追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら

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陸頁:属性石との関わり

124.ルファス鉱山を探れ 2

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『うぉっと! エンジ、そっちに二匹行っちまった。処理頼む』

 ◇◇

 鉱山に入ってしばらくは、魔物の気配を感じない時間が続いた。
 
 鍛冶師であるデリオンが言うには、鉱山が一般的に危険だと知られているのは地下へ下りて行くほど、極端に魔物の強さが変わるからなのだとか。

 町の中に存在するルファス鉱山は、地下への階段があり簡単に下りて行くことが出来る。
 鍛冶師であるデリオンは、初めは調子良く先導して進んでいた。

 だが地下三層目くらいから、俺たちの助けを求めるようになった。
 どうやら、ここから魔物の強さが違うらしい。

『分かった! こっちで処理する!』

 腕の立つ鍛冶師ということらしいが、複数の魔物相手ではさすがに追い付かないようだ。

「ガウッ! 余裕でーす!」
「にぅ!」

 コウモリも数多く見られる鉱山なのだが、こっちにはルールイがいるので全く問題無い。
 
 それ以外に多く生息しているのは、クモやサソリ、さらにはトカゲなど。
 これらの相手には、リウとレッテが対応している。

 俺とレシスは魔法で援護という役割だが、今のところは援護する必要が無い。

「ほええ……退屈ですねぇ」
「回復士が退屈なのはいいことだ」
「杖で殴りかかることも出来ますよ?」
「それは却下で」
「じゃあ、どうすればいいんですかぁ? エンジさん、命令してくださいよぉ」
「命令って言われても……」

 以前のレシスなら、彼女の固有スキルである絶対防御で敵に突っ込むことも出来た。
 しかし今はそのスキルが無く、至って普通の回復士となっている。

 彼女が手にしている杖も、光の加護を持たないただの杖。
 本来はパーティーの後方で待機しているのが当たり前なのだが、誰よりも前に出ていたレシスにとっては、退屈な時間のようだ。

「レシスは……黙って俺の傍にいてくれればいいよ」
「ほえっ!? そ、それはもしかして……プロポ――」
「魔法を使う者同士だから、固まっていた方がいい」
「何でわたしのことをスルーするんですかぁぁl!」
「いや、聞いているよ? 君こそ俺の話を聞いてた?」
「傍にずっといてくれ! ですよね?」
「……それで合ってる」

 普段からレシスを傍に置くことが無いだけに、これは結構厳しい状況かもしれない。

「エンジさま、ここの敵は全部いなくなったにぁ!」
「ヌシさま、ご無事ですかー?」
「俺は全然平気だよ」

 まだ三層程度の敵では、全く相手にならない。
 そもそもどこまで下層に下りて行くつもりがあるのか。

 俺たちがいる辺りは、すでにデリオンの声は聞こえて来ない。
 すでに気にしないで先へ進んでいるとしたら、随分と勝手すぎる。

 そう思っていると、ルールイが俺たちを急かすように呼びに来た。

「アルジさま! お急ぎくださいませ! あの者が、この下の魔物に手こずっているみたいですわ」
「四層目で? どんな魔物?」
「岩男ですわ!」
「い、岩!?」
「――ではなくて、岩のように硬い巨人族が道を塞いでおりますの!」
「よし、ルールイは先に行って! 俺たちも急ぐよ」
「分かりましたわ!」

 ここには光の属性石を含めた、鉱石を求めに来ている。

 デリオンの狙いがそれだけなのかは分からないけど、光の属性石が魔物を強くしているとすれば、ここから下層では苦戦は避けられそうにない。

 必要に応じて、魔法を繰り出して行くしか無さそうだ。

「おわわわわっ!? エ、エンジさん、耳鳴りが凄いです!!」
「……とにかく、急ごう」

「アルジさま、わたくしたちは先に行きますわよ!」
「レッテも加わるでーす!」

 四層目で早くも苦戦しているというデリオンの元に、まずはルールイとレッテを向かわせた。
 敵は五層目への道を阻む巨人族らしい。

 一方、俺とレシスにはリウが付いている。
 魔法による攻撃メインでない敵であれば、ルールイたちだけで事足りるからだ。

 それとレシスの足が、予想よりも遅いということが理由でもある。

「エンジさま、何かコピーするのにぁ?」
「どうかな。魔法に関わらず、役立ちそうなものなら触れて見るけどね」
「硬い岩は痛いにぅ。でもでも、守りはもっと良くなるにぁ」
「ふむ、ログナにも硬い壁を作れそうだね」
「にぅにぅ!」

