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ジョンからの手紙
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ジョンからの手紙には、キャサリンは二歳の時、養子縁組で伯爵の娘になったと書かれていた。
リッツ伯爵家のキャサリン゠リッツは養女で実の子ではない。
キャサリンは、フォスター家の執事、マルスタンとメイド長の間にできた子供。
彼らは我が娘を経済的に困窮していたリッツ伯爵の養女にした。
その代わりリッツ伯爵を援助するという約束をして。
この養子関係には多額の金銭が動いている。
リッツ伯爵は爵位を売るのではないかと言われていたほど貧しく、領地も小さかった。
伯爵家は、ある時を境に羽振りが良くなり経済状況が上向いている。
詳しい契約内容は明らかではないが、伯爵が収入源を得始めた時期とキャサリンが養子になった時期は重なる。
マルスタン達は実の娘に貴族籍を与えたかったようだ。
そうする理由は実の娘をスノウの妻にする為。
実の子が公爵夫人になれば公爵家の実権を握ったも同然。孫でも出来れば将来は安泰だろう。
彼らが私を公爵夫人として認めたくない理由はそこにあったのね。なるほど、それで納得した。
それなら王命が下る前に、さっさと自分の娘とスノウを結婚させればよかったのよ。
そうできなかったのは、王命での結婚が急遽決まってしまったからなのかもしれないけど。
理由はどうあれ、公爵家での自由も奪われ、自分の大事なメイドも首にされた挙句ここでの冷遇。
私はずっと耐えていくつもりはないわ。
翌朝から私は公爵の屋敷の中でできる限りの事をしようと行動を起こした。
「メイド長。これからは食堂で食事をするわね。それと寝室は夫婦の寝室を使うわ。旦那様がいつ帰ってこられてもお相手できるように私も努力しようと思うの」
メイド長は私を見て小馬鹿にしたようにフッと鼻で笑った。
「旦那様は帰ってこられないと思いますよ」
「旦那様は私を部屋に閉じ込めて監禁しろとおっしゃったのかしら?違いますよね。勝手に外出しないようにと言われただけですよね?」
「奥様は使用人たちの目を盗んで外出されますから。そのような事のないように私共が管理するよう仰せつかっております」
「そう」
やっぱりスノウは監禁しろと言ったわけではないのね。
私が屋敷の外に出ていたことが問題。マルスタンからの報告で、スノウは私の外出を知ったんだと思う。
奥様が何をしようが自分たちは知らないという態度をやめて、奥様はいう事を聞かず勝手に行動されますとでも言ったのかしら。それとも止めたのに知らない間に外出したとか都合のいいよう報告したのか。
「相手にされてないのに、夫婦の寝室ですって」
「ご自分だけその気なんて恥ずかしくないのかしら」
食堂から帰る時、給仕係のメイドたちがわざと私に聞こえるように口にした。
「あら、貴方たちいつからそんな口がきけるようになったの?相手にされていないからと言っても私は公爵夫人ですから。無礼があったら、いつでもあなたたちを首にできましてよ」
「奥様、使用人に乱暴な口をきくのはおやめください。暴言を吐かれた、脅されたと旦那様に報告いたしますよ」
メイド長が蔑んだ視線を向けた。
スノウに嘘で固めた報告しかしないなら、今更取り繕ったって同じだわ。
「お好きにどうぞ」
私は顎を上げて食堂を出た。
今の状況で行ける部屋は限られている。屋敷内をウロチョロすると、護衛の者や私付きの侍女たちから舌打ちされ、じっとしていろと嫌味を言われる。庭に出る事も許されない。
けれど図書室へ行く分には文句を言われないようだ。
「本を読むわ。私が動き回らないのが望みなんでしょう」
「奥様を監視するのも大変なんです。その間他の仕事ができませんし。屋敷の使用人の数にも限りがありますし、あまり面倒をかけないでください」
「嫌なら放ってもらって構わないけど」
「本当に勝手なかたですね。そのせいで新しく使用人を増やさなければならず、屋敷の予算が圧迫されるらしいですわ」
メイドは睨んできたが私は無視をして図書室へと大股で歩いていった。
