戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月

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最終章 ~最強の更に先へ~

第144話  水晶怪物と不死身勇者と魔性の王

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「――『晶怪人』」

 オレの周りに水晶の粒が浮かび上がる。
 
 オリハルコンの地面の感触は、まるでショッピングモールの床だ。人工の床の感触って言えばいいか。
 駿がオリハルコンを施錠ロックしていった。駿本体の魔力で、だ。これで消えることはない。

 水晶の粒がオレの体に付き、オレは体中に『晶皮しょうひ』を発動する。
 そして、水晶とオレの体が徐々に一体化し……。

 オレは水晶の怪物となった。……ダサいな。決めてみたが、マジでダサい。口にしなくてよかった……。

 全身が硬い水晶に覆われている。肌が見えている個所は一切ない。
 だが、行動に一切、支障はない。オレの動きに合わせて水晶も動くからだ。

「ふふ……。2人揃って化け物のような見た目になってくれるとは……。それでは、私は化け物を滅した英雄神ですかね」
「――馬鹿か。お前は化け物に殺される悪魔の役割ロールだ」

 オレは水晶の化け物。
 ターバは炎と水と雷を纏っている。化け物と言われればそうだが、どちらかと言うと英雄……勇者だ。

 神は……聖者っぽい見た目なんだが、ポジションは魔王だ。
 もちろん、魔法の王ではなく、魔性の王だ。皇……のがいいかな? 魔皇まおう

 こいつの計画は、数千年もの間続いている。こいつの最初の記憶は……軽く2000年前だ。
 そして、20歳過ぎに器が覚醒し、先人であった、当時小国の国家元首だった魔王のもとを訪ねた。
 魔王は器の効果で年を取らなくなっており、表には出てこなかった。そこを突くと、簡単に会えたらしい。
 そして数百年後に魔王と(一方的に)決別し、その457年後に終止符を打たれた。……はずだった。

 そこから……大体1000年――現在いまか。
 
 こいつの野望は2000年も潰えず、燃え続けてきたのか。
 大したものだ。

 オレは2017年にこちらへ転生させられた。
 その2000年前――紀元17年。どの時代だ? 弥生時代。
 紀元0年って、キリストが生まれた年だったよな? ってことはキリストが17歳のときか。

 残念ながら、向こうの世界のことまではわからない・・・・・
 どうも、叡智とはこの世界での叡智・・・・・・・・のようだ。

 つまり、キリスト17歳からオレたちが中学3年になるまで。
 弥生時代から平成まで。

 うわーー。
 引くわぁ。
 執着心の激しいことで。しかも目的は世界征服ときた。馬鹿みたいだ。本人は真面目なんだろうケドさ。

「――シッ!」

 神は瞬時に距離を詰め、異形化した右腕で手刀を作り、振るった。
 その一振りで豪風が起こり、ラインとターバの残像・・が掻き消える。

 神の背後に、バチバチに魔力を込めた武器を構えて立つ。
 振るうと思ったか? 残念、振るわない。

 お前が予想して、オレたちの立っていた場所に注意を向けていなかったことに、気が付いていないとでも?
 読心術ではないが……人の思考回路の大半は把握している。

 ただ、神は2000年も生きている。
 人を超越している。が、中身は子供ガキのままだ。

 ――実に愚かで、実に単純。

 神は再び姿を消した。
 そこでオレとターバは剣を振り下ろす。
 
 振り下ろしたところで、魔力を解放し、辺りに魔力の爆風が吹き荒れる。
 オレとターバは範囲に入っていない。

「ぐっ」

 神はなんとか耐えているようだ。が、移動はできていない。

「そこは……」
「オレたちの魔力で溢れてる」

 オレとターバが神に剣を向けると、神の周囲に魔法が展開された。
 水晶の弾がいくつも生成され、雷を含んだ水の槍、足元に炎が生まれた。
 水晶の弾と雷と水の槍が神に迫る。

