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第二章 隣の席のカレシ
17.真面目過ぎの七瀬は癒し系
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七瀬が帰ろうとしたから何となく服を掴んでしまった。袖口とかじゃなくて、とりあえず掴めるとこ全部。
「ん? どした?」
「何で帰るの?」
なんか後ろめたそうにしてるけど、なんで?
「いや、課題届けに来ただけだし。それに意外と元気そうだから」
「それだけ?」
「……そうだけど。ぶっちゃけサボってるからな。自分の家に帰っとかないとまずい気がするし、こう見えて内心焦ってる」
やっぱりサボってウチにきたんだ。
「でも、わたしを好きなんじゃなかったっけ?」
「そりゃあ好きだけど。でも、家に来ただけでもびびってんのに、もっと長く綾希といるとか流石に気が引ける」
びびってたんだ。
素直というか、こういうところは嫌いじゃないんだよね。ちゃんと気を使ってくれてるってところを見せるあたりがいい。
「ん、分かった。じゃあ、来週」
「おー。じゃあ、また」
七瀬はわたしの元気そうな姿に安心してそのまま外に出ていった。
……まぁ、そんなもんだよね。
「あれ? 帰っちゃうの? きみってアヤの彼氏くんだよね」
「あ、はい。綾希のお姉さんですよね? 俺、帰るので、綾希によろしくです」
「えっ!? お、お姉さん……? 七瀬くん、いつでも葛西家に来ていいからね。お姉さんは、大歓迎だから!」
「はい。じゃあ、俺は帰ります」
七瀬が帰ったと同じくらいに、鼻歌まじりのお母さんが帰ってきた。
凄く機嫌良いけどなんで?
「お帰り。アイスは?」
「はい、これ。あの男の子がアヤの彼氏くん? いいじゃん。私のこと、お姉さんだって! いい子だね~」
「七瀬は気を使いすぎなとこあるから」
「こらこらなんてことを言うの! まっ、あの子ならいいんじゃない? アヤに合ってそう」
お母さんはもう認めちゃってるんだ。お姉さんって言われたらそうなるかな。
「うん、席も隣だし。合ってる」
「でも席替えして離れたらどうするの? あ、でも彼氏になったら大丈夫か」
「そん時はそん時で悩むかも」
出来ればずっと隣に七瀬が座ってくれるのがいいけど、何でか席替えってするんだよね学校って。離れるの嫌だけどその時考えよう。
週明け。
すっかり熱もひいたわたしが教室に入ったら、女子たちの雰囲気が少しだけ変な気がした。
敵と味方と友達?
そんな構図が出来てるっぽかった。沙奈は敵のままだろうけど、沙奈の周りの女子が沙奈の味方をしてて、わたしには敵意剝き出し状態。
わたしの味方はというと、林崎くんと一緒に話をしていた女子たちくらい。沙奈以外の女子の友達が出来てたっぽい。
その中の一人が、積極的に声をかけてくる。
「泉 雪乃だよ。気軽に雪って呼んでいいよ。七瀬くんと付き合ってるんでしょ? 良かったじゃん! 取られなくて」
「あ、うん。ありがと」
沙奈、そしてわたしにも味方がいたっぽい。
でも、沙奈とは敵のままなのかな?
だからといって七瀬は取られたくないけど。どこかのタイミングで話す機会が出来ればいいんだけど、キス問題があるし無理かなやっぱり。
「綾希、おはよ。どした? ってか、林崎?」
「気にしないでくれていい。俺は普通に話してただけだよ。七瀬は葛西と付き合ってるんだろ? 邪魔しないから」
「それに……そっちの女子。綾希があいつ以外の女子と話してんの見た時ないけど、友達か?」
考えてみれば七瀬が編入する前から沙奈以外の女子と話したことがないかも。でも、ちょっとずつ変わってきてる。
いつまでも固定の友達とばかり遊ぶとは限らないし。
「今日からそんな感じ」
「へぇ。いんじゃね? でも、休み時間に席の近くとかにぎやかしいのもなんかな~」
「話せる時間が減るし?」
「まぁな」
「中間の勉強で沢山一緒いられるから、それでいいし」
この前から心配性?
「そか。なら、我慢しとく」
「七瀬の好きが上がったかも」
「よし、好感度が上がった」
そんな感じで、前期中間前に友達相関図が修正しそうな感じだった。
人間関係が劇的に変わるかもなんて思っていたけど実際はそうでもなくて、沙奈はごく普通に話しかけてきていた。
敵って意味は、沙奈の中ではあくまで七瀬に限定した意味だったみたい。七瀬に不意打ちキスしたことも悪いと思ってないみたいだけど。
七瀬は最初から沙奈のことを苦手と言っていたけれど、彼女はそうでもなくてむしろ好意的に思っていたらしい。
七瀬は優しいから、わたしには沙奈が苦手だとか言ってても実際にはあからさまに拒否ってたわけじゃなかった。だから今でも話しかけてくるんだと思う。
「綾希、おはよ」
「……沙奈?」
「んん~? 最近話してないから誰か忘れてしまったん?」
「なに?」
本当に変わらないね。
「別に何ってわけじゃないけど。あと、ついでにそこの輔もおはよ~さん!」
「……お前名前で呼ぶのやめろよ。そんなに親しくないぞ?」
「気にしてるん? あ、綾希は七瀬って呼んでるかぁ。でも、そこの弘人だって名前で呼ぶよ? そこまで気になるものでもないと思うけどなぁ」
微妙な空気を朝から作りだした沙奈は悪気なく自分の席に戻ってた。
「綾希ってあいつと友達って呼べる関係になってからどれくらい?」
「一年くらい」
「……ってことは、中学の時は違うんだ?」
「うん違う。そうだったとしても、クラス違ってたら覚えてないから」
人の顔とか覚えるの苦手だし。
「タイプが違くても友達か。ある意味で、綾希すごいな」
「ううん、結構似てる。沙奈もわたしも一人でいるのが好きだし。だから、他の女子と今みたいに話すことをしてなかった。集団が苦手」
「そっか。まぁ、いいや。俺は綾希と話が出来ればいい」
「……ん」
中間が迫ってきてるせいもあって、流石のわたしも寝ることはなくなった。
隣の七瀬をチラっと見ると、やっぱりわたしよりも真面目なんだってくらいにきちんと授業を聞いててノートも取ってた。
隣にいて近いけど話をするのは休み時間くらいだし、前ほど話しかけてきていない。それって、そういう関係になったからなのかなって思う。
今までだと多分、七瀬のアピールが凄かったというか自分をよく見せてただけだと。七瀬自身が真面目だから、やっぱり同じ真面目系のわたしが好きになったのかも。
わたしの場合、自称真面目であってそんなに授業に集中してない。そんな時、わたしなんかで本当にいいのかなって思ったりする。
「どした? なんかさっきから俺のこと見てるけど」
「七瀬を見るのが好きだから」
「――そ、そっか」
隣だから見ていられるけれど、席が離れたらきっとそうじゃなくなる――なんてことを最近は考えるようになっていた。
ただ幸いにして席替えは季節ごとというか前期中期後期で決まってるみたいだから、とりあえず七瀬と夏までは隣でいられる。
それならいいやって思えた。
「綾希、どこで勉強したい?」
「嫌です」
「いや、そうじゃなくて中間の対策の……」
「七瀬といられるところ」
「あー、うん。分かった」
そんなに束縛るつもりもないけど、一緒にいたいって思う。七瀬のことが好きって自覚してから、それが物凄く強くなった。態度では強く見せてないけれど、沙奈のことがあったから余計にそう思えた。
きっかけを作ってくれたのは何だかんだで沙奈だったわけで。
それに関しては一応感謝。ただ、恨みっこなしってなるとそこはまた別問題。やっぱり誰かを好きになると依存じゃないけど、離れたくないって気持ちが出る。
意識の高まりもやばい気がする。七瀬って優しいから余計にそんな感じ。
「図書ルームは……」
「却下」
「お前、贅沢過ぎんぞ。どこだって二人でいられるだろうに。どこがいいんだよ……」
「長くいられるところ」
そんな感じで七瀬を悩ませつつ、気付いたら寝てた。
七瀬見てたら眠くなるってくらい、隣の七瀬に癒されているかもしれない。そのうち彼に甘えられるくらいの態度を取れるようになるのだろうか。
「って、寝てるし……まぁ、いいや。俺も一緒にいたいって思ってるよ、綾希」
「ん? どした?」
「何で帰るの?」
なんか後ろめたそうにしてるけど、なんで?
