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陸頁:属性石との関わり
123.ルファス鉱山を探れ 1
しおりを挟む「何だい、ゼースヒルのことは知らないのかい?」
「い、いえ、洞窟のことですよね?」
「そう! 最近になって崩落した、あの洞窟のことだよ。ゼースヒル洞窟には、古代の書物があると言われていたんだけど、いつの間にか冒険者が持っていったみたいでね」
「な、なるほど」
「それが無くなった途端に、凶悪な洞窟になったんだ」
古代書のことだろうか。実は洞窟を正常に保っていた書物だったのでは。
今や俺の体の中に備わっているわけだけど。
「ゼースヒルのようにっていうのは、どういう?」
「書物には妙な力があって、光の属性を持っていたとも聞く。光の属性は決していい光だけじゃない。だからこそ魔物が守っていたとも聞くけど、真相は分からないね。それがどうだい、書物が消えたら洞窟がおかしくなったじゃないか!」
「ま、まぁ」
「ここルファスの女町長も、宝石に目がくらんで光の属性石を求めるようになった。ここの鉱山には、何度も採掘に行かされてるんだ」
「……」
光の属性石を巡っての争いがすでに起きているとは。
古代書が光の属性なら、この俺のコピースキルもその恩恵があるのだろうか。
「――よし、エンジ。今から依頼を変える。お前さんには、ルファス鉱山を探ってもらいたい! もし鉱山に光の属性石があれば持って来て欲しい。無かったとしても、構わない」
鉱山を探る、か。そうなると鍛冶師であるデリオンがいてくれれば心強いが。
確か今は、リウたちを町案内している最中のはず。
「一人でじゃないですよね?」
「もちろん。そろそろデリオンが戻って来るはずさ。そしたら、あいつに案内させるよ! お前さんの仲間もいた方がいいんだろう?」
「そうですね。ところで、デリオンは戦えるんですかね?」
「鉱山の中だけなら、冒険者にも引けを取らないはずだ。鉱山での戦い方は、あいつに聞きな!」
鉱山の中だけってことは、外ではまるで弱いということなのか。
護衛を頼まれて何事かとも思っていたけど。
「……とにかく、ルファス鉱山を探ってくれ! この町……いや、光の属性石を狙うゲレイド新国には、奪われたくないからね」
「ゲレイド新国……なるほど」
「さて、エンジ。そろそろ支度だ」
「でも、まだ完全には削り切れてないですよ?」
「今はそれで十分。要は原石を削ることが出来ればいいんだ」
「そ、そういうことでしたら」
ルファス鉱山を探って来い、とか、絶対嫌な予感しかしない。
それにしても、ゲレイド新国か。俺の腕を奪ったあの女が狙うのは、光の属性石……。
あれこれ悩んでも仕方が無い……そう思っていたら、デリオンが姿を見せた。
「おう! 戻ったぜ! 早速だが、エンジ。鉱山に行くぜ!」
「あ、はい。ところで、彼女たちは?」
「外で待たせているが、目立つんでな。鉱山近くに待たせてある」
「それじゃあ、そこに案内をよろしく」
「おぅ。こっちだ!」
マスターに頭を下げ、デリオンについて行く。
それにしても、またしばらく鉱山の中に籠ることになるのだろうか。
「あっ! エンジさまにぁ! こっちにぁ~!!」
「リウちゃん、声を張り上げたら駄目なんじゃなかったっけ?」
「だから張り上げなかったにぅ」
「そ、それは新たなスキルですかっ!?」
「に、にぅ? 何がスキルなのか、リウには説明出来ないにぁ……」
「……はぁ。リウ。レシスの言うことは気にしなくてもよろしいですわ」
「その通りでーす!」
デリオンについて行った先では、誰よりも騒がしいレシスが彼女たちを呆れさせていた。
どうやら危ない目に遭ったようでは無く、その場で待たされていただけらしい。
俺はというと、彫金ギルドを出た辺りから何者かに見張られていた。
しかし鉱山入り口に近づいた途端、どういうわけか離れていった。
サーチスキルで探れば正体が判明出来たのだが、町の中ということもあって、変な動きをしてくるつもりは無かったようだ。
◇◇
町の奥にひっそりとある鉱山入り口。
ここでは特に見張りが立っているでも無く、誰でも入れる佇まいを見せている。
「エンジ、お前の腕は大体分かったが、彼女たちの方が強いのか?」
「まぁ……。今は彼女たちの方が安心感はあるかな」
「それは心強いことだな! ちなみにだが、鉱山にいる魔物は強さのレベルが外よりもまるで違うぞ。覚悟することだな! ハハハッ!」
「ギルドマスターに聞いているよ。鉱山の中では強さが違うってね。頼りにしてもいいんだね?」
「おうよ! 任せろや!」
デリオンは俺たちを案内してくれているうえ、味方もしてくれている。
しかしそれなら、わざわざルナリア王国に来て護衛を依頼するのだろうか。
今まで味方だった者が敵になることを経験した以上、手の内を全てさらすわけにはいかない。
好都合なのは、デリオンから見て俺の強さが大したことが無いと判断していることだ。
このことは、あらかじめルールイとリウには教えておくことにする。
『おーし、こっから先が鉱山の洞窟になるぜ~! おぅ、エンジ! 彼女たちに守られながら付いて来い!』
随分と調子のいい男だ。悪気は無いのだろうが、レッテは早くもイライラを募らせている。
レシスはいつも通り言葉を素直に受け止め、胸を叩いて嬉しそうだ。
「リウ、ルールイ。俺の傍に」
「にぅ!」
「な、何ですの? 何だかドキドキ致しますわ」
幸いにもレシスとレッテがデリオンに文句を言っているので、丁度良い。
「――と、俺はそう思っているんだけど、どうかな?」
「ふんふん。リウはエンジさまの予感を疑わないにぅ」
「わたくしは人間の偽りを破ることが出来ますわ。まして鉱山の中は、わたくしにとって本拠地のようなもの。お任せくださいませ」
「そうか。コウモリ族にとっては動きやすい場所だ」
「そうですわ。エンジさまのお強さは何も心配しておりませんけれど、あの者が真に悪でないと分かるまではお力を温存してもよろしいかと」
「……うん、そうする」
リウは俺よりもサーチスキルが高いし、ルールイは暗闇空間においては優秀だ。
洞窟の中での実力は、本物と言っていい。
俺の予感が間違っていることを信じつつ、デリオンに黙って従うことにした。
『おぉ~し、エンジ! この辺は何も無いから、どんどん下層に下って行くぜ~! しっかり付いて来いよ~!』
よほどの自信があるのか、いい所を見せたいのかデリオンはズンズンと先導していく。
果たして強い敵がいるのか、それとも他の何かが待ち受けているのか、とにかく今は大人しくついて行くだけだ。
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