戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第146話  水晶怪物と不死身勇者と魔性の王③

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 水素爆発を引き起こし、神の立っていた場所に、更に追撃を仕掛ける。

 傍から――前世の人間の価値観から見れば、この状況はまさにカオスだろうな。

 水晶に全身を覆われた怪物と、炎と水と電気を纏った白髪紅眼の派手な男2人が、神聖な空気を纏う女を容赦なく攻撃しているのだから。
 おまけに、この戦いは間違いなく、有史以降最大規模の戦いだ。

 だが、勘違いしないでほしい。
 オレたちが攻撃しているのは、魔王――魔性の王だ。聖女のような見た目とは裏腹に、な。

 生命反応は……相変わらずある。
 さっさとくたばってくれればありがたいのに。
 まあ、これで死ねば呆気ない……いや、水素爆発の威力はとてつもないものだった。死んでもおかしくないか。

 神はどうなっている?
 あそこにいるのは確かだ。

「ターバ、一度攻撃を止めよう」
「ん、おう」

 嫌な予感がしたため、攻撃を止めた。
 これだけ攻撃して、死ぬ……までは行かずとも、姿を現さないのはおかしい。



 そして、煙が晴れる。 

「なるほど、そういうことか……っ!」

 神は、その場に立っていた。
 神はオレたちの攻撃をほとんど無効化していた。

「あれは……なんだ?」

 ターバの声が震えている。
 オレの目には……それの正体がありありと浮かんでいた。

「……『犠牲サクリファイス』で左腕を犠牲に、魔法関連能力を限界突破。そして、『霧化』で物理ダメージを無効化。更に『排除リジェクト』の効果も大幅に上昇させ、魔法ダメージも大幅に減少させた。……ということか」

 繰り返し、細かくまとめよう。

 まず、基盤となった『犠牲サクリファイス』。
 これは一般魔法で、魔力だけでなく、身体ダメージも代償にする。
 だが、加護持ちでも制御できず、生命ごと消滅する。その代償として、辺りの生命を跡形もなく消滅させる。
 おまけに、上手く制御できても、超強化は時間制限付きだ。
 
 だが神は、それをコントロールし、身体的犠牲は左腕だけ。消費魔力も上手くコントロールしたようだ。
 そして、得たエネルギーで魔法関連能力を大幅上昇。

 攻撃関連能力はゲーム風に言うなら、攻撃力、クリティカル確率・ダメージが主。ゲームによっては、他のサブステータスも存在する。
 魔法関連は……魔法攻撃力、魔法防御力、魔法技術力……といったところか?

 そして、『霧化』で自分の体を霧とする。……原理はよくわからない。科学の世界で生きる人間の頭がオーバーヒートすること間違いなし。
 自分の体を粒子……もしくは、原子レベルにまで分解しているのか。
 それとも、霊体となっているのか。
 ともかく、物理ダメージを一定期間無効化させる魔法であることは間違いない。対抗策は魔法のみ。

 更に常時展開されている『排除リジェクト』が『犠牲サクリファイス』で超強化され、魔法ダメージを大幅に減少させる。



 まだ効果は続いている。
 物理も魔法も効かない。さて、どうしたものかね。

 妨害魔法も、所詮は魔法。『排除リジェクト』は神を守るように展開されているからな。
 あらゆる魔法を無効化する。

「ライン、どうする? 無理やり突破できる方法は?」
「――ない」
「どうする?」
「効果が切れるのを待とう」

 オレは神の『排除リジェクト』が展開されている領域に沿って水晶の殻を生成する。
 その殻の周りに、『晶装・槍』を展開する。
 それに倣い、ターバも炎、水、雷の槍を生成する。




 少しして、霧が集まりだした。
 なんとなく、人型を形成しようとしているのが見える。
 
 そして、人型が形成されようとしたそのとき

 ――バァァァアアアアアアアアアンンン…………

 と、音を立てて、神が爆発した。
 だが、音の波はオレとターバの展開していた魔法を強引に打ち消した。
 オレたちの方には音しか届いていない。

「どこに……」
「――ターバ、後ろだ!!」

 ターバの後ろに冷たい光をその両目に宿した神が回り込んでいた。
 武器は持っていないが、手刀に炎を宿していた。

 オレの眼が、その炎の特性を見抜く。

 炎の威力は控えめだが、範囲を対象(個人)に限定される。
 だが、対象を燃やし尽くすまで消えない。火力は控えめとは言え、ターバの再生速度を上回るだけの火力は有しているはずだ。
 ターバは加護の効果で常に傷が癒え続けるから……相性は最悪。常に再生するターバの天敵は、途切れない攻撃。

