142 / 168
最終章 ~最強の更に先へ~
第126話 【前鬼後鬼】コラヤンVS【六道】鎌鼬
しおりを挟む時は少し遡り――
鬼の国、アグカル国の平原。
「【前鬼】ヨウファン様、【後鬼】ヤマル様! こちらをお持ちください」
コラヤン兄妹に渡された袋の中には、『全快』のミスリルが入っていた。1人3個。
「お前たちは?」
「私たちは各々1個ずつ所持しています」
「そうか。無理だと思ったら迷わず撤退しろ、わかったな」
「「はい!」」
ヨウファンの言葉に、お付きの精鋭たちは返事をした。
そこは「最期までお供します」ではないか、とは誰も言わないし、思わない。
命大事に。
今回の最終決戦で最優先されるべき命令。
最終決戦なのだから刺し違えてでも勝て、だと思っていたが、そうではなかった。
命あっての物種……というわけではない。
ラインの言う通り、魔物連合の本来の目的に『人』の殲滅は含まれていないと思われた。
だからこそ、命大事に、で問題ないと思われた。
それに、格下の戦士がいくらいようと、異次元級の格上には勝てはしない。
だからこそ、命大事にだ。
無駄に散る命を少しでも減らそうという考えだ。
「来たよ」
そのとき、森の奥に巨大な火柱が上がった。
その火柱から数十もの影が飛び出してきた。
『我らは魔物連合!』
『第二隊、近接戦闘部隊隊長。アーガーシャ』
『第三隊、魔術部隊隊長。ナーラージャ』
遅れて登場してきたのは、六本の腕に蛇の下半身。そっくりな見た目の魔物が2体。
『そして!』
『我らが盟主様直轄精鋭部隊【六道】!!』
『鎌鼬様!!』
最後に火柱の中から1つの影が飛び出し、魔物たちの後方へ着地した。それと同時に、火柱は鎮火した。
飛び出してきたのは、狐のような姿に、異様に伸びた人差し指の爪。
ラインからの報告書にあった鎌鼬の特徴と一致している。
「ヤマル……」
「わかってる」
『…………【水晶使い】じゃないのか……一応、名前は聞いといてやる。そこの2人。名乗れ』
鎌鼬はヨウファンとコラヤンを指名した。
「【前鬼】ヨウファン・コラヤン」
「【後鬼】ヤマル・コラヤン」
『……ほう、私たちと同じく兄妹なのか……』
『兄妹対兄妹……どちらの愛が勝つかの?』
婆さんのような話し方をするナーラージャが妹なのか…………などと突っ込める雰囲気ではないため、ヨウファンとヤマルは黙っていた。
戦いの前、少しでも緊張を和らげようと思考が変な方向へ向かう。ヨウファンの悪い癖だ。
『さて、それじゃ、始めようか。互いの存亡を賭けた戦いを!!』
アーガーシャと配下の魔物たちが武器を取り、向かってくる。
ナーラージャは2体の配下と共に魔法を放つ準備をしている。
『『――『炎球』』』
そして、8発――ナーラージャが6発、配下の魔物2体がそれぞれ1発――の『炎球』がヨウファンたちに迫る。
ヨウファンとヤマルはそれらを避け、アーガーシャと刃を交えた。
アーガーシャは6本の腕それぞれに武器を所持しているため、コラヤン兄妹は手数の面では圧倒的不利だった。
しかし、2人は連携で不利をないものとした。
「どうしたどうした! この程度か!?」
『く……』
ヨウファンとヤマルが次々と繰り出す攻撃に、いつの間にかアーガーシャは防戦一方となっていた。
そのとき。
『――『縦風』』
鎌鼬が突如として魔法を放つと、ヨウファンは体を押し付ける圧を感じた。
「これは……動けん!」
『な……なぜ……!』
――しかし、それは敵も同じだった。
この場にいる鎌鼬以外の生物は、体の自由を奪われていた。そして、
『魔物連合は実質解散だな。お前たちは用済みだそうだ。さらばだ――『鎌鼬』』
『ふ、ふざ――』
『に――』
鎌鼬を中心に、辺りに断層が走る。
魔物連合の魔物たちは、体を両断され、絶命していた。
「「はぁ!!」」
ヨウファンとヤマルはなんとか動けるようで、なんとか攻撃を避けることができた。
しかし、他の近衛騎士や冒険者は……。
『動くか……だが、これは受け止めるわけにはいくまい?』
そう言うと鎌鼬は『鎌鼬』をヨウファンとヤマルに向け、連射した。
ヨウファンとヤマルはただひたすらに避け続けた。
2人はラインの報告書で、この魔法に防御は無意味だということを知っていた。
ラインの水晶を容易く突破する魔法など、防げるはずがない。
ラインの水晶はオリハルコンに次ぐ硬さを持つ。
本音で言えば、オリハルコン級だ。オリハルコン級の硬さを何でもない顔で生成されるのは少しばかり腹立たしいから言わないが。
もう何発避けたかわからなくなった頃、ようやく攻撃の雨と体の若干の不自由さが消えた。
『くっ……』
鎌鼬の顔から汗が球となって毛皮を濡らしながら垂れていた。
『まさか……ここまで動けたとは……大きな誤算だった』
「あまりなめ過ぎないことだ、わかったか!」
『ああ、よ~~く理解した』
鎌鼬は両腕を大きく広げ、ヨウファンに向かって距離を詰めた。
そして、無造作にその右手を振り上げた。
ヨウファンは軽く1歩下がってそれを避けた。
そして、追撃を仕掛けようとする鎌鼬にヨウファンの股下から1本の槍が迫った。
鎌鼬は反応しきれず、左足に攻撃を食らった。
『くっ……――『台風目』』
「な!」
「う!」
ヨウファンとヤマルは吹き飛ばされた。
ヤマルが下敷きとなり、ヨウファンは無事だった。
「すまん、ヤマル!」
「大丈夫!」
「回復するぞ。このままじゃまずい!」
「もち……え!?」
2人は即座に起き上がり、回復を試みた。
ヤマルは懐からミスリルを取り出そうと手を伸ばすが、何度も空を切った。
目で確認すると、そこにあったはずの袋がなくなっていた。
「俺もだ」
ヨウファンも同じ状況だった。
『お探しはこれかな?』
鎌鼬の手の中には、2つの袋があった。
間違いなく、ヨウファンとヤマルのものだ。
『――『風掏』。お前たちが攻撃を避けている間に盗ませてもらった。さて、これは邪魔だな』
そう言うと、鎌鼬は2つの袋を上空へ放り投げ、『鎌鼬』を放ち、ミスリルを破壊した。
これで、誰も回復することなくミスリルは効果を失った。
ヨウファンとヤマルは、回復手段を完全に失った。
そして次の瞬間
『――『竜巻檻』』
2人は周囲を無数の竜巻に囲まれた。
逃げ道は残っていない。
竜巻は地面を抉りながらも、ただただ、そこに佇んでいる。
『これで終わりか』
鎌鼬は最初からこれのために魔力を温存していた。
これですべてを決するために。
だが、鎌鼬は背を向けることはしない。
なぜなら、これからが始まりなのだから。
こんな檻、展開するだけで敵を倒せるか? ……否。
こんな檻、長時間の展開は可能か? ……否。
と、いうわけだ。
これから鎌鼬は、攻撃に移る。
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる