追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら

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陸頁:属性石との関わり

120.聖堂騎士の頼み事

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『ちょっとちょっとちょっと~!! 遅すぎですよエンジさん!!』

 ログナに戻った俺たちは、彼女が普通に戻っていたことに驚く。
 そこには驚いて固まったアースキンとラフナンの姿があり、さらには見慣れない狼族の姿もあった。

 彼女の姿に、俺たちも驚きを隠せない。

「レ、レシス! 戻っていたんだ……というより、どうやって……」
「何てこと……。レシスは不死身なのかしら……」
「にぁ? レシスがいるにぁん?」
「人間なのに恐ろしいでーす」
「絶対防御は無いはずなのに、何故……」

 そんなことを思っていたら狼族、それも明らかに位が高そうな女性が声をかけて来た。
 騎士鎧を身に着けているということは、王国の騎士のように見える。

 宝石を腕に着けているということは、アースキンの知っている女性か。

「にぁにぁ! ローザにぁん!」
「お久しぶりでございます。リウさま」
「にぅ!」

 リウの知り合いなのだろうか。
 ネコ族と狼族に接点は無さそうなのに、リウが嬉しそうにしているなんて。

「えっへん! エンジさん、私が何故お先にログナにいるかと言いますと~」
「――あなたさまがエンジさまでございますね」
「そうだけど、あなたは?」

 レシスが鼻高々に何かを言おうとすると、騎士の女性が俺の前で膝をついた。
 そして、

「は。わたくしは、ルナリア王国の聖堂騎士ローザにございます!」
「ルナリア王国……もしかして、アースキンがいた所の――」
「さようでございます。わたくしは以前、そこのリウさまとレシスさまに救われたのでございます。その恩を返したく、ログナに向かっておりましたところ……レシスさまが浮いており」
「レシスが飛んで来たと?」
「はい。咄嗟のことでしたが、わたくしが手を差し伸べましてございます」

 チラッとレシスを見ると、理由を言いたかったのか悔しそうにしている。
 なるほど、聖堂騎士の彼女が遭遇して助けられたわけか。

「ここへは恩を返すってことと、アースキンに会いに?」
「いえ、賢者に会う必要はございません」
「そ、そうなんだ」

 アースキンの落胆した表情を見るに、そういうことらしい。
 それにしても、俺の知らぬ間にリウとレシスが人助けをしたとは驚きだ。

「賢者では無く、わたくしはエンジさまにお会いしたく参りました!」

「「「ええぇっ!?」」」

 この場のリウ以外が驚きの声を上げた。
 聖堂騎士、それも狼族でも美人な女性が一体何の用だろう。

「き、聞いていませんよ!? 私とリウちゃんに会いに来たんじゃないんですかぁぁ?」
「レシスさまをお救い出来て、わたくしは嬉しく思います。ですが、それが目的では無いのです」
「えぇぇ、そんなぁぁぁ」
「にぁ? エンジさまじゃないと難しいことかにぁ?」
「……ええ、人間相手には人間が適していると思いまして」

 ログナにまで足を運んで来るとは、ただ事では無さそうだ。
 その前に、

「ローザさん。どうか楽な姿勢で」
「で、ですが……!」
「ここは俺の国ではあるけど、だからといって膝をつく者はいないからね。楽にしてくれると」
「承知いたしました」

 ――そう言うと、ローザはその場に姿勢よく立った。

「それで、目的は……?」
「は。エンジさまに、とある人間の護衛をお願いしたく、参上いたしました」
「護衛?」
「その者は鍛冶師でございます。我が王国に滞在しておりましたが、石が騒ぐといい始め……至急町へ戻りたいとのこと」
「ふむ……。ローザさん。あなたでは厳しいのです?」
「わたくしは王国の聖堂騎士。特定の誰かを守護する立場であり、旅の人間を守護するわけにはいかないのです」

 石が騒ぐというと、ゼースヒルのことが関係でもしているのだろうか。
 リウとレシスが関わっている人だし、断る理由は無い。

「分かりました。それでは、一息入れながら話を聞きますよ」
「――! ありがたいお言葉にございます。では、近くのレストランで」
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