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守護する侍女が守り、誓いの口づけをすればいいわ!
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「リルーゼ様。あの、僕の役目は……」
「あなた、まだ侍女になりきれていないというのかしら?」
「あ……い、いいえ。僕、わ、私は侍女です。……ですけれど、わたしのお役目は皇女様のお傍にいることです」
「ええ、合っているわ。傍を離れず、下々が歓迎している街についてくることね。よろしくて?」
「……はい」
ふふん、これでいいわ。役立たずの従騎士として傍にいられても何の役にもたたないですもの。第一と第二の口煩さも無いことだし、このまま侍女として生きてもらえばいいんだわ。
「あのリルーゼ様、ライナードとサイウェルの姿が見えませんが?」
「第一と第二の騎士なら自由にさせているわ。傍にいたところで煩いだけですもの。何か問題でもあるのかしらね?」
まさか一緒にいないと寂しくて泣いてしまうとかじゃないわよね?
「では、皇女様のお傍にはわたし一人だけですか? そんな……」
「たかが街に繰り出すだけで何をびびっているというの? それだからシャリィは騎士の資格が足りないのではなくて? それでもいいわ、あんなお節介焼きな従騎士になれなくても、侍女として皇女に従うのも人生というものだわ」
「……い、嫌です」
「今なんて?」
「わたし……ぼ、僕は陛下のご意思に関係なくリルーゼ様をお守りしたい。だからこそお傍に――」
あらあら、これだけの待遇をしても下らない従騎士に成り下がるつもりだというの?
こうなればわたくし一人だけでも街を愉しむしかないようね。
「シャルアン、あなたは侍女失格ね。任を解くわ」
「え、じゃあ騎士に……」
「騎士としても失格ね。もういいわ、とっとと荷をまとめてお国に帰ることをおススメするわ! いえ、帰ってくださる? 目障りにも程があるものだわ!」
「……え」
「役にも立たない侍女を連れ歩いたところで何の得にもならないわ。シャルアンはその格好のまま宮廷へお戻りになられてはいかが? わたくしはこのまま一人で街へ繰り出すとするわ」
うじうじと面倒だわ。
それならこのまま先へ進んだ方が自分の為になりそう。
「危険です! 僕をこのまま一緒に! あっ! 皇女様、危ないっ!」
何をそんなに騒ぐというの?
「ふふん、何故に声を張り上げているというの? 従騎士でありながら大げさに事を荒立てようとするだなんて、やはり一度でも侍女に落としてしまうと気持ちも弱くしてしまうのかしらね。一体何を騒いでいるのやら――っ!?」
「こ、皇女様っ!?」
なに?
何なのこの野蛮人は!
「お前がリルーゼ皇女だな? 悪ぃが、お前のような皇女がのさばっていると仕事がやりづらくて仕方がねえ。ここで消えてもらう」
「な、何をっ……!」
シャルアンが騒ぎまくっていたから何かと思えば、気づいたら家畜のような手で口を塞がれていたわ。
なんて汚らわしい。これでは息を吸うことも吐くことも躊躇ってしまうわ。
噛みつこうにも手の平で口を開くことを拒まれているし、このままわたくしはつまらない生き方のままで終えるというの?
「……命令違反ならびに、皇女様のドレスを汚し、お目汚しを致すことを御赦し下さい……」
「え?」
「な、何だ貴様……ぐわっ!?」
「何だというの?」
「お赦しを!」
家畜の悲鳴を聞いたと思った直後、わたくしの視界はシャルアンの手によって本来見るはずの光景を目の当たりにすることはなかった。
これはかなりの侮辱罪に相当するわね。
シャルアンの手が目から離れたと思ったら、目の前には先程の家畜……男が横たわっていた。そういうことね。侍女の格好をさせても、腐らずに従騎士としての役目を果たした、そういうことになるのかしらね。
「無礼な行為をお赦し下さい、メルリルーゼ皇女」
「本当ね……ロイク・シャルアン。あなたの処遇をどうすべきかしら……」
「いかに皇女様の街であろうと、輩は常にお命を狙っているものにござりまする。故に、私は皇女様に失礼を致しながらもお命をお守りする行為を致しました。どうか、この身をいかようにも処して下さい……」
「――そうね」
なりたくてなったわけではない皇女。そして、この身を守るのは3人の従騎士。
一も二も口煩いだけで頼りたくもなかった。それでも、侍女に身を落としながらもわたくしを守って輩を取り除いた第三の従騎士だけには流石のわたくしも褒美を与えねばならないかもしれないわね。
「ロイク・シャルアン、あなたの剣をわたくしに寄越しなさい」
「え、あ、はい……如何様にも」
「この剣で横たわりの家畜を倒したというのね。ふふ、これでシャルアンも……」
剣先に見えているのはシャルアンの姿ね。
「覚悟は出来てございます……」
「では首を、怯えのない顔を近づけてくださる?」
「は」
