ寸前に、ミスリルの入った袋を上に投げたのだろう。

「これは……ん? なんだこりゃ……!」

 袋の中身は、ミスリルではなく、ただの石ころだった。

「くくく……いいですねぇ、その表情……苦悶に満ち、更に絶望を与えられたその顔……くくく……」
「誰だ!?」

 どこからともなく、男の物らしき声が聞こえてきた。
 辺りを見渡したが、誰もいない。
 ここら辺は炎龍の攻撃のせいで、遮蔽物が何もない。なのに生命の影がない。

「くくく……いい表情だ……なあ、【器】よ……なあ!」
「誰だお前は……?」
「……魔物連合を率いる者……お前を・・・滅ぼす者」

 お前を……? お前たち、じゃなく?
 最悪の事態だ!

 敵の目的は、『人』の殲滅じゃない。これは【六道】や盟主の言動から薄々気づいていた。
 そして、同じく【六道】や盟主の言動から、その本当の目的の渦の中にオレが関係していることも……。
 けど……!

 ――まさか、目的がオレ自身だったとはな! 渦の中は中でも、その中心だったわけか!

「出てこい! オレが直々に……ぐっ!」
「そんなボロボロの状態で何ができる? 炎龍との戦闘で負ったダメージは回復したようだが……」
「いいから姿を現せ! 魔物連合盟主!!」

 頭痛のことまで見破られている。
 冷静さを保て。

 ――ドクンッ!

「がッ!」

 くそ……何が起きているというんだ? ただ、悪いものではない。それだけはわかる。
 だが! ……苦しい。

「……いいだろう。見せてやる」

 そのとき、オレの背後に漆黒の塊が現れた。
 それは徐々に消え、人の形が現れてきた。

 それは、今までの悪行には似つかわしくない、天然パーマの美青年だった。

「どうだ。他人に見せるのはこれが初めてだ。配下には誰も――【六道】にすら見せたことはないんだ……」

 それがどうしたというのか。

 頭痛が少しずつ激しくなってきている。
 ただ、何かが足りていない感じがする。小さなねじが足りていないかのような感覚。
 はっ! 【知】の器のくせに感覚頼りとはな……笑えるゼ。

「……頭痛でそれどころじゃないか。ふむ……どうしたものか……。殺して器を、と思ったのだがな。まだ覚醒していないのか?」
「知らね――」
「――覚醒していないようだな。なるほどなるほど……なら、我が直々に高みへ導いてやろうか!」

 来る!
 頭痛で集中力が乱されるが……やらねばあとはない!
 まずい……この状態じゃ、【六道】にすら勝てそうにねぇ……。

「……っと、その前に……これは言っておこう。――久しぶり!」

 そう言うと盟主は、さわやかな笑みを浮かべた。

「あ?」
「これならわかるか? ん?」

 そう言うと盟主の来ていた服が変化した。 
 黒いコートから、冒険者学校の制服へ。

「――な!? 嘘だろ……なんで! ……死んだはずじゃ」

 茶色の髪。 
 冒険者学校の制服。

 それは、かつての友人。
 だが、肉塊となって死んだはずだ。

「………………ミル!!」



 

 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...