格安物件借りたらサボり癖のある神様が住んでた

遥風 かずら

文字の大きさ
3 / 12

第3話 ほら、痛くない

しおりを挟む
 ……神々と夕飯を食べ終え食器を洗い終わった俺は、今度こそちゃんとした理由を訊こうと居間へ戻る。

 すると神たちの姿はなく、そこには適当な武器が部屋の床一面に散らばるウェポンルームに変わっていた。

 神の間は神の気まぐれか、それともからかいなのか分からないが、いつでも自由に変えられるようだ。

「……いくらダンジョンで武器が欲しいって思ったからって、ありとあらゆる……それこそ手当たり次第の武器を集めてどうしろっていうんだよ」
「うん。私もそう思う」
「だよなぁ……って、みこ様!? え、なんで?」

 なぜダンジョン内にみこ様が?

 もしやダンジョンを作った神様なのか? 

「違う。ダンジョンはおじいちゃんの担当。だけど、元々ここはダンジョンが先にあった異世界の大地。少し手を加えただけでいじってない」
「なるほど」

 最初から姿を見せるならそう言って欲しいぞ。

「ひとしを甘やかしたいって言ってた」
「だから武器だらけの部屋を?」

 みこ様は静かに頷いた。

 それにしてもみこ様を失礼ながら観察させていただくと、背丈はそれほど高くなく、それでいて名前のとおりの巫女装束を着ている。

 髪型はイメージと違って黒髪ではなく銀髪。巫女ではなく神だから髪の色は関係なさそうだけど。小顔効果があるとされるショートヘアだが、元から顔が小さいから可愛さが際立っているだけだな。

 ナチュラルメイクまでしていて、神と思わなければ可憐な少女にしか見えない。

「お世辞?」
「えっ?」

 心の中でも覗かれたかのように、みこ様は俺をじっと見つめている。

「ひとしの感想が可憐な少女」
「あ……あぁ、心の中もプライバシーはないのね」
「ひとしが変な想像してたら見れないし拒む。でも、嬉しいのは自然に見える」

 変な想像ってそんな失礼な。

「で、この武器はどれでも使っていいのか? 全くの素人だけど……」
「じゃあ試していい」

 今が朝なのか翌日の昼なのか不明だが、一緒に夕飯を食べたおかげか少しだけくだけてきたか?

「あぁ、じゃあ足下の大剣を――」

 そう言ってすぐ足下に見えている重そうな大剣を拾おうとすると、ザクッ……という、擬音にすれば多分そんな音がしてもおかしくない短剣が俺の腕に振り下ろされていた。

「いっ――たくない? 痛くない……だと!?」

 いやしかし、中にはギザギザなのこぎりのような武器も見えていて見るからに痛そうなんだが。

「あ~、みこ様にお願いがありまして。そこに落ちてるのこぎりで俺を……」

 どうせ痛くないゴム製だろ。腕まくりしておくか。

「地獄に行きたい願望?」
「えっ、まさか本物ののこぎりですか?」
「……とりあえず、ひとしが希望してるから切ってあげる」

 おいおいまさかの本物が紛れてた?

「ちょっ、まっ――!」

 もし本物ならシャレにならないし痛いのは勘弁して欲しいし、怖すぎて思い切り目を閉じてしまったぞ。

 直後、ふにゃっとした感触が腕に感じられる。

「……ほら、痛くない。全部偽物のレプリカでゴム製。痛い方がどうかしてる」
「痛……くない、な」

 神にすっかりとからかわれたうえ、中々に辛辣なお言葉を頂いた。

「これって何のためなんだ?」
「ひとしが武器が欲しいって言ったからおじいちゃんが願いを叶えた。それだけ」
「いやっ、欲しいって思ったけど、傷つかない武器に何の意味があるんだ? せめて魔物には有効ダメージがある武器を所望するぞ」

 そういや、異世界に来てダンジョンにいて魔物と追いかけっこまでしてるんだから、そろそろ魔法をぶっ放す時間がきてもおかしくないよな?

「ところで今後もダンジョンに行かせるなら魔法を……」

 格安物件にダンジョンがセットになってるんなら、いくら神の加護があってもいずれケガを負ったり命の危険性も高まる。

 そうなる前に少しでもリスクを回避しておきたい。すでに不思議な力を見せられているし、平凡な人間にも魔法を使えるようにするくらいは可能なはずだ。

「ひとしは今まで独身でぼっち。お金にだらしなくて、なぜか仕事だけは真面目にやってきただけの人。そんな人がこんな初めから魔法を使ったら、きっと自分で何とかしようと思わなくなる。だから、駄目」

 みこ様、厳しいご意見ありがとうございました――じゃなくて!

 独身ぼっちは余計なのでは?

「……大丈夫。ひとしには私たちがいる」

 そう言うと、みこ様は自信たっぷりな表情を見せ、口角を上げながら微笑みを見せた。

「うん? 神のご加護を受けられるって意味だよね?」
「分からない?」
「加護以外でって意味ならちょっと思いつかない……」
「そう……それは残念。ひとし、どれか使いたい武器を手にして部屋の中央に立って」

 何だか申し訳ないって思うくらい、みこ様が落胆している。しかもゴム製の武器を手にして真ん中に立てとか。

 まさかゴム製の武器でダンジョンに落とすんじゃないよな?

 そんなスパルタなはずはないと信じながら、端の方に埋もれている片手の武器を手にした。一番輝きを放っている武器なら、魔物への目くらましくらいになるだろ。

 右手でそれを持ち上げると、今まで持った中で一番の重量感があった。

「え、今度こそ本物?」

 期待を持ちながら部屋の中央に立ってみこ様の反応を待つと、それまで立っていた場所にみこ様の姿がなく、俺だけポツンと残されていた。

 ……本当に気まぐれな神様だな。

 そう思ったのも束の間――元々存在しなかったであろうウェポン部屋が、まるで真下にとてつもない強力な掃除機でもあるかのように、大穴の中へと吸い込まれていく。

 ぬおおおお!!

 今度は穴の中に落とされるのかよ~!

 ボロボロのアパートでもいいから自分の部屋でゆっくり休みたいだけなのに、神々の試練とでもいうかのように、俺はまたしてもダンジョンへと落とされた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――

まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。 彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。 剣も魔法も使えない。 だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。 やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、 完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。 証明できぬ潔白。 国の安定を優先した王の裁定。 そして彼は、王国を追放される。 それでも彼は怒らない。 数字は嘘をつかないと知っているからだ。 戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、 知略と静かな誇りの異世界戦略譚。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

処理中です...