本当に斬れるわけはないけれど、思いのほか重い剣だということを今更ながら知ることが出来た。この重さの剣を振って輩を斬れる者を侍女として置いておくわけにはいかないわね。
「ま、まてっ! リルーゼ! ロイクをどうするつもりか! 皇女に相応しくない剣をすぐに置け!」
「おいおい、まさか助けてもらったくせにロイクを斬るんじゃねえだろうな? 皇女といえどもそれはやっちゃならねえぜ?」
全く、隠れて見ているだけかと思えばこの期に及んで口を挟んでくるというのかしらね。結局、ライナードとサイウェルの2人には近しいと感じてもその機会は訪れることはなかったわ。
侍女としても見られるロイクを傍に置きながらも、身を挺して守る覚悟があると感じてしまった。これには流石がのわたくしも相応の褒美を与えなければこの場は収まりそうにない。
「あなた、ロイク。顔を近付けなさい!」
「は、はい」
「――!」
することはもう決まっていた。
「ロイク・シャルアン。第三の従騎士。あなたはわたくしからのベーゼを受けた者として、その身はわたくしの為にあるということを覚え、生涯において守り通さなければ許されないわ。その覚悟があっての守護だったのかしらね?」
「この身はたとえ、侍女であっても皇女様の為のもの。僕は皇女様のベーゼに誓いを立ててこれを貫きます」
「ふふ、いいわ。それならば、従騎士。いえ、傍付きの侍女に窶して仕えることね! よろしくて?」
「えっ……は、はい」
危ない所から救ったのが強さで誇る一と二の従騎士などではなく、最弱にして女々しい第三の従騎士など想像すらしていなかったことだわ。
助けられて恋に落ちるなど、そんな下らないことを知られるよりも誓いを立てさせる方が都合がいいというものね。
「む……どういうことだ? メルリルーゼはロイクに何をした? ここからでは見えなかったが……」
「ふ、あの性悪皇女がしたことってのは、一生ロイクをこき使うってことだな。まぁ、俺らはお守りしながらロイクの支えをするしかないみたいだ。その機会がこの先訪れるかどうかは知らないがな」
「よく分からぬが、万事解決となったのであれば辺りをうろつくことを再開してもよいのだな?」
「そういうことだ」
恋落ちを隠す為とはいえ、シャルアンにベーゼを与えた以上一生こき使ってやるとしようかしらね。んふふ……これで恋よりも先に常に逆らわない従騎士……いいえ、侍女を置くことに成功したわ。
「僕はリルーゼ様のお傍にいると誓います!」
「ええ、その言葉はわたくしのベーゼでもって誓わせてあげたわ。これからも家畜のように働くことを期待しているわね、シャルアン」
「は、はい」
「ふふ、いい返事!」
「あなた、まだ侍女になりきれていないというのかしら?」
「あ……い、いいえ。僕、わ、私は侍女です。……ですけれど、わたしのお役目は皇女様のお傍にいることです」
「ええ、合っているわ。傍を離れず、下々が歓迎している街についてくることね。よろしくて?」
「……はい」
ふふん、これでいいわ。役立たずの従騎士として傍にいられても何の役にもたたないですもの。第一と第二の口煩さも無いことだし、このまま侍女として生きてもらえばいいんだわ。
「あのリルーゼ様、ライナードとサイウェルの姿が見えませんが?」
「第一と第二の騎士なら自由にさせているわ。傍にいたところで煩いだけですもの。何か問題でもあるのかしらね?」
まさか一緒にいないと寂しくて泣いてしまうとかじゃないわよね?
「では、皇女様のお傍にはわたし一人だけですか? そんな……」
「たかが街に繰り出すだけで何をびびっているというの? それだからシャリィは騎士の資格が足りないのではなくて? それでもいいわ、あんなお節介焼きな従騎士になれなくても、侍女として皇女に従うのも人生というものだわ」
「……い、嫌です」
「今なんて?」
「わたし……ぼ、僕は陛下のご意思に関係なくリルーゼ様をお守りしたい。だからこそお傍に――」
あらあら、これだけの待遇をしても下らない従騎士に成り下がるつもりだというの?
こうなればわたくし一人だけでも街を愉しむしかないようね。
「シャルアン、あなたは侍女失格ね。任を解くわ」
「え、じゃあ騎士に……」
「騎士としても失格ね。もういいわ、とっとと荷をまとめてお国に帰ることをおススメするわ! いえ、帰ってくださる? 目障りにも程があるものだわ!」
「……え」
「役にも立たない侍女を連れ歩いたところで何の得にもならないわ。シャルアンはその格好のまま宮廷へお戻りになられてはいかが? わたくしはこのまま一人で街へ繰り出すとするわ」
うじうじと面倒だわ。
それならこのまま先へ進んだ方が自分の為になりそう。
「危険です! 僕をこのまま一緒に! あっ! 皇女様、危ないっ!」
何をそんなに騒ぐというの?
「ふふん、何故に声を張り上げているというの? 従騎士でありながら大げさに事を荒立てようとするだなんて、やはり一度でも侍女に落としてしまうと気持ちも弱くしてしまうのかしらね。一体何を騒いでいるのやら――っ!?」
「こ、皇女様っ!?」
なに?