「問題ない!」

 ターバの体が一瞬、蒼く輝いた。
 その直後、神の後ろにターバが回り込んでいた。

 ターバが両手の剣を振り下ろした。
 神はギリギリのタイミングでターバの攻撃を防ぐが、弾き飛ばされた。

 神は、別にパワーアップしたわけではない。
 それどころか、わずかに弱体化したようだ。魔力の使い過ぎだ。自動回復が追い付いていない。

「――『雷帝』 ――『水帝』 ――『炎帝』」

 どれも、属性の身体強化魔法の最上位だ。
 しかし、それらは反発する。しかし……

「――『雷水炎帝らいすいえんてい』」

 無理やり抑え込む。
 もちろん、無理やり抑え込むことは可能だ。

 しかし、その代償として、ターバの体は崩壊する。
 それも加護が癒すんだけど。ターバじゃないとできない荒業だな。回復魔法を常時展開できていれば、誰でもできそうだが。
 回復魔法は適性がないとできない。神は適性がなかったようだな。

 四大元素とかの元素とは別のルート。起源から違っている。駿なら使える。

「――『聖物融合分解』」

 ターバは聖物を交差させる。
 すると、雷の聖物は雷を。水の聖物は水を、その刀身に纏わりつかせた。
 そして、その刀身が輪郭を失い、互いに溶け合う。

 その瞬間、ターバの肩に餓者髑髏がしゃどくろと騎士団長の幻覚が見えた気がした。
 見間違い……

 ――え?
 違う? ん? 本物……モノホン? パチモン……いや、幻覚じゃなく?
 いや、異世界モノの漫画とか小説なら、たしかにこういう幻覚が出てくる演出がある。あった方がかっこいいしな?

 それが目の前で起きている。確かに、心躍るよ。小躍りしたいよ。
 でもさ。
 なんで幻覚じゃないんだよ。

 2人の残留思念だ。
 ……いや、漫画や小説のアレも残留思念だった可能性もある。

 ごめん。本当のことを言う。
 残留思念っていうより、もうはっきり言えば、お化け――幽霊だ。

 幽霊は魂を核に、相手に見えるように疑似的に体を作ったものだ。

 非科学的に感じるが、それは科学世界での経験がそう、感じさせているだけだ。
 幽霊は不可視を可視にするもの。その際、何かしらのエネルギーを媒介にする。エネルギーは消費しない。
 言わば、幽霊はエネルギー体……純粋なエネルギーそのものだ。

 前世では、電気エネルギーを媒体にしていた。
 だが、空気中……自然にある電気エネルギーは、幽霊が媒体にするには少なすぎる。
 だからこそ、姿を現わせる幽霊は少なかった。
 また、強すぎる念がエネルギーと化し、物理に干渉できる者も少なくなかった。

 話を戻すが、この世界には魔力エネルギーが溢れている。
 そのため、比較的に幽霊が姿を現わしやすい。しかし、幽霊の目撃情報は詳しく調べなければ出てこない。
 その理由は、この世界には幽霊という概念が存在しないためだ。

 それに、この世界の命は軽い。死が近いところにあるせいだ。



 それで、話を本流に戻そう。
 二つの金と蒼の聖物は混ざり合い、金と蒼が混ざり合った剣が二本、生成された。

 これで、本当に・・・二つの聖物の力が掛け算された。
 ターバの手甲ガントレットにも、金色と蒼色が混ざっている。

 ターバの切り札だろう。
 だが、巨大な力を有する異なる二つの物を掛け合わせているんだ。時間制限がある。
 見た感じ……3時間ってところか? 結構長いな。ターバが寿命を削った結果だ。

「ぬるい!」
「こちらのセリフだ!」

 再び後ろに回った神の背後にオレが回り込み、神の後頭部目掛け、棍を突く。
 ターバは体を180度回転させ、神の腹部に蹴りを加えた。
 
 
 
 
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