 神が剣を横に振ると、風が相殺された。
 そして、神が姿を消し、攻撃は当たらなかった。

 その後はもう、音速の戦いだ。

 この戦いを目で追える者は誰もいないだろう。
 だが、オレとターバにははっきりと映っている。もちろん、神にも。

 切り札は……まだ切るべきじゃない。
 これがあれば……ミル――まだ生きているのかは不明だが――を殺してしまうが、神を魂ごと消滅させることができる。

 ミルが生きているかどうかだが……。何とも言えない。
 生きているとも言えるし、死んでいるとも言える。

 神=ミル

 この方程式が完成されてしまっているようだ。
 やはり、神を殺すとなると……ミルも殺さないといけない。

 ――覚悟はもう、決まっている。

 ミルだけを助け、神を殺す術は、すでにない。

 神の魂がミルの魂を完全に取り込んでしまっている。
 だが、神の魂が外来物であるため、穴はある。しかし【魂】の器、能力を持たないオレにはどうすることもできない。

 神は駿と魔王に殺される寸前、器の中の【魂喰ソウルイート】に自身の意志を移し、完全な死を免れた。
 体は死んでいるわけだから……。某魔法小説の『例のあの人』『闇の帝王』みたいな状況だ。

 ミルを殺し、魂が肉体から離れた瞬間、ミルの魂を喰らい、ミルの体も一緒に奪ったわけだ。
 つまり、ミルは確かに、一度死んでいる。餓者髑髏《がしゃどくろ》の手によって……。

 ミルは魔力をほとんど持っていなかったため自覚がなかったようだが、【緻密な魔力操作】の加護を持っていた。
 それを神が取り込んだ、というわけだ。

 それ以前に意思だけはあったのだろう。それで魔物連合を設立したというわけだ。

 いや、その意思が【魔導士】アーグ・リリスだったというわけか。
 意志を人間の死体に移し、【魂喰ソウルイート】の最低限の能力を配下に預けていた、と。
 今思えば、アーグ・リリスは入学試験で面接を担当していた。あそこで、ミルの加護に気が付いたのだろう。オレの器もそこで。
 魂として長い年月を過ごした神にとって、相手の加護・器が見えていても不思議ではない。

 そして、神は作戦の決行を決断した。
 魔物連合を設立するため、あの手この手で味方を増やしていった。

 リアナス・ロックワードの父は封印師と対になる解術師だった。 
 神は【架け橋】と呼び、彼を懐柔した。そして、各地で秘密裏に封印を解いて回った、というわけだ。

 そして、神の行為に疑問を感じ始めたロックワードを、魔狼フェンリルに殺させた、と。
 魔狼フェンリルは神が昔、目にしたことがあったのだろう。というより、封印したのは魔王だった。
 神はそれを利用した。



 いや~~、よくやるね、本当に。
 オレとミル。
 器とチート級加護。

 ターバの加護こそチートな気がするのだが……。まあ、威厳を示す点で言えば、【緻密な魔力操作】はうってつけか。
 攻撃力を優先したというわけだ。

 やれやれ。
 餓者髑髏がしゃどくろが聖物に選ばれるわけだ。

 騎士団長1人じゃ、神の野望は抑えきれない。
 いや、スパイが紛れ込んでいた時点で、騎士団長に勝ち目はなかった。騎士団長が【魔導士】を殺していれば、話は別だったかもな。
 だから次に餓者髑髏がしゃどくろが選ばれたのか。

「何を考えて――」
「――余所見なんかしちゃいねぇよ!」

 背後に回り込んだ神だったが、ラインの攻撃が当たった。
 
 神は、敵の油断を突いたと思った瞬間、油断する癖がある。
 対して、オレは【知】だ。神の行動など、オレの手中だ。ぅはーーーはっはっは!!
 


 ……決定的な隙が欲しい。
 これさえ決まれば

 ――勝てる

 


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