浮気夫、タイムリープで地獄行き

おてんば松尾

文字の大きさ
12 / 31

第12話

しおりを挟む
雄太が生まれた。

なににも代えがたい、私の命より大切な愛しい息子だ。

初の出産を3回も経験しなくてはいけない地獄を味わったけど、大満足だった。

初産婦とは思えない新生児の扱いに助産婦さんたちは驚いていた。

入院中、川崎夫婦もお見舞いに来てくれた。
孫ができたみたいで嬉しいと言ってくれた。

私は母がいないから、彼女が親代わりに必要な物を買って来てくれたり、雄太の面倒をみたりしてくれた。

義母もお見舞いに来て、男の子を産んだことを褒めてくれた。

看護師さんに頼んで、できるだけ義母には会いたくないと伝えた。

「いろいろありますもんね。わかります。私もそうでしたから」

産院の看護師さんは気持ちを理解してくれた。
長時間義母が病室にいないように、面会時間が終わるからと言って追い出してくれた。

「退院してからまたゆっくり会いに行きますね。なんか、産院は、いろんな人が出入りするのを禁止しているらしいです。外部から菌とかウィルスとか持ち込まないようにですって」

まるで義母がばい菌かのように言ってしまった。
これは後から雄一さんに文句を言うだろうなと思ったけど気にしない。

義母は離婚したら縁を切る人だ。


子どもと共に1週間ゆっくりと入院して私はマンションに戻ってきた。

雄一さんは立ち合い出産を望んだが私はそれを断った。
2回も立ち会ったんだからもういいでしょうと内心思っていた。

一応抱っこはさせたけど、汚らわしいと感じてしまいすぐに雄太を取り返した。

「産後はいろいろデリケートになる時期なの。ごめんなさいね」

「いや、わかるよ。何か手伝える事があったら言って」

「大丈夫。お願いがあるとすれば……」

家に帰ってこないで。

「なに?」

「できるだけ外食してきてくれると助かるわ」

彼はやれやれ、というふうに力なく笑った。




私は車に取り付けているボイスレコーダーの録音を聞いていた。
長時間録音できる機能があり雑音も少なく高性能の物を車に仕掛けていた。

『やっぱり妻の様子がおかしいんだ』

『妊娠してから変わったって言ってましたね。子どもが生まれると奥さんの性格が変わるってよく聞きます』

河合愛梨の声だ。

『……変わるっていうか、俺に興味がないような態度だ。子どものことは必死で守っているんだけど、俺は、なんていうか蔑ろにされてるっていうか』

まるでかまってちゃんだ。

『その分私が雄一さんの事愛しますから。ふふふ』

どうぞご勝手に。

『君のことがバレているような発言もあるんだけど、遅い時間の帰宅や泊まりがあっても気にしていない様子だ』

『なら、いっぱい二人の時間が取れますね。嬉しい!』

リップ音。ああ気持ちが悪い。

『でも、子どもも生まれたばかりだし、今離婚とかそういう事になったら体裁が悪い』

『私は大丈夫です。ずっと雄一さんの事を待ってます。何年でも待ちますから、今は奥様を大事にしてくださいね』

『ああ。愛しているのは君だけだよ』

車がどこかに停車したようだ。
カーナビの履歴を見たらどこに行ったか分かるから後で確認しよう。デートスポットやホテルが出てきたら浮気の証拠になる。

『飲み物を買ってくる、いつものでいい?』

『ありがとうございます』

バタンとドアが閉まる音。
へぇ、彼女のためにコンビニで買い物してるんだね。

『洗濯とか料理とか、面倒な世話は奥さんがやってくれるから助かるわ』

夫がコンビニへ入ったとたんに愛梨が呟きだした。
私は家政婦扱いみたいね。

『私はおいしいレストランに高級ホテル。めちゃいいじゃんこの状況。ずっと離婚しなくてもいいわ、嫁から文句言われないんだから何の問題もないわ』

夫が車からいなくなった途端にこの言いざま。
恐ろしいわねこの子。

夫が戻ったようだ。

『たまには家族サービスすべきかな?子供も生まれたばかりだし、少し愛梨に会いすぎているからな』

『え!私より奥さんを選ぶんですか?酷い……雄一さんは愛梨の事が一番大事だって言ってくれましたよね』

『いや、妻は俺の子を産む係、愛梨は俺の恋人だ。雄太は俺の血を分けた子供だからな。雄太の事は大事にしたいと思ってる』

子を産む係……

『家族思いのパパですね。子供好きなところも私は素敵だと思ってます。雄一さんの赤ちゃん。きっと凄く可愛いでしょうね』

言え。言ってくれ……子どもが産めないという言質が欲しい。

『愛梨も可愛いよ』

ちゅっ、ちゅ……荒い呼吸音。
ああ……虫唾が走る。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...