追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥風 かずら

文字の大きさ
132 / 156
陸頁:属性石との関わり

132.オーグリスとの戦い 後編

しおりを挟む

「どっ、どうぞーー!!」
「助かるよ、ありがとうレシス!」
「いえいえ、これも奥さんの務めでして」

 レシスの妄想は置いといて、彼女から自然治癒魔法を少しだけかけてもらった。
 
 オーグリス女鬼人とまともにやり合うのであれば、魔法攻撃を離れて撃つだけでは済まないと思ったからだ。

 リウとルールイは体力回復中で、動けるのは俺とレッテだけ。
 そうなるとどうしても、身軽い動きは限定されてしまう。

 その意味でも、まずは俺が突っ込んでぶっ放すことにした。

「……ガ! ガアアアアアア――!!」

 魔法攻撃に入ろうとしたその時だった。
 俺からの攻撃気配に感づいたのか、奴が突然唸り声を上げたのだ。

「ひええええええ!? な、何ですか!? 何事ですかーー?」

 レシスが耳を押さえながら膝を付いている。
 俺に気付いたということは、彼女たちがいる場所で攻撃意思を見せては駄目だ。

「――くっ、こっちだ、化け物!」

 オーグリスからは、岩を投げて来るといった攻撃はされていない。
 隙を見せている今がチャンスだ。この場を離れて、俺は奴を上層の方へとおびき出す。

 奴は足元をまるで地響きを起こすかのように揺らし、その場所から離れ俺について来る。
 俺を追いかけるようにして飛んで来る奴に対し、不意打ちによる魔法攻撃を開始した。

「これでも喰らってみろ、《グラビトン》!」
「ッ――ウガァァ……!?」

 実戦的な魔法攻撃をするのは久しぶりだ。
 下層では見上げるしか出来なかった巨躯だが、飛翔したことで優位に魔法を展開出来る。

 重力系魔法はダメージを与えられる程の威力は皆無だ。
 あくまで、動きを鈍化させるだけに過ぎない。

 だが奴の頭上から不意打ちを喰らわせたことで、追って来る速度が鈍さを見せている。
 ここは致命的なダメージを与えるのではなく、徐々に弱体させる戦法で行く。

「次はこれだ。《マッディストリーム》で不自由な動きを追加してやる」

 上からの激しい水流は、見上げながら追いかけて来る相手には非常に有効だ。
 しかも範囲が広い水魔法なので、左右に避けようとすれば無駄に体力を奪う。

「グゥアッ……! グググァゥゥゥゥゥゥ!!」

 オーグリスからは、苛立った視線が俺の全身に注がれている。
 この調子で、俺だけに敵対心ヘイトを集中してくれた方が好都合だ。

 レッテに止めを刺してもらう為にも、限りない魔法を与えておくとするか。

「ヌシさまっ! 腕に”注意”でーす!!」

「――むっ!?」

 俺よりも頭上側で待機しているレッテから、オーグリスの動きが知らされる。
 オーグリスには既に何発か魔法を与えているが、致命傷を負わせるほどにはなっていない。

 レッテに譲るといった感じで、弱らせているといった感じだ。

「ゴアアアアガッ――!!」

「おおっと、当たってたまるか」

 オーグリスの視界は既に無く、居所が分からない虫を振り払うような攻撃しか出来ない状態だ。
 しかし猛烈な勢いで、俺を捕まえようとしている。

「ゴガァッ!!」

「――漆黒の《テバッドブレス》でもがき苦しめ!」

 召喚士から放たれたティアマトからは、石化を付与することが出来るドラゴンブレスをコピー済みだ。
 それを編集し、攻撃が命中した敵に対し飛び散る火片かへんとして技変化をさせた。

「ギィガアァァア――!?」

 どうやら成功したようだ。
 オーグリスは顔のあちこちにまぶされた火片を、何度も自分の手で取り除こうと足掻いている。
 
「今だ、レッテ!!」
「ガウゥッ! ヌシさま、避けて!」

 地上部分に近い所からレッテが鋭い爪を露わにさせて、貫通攻撃を仕掛けた。
 オーグリスの体は固いものだったが、超スピードで突っ切って行く。

「よ、よし! いいぞ、レッテ」

「ガウッ!! 《リードル・インパクト》!!」

 火片をまともに浴びた上、それに気を取られているオーグリスは防御力が大幅に減少している。
 その結果、レッテからの貫通攻撃はオーグリスを完全に貫いていた。

「――ガ……ガアガァァァァーーーー!!」

 やったか。
 奴は自分がどんな状態になったのか分からないまま、地下の一番奥底に落ちて行く。

 しばらくして、ズウウウンッという大岩が落ちたような音が響いて来る。

「ヌシさまっ! レッテ、やりましたでーす!!」
「そのようだ。よしっ! このまま地下に降下しよう」
「ヌシさま、レッテを抱えてくださーい」
「そ、そうだね」

 地底にはレシスとルールイとリウが待機しているが、回復しただろうか。
 こちらはレッテを抱えながら、地底に降下を始めた。

 それにしても狼のモフり度は、中々なものがある。

「ヌシさま、撫でてくださいー」
「――み、耳でいいんだね?」
「はいでーす!」

 モフりながらレッテが放った”固有技”を思い出すと、彼女の技は連携専用のような感じに思えた。
 そうなると今後の戦い方が、何となくはっきりしてきた気がする。

 後は地上に戻った時にどうするべきかだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜

あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。 その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!? チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双! ※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...