1 / 12
第1話 格安物件から手違いで異世界転移した件
しおりを挟む
【木間暮 ひとし(38)殿。家賃滞納の繰り返しにより、本日付で独身寮からの退寮を求め、自活による改善を求めるものとする】
今日も頑張るか――と気合を入れて事務所に行くと、仕事はクビじゃないけど、独身寮から追い出されるという非情通告があった。
もちろん自分が悪いんだが。
独身寮と言っても自分以外は普通の住人が住むマンション。だから普通に家賃滞納扱いになるわけだが、それにしたって急すぎないか?
驚きと戸惑いをする分際でもなく、自分の浪費癖が一番の原因だ。だが、ちょっと落ち込んで涙が出そうなので、仕事を早退し俺は潔く退寮を決める。
その足で格安物件を求めて早速不動産へ。
「どこか格安激安なところはないっすかね? 出来れば優しい隣人から余りものをおすそ分けされるようなハートフルなアパートがあれば~」
「はぁ!? そんな都合のいいフィクションみたいな……あっ、ありますあります! ここから結構遠いんですけどね……どうします? ほぼタダみたいな物件ですよ」
「そこにします!!」
――で、即決した俺は超格安物件だった山奥に到着するが。
何じゃこりゃあ!
アパートじゃなくて完全に廃墟じゃないか。いくら格安物件だからって、こんなのあんまりだろ。
若者でもない俺に適当物件あてがったのかよ。
着いた先は、人里外れの放棄された元なんちゃらガ丘タウンという薄汚れた看板が辛うじて残っている集落だった。
そしてものの見事に、誰もいない。小動物らしき生物もいなければ怪しげな人影も見当たらない、正真正銘の荒れ集落。
そして契約した格安物件は、どでかい岩山にくっついたボロボロの山小屋もとい、多分アパートのよう。
どうせ自分以外住んでいなくて廃墟物件だろう――そんな思いで頑固そうな入り口のドアを開けて入ると、
「おじいちゃん、誰か来たっぽい」
「ふが~? おぅおぅ……きっとあの子じゃな」
……などと、先住民らしき複数の声が奥の灯りの漏れる部屋から聞こえた。
まさか心霊物件か?
だが安ければどうでもいい俺は、恐れを抱くことなくその部屋に向かって立ち入った。
「……じ、じいさんと女の子……?」
勢いよく踏み込んだにもかかわらず、畳部屋にいたのは茶を啜る高齢のお爺さんと、テレビも何もない部屋で寝そべる少女の姿があった。
「よぉきたのぉ! ひとしは転生が初めてじゃったか?」
「はぁ? 転生?」
何言ってんだこのじいさんは。
「お、おじいちゃん……。間違って転移させたっぽい。だから転生してないよこの人」
「そうじゃったか……まぁ、どっちにしても変わらんじゃろ」
「ひとし。こっちに座って!」
「へ?」
「話があるから。早くっ!」
何だか家族みたいな口の利き方だな。まぁ、俺の親はすでに亡くなって帰る故郷そのものがないから家族って響きも懐かしいが。
どうやらここの序列は少女が上でじいさんが下とみた。
なので、素直に言うことを聞くことにする。
「……で、俺は今どのような状態?」
「ひとしは異世界に転移した。だから、これからは私たちと一緒に暮らす」
「異世界? 日本じゃなくて?」
「似てるようで別。こっちは魔物がいる」
なるほど、よく分からないが本当っぽいな。
「で、俺はここに住んでいいので?」
「うん。住まないと生き残れない。手違いがあって、転移されたから責任をもって私たちが世話をする」
じいさんはフガフガ言ってて全然話が出来そうにないが、どうやら転生させるはずの俺を間違えて異世界転移させたようだ。
「……俺の名前はなぜ知ってる?」
「木間暮ひとし。独身。孤独。スーパーマーケットの店長をしているのに、浪費癖が酷くて独身用マンション寮を追い出される。以上」
「あぁ、転生転移出来る存在だから何でもお見通しか。ってことは、神様か」
「そういうのは鋭いね」
それくらいは分かる。
「で、俺はここのどの部屋に?」
「基本はここ、広間。普段は部屋にいさせないから心配無用」
「はい? ここって、神の間で寝たり食べたりするのか?」
「そう。ひとしのためにもそれがいい」
そういや、さっきから口の利き方がかなり失礼だが、転生と転移をミスられたしタメ口で問題ないだろ。
「荷物はそれだけ?」
「まぁ。腹を空かさなければいいしな」
「そう……じゃあ――」
はっ?
俺の言った言葉に笑顔を見せた少女は、無言で両手を叩いた。
――直後、目の前が暗転。
寝落ちという名の睡眠に入っていた。
今日も頑張るか――と気合を入れて事務所に行くと、仕事はクビじゃないけど、独身寮から追い出されるという非情通告があった。
もちろん自分が悪いんだが。
独身寮と言っても自分以外は普通の住人が住むマンション。だから普通に家賃滞納扱いになるわけだが、それにしたって急すぎないか?
