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最終章 ~最強の更に先へ~
第135話 聖物の意志③
しおりを挟む騎士団長は自身を覆う雷をすべて剣に集め、横に振るった。
辺りを覆う光が収まり、まず見えたのは剣を振り切った騎士団長。
――しかし盟主が立っていたのは、その背後だった。
騎士団長と盟主は剣を鞘に収める。
その瞬間、騎士団長の体に太刀傷が走った。しかし、盟主も攻撃を受けている。
盟主の左腕がズタズタだ。雷で焼かれ、煙が上がっている。
騎士団長の傷は浅くはないが、動けないレベルではないはずだ。
騎士団長はまだ立てている。
「何を……視界は遮ったはず……」
「雷が……よく見えたのでな。僅かに避けるのが遅れたが、攻撃は当たったようで何より」
『――『水龍剣』』
「まだ私が話しているだろう? ……ごふっ!」
盟主は餓者髑髏の放った魔法を解除したつもりだった。
しかし、その魔法はすぐさま再構築され、盟主に直撃した。
『解除されるのであれば、練り直せばいい。いくぞ、レイハル!』
「なるほど……おう!」
騎士団長は再び雷を纏い、餓者髑髏と共に盟主に襲い掛かる。
騎士団長は雷の特性を体に体現。一直線上であれば、凄まじいスピードを発揮する。
餓者髑髏は水の特性を体に体現。騎士団長ほどのスピードは出ないが、小回りがきく。攻撃に流れがある。
「雷」
『水』
そのとき、聖物が一際大きく輝き、辺りを照らした。
聖物が、世界の秩序を破壊する盟主の脅威を認識したようだ。それに応え、その力を完全に解放したようだ。
騎士団長は雷と、餓者髑髏は水と一体化した。
体の輪郭の一部がぼやけ、雷、または水が纏わりついている。
騎士団長の額には金色の光が凝縮され、餓者髑髏の額には蒼の光が凝縮され、輝いていた。
聖物も若干、その色に輝いている。
それに合わせ、2人の動きが段違いに良くなった。
「な!?」
盟主も辛うじて対処はできている状態だ。
2人もいては大変だろう。
「――『台風目』」
盟主を中心に豪風が吹き荒れた。
しかし、2人が並んで剣を振るうと、風は逸れた。
オレでも開けられなかった穴を、剣を振るうだけで開けた。
その実力は確かなものだ。1人でも盟主に匹敵する。
「――『反逆剣』」
盟主は周囲に大量の武器を生成した。
「――『雷鳥』」
『――『水獣』』
騎士団長は雷の鳥の群れを。餓者髑髏は水の四足獣を2匹、生成した。
それらは盟主に向かって一直線に駆けて行った。
盟主はそれらを『反逆剣』で受け止めた。
そしてそのまま、受け止めた剣を騎士団長と餓者髑髏に向けて放った。
2人はそれらを剣で受け止めた。そのとき、
「ぐあぁあああああ!」
『ぐぬ……ぐぐ……!』
騎士団長の体に水が纏わりつき、騎士団長を締め上げた。
餓者髑髏の体に電気が走る。
なるほど。『反逆剣』の効果は――反撃。
受けた攻撃を吸収し、相手に当てて解放する。
なぜ今まで使ってこなかったのか気になる。が、それはどうでもいい。
吸収できる容量に限界はあるのか?
……威力が上乗せされて返っているのか?
盟主の魔力が上乗せされているのか?
