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最終章 ~最強の更に先へ~
第129話 【双剣士】ターバVS【六道】餓者髑髏②
しおりを挟む『どれだけ思考を回転させても無駄だ。我はお前より硬く、速い。敵わないと知れ』
「諦めるわけにはいかない。それに、俺は負けない!!」
ターバには【不死】の加護がある。
それがある限り、ターバは負けない。
『対策がないなんてことはありえない』
「やってみな! ――『秘剣・発火』」
ターバの双剣に火が纏わりつき、それに続いてターバの両腕も炎に包まれた。そして炎はそのまま全身に広がり――
「――『焔人』」
『もはや魔術だな……戦士の領域を超えているな。だが、関係ない。これでいいか? ――『瑞人』』
餓者髑髏の体が水に包まれる。
先ほどの『水龍の舞姫』と異なるのは、その水が鎧のような形状を取っている点だ。
そして、その形状はターバの『焔人』と類似している。
――衝撃が地を、大気を揺らす。
両者とも上昇した身体能力で、残像すら残さない。
二人の戦いは、一撃一撃が地形を変える。衝撃が地を削り、大気を揺らす。
『……急上昇した身体能力。魔力を体中に張り巡らせているのか……常人なら体が耐えきれずに内部から崩壊するはずだが……』
「常人であれば、だろ?」
そして再び戦闘が再開される。
姿は見えないが、音と衝撃波でどれほど苛烈な戦闘が行われているのかだけはわかる。
――ズンッ!
そのとき、地面の一部が陥没した。
『――ッ!』
それを見下ろしているのは炎を纏ったターバだった。
起き上がった餓者髑髏にターバが追撃を仕掛けようと飛びかかるが、今度はターバが吹き飛ばされる。
『――『水龍弾』』
ターバの全身の骨が折れたが、餓者髑髏がそれを感知するより先に修復した。
とても重い――ラインの『晶拳』よりも重い一撃だった。
『その炎の鎧ごと弾き飛ばすつもりだったのだがな……。少々、雲行きが怪しくなってきている。本気で行かせてもらう』
餓者髑髏に蓄積されたダメージはかなりのものだ。
肋骨数本に罅が入っている。それ以外は、ローブで見えない。
『――『水龍の狩場』』
空に暗雲が広がる。そこからポツリ……ポツリ……と、雨が降り始めた。
(天気を変える魔法?)
しかし、それで終わるはずがなかった。
『――『水竜群』』
餓者髑髏《がしゃどくろ》が剣を振るうと、それに合わせて雨が集まり1匹、また1匹と、翼の生えた水竜の形を取り始めた。
その数、5体。
親竜が2体、子供が3体。中でも父親と思われる竜は一際体躯が大きく……
(――いや、そこにこだわる必要ある?)
子供龍でも、体高だけでもターバの身長の倍はある。
5体の竜は翼をはためかせ、餓者髑髏《がしゃどくろ》を守るように降り立った。
『――『水龍の息吹』』
5体の水竜と餓者髑髏(の剣)から水の塊が発射される。
ターバは間一髪、横に跳び避けることができたため、直撃は免れたものの、起き上がったすぐそばにはすでに剣を振り上げた餓者髑髏が立っていた。
「ぐっ!」
ターバは腰を上げ、なんとか双剣でその一撃を防ぐことに成功した。
だが、体勢的に、これ以上起き上がるのは困難だ。しかし、今も上から力は加わり続けている。
「……~~ッ! ――ア゛!!」
そのとき、ターバが白く輝き、一瞬の後、周辺をも白い光が包んだ。
霧に覆われた焼野原の中を、無数の小さな何かが無数に蠢く。
それらは徐々に集まり、微々たるものではあるが、大きくなっている。
そして、人型を取り、声を発した。
「あ゛……あ……あぁ……んん!」
その人型の何かを包み込むように、服が現れ、その手の中にそれぞれ剣が現れた。
――ターバだ。
ターバは辺りを見渡した。相変わらず雨は降り続けている。
ターバが歩を進めると、ばしゃばしゃと、地面が音を立てる。辺りは水浸しだ。
(魔力爆発は相変わらずの威力だな……持っててよかった、【不死】の加護。魔力はほとんど空になったけど、水竜は消し飛んだかな? 餓者髑髏は、と……)
