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最終章 ~最強の更に先へ~
第138話 遠方より
しおりを挟む「終わりです。――『赫輝』」
拳を振り上げたオレの目の前で紅い光が輝き……
――辺りを破壊し尽くした。
土は焦土と化し、最高硬度金属すら消し去った。
それを間近で……ん? オレの思考が消し飛んでいない?
見ると、胸元に周辺の炎が集まっている。
熱で服が少し破れ、胸元のペンダントが顔を覗かせる。
これが炎を吸い込んでいるのか。
間近で受けたおかげで、神の放った炎のほとんどを吸収しているようだ。
炎に照らされ、金色のペンダントが赤く輝いている。
炎龍と戦っていたときもそうだが、炎系魔法が予想より熱くないなと思っていたんだが……。
これが炎を吸い込んでいてくれたのか。
火は四大元素の中でも、特に破壊力が高い属性だ。
それをカバーしてくれるのはありがたい。ちょっと熱いけど。
ペンダントが炎に照らされて赤く輝いているのかと思ったが……。
炎を吸収して色が変わっているようだ。今はほとんど赤くなっている。
「なんですか、それは。不快な気配がしますね。……炎を吸収しているのですか。まさか、この私の最大の一撃をも吸収するとは……」
「お前がいくら炎の魔法を放ったところで、オレには効かないというわけだ」
「いえ、それは違います。炎魔法のすべてを吸収するものではないでしょう。9割ほどでしょうか?」
服が焼けたのを見られていたのか。
まあ、炎魔法は何度も受けたしな。炎龍、盟主、神。炎魔法が多すぎる。駿もそうだ。
「1割程度、0同様だ」
「元の値が10000なら、その1割は100ですよ」
「オレの許容値は1000かもしれないぞ」
「なるほど。ですが、貴方に完全なる無力化は不可能でしょう」
ふむ。会話は平行線だ。
これ以上の会話は無意味だな。
「厄介なのは確かなので、その不快なペンダントから始末しましょう。――『炎拡大爆発』」
僅かな炎を大爆発させる、炎龍も使用していた魔法だ。
しかし、神のはもう少し上位の効果があった。
辺りの上昇した空気……熱量が上昇し、自然発火が起こった。
まるでサウナ状態だ。
そして、自然発火で起こった炎がオレの服に引火し、それが更に爆発する。
それらの炎は駿から貰ったペンダントが吸い込んでくれるが……。
そろそろ容量もいっぱいだ。
さっきの『赫輝』でかなりの用量が食われた。
容量を越えたらどうなるんだろうな。
爆発? 元も子もないな、そうなったら。
まあ、駿がそんな欠陥品を渡してくるとは思えないけどな。
大方、それ以上吸い込まないとか。
駿の作ったものなら、吸収したものすべてを攻撃として解放して容量を開けるとかできてもおかしくないな。
「ふぅむ……容量を超えたらどうなるのか見てみたいところではありますが……。そろそろ覚醒してもらわないと困りますね」
「うぅむ……。覚醒できるんだったらとっくにやってるんだが。時間が掛かるものだ」
さっきから神器の本に莫大な情報が書き込まれているのがわかる。
ペンダントの吸収したエネルギーが微量ではあるが使われているため、オレへの影響はない。
……ここまで見越していたのか、駿のやつ? いる次元(?)が違うから聞けないけど。
「やれやれ……手のかかる」
そう言われてもな……。
頭の片隅で色んな人の顔がちらついては消えていく。この世界の住人だろうなぁ。
その人の人生も情報として? 神の生涯もインストールしているかもな。駿も。
ああ、他の転生者がどんな人生を送ったのか、送っているのかがわかるかもな。
「――『炎』」
神は両手の中に炎を生成し、オレに手を向けた。
炎は一気に広がり、オレを包みこむ。
が、それすらペンダントが吸収する。
容量がいっぱいになった瞬間、目に見えてエネルギーが神器に移った。
神の目には見えていないだろうがな。
容量が3割ほど減ったところで、エネルギーの移譲が止まった。
これ以上は不要のようだ。3割って、かなりのエネルギーなんだがな。
炎龍との戦闘でも吸収量は1割にも満たなかった。
神の『赫輝』で容量を8割超ほど埋め尽くした。
神の『赫輝』はオレでも、ペンダントがなければ蒸発していただろうな。
最高硬度を誇るオリハルコンすら溶かした魔法だ。おかげで辺り一面、オリハルコンの地面だ。
……これは操れるのか?
