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第五章 ラブ・カルテット
48.七瀬トライアングル⑤
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「綾希、何で家に……?」
「来たら駄目だった?」
「いや、そんなことない。ここへは先生が教えたのか?」
明らかに居心地悪そうだし、気まずそうにしてるのは元カノがいるからかな?
「先生に頼まれた。七瀬のノートを届けてくれって。でも、すぐ帰るから安心していい。だから、元カノとヨリを戻すなりなんなり……」
七瀬にノートを手渡し、わたしはすぐに踵を返す。そしてそのまま七瀬を見ることもなく、駅に向かってわたしなりの早歩きで歩きだした。
七瀬に対してわたしだけ甘い夢を期待していた……そう思いながら、とめどなく涙が流しながら。
……わたしと七瀬は付き合っていない。
自分自身にも誰に対しても言っていたのは確かだった。でも本当は別れていなくて、七瀬から告げられたのは「離れる」の言葉。
外でのご飯、学校の中、距離は離れたけれどきっと気持ちだけはそうじゃない。そういう意味でわたしを大事に想っていてくれている――そう思っていた。
だけど、そうじゃなかった。それなら、七瀬とは本当に離れた方がいいのかもしれない。
「あ~あ。輔、あの様子だと、あの子に誤解されたんじゃない? 泣きながら走りだしてたのが見えたよ? というか、追いかけなくてもいいんだ?」
「今の俺に追う資格なんてない。俺から離れたいって言ったからな。もちろん別れるつもりで言ったんじゃなくて、俺自身がまだガキだから。今さらなんて言えばいいのか分からない……」
七瀬は閉じた目に手を当てながら、何度も首を左右に振っている。
「はぁ? 好きすぎてどう接していけば分からなくなった系?」
「そんなところ……」
曖昧な態度を見せる七瀬に対し、
「言いたいことの意味は何となく分かるけどさぁ、でもあのままの状態で離れたら多分だけど、あの子は本当に輔と別れて他のライバル男子と一緒になるかもよ? それでもいいんだ? 私なんか、わざとあの子にふっかけたっていうのに!」
思わず嫌気がさして優美は地団駄を踏んでいた。
「でも、学校とかでも会えるしご飯を食べに行けば自然と話はするんだよな……」
「今ならまだ間に合うし今すぐ追いかけなよ! 輔だけしか好きじゃないとかって言う子は絶対ヤバいって! それとも、輔がライバル視してる男子に取られてもいいんだ?」
「……なわけ――!」
七瀬がムキになるのを予想していた優美は、綾希が向かった先に向かって無言で首をくいっと動かした。
「――っ! ああ、もうっ! 悪い、俺は行く! 優美、サンキュ!」
七瀬の走っていく背中を眺めながら優美はふと顔を上げ、何かしらを吹っ切ったかのように髪を振った。
「……全く、見た目はいいんだけど、まだまだお子ちゃまなんだよね、輔は」
自分から去っておいて後ろを振り向くも、七瀬は全然追いかけてきていなかった。
……やっぱりそうだよね。隣の元カノから離れてまでわたしを追いかけてくるわけない。
七瀬の「離れよう」という言葉は、きっと彼なりの優しさだった。
涙を流し、立ち上がるのも困難になったわたしに、別れようなんて言えなかったに違いない。
つまり、わたしと七瀬の恋はこれで終わり。席が隣なだけなのに、個性的なわたしを好きになってくれた。それだけでも感謝しないと。
これからまた学校でいつも通りに過ごしていれば、そうすればわたしはわたしでいられる。
「来たら駄目だった?」
「いや、そんなことない。ここへは先生が教えたのか?」
明らかに居心地悪そうだし、気まずそうにしてるのは元カノがいるからかな?
「先生に頼まれた。七瀬のノートを届けてくれって。でも、すぐ帰るから安心していい。だから、元カノとヨリを戻すなりなんなり……」
七瀬にノートを手渡し、わたしはすぐに踵を返す。そしてそのまま七瀬を見ることもなく、駅に向かってわたしなりの早歩きで歩きだした。
七瀬に対してわたしだけ甘い夢を期待していた……そう思いながら、とめどなく涙が流しながら。
……わたしと七瀬は付き合っていない。
自分自身にも誰に対しても言っていたのは確かだった。でも本当は別れていなくて、七瀬から告げられたのは「離れる」の言葉。
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だけど、そうじゃなかった。それなら、七瀬とは本当に離れた方がいいのかもしれない。
「あ~あ。輔、あの様子だと、あの子に誤解されたんじゃない? 泣きながら走りだしてたのが見えたよ? というか、追いかけなくてもいいんだ?」
「今の俺に追う資格なんてない。俺から離れたいって言ったからな。もちろん別れるつもりで言ったんじゃなくて、俺自身がまだガキだから。今さらなんて言えばいいのか分からない……」
七瀬は閉じた目に手を当てながら、何度も首を左右に振っている。
「はぁ? 好きすぎてどう接していけば分からなくなった系?」
「そんなところ……」
曖昧な態度を見せる七瀬に対し、
「言いたいことの意味は何となく分かるけどさぁ、でもあのままの状態で離れたら多分だけど、あの子は本当に輔と別れて他のライバル男子と一緒になるかもよ? それでもいいんだ? 私なんか、わざとあの子にふっかけたっていうのに!」
思わず嫌気がさして優美は地団駄を踏んでいた。
「でも、学校とかでも会えるしご飯を食べに行けば自然と話はするんだよな……」
「今ならまだ間に合うし今すぐ追いかけなよ! 輔だけしか好きじゃないとかって言う子は絶対ヤバいって! それとも、輔がライバル視してる男子に取られてもいいんだ?」
「……なわけ――!」
七瀬がムキになるのを予想していた優美は、綾希が向かった先に向かって無言で首をくいっと動かした。
「――っ! ああ、もうっ! 悪い、俺は行く! 優美、サンキュ!」
七瀬の走っていく背中を眺めながら優美はふと顔を上げ、何かしらを吹っ切ったかのように髪を振った。
「……全く、見た目はいいんだけど、まだまだお子ちゃまなんだよね、輔は」
自分から去っておいて後ろを振り向くも、七瀬は全然追いかけてきていなかった。
……やっぱりそうだよね。隣の元カノから離れてまでわたしを追いかけてくるわけない。
七瀬の「離れよう」という言葉は、きっと彼なりの優しさだった。
涙を流し、立ち上がるのも困難になったわたしに、別れようなんて言えなかったに違いない。
つまり、わたしと七瀬の恋はこれで終わり。席が隣なだけなのに、個性的なわたしを好きになってくれた。それだけでも感謝しないと。
これからまた学校でいつも通りに過ごしていれば、そうすればわたしはわたしでいられる。
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