何なのこの野蛮人は!
「お前がリルーゼ皇女だな? 悪ぃが、お前のような皇女がのさばっていると仕事がやりづらくて仕方がねえ。ここで消えてもらう」
「な、何をっ……!」
シャルアンが騒ぎまくっていたから何かと思えば、気づいたら家畜のような手で口を塞がれていたわ。
なんて汚らわしい。これでは息を吸うことも吐くことも躊躇ってしまうわ。
噛みつこうにも手の平で口を開くことを拒まれているし、このままわたくしはつまらない生き方のままで終えるというの?
「……命令違反ならびに、皇女様のドレスを汚し、お目汚しを致すことを御赦し下さい……」
「え?」
「な、何だ貴様……ぐわっ!?」
「何だというの?」
「お赦しを!」
家畜の悲鳴を聞いたと思った直後、わたくしの視界はシャルアンの手によって本来見るはずの光景を目の当たりにすることはなかった。
これはかなりの侮辱罪に相当するわね。
シャルアンの手が目から離れたと思ったら、目の前には先程の家畜……男が横たわっていた。そういうことね。侍女の格好をさせても、腐らずに従騎士としての役目を果たした、そういうことになるのかしらね。
「無礼な行為をお赦し下さい、メルリルーゼ皇女」
「本当ね……ロイク・シャルアン。あなたの処遇をどうすべきかしら……」
「いかに皇女様の街であろうと、輩は常にお命を狙っているものにござりまする。故に、私は皇女様に失礼を致しながらもお命をお守りする行為を致しました。どうか、この身をいかようにも処して下さい……」
「――そうね」
なりたくてなったわけではない皇女。そして、この身を守るのは3人の従騎士。
一も二も口煩いだけで頼りたくもなかった。それでも、侍女に身を落としながらもわたくしを守って輩を取り除いた第三の従騎士だけには流石のわたくしも褒美を与えねばならないかもしれないわね。
「ロイク・シャルアン、あなたの剣をわたくしに寄越しなさい」
「え、あ、はい……如何様にも」
「この剣で横たわりの家畜を倒したというのね。ふふ、これでシャルアンも……」
剣先に見えているのはシャルアンの姿ね。
「覚悟は出来てございます……」
「では首を、怯えのない顔を近づけてくださる?」
「は」
本当に斬れるわけはないけれど、思いのほか重い剣だということを今更ながら知ることが出来た。この重さの剣を振って輩を斬れる者を侍女として置いておくわけにはいかないわね。
「ま、まてっ! リルーゼ! ロイクをどうするつもりか! 皇女に相応しくない剣をすぐに置け!」
「おいおい、まさか助けてもらったくせにロイクを斬るんじゃねえだろうな? 皇女といえどもそれはやっちゃならねえぜ?」
全く、隠れて見ているだけかと思えばこの期に及んで口を挟んでくるというのかしらね。結局、ライナードとサイウェルの2人には近しいと感じてもその機会は訪れることはなかったわ。
侍女としても見られるロイクを傍に置きながらも、身を挺して守る覚悟があると感じてしまった。これには流石がのわたくしも相応の褒美を与えなければこの場は収まりそうにない。
「あなた、ロイク。顔を近付けなさい!」
「は、はい」
「――!」
することはもう決まっていた。
「ロイク・シャルアン。第三の従騎士。あなたはわたくしからのベーゼを受けた者として、その身はわたくしの為にあるということを覚え、生涯において守り通さなければ許されないわ。その覚悟があっての守護だったのかしらね?」
「この身はたとえ、侍女であっても皇女様の為のもの。僕は皇女様のベーゼに誓いを立ててこれを貫きます」
「ふふ、いいわ。それならば、従騎士。いえ、傍付きの侍女に窶して仕えることね! よろしくて?」
「えっ……は、はい」
危ない所から救ったのが強さで誇る一と二の従騎士などではなく、最弱にして女々しい第三の従騎士など想像すらしていなかったことだわ。
助けられて恋に落ちるなど、そんな下らないことを知られるよりも誓いを立てさせる方が都合がいいというものね。
「む……どういうことだ? メルリルーゼはロイクに何をした? ここからでは見えなかったが……」
「ふ、あの性悪皇女がしたことってのは、一生ロイクをこき使うってことだな。まぁ、俺らはお守りしながらロイクの支えをするしかないみたいだ。その機会がこの先訪れるかどうかは知らないがな」
「よく分からぬが、万事解決となったのであれば辺りをうろつくことを再開してもよいのだな?」
「そういうことだ」
恋落ちを隠す為とはいえ、シャルアンにベーゼを与えた以上一生こき使ってやるとしようかしらね。んふふ……これで恋よりも先に常に逆らわない従騎士……いいえ、侍女を置くことに成功したわ。
「僕はリルーゼ様のお傍にいると誓います!」
「ええ、その言葉はわたくしのベーゼでもって誓わせてあげたわ。これからも家畜のように働くことを期待しているわね、シャルアン」
「は、はい」
「ふふ、いい返事!」
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