追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら

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陸頁:属性石との関わり

121.鉱石採掘の町アルファス

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「エンジさま、失礼いたします……」
「えっ……あ、いや、すみません」
「い、いえ、これしきのことですので……」

『『『むぅぅぅぅ!!』』』

 リウたちの怒りが、建物全体を揺らしてしまっている。

『ひ、ひいいい! お、お客様、お店が壊れてしまいます~!』

 ――などと口元を拭いてもらっただけなのに、レストランが危うく壊滅しかけてしまった。

 ◇◇

 ログナのレストランで聖堂騎士ローザをもてなした後、彼女に同行し、まずはルナリアへ向かうことになった。

 ゆっくりしてもらうつもりだったが、王国に一刻も早く戻りたいらしく、足早に店を出る。

「お代は――」
「気にしないでください、ローザさん」
「お優しいのですね」
「いやいや、そんなことは」
「不思議な縁ではありますが、わたくしは縁を大事にしておきたく願います」

 聖堂騎士だからなのか、心が綺麗な人のようだ。
 レッテと同じ狼族なのに、何だか緊張してしまう。

「むー!」
「あれ? あなたは賢者配下のレッテ! 今はエンジさまに仕えているのですね。フフ、仕えている方がエンジさまで羨ましい限りです」
「ヌシさまは、レッテが守る! 賢者は関係無い」

 落ち着いた女性で気になるが、レッテの機嫌が悪くなりそうなのであまり見ないようにしなければ。

 ◇◇

「エンジさま。まもなく着きます」
「王国が近くて良かったよ」
「ええ」

 ルナリア王国はログナから比較的近い所にある。
 そのおかげで、時間がかかることなく王国にたどり着いた。

 王国に入ってすぐに、鍛冶師の方から声をかけてきた。

「おぅ! 待ってたぜ!」
「あれ、どこかで会いましたっけ?」
「面識はねえな。ゲンマで見かけたってだけだ」
「ゲンマ……城塞都市の?」
「あんたら、属性石をあそこで掘ったろ? オレもそこにいたんだよ」
「えっと、護衛を頼みたいんでしたっけ?」
「ああ、頼む! 早くしないと町が大変な目に遭いそうなんでな」

 鍛冶師の人が焦っているということは、よっぽどのことが起きているということだろうか。

「分かりました。俺はエンジ・フェンダーです。あなたは?」
「おお、そうだったな。オレは、デリオンだ。よろしく頼む」

 デリオンと名乗った鍛冶師は、すでに出発支度を済ませていて俺たちを急かしている。

「エンジさん、急いでどこへ行こうとしてるんですか~?」
「あ、そうだ」
「ほれ、急いでくれ」
「えーと、どこへ行けば?」
「鉱石採掘の町アルファスだ。ここからかなり歩くが、あんたらならすぐだろ!」
「聞いたこと無い町なんですが……」

 ゲンマとは別に、鉱石が出る町があることも知らなかった。
 果たして信用していいのか。

 ローザの方に視線をやると、

「ご存知ないのですか? では、ただいま地図をお持ちいたします!」

 地図か。
 まだまだ自分の足で動かないと、訪れていない町があるということみたいだ。

「こ、ここの山は……!」
「あん? 知ってんのか? そこにオレの町でもある、アルファスがあるってわけだ!」

 俺たちは、聖堂騎士ローザが持って来た地図を眺めた。
 すると、

「エンジさま、この場所はあの洞窟の……」
「キミも気付いたか? ルールイ」
「決して近くでは無いにしても、同じ地形に位置していますわ。何らかの影響があるのでは?」
「……その可能性が無くは無いのか」

 鍛冶師デリオンが指差した山の地形を見てみると、反対側には崩れたゼースヒル洞窟があった。
 違う山だとはいえ、ルールイの言うように関わりがあるかもしれない。

「ん? アルファスの山に何かあんのか?」
「いえ、ただこの前行った洞窟の山と同じ位置にあるみたいなので、気になっただけですよ」
「洞窟? そこで属性石でも見つかったのか?」
「無かったですよ。何も」
「――だろうなぁ。だが心配はいらねえ! アルファスの山は鉱石採掘し放題だぜ! そういうわけだから、さっさと行くぜ!」
「は、はぁ」

 デリオンが何か知っている感じに思えたけど、気のせいだろうか。
 鉱石が採掘し放題という割には、焦りを見せているのも気になる所だ。

「エンジさま、ご出発ですか?」
「急ぎのようだし、行くとします。ローザさん、レシスを助けてくれてありがとう」
「お、恐れ入ります。エンジさま、またここへお寄り下さいますか?」
「もちろん」
「わたくしも、今度は落ち着いてログナを訪れたいと思います。その時は是非……」
「ど、どうも」

 ローザに見送られ、デリオンと共に歩いて向かうことになった。
 森移動はむやみやたらに使わない方がいいと、ルールイに言われたからでもある。

 もっともアルファスの山までは王国からだとそれほどかかる距離でもなく、半日ほどで着くらしい。
 
 道中では護衛を頼まれるまでもないレベルの魔物が、俺たちを襲って来た。
 それも複数だったので、確かに鍛冶師一人だけで山に向かうのは厳しいようだ。

 そういう意味で、護衛依頼されたことは間違いじゃないことに納得した。

「にぁ~久々に魔物と戦った気がするにぁ」
「何を言うかと思えば、あなたはこの前わたくしたちと戦ったでしょうに! もうお忘れかしら?」
「本当でーす! 影と戦いまくったのにー!!」
「にぅ、あれはただの影だったにぅ。戦った気がしなかったにぁ」

 リウの言うように、影の獣はコピーして分かったとおり、実体の無いものだった。
 あの洞窟そのものが無かった可能性もあるが、そうだとしたらラフナンたちは……。

「おぅ、エンジ! 日も暮れたが、あそこがアルファスの町だ! ここまで悪かったな!」
「俺たちも護衛が果たせたようで良かったですよ」
「おいおい、護衛はここまでじゃねえぞ? 言っただろ? 石が騒いでるって!」
「採掘する時も……ですか?」
「おうよ! まぁ、とりあえずシュムック広場でみんなが待ってるから、歩け歩け!」
「……みんな?」

 デリオンの案内の下、アルファスの町に入る。
 町の入り口はすぐに広場が広がっていて、散りばめられた宝石が至る所に飾られていた。

「どうだ? 綺麗な町だろ~? 宝石広場のシュムックだぜ!」
「宝石広場……な、何ともすごい」
「にぅぅ!! ピカピカにぁ~!」
「エ、エンジさん……」
「ん? レシス? どうかした?」
「ここの宝石を、私に全てくれてやるってことなのですね!?」
「――何でそうなるんだ……」

 宝石でプロポーズなどと、レシスはまたしても妄想を爆発させているようだ。
 レシスはともかく、レッテやルールイも夢中になるほど、彩の宝飾で目を奪われている。

『ようこそ、アルファスへお越しくださいました!』

 宝石に気を取られていたら、いつの間にか広場には大勢の人が集っていた。
 その中からひとりの女性が近づいて来る。

「エンジ、彼女が町長だ」
「町長……また随分派手な……」
「ほれ、ひざまずいて!」
「え、跪く?」
「彼女があんたのとこに立ったら、指輪に口づけだ!」
「く、口づけ……!?」
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