戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

文字の大きさ
152 / 168
最終章 ~最強の更に先へ~

第136話  神

しおりを挟む

 は……?
 【魔導士】が……騎士団長を刺し殺した?

 その【魔導士】に餓者髑髏《がしゃどくろ》が剣を振り下ろす。が、謎の衝撃波が発生し、餓者髑髏がしゃどくろは吹き飛ばされた。

「久しぶりだな」
「お久しぶりです」
『お前ら……!』

 騎士団長は……死んだな。
 オレの周囲を覆う魔力防御から、電気が消えた。

 だが、依然としてオレの体は動かない。
 
「例のものは……?」
「ああ、覚醒途中だ。一度冷静さを失わせれば覚醒は早まると思うが……」
「なるほど。それでは……」

 そのとき、【魔導士】の体が白く輝きだし、小さく、丸くなった。
 それを盟主は……吸い込んだ。

 ――ドクンッ!

 鼓動が辺りに響く。
 一鼓動ごとに辺りに衝撃が走る。水たまりの水は波紋を立て、泥ごと吹き飛ぶ。
 オレを守る魔法防御がビシビシと音を立て……何度目かの鼓動の後、甲高い音を立てて破裂した。

 鼓動が収まると、盟主の体に変化が起きた。
 黒い髪は茶色く染まり、腰まで伸びた。
 ごつごつの体は柔らかくなり、鉄板のような胸は丸い双丘が溢れ出しそうだ。

 ――性転換。

「――『爆魂ばっこん』」

 女体化した盟主は餓者髑髏がしゃどくろに右手を向けた。
 何が起きるのかを推測した餓者髑髏がしゃどくろはその場から逃げようとするが、足が動かなかった。

『これは……』
魂の上位者・・・・・に逆らえると思わないことです。裏切者は貴方が2人目です。不快です。死んでください」

 その瞬間、餓者髑髏がしゃどくろが石のように固まった。
 微かに、パキ……パキ……と、硬い何かが割れる音がした。
 そして……

 ――バキンッベキ……

 音が大きくなり、音の発生源が明らかになった。――餓者髑髏がしゃどくろだ。
 
 あの炎龍の鱗よりも硬いはずの餓者髑髏がしゃどくろの骨の体に罅が入りだした。
 音は止まらず、罅も広がる。

 そして、最後に大きな音を立てて餓者髑髏がしゃどくろの体が粉々になって弾け飛んだ。

 そして、オレを守る魔法が消えた。雨も止んだ。辺りを陽光が優しく包む。
 まったく優しい場面じゃないんだがな。
 これで餓者髑髏がしゃどくろの死が確定した。

 オレの精神……第二の人格は安定している。
 だが、体の方は怒りで我を失いかけている。まずいな。オレも体に……怒りの渦に取り込まれそうだ。
 精神を強く保たねば……!

 体の麻痺も完全に解けた。
 魔術防御も解除されている。

 ――オレの体は自由だ。

 檻に入っていない獣は何をしでかすかわからない。自分を獣と呼ぶのは変な感じだな。 
 だが、オレでは制御ができないのも事実。所詮、今のオレは疑似人格。
 偽物は本物に敵わないというわけだ。

 少なくとも、この人格だけでも……なんでこの人格が生まれたんだ?
 
「さあ、獣は放たれました! さあ!」

 オレは盟主の姿をどこかで見たことがあった。
 だが、体の方は覚えていたようだ。怒りが爆発し、盟主に向かって駆けだした。

 まずい、冷静さを取り戻させないと!
 ……強いな、オレ。

 脳のリミッターが外れているのか。
 痛みを感じていないのか、関節が可動域いっぱいにまで動けている。
 拳を振り下ろすだけで風が起こり、地面を軽く抉る。

 餓者髑髏がしゃどくろ×騎士団長よりも強いんじゃないか?

 いや、冷静さを取り戻さないと。

 ……あ、思い出した。
 既視感のある今の盟主の姿。

 ――神

 オレを……オレたちをこの世界に送り込んだ……拉致した存在。
 この力を与えてくれたのは感謝している。感謝したことはないがな。
 しかし、向こうで天命を全うできなかった。オレは10歳半ばだった。
 
 澄川蓮は死に、ライン・ルルクスとして生まれ変わった。
 合計年齢は30半ば、か……。いい年齢だ。

 神に対し、特に感情は抱いていない。
 久しぶりに再会した同級生のような感覚だ。

 だが、神は……駿が殺したはずだ。
 なぜ……いや、元はミル・デイルという……オレの同級生だった。

「――『爆魂ばっこん』……やはり効きませんか」

 先ほど餓者髑髏がしゃどくろを殺した魔法を放つが、ノーダメージだった。

 まずい……駿の情報じゃ、神は【魂】の器の所持者。
 こいつが本物かどうかは、今考えることじゃない。が、神と判断して行動する。

 戻れ戻れ戻れ……!

「戻れ! ……あ?」

 戻っ……たぁあああああっ!
 リミッターも戻ったぁああああ……。
 だが、強くなった!

「条件を満たしましたか……なのに、覚醒はしていない? どういうことですか?」
「さあ、オレが知るか」

 ……知っている。
 今は準備期間だ。オレの器は【知】。

 叡智をインストール中というわけだ。

「……お前は、しゅ……かつて【最強】シドーが倒した神、で間違いないな?」
「ええ、あの魔王の意志と共に私を殺してくれたあの【神兵】ですね」

 ……【神兵】。オレたち転生者の別名。最も、神が勝手にそう呼んでいるだけだが。
 魔王の意志と駿が、共に神を殺したという話を出してきたということは……神本人の可能性が高い。
 
 となると、魔王同様の残存意志……ではない?
 死ぬ寸前になんらかの方法で魂だけを逃がし、今こうしてミルに宿っているというわけか?
 問題は、神が未だに【魂】の器を所持しているのかどうか。

 器があるのとないのとじゃ、身体能力も手数も大きく異なる。
 器を持っているとすれば……いや、こいつは持っていない。

 そもそも神の……盟主の目的は【魔】への復讐。
 最初は盟主が世界征服のため、より強くなろうとしてオレの神器を奪おうとしているのだと思っていた。
 しかし、盟主は神だった。

 神は異様なまでに魔王に……【魔】を殺すことに固執していたらしい。
 しかし、神は【魔】を受け継いだ駿に殺された。その復讐を考えているとすれば、これまでの言動すべてに納得がいく。
 オレの神器を……力を奪い、【魔】を滅ぼす。

 盟主が【魂】の神器を所持していたら、駿の話にあった通りの強力な軍団を作り上げていただろう。
 しかし、力を与えられていたのは【六道】と各隊長と一部の魔物のみだった。与えられた力も大したものではなかった。
 駿の話よりも全体的に規模スケールが小さい。

「貴方はやはり、シドーと接触したのですね。貴方も転生者ですか?」
「ああそうだ! お前に拉致された転生者の1人だ」
「なぜ転生者が7つあるうちの2つを……やはり、異界からの召喚は予測不能の事態を引き起こす……残りの転生者も順次始末するとしましょう」

 神は手の中に炎を生み出した。

 そうだ、こいつは今、【緻密な魔力操作】の加護を持っているんだ。
 器の所持者が別の器の加護を持つなんてことはあり得ない。つまり、神は器を持っていない。

「お前はさっき、【魔導士】を取り込んだよな?」
「ええ、あれはもう1人の私です。魔物連合盟主と【魔導士】の力が1:1になるように分配していました。再び1つに纏まっただけです」

 そうか……。【魔導士】は裏切ったわけではなく、初めから魔物連合側の存在だったんだな。
 たしかに、こいつの喋り方と【魔導士】の喋り方は一緒だ。
 となると、【魔導士】の【全属性理解】の正体は盟主の【緻密な魔力操作】だったというわけだ。
 
 【魔導士】にできた魔法はすべて使えるとみていい。使えない道理がないか。

「では、戦闘を再開しましょう。――『煉獄領域展開』」

 神の右手の炎が弾け、オレたちを覆うように炎の壁が出現した。
 水晶も溶かされそうだ。長時間、あの炎の中に入れておけば、だが。

「――『火炎魔人イフリート』」
「――『晶弾・龍』」

 水晶と炎が激突し、相殺される。
 やはり、駿の下位互換。所詮は借り物。

 水晶1つ1つが、依然とは比べ物にならない威力を持っている。
 これ1発で人間1人殺せる。魔物連合の隊長でも一撃で殺せそうだ。

「なかなか楽しめそうですね」
「……なあ、お前は結局なんなんだ?」
「それを知る必要はありません。死んで、私に器をよこしなさい」

 


 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...