戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第127話  【前鬼後鬼】コラヤンVS【六道】鎌鼬②

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 これから鎌鼬は攻撃へ移る。

 鎌鼬は竜巻の中を進み、中へ入った。
 自身の魔法なんだもの。これぐらいできる。

「入ってきた? なぜ?」
『さあ、決着を付けようじゃないか。ここで!』
「ここがお前の墓場か……いいだろう」
『ほざけ!』

 鎌鼬の痣が濃いく光る。

『ぐ……』

 しかしそれに合わせ、鎌鼬は苦しんでいるように見えた。
 いや、実際に苦しんでいるのだろう。呻き声を上げているのだから。

『盟主様に……勝利をぉぉ…………我が……君………………我は何を……くっ!』
「はぁあああああ!!」

 苦しんでいる鎌鼬などお構いなしに、コラヤン兄妹は鎌鼬に攻撃を仕掛ける。
 人道がないように思える言い方だが、ここは最終決戦の戦場。勝ったもの勝ちだ。

「――『秘剣・発火』」
「――『秘剣・流水』」

 ヨウファンの大剣に炎が、ヤマルの双頭槍に水が纏わりついた。

『うっ』

 ヨウファンの大剣を避け、ヤマルの槍を掴んだ。
 そして自身の方へ引っ張り、ヤマルの手から双頭槍を奪った。

『借りるぞ。――『竜巻槍ピアッシントルネード』』

 ヤマルの双頭槍に竜巻が纏わりつく。
 鎌鼬はそれを……一閃。

 それだけで、ヨウファンとヤマルは吹き飛ばされた。
 そして竜巻の壁にぶつかり――背中を切り裂かれた。

「ぐあ!」
「うぐっ!」
『返すぞ』

 鎌鼬はヤマルの双頭槍をヤマルに向け、投擲した。
 しかし、それはヨウファンの大剣によって防がれた。

『――『竜巻拳トルネードブロウ』』

 鎌鼬から2つの竜巻が発生し、それぞれ、コラヤン兄妹に向かって伸びる。が、

『ぐあっ!』

 鎌鼬は頭痛に襲われ、魔法はキャンセルされた。

「おい……大丈夫か?」
『何かが……入ってくる感覚が止まなくてな……頭痛が周期的に起こってな』
「その痣が原因――」
『我が君を愚弄する――くそ! ああ、そうだろうな。だが、解除できない』
「……休戦を」
『――無理だ。だが、我個人としては賛成したい。……適度に頼む』

 ヨウファンの休戦の提案は食い気味に却下された。
 が、代案が鎌鼬直々に提案された。

「適度に、か……難しいな。その命刈り取って、楽にして――」
『――策がある。それが起きるまでの間で頼む』
「……わかった。ヤマルも、それでいいな?」
「うん」

 しかし、その瞬間、鎌鼬の痣が禍々しい色に変化し、体中に広がって行った。

『が……あぁあああああ!! …………戦いを放棄するとは愚かな! 戦闘意欲のない者にこの体は勿体ない!』
「誰だ!?」
『【六道】が1つ、鎌鼬…………の体を奪った、シューゲル・ターレイ。我が君、我が主、盟主様に遥か昔よりお遣いしている敬虔なる信徒だ』

 鎌鼬は目付きから何もかもが変化していた。
 真っすぐこちらを睨むかのような瞳は、世の中のすべての存在がすべて映っていないかのような虚ろな目に。
 固く閉ざされた口は、口角が若干上がり、生きとし生ける者すべてを舐めきっているかのような顔に彩る。

「…………狂信者……」
『シドーにも同じことを言われた』
「シドー?」
『……この時代に名は残していないのか? それとも、すでに存在していないのか?』
「「聞いたことない」」
『……そうか。仇討ちはできないのか……残念だ。見ていることしかできなかったことが悔やまれるな』

 コラヤン兄妹は自分の世界にトリップした鎌鼬……もとい、シューゲルを横目に、この状況を冷静に判断していた。
 鎌鼬の意識が消え、シューゲルが出てきた瞬間に、竜巻の檻は消えていた。

(逃げの一手……非現実的だ)
(攻撃にどう動けば……? ラインなら……)

 ヨウファンも、ヤマルも逃げの手は除外していた。
 シューゲルは今も自分の世界から戻って来ていない。

『だが、こうして復活を果たすことができた。さて、お前たちは用無しだ。消えろ』

 途端、鎌鼬から尋常じゃない威圧が溢れ出した。
 
(な……)
(押しつぶされそう……!)

 ビリビリと、神経が危険を肌に伝える。

『ふむ……なるほどなるほど。勝手がわかるまで、精々耐えてくれ』

 そう言うと鎌鼬――否、シューゲルはコラヤン兄妹の方……ではなく、生き残った付き人数人へ向かって行った。

「「ぐぁああああああ!!」」

 そして、一瞬で皆殺しにされた。
 シューゲルの発した風に切り裂かれ、原型も留めずにバラバラにされた。

『ふむ……魔力効率が悪いな。かなり持ってかれた』

 心の声をせき止めるものがないのだろうか。それとも、わざとなのか。

『ふむ……お前たちは耐えてくれよ。ふむ……――『風砲ウィンドカノン』』

 シューゲルの手から2発の『風砲ウィンドカノン』が放たれる。
 それらは人の体の半分ほどの大きさもあり――馬鹿みたいに速かった。

 コラヤン兄妹は反応が遅れ、もろ直撃してしまった。

 ――パアァァアアン!!