驚きと戸惑いをする分際でもなく、自分の浪費癖が一番の原因だ。だが、ちょっと落ち込んで涙が出そうなので、仕事を早退し俺は潔く退寮を決める。
その足で格安物件を求めて早速不動産へ。
「どこか格安激安なところはないっすかね? 出来れば優しい隣人から余りものをおすそ分けされるようなハートフルなアパートがあれば~」
「はぁ!? そんな都合のいいフィクションみたいな……あっ、ありますあります! ここから結構遠いんですけどね……どうします? ほぼタダみたいな物件ですよ」
「そこにします!!」
――で、即決した俺は超格安物件だった山奥に到着するが。
何じゃこりゃあ!
アパートじゃなくて完全に廃墟じゃないか。いくら格安物件だからって、こんなのあんまりだろ。
若者でもない俺に適当物件あてがったのかよ。
着いた先は、人里外れの放棄された元なんちゃらガ丘タウンという薄汚れた看板が辛うじて残っている集落だった。
そしてものの見事に、誰もいない。小動物らしき生物もいなければ怪しげな人影も見当たらない、正真正銘の荒れ集落。
そして契約した格安物件は、どでかい岩山にくっついたボロボロの山小屋もとい、多分アパートのよう。
どうせ自分以外住んでいなくて廃墟物件だろう――そんな思いで頑固そうな入り口のドアを開けて入ると、
「おじいちゃん、誰か来たっぽい」
「ふが~? おぅおぅ……きっとあの子じゃな」
……などと、先住民らしき複数の声が奥の灯りの漏れる部屋から聞こえた。
まさか心霊物件か?
だが安ければどうでもいい俺は、恐れを抱くことなくその部屋に向かって立ち入った。
「……じ、じいさんと女の子……?」
勢いよく踏み込んだにもかかわらず、畳部屋にいたのは茶を啜る高齢のお爺さんと、テレビも何もない部屋で寝そべる少女の姿があった。
「よぉきたのぉ! ひとしは転生が初めてじゃったか?」
「はぁ? 転生?」
何言ってんだこのじいさんは。
「お、おじいちゃん……。間違って転移させたっぽい。だから転生してないよこの人」
「そうじゃったか……まぁ、どっちにしても変わらんじゃろ」
「ひとし。こっちに座って!」
「へ?」
「話があるから。早くっ!」
何だか家族みたいな口の利き方だな。まぁ、俺の親はすでに亡くなって帰る故郷そのものがないから家族って響きも懐かしいが。
どうやらここの序列は少女が上でじいさんが下とみた。
なので、素直に言うことを聞くことにする。
「……で、俺は今どのような状態?」
「ひとしは異世界に転移した。だから、これからは私たちと一緒に暮らす」
「異世界? 日本じゃなくて?」
「似てるようで別。こっちは魔物がいる」
なるほど、よく分からないが本当っぽいな。
「で、俺はここに住んでいいので?」
「うん。住まないと生き残れない。手違いがあって、転移されたから責任をもって私たちが世話をする」
じいさんはフガフガ言ってて全然話が出来そうにないが、どうやら転生させるはずの俺を間違えて異世界転移させたようだ。
「……俺の名前はなぜ知ってる?」
「木間暮ひとし。独身。孤独。スーパーマーケットの店長をしているのに、浪費癖が酷くて独身用マンション寮を追い出される。以上」
「あぁ、転生転移出来る存在だから何でもお見通しか。ってことは、神様か」
「そういうのは鋭いね」
それくらいは分かる。
「で、俺はここのどの部屋に?」
「基本はここ、広間。普段は部屋にいさせないから心配無用」
「はい? ここって、神の間で寝たり食べたりするのか?」
「そう。ひとしのためにもそれがいい」
そういや、さっきから口の利き方がかなり失礼だが、転生と転移をミスられたしタメ口で問題ないだろ。
「荷物はそれだけ?」
「まぁ。腹を空かさなければいいしな」
「そう……じゃあ――」
はっ?
俺の言った言葉に笑顔を見せた少女は、無言で両手を叩いた。
――直後、目の前が暗転。
寝落ちという名の睡眠に入っていた。
12
あなたにおすすめの小説
暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――
まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。
彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。
剣も魔法も使えない。
だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。
やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、
完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。
証明できぬ潔白。
国の安定を優先した王の裁定。
そして彼は、王国を追放される。
それでも彼は怒らない。
数字は嘘をつかないと知っているからだ。
戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、
知略と静かな誇りの異世界戦略譚。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる
初
ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。
レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。
これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
主人公はあまり戦ったりはしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる