154 / 168
最終章 ~最強の更に先へ~
第138話 遠方より
しおりを挟む「終わりです。――『赫輝』」
拳を振り上げたオレの目の前で紅い光が輝き……
――辺りを破壊し尽くした。
土は焦土と化し、最高硬度金属すら消し去った。
それを間近で……ん? オレの思考が消し飛んでいない?
見ると、胸元に周辺の炎が集まっている。
熱で服が少し破れ、胸元のペンダントが顔を覗かせる。
これが炎を吸い込んでいるのか。
間近で受けたおかげで、神の放った炎のほとんどを吸収しているようだ。
炎に照らされ、金色のペンダントが赤く輝いている。
炎龍と戦っていたときもそうだが、炎系魔法が予想より熱くないなと思っていたんだが……。
これが炎を吸い込んでいてくれたのか。
火は四大元素の中でも、特に破壊力が高い属性だ。
それをカバーしてくれるのはありがたい。ちょっと熱いけど。
ペンダントが炎に照らされて赤く輝いているのかと思ったが……。
炎を吸収して色が変わっているようだ。今はほとんど赤くなっている。
「なんですか、それは。不快な気配がしますね。……炎を吸収しているのですか。まさか、この私の最大の一撃をも吸収するとは……」
「お前がいくら炎の魔法を放ったところで、オレには効かないというわけだ」
「いえ、それは違います。炎魔法のすべてを吸収するものではないでしょう。9割ほどでしょうか?」
服が焼けたのを見られていたのか。
まあ、炎魔法は何度も受けたしな。炎龍、盟主、神。炎魔法が多すぎる。駿もそうだ。
「1割程度、0同様だ」
「元の値が10000なら、その1割は100ですよ」
「オレの許容値は1000かもしれないぞ」
「なるほど。ですが、貴方に完全なる無力化は不可能でしょう」
ふむ。会話は平行線だ。
これ以上の会話は無意味だな。
「厄介なのは確かなので、その不快なペンダントから始末しましょう。――『炎拡大爆発』」
僅かな炎を大爆発させる、炎龍も使用していた魔法だ。
しかし、神のはもう少し上位の効果があった。
辺りの上昇した空気……熱量が上昇し、自然発火が起こった。
まるでサウナ状態だ。
そして、自然発火で起こった炎がオレの服に引火し、それが更に爆発する。
それらの炎は駿から貰ったペンダントが吸い込んでくれるが……。
そろそろ容量もいっぱいだ。
さっきの『赫輝』でかなりの用量が食われた。
容量を越えたらどうなるんだろうな。
爆発? 元も子もないな、そうなったら。
まあ、駿がそんな欠陥品を渡してくるとは思えないけどな。
大方、それ以上吸い込まないとか。
駿の作ったものなら、吸収したものすべてを攻撃として解放して容量を開けるとかできてもおかしくないな。
「ふぅむ……容量を超えたらどうなるのか見てみたいところではありますが……。そろそろ覚醒してもらわないと困りますね」
「うぅむ……。覚醒できるんだったらとっくにやってるんだが。時間が掛かるものだ」
さっきから神器の本に莫大な情報が書き込まれているのがわかる。
ペンダントの吸収したエネルギーが微量ではあるが使われているため、オレへの影響はない。
……ここまで見越していたのか、駿のやつ? いる次元(?)が違うから聞けないけど。
「やれやれ……手のかかる」
そう言われてもな……。
頭の片隅で色んな人の顔がちらついては消えていく。この世界の住人だろうなぁ。
その人の人生も情報として? 神の生涯もインストールしているかもな。駿も。
ああ、他の転生者がどんな人生を送ったのか、送っているのかがわかるかもな。
「――『炎』」
神は両手の中に炎を生成し、オレに手を向けた。
炎は一気に広がり、オレを包みこむ。
が、それすらペンダントが吸収する。
容量がいっぱいになった瞬間、目に見えてエネルギーが神器に移った。
神の目には見えていないだろうがな。
容量が3割ほど減ったところで、エネルギーの移譲が止まった。
これ以上は不要のようだ。3割って、かなりのエネルギーなんだがな。
炎龍との戦闘でも吸収量は1割にも満たなかった。
神の『赫輝』で容量を8割超ほど埋め尽くした。
神の『赫輝』はオレでも、ペンダントがなければ蒸発していただろうな。
最高硬度を誇るオリハルコンすら溶かした魔法だ。おかげで辺り一面、オリハルコンの地面だ。
……これは操れるのか?
