戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第128話  【双剣士】ターバVS【六道】餓者髑髏

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「お前が餓者髑髏がしゃどくろか」
『お前が【双剣士】だな』

 ターバは【六道】の餓者髑髏がしゃどくろと睨み合っていた。
 餓者髑髏がしゃどくろの背後には、魔物たちの死体が。ターバの背後には、仲間の死体が転がっていた。

 ラインやコラヤン兄妹のときと同様に、後から現れた【六道】に仲間と相手の魔物たちが皆殺しにあった。
 
「それが骨を操る魔法か……」

 餓者髑髏がしゃどくろは魔物たちを皆殺しにしたあと、手を掲げた。
 すると、魔物たちが軋み、捻じれ、体が引き裂かれた。その傷口から骨がずるり、と現れた。
 それがターバの後ろに控えていた近衛騎士や上位冒険者に襲い掛かり、大きな1つの怪物と化し、ターバを吹き飛ばし、ターバの配下たちを全滅させた。
 その後、戻ってきたターバが骨の怪物を破壊した。

『――『千骨集合体ユナイテッドボーンズ』をあっさりと破壊するとは……さすがは【双剣士】と言うべきか……』
「……なあ、お前のそれ……聖剣だろ?」

 ターバは餓者髑髏がしゃどくろの持つ剣に目を奪われていた。
 鮮やかな水色の剣で、滑らかな曲線を描いている片刃剣――刀。

『その通り、これは水の聖物だ』
「聖物が魔物を持ち手に選ぶのか?」
『ああ、そうだ。封印から解き放たれたとき、宿主に選ばれたんだ』

 餓者髑髏がしゃどくろは続け、本題に入る。

『……さあ、我が目的のため! 押し通る!』

 今までの餓者髑髏《がしゃどくろ》からは想像がつかないセリフを吐き捨て、

「俺たちの未来のため……倒す!」

 ターバが威勢よく応える。
 主人公然としたセリフだが、残念ながら主人公はラインだ。

『…………ちっ。まずいな……悪いが、手短に済まさせてもらう』

 どうやって骨の体で舌打ちをしているのかは不明だが、何か餓者髑髏がしゃどくろにとって良くないことが起こったらしい。
 それだけは、ターバも察することができた。

 餓者髑髏がしゃどくろは聖物を発動させる。剣が水を纏う。
 それに合わせ、ターバも双剣に風と火を纏う。

『――『水龍剣リヴァイア』!!』

 餓者髑髏がしゃどくろの剣から水が溢れ出し、水が水龍の形をとる。
 水龍はターバを食らおうと襲い掛かる。

「甘い!」

 ターバは双剣を振るい、水龍を切り裂く。

『水を斬る……』
「俺はすべてを斬る」
『そうか。だが、先を急いでいるんでな、勝たせてもらう』

 餓者髑髏がしゃどくろは焦っている雰囲気だった。

「何がある? 何を焦っているんだ?」
『お前には関係ない』

 ターバが尋ねても餓者髑髏がしゃどくろは関係ないという雰囲気を崩さなかった。

「そうか……なら、負けても文句はないな?」
『お前では我に勝つことはできない』

 餓者髑髏がしゃどくろの剣が持つ水が再び大きく膨れ上がる。

『――『水鬼』』
「――『火災旋風』」

 ターバの剣から火と風が膨れ上がり、大きな竜巻を形成した。
 それは水でできた巨大な鬼と激突した。

『なんだ、それは……お前は魔術師ではないだろう?』
「戦士の扱うこれらだって、極めればここまで来れるもんだ。それに、俺に魔術の才はなくても、魔力量だけは並の魔術師より多いらしい」
『なるほどな……天が二物も三物も与えるとはこのことか』
「ラインには及ばない」
『あれはじ……特別だ。強いて言うなら、あいつが天に与えられたのは一つだ』

 ターバはその言葉の意味を理解できなかった。
 「じ」から始まる言葉……なおかつ、それ一つであの魔法技術、身体能力、知力を得ることはできるもの……。
 ターバに思い当たるものはなかった。