 甲高い音を立てて、『風砲ウィンドカノン』が破裂する。
 
「「……?」」
『ふむ……速さと大きさを重視したのだが……威力が壊滅的に低くなったか……難しいな、魔法というものは。……なあ?』
「さあな」





 そして、シューゲルはひたすら『風砲ウィンドカノン』を放ち続けた。
 コラヤン兄妹は時に避け、時に――反応しきれずに――直撃し、時に攻撃を仕掛けた。

『ふむ、大分感覚がわかってきたか』

 事実、シューゲルの放つ『風砲ウィンドカノン』の命中率、威力、速さ、大きさは人並み以上にまでなっていた。

(まずいな……ライン級とまではいかないが、十分脅威だ)
(くっ……しんどい……)

 徐々にコラヤン兄妹の体には疲労が蓄積し始めた。
 
『おや……お疲れのようですね。さて『風砲ウィンドカノン』はこれでいいとして、他の魔法も試さないと……くっ』

 しかし、疲労が蓄積していたのはシューゲルも同様だった。
 慣れない魔法を放ち続けたせいで限界、変換効率を理解できなかったのだ。

『仕方ない……近接戦で決着カタを付けようか……』
「ああ、そうだな」
「お兄ちゃん……」
「ああ、最初から飛ばすぞ!」

 3人は持てる最後の力を振り絞った。

「――『秘剣・発火』」
「――『秘剣・吹風』」
『――『風舞フェアリーステップ』』

 ヨウファンの大剣に炎が纏わりつき、ヤマルの槍に風が纏わりつく。
 シューゲルは体に風を纏う。

「「――『剛撃』」」

 コラヤン兄妹は一撃の威力を向上させる技術スキルを武器に付与した。

『ふむ……それは……体系が違うものか。仕方ない』

 2人と1人は、各々立っていた場所から中間地点で刃を交えた。シューゲルは爪だが。

『やはり、爪で受け止めるのはしんどいか』

 シューゲルは後退し、受けた衝撃を受け流した。

「逃がさない!」
「やめろヤマル!」
『逃げ……ではないのだが――』

 鎌鼬が爪を振り下ろす。
 
「――!!」

 驚きで体が硬直し、防御する時間すら、体を大きくよじることすらできない。
 ヤマルは諦め、その狂爪を受けようと目を瞑った。

 しかし、ヤマルを襲ったのは別の衝撃だった。

「ぐあっ!」
「……? ……!」

 シューゲルの爪を受けたのはヤマルではなく、ヨウファンの背中だった。

『ほう……限界を突破して動いたのか。愚かな妹を守るとはな。そのまま妹を犠牲にしていたらこの私に攻撃できたのに』
「俺が受けたことで、ヤマルは無事だ。それに俺もそこまでダメージを受けてはいない」
『ふん! くだら――』

 突如、シューゲルの脇腹に熱が広がった。

 攻撃を加えたのは、ヤマルだった。

「如何なる状況においても冷静さと合理さを失わないのが、ヤマルの武器だ」
『あの【水晶使い】に欠如しているものを……?』
「強さの種類が違うだろう?」

 シューゲルはそれを聞き、ため息をついた。そして、

『さて、そろそろ勝利を盟主様に捧げる頃合いか……』
「敗北をあの世で報告するんだな」
『――『台風檻ストームズエリア』』

 シューゲルは周囲に風を展開し、自身と外界を隔てた。

「な!? 硬い……」

 コラヤン兄妹が攻撃を加えても、その檻はびくともしなかった。
 その中でシューゲルは魔法の詠唱をする。

いにしえより伝わりし風の魔王よ。我が命に応え、我が力を依り代に顕現せよ』
「その詠唱は……?」

 ヤマルの問いかけすら無視し、シューゲルは詠唱を続ける。

『風の魔王よ、その力を魅せ給え――『風神』』

 風の檻が砕け散り、辺りに豪風が吹き荒れる。
 
 一瞬で風は止んだが、その一瞬で地形が変わっていた。
 木々は消え去り、地面はめくれ上がり、上空には雨雲ができていた。そして雨が溢れ出した。

『ふむ……まだ息があるのか。だが、すでに満身創痍だな』

 ヨウファンもヤマルも身動きできないほどダメージを受けていた。

「ごほっ……」
『兄の方は気絶したようだな。放っておいたら死にそうだな』

 ヨウファンは気絶しており、背中から血が溢れ出ていた。

『さあ、最期の一息は吸えたか?』

 そして鎌鼬の爪がヤマルの心臓へ――
 

 

 

 
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