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最終章 ~最強の更に先へ~
第149話 新世界
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勝った。
これにて魔物連合は解体……否、全滅した。
全10体の隊長たちは、仲間である【六道】たちの手によって死亡。
そして【六道】も一匹を除いて全滅。
生き残った【六道】は鎌鼬。
あの、風の属性特化のやつだ。風の扱いにおいては、世界で5本の指に入るだろう。
しかし、生きている……とは言えないな。
鎌鼬は餓者髑髏の手によって、体を乗っ取っていたシューゲルの意志を無理やり分離させられ、気絶していたようだ。
シューゲルの意志は、神の魂の眷属化されていたため、鎌鼬から分離したあとは神の元へ引っ張られていった。
しかし、鎌鼬は神から力……魂の欠片が埋め込まれていた。
だから神の消滅と同時に、鎌鼬は力の大半を失った。神の魂の欠片が深い所に根付いており、鎌鼬の元々の力の一部も奪われていた。
精神もかなり弱っている。
今は厳重な警戒態勢のもとで保護観察中だ。
鎌鼬は今のところ、オレたちに協力的な姿勢を見せているが……警戒が解かれることはないだろう。
そしてターバが戦闘中に手にした水と雷の聖物だが、これらはターバの手から離れ、この世のどこかで眠っている。
ターバは元通りの強さに戻った。
神に貰った力を失った鎌鼬だが、そんな鎌鼬に敵うのはターバのみ。
近衛騎士や上位冒険者も、半分以上が先の戦いで死んだ。
世界の戦力は大きく低下。
しかし、魔物連合の解体により、世の中の強い魔物はほとんど死滅。小さな脅威すら消え去った。
生き残った強めの魔物はターバが解決するだろう。
そして、オレはそろそろ消える。
別に残ってもいいんだけどな。
せめて、戦後処理が終わるまで残ろう。
あの戦いの後、オレは一週間ほど寝込んでいた。
致命傷こそなかったものの、小さな傷が多すぎた。アドレナリンがドバドバだったからな。
あと、覚醒の副次効果として、痛覚を感じにくくなっていたからな。
戦いが終わって、ドッと疲労、痛み……全部出てきた。
それに、オレは限界値が高いせいで完全回復に時間が掛かった。
効率的な回復方法を編み出していなければ、危なかったな。
ただ、覚醒状態で、心臓部に回復魔法を掛けるのみ。
覚醒状態というのは、体中に魔力の血管を張り巡らせている状態だ。オレの場合、筋繊維レベルなんだけどな。
それが回復魔法の効果を全身に張り巡らせる。魔力の通路、となるということだ。
そして、心臓部に掛けることで、全身に張り巡らされている血管も回復魔法を運ぶ。
血管内にも魔力は通っているのだ。
魔力の疑似的血管と、本物の血管。
この2種類の血管が、回復魔法を体の隅々まで運ぶ。
ちなみに身体強化状態だと効果は薄いが……ないよりマシという程度だな。
それで、全員が回復しきった一週間後。
ようやく戦勝セレモニーが行われた。場所はへラリア王都。
全世界生中継だ。
時差がないほど狭い大陸でよかったな。
大きさは……オーストラリア大陸ぐらいかどうか。
結界で西側へは行けない。北、南、東の海。海の先には何があるのか、この世界の住人は知らない。
中々恥ずかしかったが、完全に祝福されていたわけではなかった。
特に、遺族の人たちがそうだったな。
それもそうだ。
多くの人が死んだ。オレたちは守れなかった。
オレは戦勝セレモニーの後、誰にもバレないように姿を消した。
オレを探そうとしているのはターバとコラヤン兄妹の三人だったが、3人とも忙しい身だ。
いや、忙しいのは世界全体か。
だからこそ、オレを捜索する時間も余裕もない。
それに、【知】を持つオレを探すことはできない。
オレが用があるのは
――結界の先
叡智で、結界の先に何があるのかはわかってる。
けど、だからこそ、だ。
そして、オレは今、人知れず結界の前に立っている。
結界は、なぜできたのか、いつから存在するのか。何もわからない。
叡智によると、どうやら結界は――世の理の一つ、なんだそうだ。
世界の理なら、たしかに破壊できないわな。
結界の先には大した土地は広がっていないけど、その土地にある価値は高い。
その土地はちょうど、へラリア国と同じぐらいの大きさしかなく、その先は海だ。
結界はこの土地を覆うようにできている。
結界の解除方法は過去にも未来にも、オレしか知らないだろう。
解除……ではないか。結界の先へ行く方法、か。
『駿、用意はいいか?』
『おう!』
結界には1つ、嬉しい誤算があった。
この世界から外れた駿であっても、存在できるということだ。
そう、結界の先は…………位相のずれた世界。
つまり、次元が違っているんだ。
オレの隣に、1本の短杖が現れた。
駿の神器だ。
そして、オレは辺りに知性ある生き物がいないことを確認した。
動物であっても、ダメだ。――知性があることが問題なんだ。
「…………I'm an artifact. I have a proof. ……Open the door!」
何も英語である必要はない。ただ、この世界の言語を日本語同様に使ってきたせいで、日本語がたどたどしいんだよな。
ただ、この世界に存在しない言語で、「オレは器だ」「証を持つ」「開けろ」と言うだけでよかった。
【知】が元の世界とも繋がっていてよかった。
でないと、英語が喋れなかった。
やはり、この世界の言葉と日本語はまったく異なる言語だった。
結界が、オレがちょうど通れるぐらいの縦長の長方形型に光り輝いた。
まるでドアだな。だが、開かない。