 リウは戦いばかりでなく、俺の国のことまで気にかけてくれる。
 そういうところがリウのいい所だ。これまでずっと一緒に旅して来ているが、一番信用の出来る相棒と言っていい。

「ふっふ~ん! エンジさん! わたしのことを忘れないでくださいよ? わたしもやる時はやれるんです! 何なら常時回復をかけまくってもいいんですよ?」

 時々鋭いというか、心の内でも読まれたというくらい、レシスは自分の思いをぶつけて来る。
 
 そこまで言うのなら、苦戦しているであろうデリオンの元へ急がせるべきなのだが、不安すぎてそう出来ないのが悩みどころだ。

「いや、君は俺から離れるな。もちろん、言葉に深い意味は無い」
「そう言うと思ってました! 安心してください! エンジさんにこそ、回復しまくりますよ~」
「……ダメージを負っていたらな」
「もちろんです!」

 相変わらずのレシスの話を上手く交わしながら、デリオンがいる場所にたどり着いた。
 彼を見る限り、大してダメージを負っているように見えない。

 それでもそのままという訳には行かないので、レシスを彼の元につかせる。

「わ、悪いな、嬢ちゃん」
「いいえ、当然のことです。ジッとしていてくださいね」
「……すまない」

 いつ見ても不思議な光景だ。
 普通にしていれば、レシスはきちんとした回復士だというのに。

 それはそうと、下層への阻みを続けている巨人族は、確かに岩のように硬そうではある。
 ルールイとレッテの攻撃は基本的に相手の弱点を突いて、そこから一気に崩すやり方だ。

 しかし見ていると、こちらの強さに関係無く、ただ阻んでいるだけの存在のように見える。
 つまりは、どんな攻撃を仕掛けても撃退することが出来ない存在だ。

「お、おかしいですわ。人間と同じ所に核があるはずですのに、そこを突いても消えないだなんて」
「頑丈すぎて疲れてしまうでーす」

 鉱山の天井部分にまで届く巨人族は、ダメージを負っているようだが、やはり倒れる気配を見せない。
 こうなると、彼女たちがどんなに攻撃を続けても、次の層には向かえないことになる。

「……デリオン! あの巨人族について知っていることは?」

 普通の鉱山、それこそゲンマのように仕掛けがあると分かっている鉱山なら、作戦を練ってから突入する。
 それなのにデリオンは、全くそういう事前準備をしなかった。

 何かの企みで俺たちを足止めさせようとしていたのなら、巨人族の突破方法も知っているはず。

「それは……」
「あいつを何とかするやり方があるはずだけど? そうじゃなきゃ、先に進まないよね?」

 どうにも疑いばかりが膨れ上がる。
 観念したのか、デリオンは巨人族の足下近くにある赤いレバーに目をやった。

「そこに落とし穴のレバーがあるんだが、見つかっちまった。すまん」
「この鉱山も仕掛けが?」
「ゼースヒル洞窟と似た感じだ。エンジは行ったことあるんだろ?」
「……あるけど、そうならそうと」
「す、すまない。とにかく、赤いレバーを下に押せば床が開く。その巨人族自体が仕掛けのようなものだ。悪いが、頼めるか?」

 この言葉には嘘は無さそうだ。
 仕掛けのようなものとはいえ、意思を持つ巨人族である以上、意識を他に向けさせるしかない。

「リウ、行けるかい?」
「にぅ!」
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