パーティーから追い出された劣等賢者ですが、最強パーティーを育てて勇者を世界から追い出そうと思います。

遥風 かずら

文字の大きさ
10 / 52
第1章:劣弱の賢者

10.旧知の仲を信じる道へ 1

しおりを挟む

「アクセリさま、これからどうされますか?」
「ん、ああ……パディンのことはギルドの連中に任せたからいいとして、問題は山積みだからな」
「わ、わたしはずっと、ずーっと! アクセリさまのお傍にいますから! お、置いて行かないでくださいね?」

 跫音の鳴る洞窟で出遭った黒騎士に、俺は手を出した。

 しかし基本そのものが弱くなり過ぎた俺では、勝てることが叶わなかった。

 どういうわけか、三白眼キツネ娘がいたおかげで今の命があるわけだが、どっちにしても俺もこの子らも、もっと力をつけてやらねば世界がどうこう言えるはずもない。

「ふ、パナセのような愉快な娘を置くバカはここにはいない。教えることが山ほどあるからな」
「ゆ、愉快な娘じゃないですよぉ~むぅぅ」

 不貞腐れのパナセは、中々に愛嬌がある。

 改めてこのでたらめな薬師を拾ったことには、天に感謝せねばならないな。

「ヌシさま、ストレ、里、帰る……」
「あん? 里だと? 竜人の里に帰ることでお前はどう変わる?」
「……不明。里、力つく。里、戦う」
「里に帰ればストレは強くなるというのだな? では、そこに行くとするか」
「ダメ。ヌシさま、人間。竜の里、立ち入る、認めない」

 弱くなっていなければ、たとえ厄災の竜だろうと気にもしなかったのだが、パナセを連れて行くだけで何かの災いを起こされても困る。

 ここは戦力増強をして来てもらうとするか。

「いいだろう。ストレ、次に俺の元へ姿を見せる時があれば、確実に強くなって来て見せろ。そうでなければ、魔王も勇者も消し去れ無いぞ?」
「……分かる。じゃあ、帰る。バイバイ、ヌシさま、パナ……」
「待っているぞ」
「えっ……えええええええ!? あれっ、アクセリさま! い、いいんですか? あの子、どこかに行っちゃいましたぁぁ!」
「そう騒ぐな。ストレは己の弱さを悔いたはずだ。パディンの前で沼を作り出したとはいえ、あの力を放っただけで、その後は何の役にも立たなかったと子供ながらに思ったはず。それを悟った上で俺の元を離れる。寂しいが、成長出来るものなら行かせてやったまでだ」

 正直いって、パナセと二人だけの現状を変えてくれるというならば、いくらでも強くなって帰って来て欲しいものだ。

「はわわわわわわ!? ふ、ふふふふふ……二人きり~!?」
「どうした? 俺と二人きりが嫌か? 最初の出会い状態に戻ってしまうわけだが……」
「ととと、とんでもないですっ! こ、こここ、この身を盾にしてでも、アクセリさまをお守りするのが薬師としてのお役目……はぎゃっ!?」

 おっと、ついついパナセの頭をどついてしまった。

「薬師が盾にだとか、それはあり得ん。パナセ、お前は俺の傍にいろ! 俺の為に新薬でも、でたらめ薬でも構わん。お前自身も、もっと強くなって見せろ! 俺を守るというのならな」
「ふ、ふんふんふんふん! つ、強くなりますよ~!」
「くくく、可愛い奴め」

 さて、薬師は現状維持といったところになるが、このまま闇雲に進んだところで、賊に襲われて身ぐるみを剥がされるのがオチだ。

 あまり期待もかけられないが、強い賢者として生きた時の仲を信じて、奴の所に行くしかないか。

「パナセ、お前は体力は問題ないか?」
「は、はいっ! むしろ、それだけが取り柄ですっ!」
「よし、ではひたすらに歩くぞ。ついて来い!」
「ど、どちらへ行かれるのですか?」
「旧友……いや、旧知の仲の奴の所だ」

 あまり頼りたくはないが、弱くなった俺を知れば態度を変えて味方になってくれるはずだ。

「アクセリさまのお友達……そのお方も、賢者さまですか?」
「賢者は世界に俺しかいない……ソイツは、少々面倒な奴だが……多分、パナセごときでも気に入ってくれるはずだ……」
「え? ええ? どんな怖い男の方なのですか!? 怖い方は怖いです……」
「心配するな。俺は賢者の時から、男の友人がいなかった男だ。ソイツは紛れもなく女だ……見た目だけはな」

 見た目と性格は別物だが、何とかなるだろう……多分。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...