魔力を注ぐが……受け付けない。神は操れるのか?
ところどころ、魔力が溢れてミスリル化している。
「まだまだ行きますよ?」
神の手から『炎』がどんどん生み出され続ける。
神の加護により、その熱量は極限にまで高められている。
ペンダントが余りなく吸収してくれているため、オレは熱くも痒くもないんだが……。
炎龍のときは攻撃の半分も吸収してくれなかったけどな。このときのために容量が開けておいてくれてよかった。
一体、駿はどこまで未来を見据えていたんだ?
そして、遂に容量がいっぱいになり……炎の吸収が止んだ。
「おやおや。もういっぱいになりましたか。さて、これ以上はどうなるんですかね? ――『赫輝』」
構成に時間が掛かるはずの『赫輝』。
オレに『炎』を放ち続けながら片手間で練っていたのか?
まずい、たったの一撃でペンダントの容量の半分以上を埋め尽くす魔法。これ以上はどう足掻いても吸収できない。
避け……られない。
オレの持てる防御術は何も意味はなさないだろう。オリハルコンを溶かす時点で、な。
『やれやれ……。やはりこれを使用する事態になったか。……すまない』
耳元で誰かの……いや、この声をオレは知っている。――駿の声がした。
すまない……駿は神の存在を認知していたということか? いやいや、今はそれはどうでもいいことだ。
赫い光がすぐ目の前に迫った。
光が先に来るが、熱はまだ来ない。ああ、攻撃前に熱は来ないんだったな。
そのとき、ペンダントがオレの首から外れ、オレを守るように漂う。
そして、炎がペンダントを包んだそのとき――
――炎がペンダントを中心に渦巻き、ペンダントに吸い込まれた。
それだけでは終わらない。
ペンダントから炎が吹き荒れ、炎の竜巻を作り出した。
「ほう……。それは貴方のものでも、この時代の物でもありませんね。その不快な気配……寺島駿のものですね」
オレは何も返さない。
神は確信を持って言っている。
それを否定するのは無駄だ。まあ……事実だし。
炎の渦がやがて収束し、人型を形成した。
こんな魔法多いな。集まって人型を成す魔法。
いずれも強いんだけどな。最近の盟主(神)とか【魔導士】(神)のは意思すら持っている気がするから厄介だ。
が、それが今、オレの味方として現れようとしている。
それに、生成主は【魔】の所持者である駿だ。最高峰の人型魔法ができるだろう。
『神……。お前を滅ぼしきれなかった責任はすべて俺にある』
炎の中から駿の声がした。
え……駿が来るの? ため込んだエネルギーを媒介に、駿をこの世界に呼び込むと?
――駿はこの世界から外れた存在。
それをこの世界に呼ぶのは……確かに大量のエネルギーを必要とするだろう。
そして、ペンダントにため込まれた炎がすべて解放され……。
炎が凝縮し、人型の密度が更に大きくなる。
赤い体は紅く、赫く……。
『久しぶりだな、神……いや、アルだったか?』
「……っ。貴方にその名を呼ばれる筋合いはありません! その名は捨てた名です。この世に存在しない名です」
『そうか。どうでもいいな。レィン、行くぞ』
「おう!」
その人型の炎には駿の意思が乗り移っているようだ。
オレを蓮と知っているのは駿だけだ。
連……レイン……ライン。
小声でレィンと呼ぶことで、オレには蓮ともラインとも取れる。
神にはラインと取れたことだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる