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最終章 ~最強の更に先へ~
第145話 水晶怪物と不死身勇者と魔性の王②
しおりを挟むさて、どうしたものか。
現状、強さの序列は
オレ=ターバ=神
まあ、そこまで細かく計っているわけではないから、一概にそうとは言えない。
それに、戦闘において、この計算式は意味がない。
数値だけで考えれば、オレとターバのが優勢のはずだが……。
オレが――もしくはターバが――少し強くなって、手数と目が増えただけのようなものだ。
数の面では、大きな差がないと、戦闘力に影響しない。
「ターバ、雷の魔法を火の魔法を撃ち続けてくれ」
「……? 了解」
ターバを追い越し際にそう告げると、オレは神に刀を収めたまま、駆けて行った。
そして、刀に手をかけ
――抜刀
神は避けた。
しかし、鮮血が舞った。
「なっ!?」
神は確実に、オレの刀の間合いの外に逃げた。
神の目の下に切り傷が入っていた。すぐに血は止まるが、傷口は塞がらない。持久戦では向こうの方が有利だろう。
血が止まるのは、外部から取り込んだエネルギーでななく、内から発生するエネルギーによるものだ。
そして、オレが間合いの外の神を斬ることができた要因だが。
オレの刀の先に、水晶の針が伸びている。
さすがに神の周囲には常に『排除』が展開されているため、生半可な魔法は分解される。
だから、極限に練り上げ、視認されにくい針を作った。それに、納刀していたため、どっちにしろ視認されない。
おそらく、斬られた今でも神は気づいてないだろうな。
そして、オレは刀を返し、再び斬りかかった。
大きく後ろに跳んだ神には、オレの攻撃は当たらなかった。
ま、オレ1人じゃないわけで。
おまけに、味方はオレと――前世を含めて――最も長い付き合いの神友。
熟年夫婦のような意思疎通が可能だ。
オレは結局、恋人ができなかったな。強いて言えば、戦闘が恋人だろうか。
ああ、ダメだ。
本当に【戦闘狂】になってる。
ターバ。この戦いが終わったら、恋人を作って幸せになりなよ……。
オレは姿を隠して活動してきた。おかげで、他人との関わりが薄かった。
まあいいさ。
オレはいろんな人の人生を追体験してきた。いろいろとな。
後ろに跳んだ神に、轟雷が落ちる。
引き続き、炎の雨が降り注ぐ。
煙が晴れると、そこには紅色の半球体があった。
半球体は頂点から線が走り、色が紅から漆黒へと変化した。
半球体は線から斬られ、花が咲くように開いた。
「――『鉄触手』 一般的なこの魔法でも、私が少し弄れば、電気だけでなく、炎まで吸収するのですよ。水でも傷つきませんよ」
神は無傷だった。
雷から防いでいたのだろう。
「――『晶装・剣』」
オレは水晶の剣を生成し、神に飛ばした。
「――『排除』」
神はオレの魔法に干渉、削除した。――だが甘い!
ほとんどは、確かに分解されるかされないかのギリギリの練度で生成した。
それで神は若干油断した。
剣の中に……剣の芯に超凝縮させた水晶の針を仕込んだ。
神が魔法を『排除』したとき、水晶が爆ぜた。神が完全に消し去ることができなかったためだ。
魔法構成の一部を破壊すれば、そうなる。
その破片に隠され、小指の先ほどしかないその針に、神は気が付かなかった。
「…………は?」
残念。右鎖骨を貫通したか。
左で……もう少し下だったら心臓を貫いたのに。
女の尊厳? 知らん。神は女として見ていない。神は神。それ以上でもそれ以下でもない。
神の鎖骨はくっきりしていた。
だから……自分でやっておいて何だが……うん、グロい。バキバキに折れた鎖骨が肌を突き破っている。
高速で貫いたため、骨が細かく割れた。小さな骨の欠片が肌をところどころ突き破っている状態だ。グロイ。
「何を?」
「穴は多いようだな、お前の能力も」
ターバは神の背後に回り込み、炎を纏ったその剣で斬りかかる。
しかし、鉄の触手が邪魔をする。
2本は溶け、先端が落ちたが、3本目は溶けながらも剣の軌道を変えてきた。
ターバは神から距離を取り、両手の剣を神に向け、切っ先に魔力を集中させる。
「「――『水突』」」
神とターバが同時に、水の貫通魔法を放つ。
その質量は圧倒的で、人の体などいとも簡単に貫くだろう。
2人の魔法が激突し、辺りに水しぶきが舞う。
その威力、スピードは凄まじく、ほとんどが水蒸気となっていた。
順序が逆だ。
……まだだ。……いや、行ける!
「――『晶檻』」
神を囲うように檻を作り出す。
水晶の棒と天井は、神の『排除』でもすぐには破壊できまい。魔法を放っても、ダメージの数割は必ず神に返る。
「――今だ!」
ターバは先ほど拾い上げた鉄に熱を送り込み、柔らかくなる寸前で止めた。
そして……――投擲
熱せられた鉄は寸分違わずに檻の中へ入り……
――大爆発を引き起こした。
狙い通り!!
オレと駿……転生者の武器。それは――科学知識。
科学知識の量は膨大で、誰が何を知っているかは偏りが大きい。
科学でも医学、生物学、化学、物理学……etcと、大きく別れる。
その中で、その現象の名は多く知られているが、原理については間違った知識を得ている者が大半だ。
――水素爆発
大半は、水蒸気爆発と混合させている。
水素爆発は簡単に言うと、大量に水素が存在する中に火を放り込むと起こる爆発のことだ。
今起きた状況的には水蒸気爆発に近いが、実際には水素爆発だ。
マッチが熱せられた鉄だ。
ターバが魔力をコントロールし、熱を鉄の内部に押し込めた。
そして神の近くで熱を爆発させ…………水素爆発が起こった。
綺麗に事が進んだ。もちろん、事前に打ち合わせをしていたおかげだ。
戦闘中ではない。
戦闘前の準備期間に、ターバと話したことがある。魔法ではないが、ターバは魔法モドキを扱えるようになっていた。
切り札になるかも、と思い、教えていた。【魔導士】には教えていなかった。
いれば教えていただろうが、ちょくちょく姿を消していた。
広範囲かつ高威力の魔法を練習するため、人里離れた場所で鍛錬を積む、と聞いていた。
今思えば、神として活動していたのかもな。…………していたようだ。【知】で確認した。
水素爆発だが、その余波はすさまじい。
おそらくその威力は、前世の世界でも、1割も再現できないだろう。
空気はいまだにビリビリ。
余波すら多量の魔力を有している。神が咄嗟に発動させた防御魔法の残骸だろう。
残念だが、水素爆発は物理――魔法と魔法の混合による副次効果として生まれたもの――だ。
水晶の檻は、水素爆発が起こる直前まで、破壊された気配はなかった。
檻は、全方位を隈なく囲っていた。逃げ場はなかったと、断言できる。
ただ、唯一……あるとすれば。
――爆風に合わせ、身を任せて飛んだ。
爆発の風が檻を破壊するため、少し遅らせて風に身を任せれば、受けるダメージは最低限に抑えることができるだろう。理論値では。
その最低限度のダメージでも、かなり……オレの『隕晶』を素っ裸――ノー防御で受けるのと同等か、それ以上だ。
「どうだろうか、ライン?」
ターバが近づいてきた。
「合格だ。ただ、二度目は通用しないと考えておいた方が良さそうだな」
「おう、そうだな。で、神は……?」
「生体反応はある。けど、あるだけだ。生きているか、死んでいるかのどちらかしかわからない」
「念の為、魔法を展開しておくか?」
「そうだな。時間稼ぎになるような魔法でいい。威力重視ではなく」
「了解!」
ターバは雷、水、炎をそれぞれ筒状に固め、多重展開した。
それに合わせ、オレも『晶弾』を展開する。
蟻1匹……ハエ1匹逃げられないだろうな。
いいや、逃がすつもりはない。
そのとき、ガラガラッ……と音が鳴った。
オリハルコンが割れたか。
音が鳴った方に合わせ、オレたちは展開させていた魔法を発射させる。
ターバの炎と雷の魔法は、何かに当たった瞬間、弾ける。仮に、狙いが少し外れていても問題ない。
オレたちの追撃が、神の立っていた辺りを破壊し尽くす。
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