魔力を注ぐが……受け付けない。神は操れるのか?
ところどころ、魔力が溢れてミスリル化している。
「まだまだ行きますよ?」
神の手から『炎』がどんどん生み出され続ける。
神の加護により、その熱量は極限にまで高められている。
ペンダントが余りなく吸収してくれているため、オレは熱くも痒くもないんだが……。
炎龍のときは攻撃の半分も吸収してくれなかったけどな。このときのために容量が開けておいてくれてよかった。
一体、駿はどこまで未来を見据えていたんだ?
そして、遂に容量がいっぱいになり……炎の吸収が止んだ。
「おやおや。もういっぱいになりましたか。さて、これ以上はどうなるんですかね? ――『赫輝』」
構成に時間が掛かるはずの『赫輝』。
オレに『炎』を放ち続けながら片手間で練っていたのか?
まずい、たったの一撃でペンダントの容量の半分以上を埋め尽くす魔法。これ以上はどう足掻いても吸収できない。
避け……られない。
オレの持てる防御術は何も意味はなさないだろう。オリハルコンを溶かす時点で、な。
『やれやれ……。やはりこれを使用する事態になったか。……すまない』
耳元で誰かの……いや、この声をオレは知っている。――駿の声がした。
すまない……駿は神の存在を認知していたということか? いやいや、今はそれはどうでもいいことだ。
赫い光がすぐ目の前に迫った。
光が先に来るが、熱はまだ来ない。ああ、攻撃前に熱は来ないんだったな。
そのとき、ペンダントがオレの首から外れ、オレを守るように漂う。
そして、炎がペンダントを包んだそのとき――
――炎がペンダントを中心に渦巻き、ペンダントに吸い込まれた。
それだけでは終わらない。
ペンダントから炎が吹き荒れ、炎の竜巻を作り出した。
「ほう……。それは貴方のものでも、この時代の物でもありませんね。その不快な気配……寺島駿のものですね」
オレは何も返さない。
神は確信を持って言っている。
それを否定するのは無駄だ。まあ……事実だし。
炎の渦がやがて収束し、人型を形成した。
こんな魔法多いな。集まって人型を成す魔法。
いずれも強いんだけどな。最近の盟主(神)とか【魔導士】(神)のは意思すら持っている気がするから厄介だ。
が、それが今、オレの味方として現れようとしている。
それに、生成主は【魔】の所持者である駿だ。最高峰の人型魔法ができるだろう。
『神……。お前を滅ぼしきれなかった責任はすべて俺にある』
炎の中から駿の声がした。
え……駿が来るの? ため込んだエネルギーを媒介に、駿をこの世界に呼び込むと?
――駿はこの世界から外れた存在。
それをこの世界に呼ぶのは……確かに大量のエネルギーを必要とするだろう。
そして、ペンダントにため込まれた炎がすべて解放され……。
炎が凝縮し、人型の密度が更に大きくなる。
赤い体は紅く、赫く……。
『久しぶりだな、神……いや、アルだったか?』
「……っ。貴方にその名を呼ばれる筋合いはありません! その名は捨てた名です。この世に存在しない名です」
『そうか。どうでもいいな。レィン、行くぞ』
「おう!」
その人型の炎には駿の意思が乗り移っているようだ。
オレを蓮と知っているのは駿だけだ。
連……レイン……ライン。
小声でレィンと呼ぶことで、オレには蓮ともラインとも取れる。
神にはラインと取れたことだろう。
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