ドアが光った瞬間、駿はこの世界に顕現した。
そしてオレたち2人は結界の内側に侵入した。
これにて魔物連合は解体……否、全滅した。
全10体の隊長たちは、仲間である【六道】たちの手によって死亡。
そして【六道】も一匹を除いて全滅。
生き残った【六道】は鎌鼬。
あの、風の属性特化のやつだ。風の扱いにおいては、世界で5本の指に入るだろう。
しかし、生きている……とは言えないな。
鎌鼬は餓者髑髏の手によって、体を乗っ取っていたシューゲルの意志を無理やり分離させられ、気絶していたようだ。
シューゲルの意志は、神の魂の眷属化されていたため、鎌鼬から分離したあとは神の元へ引っ張られていった。
しかし、鎌鼬は神から力……魂の欠片が埋め込まれていた。
だから神の消滅と同時に、鎌鼬は力の大半を失った。神の魂の欠片が深い所に根付いており、鎌鼬の元々の力の一部も奪われていた。
精神もかなり弱っている。
今は厳重な警戒態勢のもとで保護観察中だ。
鎌鼬は今のところ、オレたちに協力的な姿勢を見せているが……警戒が解かれることはないだろう。
そしてターバが戦闘中に手にした水と雷の聖物だが、これらはターバの手から離れ、この世のどこかで眠っている。
ターバは元通りの強さに戻った。
神に貰った力を失った鎌鼬だが、そんな鎌鼬に敵うのはターバのみ。
近衛騎士や上位冒険者も、半分以上が先の戦いで死んだ。
世界の戦力は大きく低下。
しかし、魔物連合の解体により、世の中の強い魔物はほとんど死滅。小さな脅威すら消え去った。
生き残った強めの魔物はターバが解決するだろう。
そして、オレはそろそろ消える。
別に残ってもいいんだけどな。
せめて、戦後処理が終わるまで残ろう。
あの戦いの後、オレは一週間ほど寝込んでいた。
致命傷こそなかったものの、小さな傷が多すぎた。アドレナリンがドバドバだったからな。
あと、覚醒の副次効果として、痛覚を感じにくくなっていたからな。
戦いが終わって、ドッと疲労、痛み……全部出てきた。
それに、オレは限界値が高いせいで完全回復に時間が掛かった。
効率的な回復方法を編み出していなければ、危なかったな。
ただ、覚醒状態で、心臓部に回復魔法を掛けるのみ。
覚醒状態というのは、体中に魔力の血管を張り巡らせている状態だ。オレの場合、筋繊維レベルなんだけどな。
それが回復魔法の効果を全身に張り巡らせる。魔力の通路、となるということだ。
そして、心臓部に掛けることで、全身に張り巡らされている血管も回復魔法を運ぶ。
血管内にも魔力は通っているのだ。
魔力の疑似的血管と、本物の血管。
この2種類の血管が、回復魔法を体の隅々まで運ぶ。
ちなみに身体強化状態だと効果は薄いが……ないよりマシという程度だな。
それで、全員が回復しきった一週間後。
ようやく戦勝セレモニーが行われた。場所はへラリア王都。
全世界生中継だ。
時差がないほど狭い大陸でよかったな。
大きさは……オーストラリア大陸ぐらいかどうか。
結界で西側へは行けない。北、南、東の海。海の先には何があるのか、この世界の住人は知らない。
中々恥ずかしかったが、完全に祝福されていたわけではなかった。
特に、遺族の人たちがそうだったな。
それもそうだ。
多くの人が死んだ。オレたちは守れなかった。
オレは戦勝セレモニーの後、誰にもバレないように姿を消した。
オレを探そうとしているのはターバとコラヤン兄妹の三人だったが、3人とも忙しい身だ。
いや、忙しいのは世界全体か。
だからこそ、オレを捜索する時間も余裕もない。
それに、【知】を持つオレを探すことはできない。
オレが用があるのは
――結界の先
叡智で、結界の先に何があるのかはわかってる。
けど、だからこそ、だ。
そして、オレは今、人知れず結界の前に立っている。
結界は、なぜできたのか、いつから存在するのか。何もわからない。
叡智によると、どうやら結界は――世の理の一つ、なんだそうだ。
世界の理なら、たしかに破壊できないわな。
結界の先には大した土地は広がっていないけど、その土地にある価値は高い。
その土地はちょうど、へラリア国と同じぐらいの大きさしかなく、その先は海だ。
結界はこの土地を覆うようにできている。
結界の解除方法は過去にも未来にも、オレしか知らないだろう。
解除……ではないか。結界の先へ行く方法、か。
『駿、用意はいいか?』
『おう!』
結界には1つ、嬉しい誤算があった。
この世界から外れた駿であっても、存在できるということだ。
そう、結界の先は…………位相のずれた世界。
つまり、次元が違っているんだ。
オレの隣に、1本の短杖が現れた。
駿の神器だ。
そして、オレは辺りに知性ある生き物がいないことを確認した。
動物であっても、ダメだ。――知性があることが問題なんだ。
「…………I'm an artifact. I have a proof. ……Open the door!」
何も英語である必要はない。ただ、この世界の言語を日本語同様に使ってきたせいで、日本語がたどたどしいんだよな。
ただ、この世界に存在しない言語で、「オレは器だ」「証を持つ」「開けろ」と言うだけでよかった。
【知】が元の世界とも繋がっていてよかった。
でないと、英語が喋れなかった。
やはり、この世界の言葉と日本語はまったく異なる言語だった。
結界が、オレがちょうど通れるぐらいの縦長の長方形型に光り輝いた。
まるでドアだな。だが、開かない。
ドアが光った瞬間、駿はこの世界に顕現した。
そしてオレたち2人は結界の内側に侵入した。
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