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第1章:目覚め
第2話 継承者の目覚め
「女王様。そろそろ玉座においで下さいませ」
「ぎょくっ……玉座?」
「こちらでございます」
玉座って王が座る椅子のことだよね。
それにしても、
「ええと、ヘルヴィ?」
「はい!」
「あなたは白銀のドレスを着ているのに私の格好、変じゃない……?」
黒の制服に灰色の下衣って、組み合わせも含めて恥ずかしい気がする。
最初は彼女の瞳の色に目を奪われていた。だけど今はドレスにしか目がいかない。見た目だけなら彼女の方がよっぽど女王様に見える。
「そんなことはございません!! わたくしのは見せかけに過ぎないのです。ですが、アリーア様の制服は唯一無二のお召し物! 下衣もよくお似合いでございます」
「そ、そうなのかな……」
「当然でございます!」
こんなに褒められるなんて。
それはともかく、想像していたのとはちょっと違う玉座に着いた。
――というより、どう見ても古びた書庫にしか見えないけど。
中央にふかふかなソファがあって長時間座っても疲れなさそう。
ひじ掛けの所には、本を置くブックホルダーがあって図書館というよりネットカフェ。
「ここ……に、座ればいいのかな?」
「どうぞおかけください」
「じゃ、じゃあ……」
自分の部屋にあったリクライニングシートに似ているのは偶然だろうか。
「あれっ?」
「どうしましたか?」
「さっきまで何てことの無い空間だったはずなのに、外の様子が見えてる!!」
見えない所にプロジェクターでもあったのかと思うばかりに、自然と外の様子が映し出された。壮大なドッキリ……にしては鮮明すぎ。
「ああぁっ! この時をどんなにお待ち申し上げていたか!! アリーア様が玉座にお座りになられるなんて!」
「へ……?」
私が座っただけで、ヘルヴィが大げさに感動している。
だけど、玉座にしてはやけにほこりっぽい。
「その玉座、ここに眠る書物。全て女王様が目覚めるまで閉じておりました。それがとうとう開かれたことに感無量なのでございます!!」
つまり私が転生でもして来なかった限り、玉座の間は開かずの間になっていた?
「ホルダーに入ってる本は?」
「わたくしは書物が読めません。ですので、ぜひお取りになってお読みいただければ」
外の様子が気になりつつも何が書かれているのか気になる。
興味本位で読んでみることに。
「……わわっ!?」
古びた本を手にすると、一瞬目の前が眩く光った気がした。
もしかして本にも魔法がかけられていたりして。
【女王の居城イグロニア。何者をも寄せ付けない強い魔法により守られている絶海孤島に存在する。だが、長らく主のいない空位時代があったことで、その力が弱まりつつあることも事実である。
イグロニアには忠実で狡猾な配下と、誠実で可憐な配下の他、眠り続ける配下があり、最終的女王の目覚めを待つばかり。
我が書物が目覚めし時、全てが眠りから呼び覚まされるだろう。
継承者とともに、強き力の顕現を――】
読み終えた所で、わずかながら手に熱を感じた。
「あつっ……!?」
読み終えたところで書かれていた文字が消えていた。女王の居城紹介に配下の紹介。読了ですぐに私の知識になったからだろうか。
これがゲームの攻略本みたいなものだとしたら、にわかゲーマーな私がスキルを身につけるのは至難の業なのでは。
「アリーア様。読み終わりましたか?」
「ヘルヴィさん、文字が消えちゃいましたけど……」
書かれていたのが本当だとすると、配下である彼女たちは相当長くこの城に住んでいる。
「ご安心くださいませ。原初の書物を手にされた時点で、アリーア様のスキルとなられたはずです」
「そ、そうなんだ。それじゃ次は別の本を読まないとだよね?」
「全ての書物に目を通さずとも、次の書物さえ手に取れば事足りるかと思われます」
良かった。玉座が書庫になってるから全部読まなきゃいけないかと思った。
でもゲームの攻略本を読むのは好きだし苦じゃないからいいかな。
それにしても継承者だなんて。
それって私のことだよね?
継承したから全てが目覚めるって意味でいいのかな。
「コホン、アリーア様」
「はい?」
「わたくしはもちろん、カーグなぞにかしこまる必要はございません。ご遠慮なく、呼び捨てでご命令くださいませ」
異世界だからいわゆる年功序列とかは無いってこと?
にわかだけど、女王っぽく振る舞って慣れていくしかないか。
「あれっ? 外の様子……魔物が船を襲っている!? しかも船首の方にいるのって、もしかしてエルフ?」
エルフというと、確か森の住人で森から離れることは少ないはず。
もし人間に捕らわれていたのだとすれば……。
そもそも、絶海孤島から人がいる島までどれくらい離れているか見当がつかない。
「海の怪物が暴れているだけのようですね」
「溺れてるように見えるし、助けを求めてるのかも……」
「その必要はございません。それとも助けに行かれるおつもりですか?」
中身が人間な私からしたら見過ごせない。しかもヘルヴィたち以外で初めて会う種族がエルフの女性。もし助けを求めての行動だとしたら助けてあげたい。
「えっと、これは私の……女王としての慈悲! だからヘルヴィ。あそこに急いで!」
「かしこまりました。ではあの場所へ転移いたしましょう!」
「え、どうやって?」
「見えている風景にご自身を溶け込ませることをご想像ください。たとえば、空に浮く自分を客観的に思い浮かべるのです」
海の上空に自分がいるようなイメージ……。
「! あ、あれっ!?」
あっという間に海を見下ろす上空に浮かんでいた。
空に浮かんでいるのも不思議なものだけど、不思議と怖さは無い。
海の怪物の姿はすでに無く船の残骸だけが見えている。近くの岩陰を眺めると、そこにはしがみついたまま意識を失ったエルフの姿があった。
そのままエルフに近づくつもりで、頭から地上に向かって飛び込みのイメージを浮かべる。
空を自在に飛べるような、何となく体がふわふわし始めた。
そして自分の手をエルフの首筋に当ててみた。
「い、息はあるみたいだけど……」
確かに触れているし、脈を感じる。
イメージと言いつつその場に来てる感じ。
「アリーア様。転移の感覚は覚えられましたか?」
そんな状況の中、ヘルヴィはエルフではなく私の状態を聞いてくる。
「……あ、うん」
「それでは次に、深い森を思い浮かべて転移をお試しください」
イメージ――登山に行った時に迷い込んだ深々とした森。
そこに連れて行くことだけを思い浮かべて、早く介抱してあげよう。
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