夫婦の寝室で眠るようにしたのには理由がある。図書室で見つけた屋敷の見取り図から、夫婦の寝室に隠し通路が存在することを私は知ったのだ。
見取り図はかなり古い物だったし、屋敷の改築などによって通路はもう壊されているかもしれない。
けれど、としても、このような昔からある大きな屋敷には主人の命、財産を守るためにその通路が残されている可能性は大いにある。
何度も見取り図を見返して完璧に頭の中に記憶する。
通路があるだろう壁伝いに廊下を歩きながら歩数を数える。
侍女の目を盗んで夫婦の寝室の中を毎夜探る。
そしてやっと隠し通路の入り口を私は見つけた。
何度かメイドの目を盗んで夜中にその通路内に入ってみた。
数日が経ち、私がずっと屋敷内で過ごしている事にマルスタンたちは安心しているようだった。
私が眠ったことを確認したら侍女は部屋を出ていくようになった。
部屋の外には護衛という名の監視が立っている。
今夜皆が寝静まったら、飾り棚の裏側にある隠し扉から通路へ出て、執務室へ忍び込む。
目的は脱出ではない。目指すは執務室。
収入と支出のバランスを取り、収益性を最大化するために努力するのは当主の仕事だけど、それを彼は執事のマルスタンに丸投げしている。
表向きはちゃんとした帳簿が存在するだろう。けどきっとあるはず『裏帳簿』必ずそれを見つけ出す。
この屋敷で信用できる者はもう誰もいない。自分が動かなくては何の証拠もつかめない。
何年も使われていないだろう通路は、埃っぽく湿った空気が漂いかび臭かった。
人一人が通れるくらいの幅しかなく歩く度、体のどこかが壁に当たってしまう。
暗い中ランタンの小さな灯りを頼りに足音を忍ばせ進む。
二十分ほど歩いただろうか、やっとこの辺りだという場所まで辿り着き、扉に手をかけゆっくりスライドさせる。
扉はかなり重く少し動かしただけでギシッと音が鳴った。
時間は午前一時、もう誰も執務室にはいないはずだ。
そっと室内に入り、目を凝らして人の気配を確認し、静かにゆっくり足を進める。
隠し通路の扉が備え付けられている部屋は、どこも重要な物がある部屋だ。金庫室、主人の寝室、そして執務室の重要書類の保管場所。それらの、普段から鍵がかかる部屋へ繋がっている。
寝室にいない事がバレてしまわないよう急いで行動しなければならない、ここに居られる時間はそんなにないだろう。
リッツ伯爵家のキャサリン゠リッツは養女で実の子ではない。
キャサリンは、フォスター家の執事、マルスタンとメイド長の間にできた子供。
彼らは我が娘を経済的に困窮していたリッツ伯爵の養女にした。
その代わりリッツ伯爵を援助するという約束をして。
この養子関係には多額の金銭が動いている。
リッツ伯爵は爵位を売るのではないかと言われていたほど貧しく、領地も小さかった。
伯爵家は、ある時を境に羽振りが良くなり経済状況が上向いている。
詳しい契約内容は明らかではないが、伯爵が収入源を得始めた時期とキャサリンが養子になった時期は重なる。
マルスタン達は実の娘に貴族籍を与えたかったようだ。
そうする理由は実の娘をスノウの妻にする為。
実の子が公爵夫人になれば公爵家の実権を握ったも同然。孫でも出来れば将来は安泰だろう。
彼らが私を公爵夫人として認めたくない理由はそこにあったのね。なるほど、それで納得した。
それなら王命が下る前に、さっさと自分の娘とスノウを結婚させればよかったのよ。
そうできなかったのは、王命での結婚が急遽決まってしまったからなのかもしれないけど。
理由はどうあれ、公爵家での自由も奪われ、自分の大事なメイドも首にされた挙句ここでの冷遇。
私はずっと耐えていくつもりはないわ。
翌朝から私は公爵の屋敷の中でできる限りの事をしようと行動を起こした。
「メイド長。これからは食堂で食事をするわね。それと寝室は夫婦の寝室を使うわ。旦那様がいつ帰ってこられてもお相手できるように私も努力しようと思うの」
メイド長は私を見て小馬鹿にしたようにフッと鼻で笑った。
「旦那様は帰ってこられないと思いますよ」
「旦那様は私を部屋に閉じ込めて監禁しろとおっしゃったのかしら?違いますよね。勝手に外出しないようにと言われただけですよね?」
「奥様は使用人たちの目を盗んで外出されますから。そのような事のないように私共が管理するよう仰せつかっております」