「いや、課題届けに来ただけだし。それに意外と元気そうだから」
「それだけ?」
「……そうだけど。ぶっちゃけサボってるからな。自分の家に帰っとかないとまずい気がするし、こう見えて内心焦ってる」
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「そりゃあ好きだけど。でも、家に来ただけでもびびってんのに、もっと長く綾希といるとか流石に気が引ける」
びびってたんだ。
素直というか、こういうところは嫌いじゃないんだよね。ちゃんと気を使ってくれてるってところを見せるあたりがいい。
「ん、分かった。じゃあ、来週」
「おー。じゃあ、また」
七瀬はわたしの元気そうな姿に安心してそのまま外に出ていった。
……まぁ、そんなもんだよね。
「あれ? 帰っちゃうの? きみってアヤの彼氏くんだよね」
「あ、はい。綾希のお姉さんですよね? 俺、帰るので、綾希によろしくです」
「えっ!? お、お姉さん……? 七瀬くん、いつでも葛西家に来ていいからね。お姉さんは、大歓迎だから!」
「はい。じゃあ、俺は帰ります」
七瀬が帰ったと同じくらいに、鼻歌まじりのお母さんが帰ってきた。
凄く機嫌良いけどなんで?
「お帰り。アイスは?」
「はい、これ。あの男の子がアヤの彼氏くん? いいじゃん。私のこと、お姉さんだって! いい子だね~」
「七瀬は気を使いすぎなとこあるから」
「こらこらなんてことを言うの! まっ、あの子ならいいんじゃない? アヤに合ってそう」
お母さんはもう認めちゃってるんだ。お姉さんって言われたらそうなるかな。
「うん、席も隣だし。合ってる」
「でも席替えして離れたらどうするの? あ、でも彼氏になったら大丈夫か」
「そん時はそん時で悩むかも」
出来ればずっと隣に七瀬が座ってくれるのがいいけど、何でか席替えってするんだよね学校って。離れるの嫌だけどその時考えよう。
週明け。
すっかり熱もひいたわたしが教室に入ったら、女子たちの雰囲気が少しだけ変な気がした。
敵と味方と友達?
そんな構図が出来てるっぽかった。沙奈は敵のままだろうけど、沙奈の周りの女子が沙奈の味方をしてて、わたしには敵意剝き出し状態。
わたしの味方はというと、林崎くんと一緒に話をしていた女子たちくらい。沙奈以外の女子の友達が出来てたっぽい。
その中の一人が、積極的に声をかけてくる。
「泉 雪乃だよ。気軽に雪って呼んでいいよ。七瀬くんと付き合ってるんでしょ? 良かったじゃん! 取られなくて」
「あ、うん。ありがと」
沙奈、そしてわたしにも味方がいたっぽい。
でも、沙奈とは敵のままなのかな?
だからといって七瀬は取られたくないけど。どこかのタイミングで話す機会が出来ればいいんだけど、キス問題があるし無理かなやっぱり。
「綾希、おはよ。どした? ってか、林崎?」
「気にしないでくれていい。俺は普通に話してただけだよ。七瀬は葛西と付き合ってるんだろ? 邪魔しないから」
「それに……そっちの女子。綾希があいつ以外の女子と話してんの見た時ないけど、友達か?」
考えてみれば七瀬が編入する前から沙奈以外の女子と話したことがないかも。でも、ちょっとずつ変わってきてる。
いつまでも固定の友達とばかり遊ぶとは限らないし。
「今日からそんな感じ」
「へぇ。いんじゃね? でも、休み時間に席の近くとかにぎやかしいのもなんかな~」
「話せる時間が減るし?」
「まぁな」
「中間の勉強で沢山一緒いられるから、それでいいし」
この前から心配性?
「そか。なら、我慢しとく」
「七瀬の好きが上がったかも」
「よし、好感度が上がった」
そんな感じで、前期中間前に友達相関図が修正しそうな感じだった。
人間関係が劇的に変わるかもなんて思っていたけど実際はそうでもなくて、沙奈はごく普通に話しかけてきていた。
敵って意味は、沙奈の中ではあくまで七瀬に限定した意味だったみたい。七瀬に不意打ちキスしたことも悪いと思ってないみたいだけど。
七瀬は最初から沙奈のことを苦手と言っていたけれど、彼女はそうでもなくてむしろ好意的に思っていたらしい。
七瀬は優しいから、わたしには沙奈が苦手だとか言ってても実際にはあからさまに拒否ってたわけじゃなかった。だから今でも話しかけてくるんだと思う。
「綾希、おはよ」
「……沙奈?」
「んん~? 最近話してないから誰か忘れてしまったん?」
「なに?」
本当に変わらないね。
「別に何ってわけじゃないけど。あと、ついでにそこの輔もおはよ~さん!」
「……お前名前で呼ぶのやめろよ。そんなに親しくないぞ?」
「気にしてるん? あ、綾希は七瀬って呼んでるかぁ。でも、そこの弘人だって名前で呼ぶよ? そこまで気になるものでもないと思うけどなぁ」
微妙な空気を朝から作りだした沙奈は悪気なく自分の席に戻ってた。
「綾希ってあいつと友達って呼べる関係になってからどれくらい?」
「一年くらい」
「……ってことは、中学の時は違うんだ?」
「うん違う。そうだったとしても、クラス違ってたら覚えてないから」
人の顔とか覚えるの苦手だし。
「タイプが違くても友達か。ある意味で、綾希すごいな」
「ううん、結構似てる。沙奈もわたしも一人でいるのが好きだし。だから、他の女子と今みたいに話すことをしてなかった。集団が苦手」
「そっか。まぁ、いいや。俺は綾希と話が出来ればいい」
「……ん」
中間が迫ってきてるせいもあって、流石のわたしも寝ることはなくなった。
隣の七瀬をチラっと見ると、やっぱりわたしよりも真面目なんだってくらいにきちんと授業を聞いててノートも取ってた。
隣にいて近いけど話をするのは休み時間くらいだし、前ほど話しかけてきていない。それって、そういう関係になったからなのかなって思う。
今までだと多分、七瀬のアピールが凄かったというか自分をよく見せてただけだと。七瀬自身が真面目だから、やっぱり同じ真面目系のわたしが好きになったのかも。
わたしの場合、自称真面目であってそんなに授業に集中してない。そんな時、わたしなんかで本当にいいのかなって思ったりする。
「どした? なんかさっきから俺のこと見てるけど」
「七瀬を見るのが好きだから」
「――そ、そっか」
隣だから見ていられるけれど、席が離れたらきっとそうじゃなくなる――なんてことを最近は考えるようになっていた。
ただ幸いにして席替えは季節ごとというか前期中期後期で決まってるみたいだから、とりあえず七瀬と夏までは隣でいられる。
それならいいやって思えた。
「綾希、どこで勉強したい?」
「嫌です」
「いや、そうじゃなくて中間の対策の……」
「七瀬といられるところ」
「あー、うん。分かった」
そんなに束縛るつもりもないけど、一緒にいたいって思う。七瀬のことが好きって自覚してから、それが物凄く強くなった。態度では強く見せてないけれど、沙奈のことがあったから余計にそう思えた。
きっかけを作ってくれたのは何だかんだで沙奈だったわけで。
それに関しては一応感謝。ただ、恨みっこなしってなるとそこはまた別問題。やっぱり誰かを好きになると依存じゃないけど、離れたくないって気持ちが出る。
意識の高まりもやばい気がする。七瀬って優しいから余計にそんな感じ。
「図書ルームは……」
「却下」
「お前、贅沢過ぎんぞ。どこだって二人でいられるだろうに。どこがいいんだよ……」
「長くいられるところ」
そんな感じで七瀬を悩ませつつ、気付いたら寝てた。
七瀬見てたら眠くなるってくらい、隣の七瀬に癒されているかもしれない。そのうち彼に甘えられるくらいの態度を取れるようになるのだろうか。
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