 じ……じん? 一番確率が高いのはこの言葉で始まるもの。ターバにとってはなんとなく思いついた言葉だったが。

『――『水龍の舞姫』』

 餓者髑髏がしゃどくろが聖物から溢れ出した水を鎧に変え、体に纏う。
 餓者髑髏がしゃどくろが地を蹴ると、水が軌跡を描く。

 もの凄いスピードで餓者髑髏がしゃどくろはターバに迫る。
 ――しかし、その先にターバはいなかった。

『これを躱すか』
「あまりなめるな……」

 餓者髑髏がしゃどくろの体に纏うローブに切れ込みが入っていた。

『それはこちらのセリフだ。その程度の攻撃で我の骨を傷つけられると思うなよ』

 ターバの攻撃をもってしても、餓者髑髏がしゃどくろの体に傷はついていなかった。
 その攻撃は風を纏っていた。……にも関わらず、攻撃は通らなかった。

『ちなみに我は魔法を使っていない。身体強化系の技術スキルはすべて、この聖物が持って行ってしまったのでな……』

 つまり、餓者髑髏がしゃどくろは素で、ターバの攻撃を跳ね返すだけの硬さを有しているというわけだ。
 だが、対抗策はいくらでもある。

 ターバだってラインの陰で目立たないが、かなり優秀なのだ。
 間違いなく、歴代でも片手で数えられるぐらいの実力者だ。

「そうか……なら、今と昔。どちらが動きやすい?」
『断然、今だ。聖物の恩恵は加護の比ではないのでな。それに、これはこれで強化技術スキルはあるしな』
「さっきの『水龍の舞姫』がそうか?」

 先ほど餓者髑髏がしゃどくろが使ってみせた『水龍の舞姫』。
 それを使うと、餓者髑髏がしゃどくろの身体能力が大幅に上昇した。

(そもそも骨の体……アンデッド種か。もともと異常な身体能力を兼ね備えているものか)

 骨の体のため、筋肉、神経などはない。骨しかない。どういった原理で動いているのかは不明。

『そうだな』
「で、聞いてもいいか?」
『なんだ?』
「なぜ、仲間であるはずの魔物を殺した? 隊長だっていただろう? 殺さずに戦力として置いておけば戦局は有利だったんじゃないのか?」

 ターバはずっと気がかりだった。
 少なくとも、殺すメリットがむこうに見当たらなかった。

「なぜ……? お前に何のメリットがあったんだ?」
『お前が怒る理由はわからないが……そうだな、――邪魔だったから。これで答えになったか?』
「ああ」

 そう言うが早いが、ターバは駆け出し、右手に持った剣を横に薙いだ。

『甘い!』

 すぐさま左の剣を突こうとしていたターバだったが、その体ごと吹き飛ばされた。

「ごほっがほっ!」

 ターバは吐血する。

『言っただろう? 加護と聖物では身体能力上昇量が違う、と。元となる身体能力も違っているわけだしな』
「だからなんだ! 諦めろ、はいそうですか。……じゃないんだヨ!」
『そうか……残念だ・・・

 再び戦闘が再開される。
 餓者髑髏がしゃどくろの水を纏った攻撃。
 ターバの魔力を纏った連続攻撃。

(アンデッドに体力の概念があるのか……? アンデッドが疲れるとかいう話は聞いたことないけど……どうなんだ?)

 アンデッドはそもそもの量が少ないせいで、データが少ない。
 疲労……体力という概念が存在するのかどうか。筋肉や神経がない以上、疲労はなさそうだが……。
 
『どうした【双剣士】! 動きが鈍ってきたようだぞ? このまま持久戦に持ち込んでもいいんだぞ?』
「やはりアンデッドに体力はないのか!?」
『……半分正解半分外れだ。体力の限界はある。だが、疲労を感じないだけだ』

 つまり、疲労が蓄積するがそれを自覚できない。
 死ぬまで動き続けることが可能ということになる。 

「ちっ!」
『ほらほらどうし――』

 挑発していた餓者髑髏がしゃどくろが、突如ターバの前から姿を消した。
 
『…………何が?』
「調子に乗っているからだ。――足元をすくわれる・・・・・・・・

 先ほどまで餓者髑髏がしゃどくろの立っていた場所は、地面がごっぞり削れていた。

『なるほど……足元に魔力を溜めて爆発させたか』
「水でガードしたか」

 先ほどのはターバの渾身の一撃だった。
 完全に感覚外からの一撃…………のはずだった。

『我の反射能力を舐めるなよ?』
「…………」

 ターバは脳をフル回転させていた。
 どうすれば餓者髑髏がしゃどくろに一撃を加えられるかについて。

 餓者髑髏がしゃどくろの骨に傷がついていた。つまり、先ほどレベルの攻撃は有効というわけだ。
 剣での一撃も入っていた。

 しかし、骨が硬すぎる。骨しかないのだから硬くて当然だと言える。

『どれだけ思考を回転させても無駄だ。我はお前より硬く、速い。敵わないと知れ』
「諦めるわけにはいかない。それに、俺は負けない・・・・!!」


 

 
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