ターバは再び、霧の立ち込める戦場を見渡した。
魔力探知を発動させるが、気配は探知できない。それに、僅かに漂う魔力が魔力探知を妨害している。
「さて、どうしようか……この目で餓者髑髏本体を確認しないとな……あれで消し飛んだ可能性……は低いだろうな」
ターバは体こそ元通りだが、精神的、魔力的疲労が蓄積している。これ以上の戦闘は困難だ。
しかし、持ち前の気力でどうにか踏ん張っている。
ターバは、持久走ではラスト1周で馬鹿みたいに上げるタイプだ。気力は人一倍ある。
そのとき、ターバの背後で霧――水蒸気が短剣の形を取り始めていた。
ターバはまるで気づいていない。
そして短剣がターバの後頭部目掛け、発射されようとしたその瞬間。
ターバは振り向き、短剣を切り払った。
水でできた短剣。
これが証明するのは、餓者髑髏の生存と、敵意、殺意。つまり、戦闘は続行中ということだ。
しかし、餓者髑髏の姿は見えない。
ラインの持つ、プログラミングと同じ要領で、遠くから操っている可能性もある。
――シュッ
そのとき、何かが高速でターバのすぐ横を通り過ぎた。
「…………ッ」
ターバの首がずれた。
(斬られた? まったく気付かなかった。まあいい。【不死】で。……?)
ターバの首は再生しようとしている。が、再生しない。
再生するそばから再生が断絶される。
断面に手を当てると、水があった。水が動いている。回転しているのだろう。
「チッ!」
ターバは双剣で斬られた断面の上下を斬った。
そして、再生した。
「あ゛ぁ……」
『意外と冷静なようだな。さすがは【放浪者】というべきか……』
どこからともなく餓者髑髏の声が聞こえた。
しかし、その姿はおろか、気配すら見えない。
しかし、声だけは聞こえる。たしかに、いる。
『決着の時だ。我の領域へようこそ。これで――終わりだ』
そのとき、霧が集まり、無数の短剣の形をとった。
(この漂っている魔力は俺の魔力爆発による残存魔力ではなく……餓者髑髏の魔力だったのか! まずった!)
短剣は形を得るそばからターバに襲い掛かる。
時に避け、時に剣で弾く。
それでも、すべてを捌き切ることは難しかった。
短剣が刺さったままでは、再生ができない。しかし、抜く暇もない。
隙を見ては短剣を攻撃し、消して、再生してはいるが、その分攻撃されている。
(まずい……再生が追い付かない!)
そして、足元に溜まった水が斬撃となって発射された。
ターバは反応できず、左足を切断された。
「ぐっ! また水か!」
断面にはまた水が回転しており、再生するそばから斬られている。
魔力爆発で断面を吹き飛ばし、体勢を戻す。
そして斬られた足を再生で繋ぐ。
しかし、今の数秒で多く攻撃を受けてしまった。
『決着だ』
ターバの目の前で、水が形を取り、餓者髑髏が現れた。
手を身動きのできないターバの腹に当て、
『――『血塊球』』
ターバは吹き飛ばされた。
その衝撃でターバの体に刺さっていた短剣はすべて抜け落ちた。ターバは再生し、傷を塞いだ。
――しかしその直後――ターバが着地しそうになったとき――、地面から水柱が上がり、ターバは空中に放り投げだされた。
ダメージはない。しかし、体勢は最悪、身動きできない。
ターバはそのまま自由落下し、地面への激突を覚悟した。
――しかしその前に、水がターバを包み込んだ。
「がぼごぼば……」
『――『血塊球』発動』
その瞬間、水が高速で動き、ターバの体を引き裂いた。
(再生できない……体はどこだ? 俺は……どこにいるんだ…………)
ターバは【不死】の加護のおかげで、意識はある。しかし、何も見えない、聞こえない、感じない。
『流れの違う、いくつもの水流が無理やりお前を引き裂き、水を血の色に染める。再生できるようだが、それではな……では、さらばだ』
餓者髑髏はそう言い残すと、暗雲と共にどこかへ去って行った。
残ったのは、泥だらけの地面と、真っ赤な水の塊だけ――
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