「そう」
やっぱりスノウは監禁しろと言ったわけではないのね。
私が屋敷の外に出ていたことが問題。マルスタンからの報告で、スノウは私の外出を知ったんだと思う。
奥様が何をしようが自分たちは知らないという態度をやめて、奥様はいう事を聞かず勝手に行動されますとでも言ったのかしら。それとも止めたのに知らない間に外出したとか都合のいいよう報告したのか。
「相手にされてないのに、夫婦の寝室ですって」
「ご自分だけその気なんて恥ずかしくないのかしら」
食堂から帰る時、給仕係のメイドたちがわざと私に聞こえるように口にした。
「あら、貴方たちいつからそんな口がきけるようになったの?相手にされていないからと言っても私は公爵夫人ですから。無礼があったら、いつでもあなたたちを首にできましてよ」
「奥様、使用人に乱暴な口をきくのはおやめください。暴言を吐かれた、脅されたと旦那様に報告いたしますよ」
メイド長が蔑んだ視線を向けた。
スノウに嘘で固めた報告しかしないなら、今更取り繕ったって同じだわ。
「お好きにどうぞ」
私は顎を上げて食堂を出た。
今の状況で行ける部屋は限られている。屋敷内をウロチョロすると、護衛の者や私付きの侍女たちから舌打ちされ、じっとしていろと嫌味を言われる。庭に出る事も許されない。
けれど図書室へ行く分には文句を言われないようだ。
「本を読むわ。私が動き回らないのが望みなんでしょう」
「奥様を監視するのも大変なんです。その間他の仕事ができませんし。屋敷の使用人の数にも限りがありますし、あまり面倒をかけないでください」
「嫌なら放ってもらって構わないけど」
「本当に勝手なかたですね。そのせいで新しく使用人を増やさなければならず、屋敷の予算が圧迫されるらしいですわ」
メイドは睨んできたが私は無視をして図書室へと大股で歩いていった。
夫婦の寝室で眠るようにしたのには理由がある。図書室で見つけた屋敷の見取り図から、夫婦の寝室に隠し通路が存在することを私は知ったのだ。
見取り図はかなり古い物だったし、屋敷の改築などによって通路はもう壊されているかもしれない。
けれど、としても、このような昔からある大きな屋敷には主人の命、財産を守るためにその通路が残されている可能性は大いにある。
何度も見取り図を見返して完璧に頭の中に記憶する。
通路があるだろう壁伝いに廊下を歩きながら歩数を数える。
侍女の目を盗んで夫婦の寝室の中を毎夜探る。
そしてやっと隠し通路の入り口を私は見つけた。
何度かメイドの目を盗んで夜中にその通路内に入ってみた。
数日が経ち、私がずっと屋敷内で過ごしている事にマルスタンたちは安心しているようだった。
私が眠ったことを確認したら侍女は部屋を出ていくようになった。
部屋の外には護衛という名の監視が立っている。
今夜皆が寝静まったら、飾り棚の裏側にある隠し扉から通路へ出て、執務室へ忍び込む。
目的は脱出ではない。目指すは執務室。
収入と支出のバランスを取り、収益性を最大化するために努力するのは当主の仕事だけど、それを彼は執事のマルスタンに丸投げしている。
表向きはちゃんとした帳簿が存在するだろう。けどきっとあるはず『裏帳簿』必ずそれを見つけ出す。
この屋敷で信用できる者はもう誰もいない。自分が動かなくては何の証拠もつかめない。
何年も使われていないだろう通路は、埃っぽく湿った空気が漂いかび臭かった。
人一人が通れるくらいの幅しかなく歩く度、体のどこかが壁に当たってしまう。
暗い中ランタンの小さな灯りを頼りに足音を忍ばせ進む。
二十分ほど歩いただろうか、やっとこの辺りだという場所まで辿り着き、扉に手をかけゆっくりスライドさせる。
扉はかなり重く少し動かしただけでギシッと音が鳴った。
時間は午前一時、もう誰も執務室にはいないはずだ。
そっと室内に入り、目を凝らして人の気配を確認し、静かにゆっくり足を進める。
隠し通路の扉が備え付けられている部屋は、どこも重要な物がある部屋だ。金庫室、主人の寝室、そして執務室の重要書類の保管場所。それらの、普段から鍵がかかる部屋へ繋がっている。
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