『それは……?』
「――『反逆剣』」
盟主の周りに大量の『反逆剣』が生成される。
これで盟主の魔力防御は跳ね上がったと見ていい。
「なら武力で攻める!」
騎士団長と餓者髑髏は剣を構え直し、盟主に向かって行った。
使っている魔法は身体強化系のみだ。一撃に魔法どころか、魔力すら込められていなかった。
魔法への耐性はともかく、物理への防御力は皆無に等しいようだ。一撃当たる度に、『反逆剣』は砕け散る。
盟主も黙って見ていない。
右手の先から魔法を放ち、左手の先から『反逆剣』を生成する。
対する騎士団長と餓者髑髏は、盟主の魔法は防御魔法で受け止めたり、逸らしている。
その最中も、『反逆剣』の破壊は止めない。
盟主が『反逆剣』を生成するスピードと『反逆剣』が破壊されるスピード。
速いのは……後者だ。
やがて、『反逆剣』が盟主が生成中の一本だけになった。
『畳みかけるぞ!』
「ああ!」
餓者髑髏と騎士団長は剣に水と雷を纏い、盟主に迫った。
「――『反逆剣』」
2人の攻撃が盟主に当たった瞬間、『反逆剣』が餓者髑髏の肋骨に刺さった。
肋骨を中ごろまで切断したが、そこで止まっている。
しかし、
『うぐ……おあ゛あぁあ゛あ゛ああぁぁああぁあ!!!!』
餓者髑髏は、今まで誰も聞いたことのないような苦痛の叫びを上げた。
「さすがは『反逆剣』。やはり、こういう魔法だったか」
盟主は満足そうな顔で餓者髑髏を見ている。
騎士団長は攻撃を仕掛けるが、すべてノールックで避けられている。やがてしびれを切らしたのか、
「――『爆雷』」
騎士団長を中心に、辺りに雷が走る。
それだけではなく、上空から幾筋もの雷が落ちてくる。まるで、雷の雨だ。
「うぐぐぐぐ……っ!」
盟主の余裕そうな笑みが、苦痛の表情に変わった。
避けられない攻撃。一度受けると当分体が麻痺し、更に攻撃を受ける。
徐々に、目標も無しに落ちていた雷が収束し、やがて――すべての雷が盟主に直撃する。
1発目が終わる前に2発目……更に3発目、4発目が落ちる。
そして……騎士団長の魔力が尽きるまで、繰り返される。
正真正銘、騎士団長――雷の聖物の必殺の一撃。
雷一撃に麻痺の効果が加えられているため、威力は若干落ちるが、数がそれを凌駕する。
盟主に為す術はない。
雷に付随された麻痺で、魔法の詠唱すらままならず、移動もできない。僅かな動き……指一本動かせない。
素の魔法防御力が高かったおかげで、ダメージは少ないが、塵も積もれば山となるだ。
「そのまま焼け死ね!」
餓者髑髏は既に立ち上がっているが、攻撃を足さない。
下手に攻撃を加えれば、不都合な事態が起こる可能性が出てくる。
騎士団長も餓者髑髏も、別の存在だ。魔法が一部、相殺する可能性もあり得る。
その隙に麻痺が解けたら? 魔法で防御され、攻撃に転じられるだろう。
そうなれば、少なくとも騎士団長は終わりだ。
聖物の最高の一撃は、いくつかの条件が組み合わさって発動される。
まず、初撃を当てる。そして、3発目以内にもう一撃を与える。
次に、麻痺が有効であること。
また攻撃中、術者は移動ができない。
何より重要な条件が、魔法の発動中に攻撃を受けた場合、または意識が逸れた場合、魔法は解除される。
そして術者は暫くの間、動けなくなる。
つまり、ここで餓者髑髏が攻撃を加え、盟主が動けるようになってしまえば……。
魔法が解除された騎士団長は動けず、餓者髑髏は騎士団長を守りながら盟主と戦わなければならなくなる。
見捨てる、という選択肢もあるが、聖物を完全に解放した騎士団長は貴重な戦力だ。戦況を大きく変えるほどの。
すでに、オレと盟主との戦闘が始まって1時間が経過している。
他の戦闘も片付いているはずだが。
ヤマルやヤマルの兄、ターバ、ペテル・ヴァシクス、アーグ・リリス。
特にターバとアーグ・リリスが来てくれたら、戦力差は大きく開ける。勝ち確というやつだ。
……オレが解放されたら、だけどな。
指一本動かない。頭が重い。……だが、心は軽い。体と心が別物になったようだ。
ああ、そんなことを考えていたら……【魔導士】の登場だ。
上空に現れた人影。黒雲で見え辛いが、確かに人がいる。
間違いなく、【魔導士】アーグ・リリスだ。
その後、何かを唱えたのか、気配が薄まった。
というか、姿が見えない。しかし、気配はある。盟主に攻撃を加える気か?
……完全に気配が消えた。
前、【魔導士】が言っていたっけな。完全に気配を絶つ魔法。消費魔力が半端ないって涼し顔で言われたっけ。
しかし、あの雷の雨の中に行く……いや、伏兵として潜伏するつもりか?
こうなってしまったら、オレも探知することはできない。
あとは【魔導士】に任せよう。
『……! レイハル! そこから離れろ!』
レイハル――騎士団長には聞こえていない。雷の音がうるさすぎるんだ。
『くっ……!』
餓者髑髏が騎士団長に向かって走る。しかし……
「な……あ?」
騎士団長の胸から、炎の槍が生えた。
炎の槍に近づく雨は蒸発する。かなりの高温だ。
騎士団長の防具は……解除されているのか? ……いや違う! オリハルコンごと焼けているのか!
そして、その炎の槍を刺したのは
「アーグ……なぜ……」
「お世話になりました、レイハル殿」
にこり、と微笑むと、炎の槍は爆発した。
どしゃり、と騎士団長が倒れる。
それに合わせ、雷が止む。
盟主の体は煙を上げている。体中が……内部からも焼けている。
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