156 / 577
第十章:力を求めて
156.追放者復讐戦 3
しおりを挟む威勢のいい女だ。おれの名前をあんな風に叫ぶとは、一体何者なのか。
戦った記憶と覚えがまるで無いということは、あまり印象に残らなかった相手だろう。
『一応聞くが、何故おれの名を知っている? お前は誰だ?』
おれの声に反応し、ざわついているのは後方に控えているシーニャたちだ。
そうなるとシーニャが知っている女のように思えるが、全く見当がつかない。
『あの時は獣だったから、頭までもが畜生程度というわけか? あたしは、ヘルガ! Sランクの短剣使いだ!! 思い出させてやろうか? あ?』
短剣使いでSランクで、ヘルガ……しかも獣だった時のおれを知っている。
あぁ、獣狩りパーティーの女か。
獣の時にラクルまで吹き飛ばした女だったな。
魔術師の男と一緒にいた強化者があまりに印象強かったから、今の今まで忘れていたようだ。
この場に強化者がいないということは、魔術師の方が扱いやすいと判断されて置いて行かれたか。
そうなると思念飛ばしの不意打ち連中は、この女の復讐戦には干渉して来ない。
せいぜい遊べと言っていたし、そういう意味のようだ。
短剣使いの女以外で気を付けるべき相手は……、バウンティハンターが数人だな。
奴らは金の為なら、非道なやり方を平気で実行して来る。
この場所を選んだのも、奴らの罠が仕掛け放題だからに違いない。
『――いや、思い出した。それで、ヘルガだったか。大人数でおれを潰すのか?』
『誰がそんなみっともなくて雑魚な戦いをするかよ!! 獣の力を使うてめぇなんぞには、こいつらで十分だ!』
『こいつらというと、剣や槍を持っていながら身震いをさせている男たちのことか?』
『減らず口を叩いても無駄だ。こいつらは興奮しているだけさ! 追放者を自分らで殺せるってことになぁ!!』
追放者と言われても、ラクルの連中は倉庫に住むことをうるさく言わなかった。
そうなると、この女と男連中がそれにこだわっているだけ。
ヘルガという女をラクルに吹き飛ばしてから、かなり日数が経っている。
それがまさか、その時から町に潜んでいたとは驚きだ。
「イスティさま! 来るっ!!」
「あぁ、見えてる」
ヘルガの合図に呼応し前面に立っていた多数の戦士らしき男たちが、鬨の声を上げる。
手にしている武器は、ほとんどが片手剣。
その中の数人は慣れない槍を持っていて、勢いそのままに突進して来るようだ。
よほど不人気なクエストだったか、間に合わせの兵らしい。
『う、うおおおおおお!! ボサっと突っ立ってんじゃねえええ!』
戦士の一人が、剣を振り下ろして来る。
――が、フィーサを鞘から抜くまでも無く、その先を取った。
突出して攻撃を仕掛けて来た男に対し、それよりも一瞬素早く動き出したおれの拳が、男の上体に命中。
男の剣の軌道はすぐに崩れ、息を切らせた状態で地面に倒れ込んだ。
おれの拳によって、青銅製の鎧はあっさりと破壊。
鎧系防具に守られている戦士たちは、驚きと戸惑いの声を漏らしている。
『――な……!? き、近接戦闘者!?』
『両手剣を身に着けていながら、拳を繰り出して来るなんて……そんなバカな――』
『お、おい、お前行けよ!』
『お前こそ行け。あんな化け物なんて聞いてねえぞ……』
やはりフィーサを使うまでも無かったか。
ラクルのような小さな港町のギルドクエストに、そこまで命をかける奴なんていない。
突出して来た男一人だけは、戦う意志があったからまだいいとして……。
一応の陣形を整えた男たちは、後ずさりながら向かって来る気配が無い。
『どうした、来ないのか?』
おれが向かって行けば、間違いなく戦士たちは全滅、もしくは一目散に逃げ出してしまう。
ヘルガという女はともかく、連中に対して恨みも無ければ倒す理由も無い。
そう思っていると、ヘルガが後方の彼女たちに指示を出し始めた。
『おい、後ろの支援系!! 野郎たちに強化をかけまくりな!』
なるほど。復讐と言いながらも、集まった連中に戦わせて弱らせる戦法か。
バウンティハンターにも前に出るよう促しているし、Sランクを武器にして従わせているようだ。
シーニャは回復魔法だけで強化は使えない。
ミルシェはおれに依存した防御魔法が使えるが、連中に何をかけているのか。
『おぉっ! 物理耐性が上がった気がする!!』
『体が軽くなった!』
――などなど、期待を持たせた強化をかけたみたいだ。
さすがに今度は集団でかかって来るようなので、拳はやめてフィーサを振り回すことにする。
「行けるな、フィーサ」
「はいなの!」
「魔法剣は取っておく。基本だけで行くぞ!」
0
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる