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第一章 塩対応な二人

第20話 意外な相手の恋愛相談

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 七石先輩や、新葉の助けもあって期末テストは無事に終えることが出来た。生徒会長と呼ばれている以上、俺も中途半端な成績にするわけにもいかず先輩がいる内は有効活用して現在の地位をキープ出来ている。

 期末が終わると夏休みが間近に迫るがその前に例のサプライズ発表が控えていて、今日は久しぶりの定例会議をすることに。

 生徒会メンバーに加え、俺と同じクラスにいる放送部の連中にも集まってもらった。放送部はほとんど二年生なので話がしやすいというのもあった。

 今回の議題が美少女サプライズという理由もあって、今日に限っては女子の参加は見送っている。

 ホワイトボード前には北門きたかど、書記の下道が立ち、俺と上田が前に座って放送部の連中相手に説明をする手はずだ。

 上田以上の興奮と奇声が部屋中に響くと思われたが、不満を漏らしながらも放送部連中はあっさりと引きあげて行った。

「――翔輝。放送部のみんな、落ち込んでたね」
「仕方ないだろ。あっちはプロですでに活動してるタレントもいる。放送部は大会に出た実績はあるとはいえ、アマチュアだからな」
「でも、僕たちがすることは特に無い。なんて言われたらやっぱりショックだよ」

 純の説明を大人しく聞いていた放送部の連中がどういう反応をするか気になっていたが、予想に反して声も張り上げず興奮もしなかった。

 普段から配信をしてる連中なだけあって、院瀬見のことはとっくに知っていたらしく、サプライズに関しては驚きのリアクションすらなかったのが印象に残る。

 それよりも放送部なのに何もさせてもらえないという不満が強かったようで、純を始め、下道と上田が説得して何とか退室してもらったに過ぎない。

 放送部がいなくなり、いつものメンバーだけになったところで会議室は途端に静寂が訪れた。書記と会計は元々は真面目なだけあって、他のメンバーと相談しながら上手くやり取りをしているようだ。

 彼らが書類関係に目を通す中、部屋の中で話をするのはもっぱら俺と純の二人だけで、部屋の中では蚊帳の外状態だったりする。
 
 俺はこの時間を使って、純が気にしている女子のことを訊いてみることにした。

「うーん……僕たちもそれっぽい会議でもする?」

 本来はそうなのだが、期末を終えたので大して話すことが無い。だからこそ、この機会を逃す手は無い――ということで。

「なぁ、純。ところでお前って推し女――」
「あ、あのさ、翔輝会長に聞いて欲しいことがあるんだけど、いい?」

 こいつ、またしても俺の話を遮って誤魔化したな。

 あまり触れられたくない話ということなんだろうか?
 
 そう思いながら、とりあえず純の話を聞くことにした。こいつがこんなに思いつめたような表情を見せるなんてそうは無いからな。

「会議に関係無い話なんだろ? 何でも聞くよ」
「うん。あのさ、僕、好きな人が出来たんだ。それでその、翔輝に相談すれば何とかしてくれるんじゃないかなって思ったんだけど……」
「俺に恋愛相談とか冗談だろ?」
「ううん、僕には翔輝しかいないんだ。だから――」
「――いや、その発言は誤解を招くから勘弁してくれ」

 神妙な顔をして何を言うかと思えば、予想通りの話だった。そうなると、相手はあの金髪女子のあいつということが予想されるが。

「ご、ごめん。それでその、院瀬見さんのこと、どう思う?」
「い、院瀬見いせみ? え? 何でそんなことを聞くんだ?」
「僕が気になってる、好きな人が院瀬見さんだからなんだけど……。おかしいかな?」

 九賀みずきという推し女じゃなかったなんて意外過ぎる。あれだけ見せつけて思わせぶりな行動を取っていたくせに、まさかの最強美少女な院瀬見とは。

「あれ、お前って九賀って推し女と仲がいいんじゃないのか?」

 俺の個人的な決めつけではあったが、そうじゃなかったのか。

「ああ……九賀さん? 九賀さんは僕のことは何とも思ってないんじゃないかな。彼女は話しやすいし、僕ともすぐに打ち解けてくれたけどそれだけだよ」

 要するにタイプではないと。

「……なるほど。それで純は俺にどうして欲しいんだ?」
「サプライズが終わったら正式なメンバーになるでしょ。クラスはどうなるか分からないけど、生徒会は一緒だからその時に僕と院瀬見さんが一緒に作業出来るようにして欲しいなって。どうかな?」

 古根の男子と霞ノ宮の女子は今は棟によって分かれている。しかし夏休み以降、正式な渡り廊下が完成することに伴って、いよいよ男女と同じ授業を受けることが決まった。

 学年途中ではあるが、別学から共学化になるということで改めてクラス分けがされることも決定している。その条件はさすがに聞かされていないが、期末の結果次第というウワサだ。

 ――それにしても意外すぎる名前だったな。それも院瀬見だなんて。

「いや、その前にお前、院瀬見とまともに話が出来て無いだろ。そんな状態で――」
「――僕は翔輝と違って院瀬見さんに意地悪い態度は取らないから、院瀬見さんも僕の態度に笑顔を見せてくれると思うよ!」

 自己紹介の時に緊張していたのを覚えているが、その時からそうなのか?

 しかも何気なく俺の態度のことに怒っているようだし、おそらく本気で好きになったんだろうな……それも院瀬見の表面上だけの態度に。
 
「まあ、その話はサプライズが終わってからまた聞かせてくれ。このことは名前を伏せて、それとなく院瀬見に聞いておいてやるから」
「うん。お願いするよ」

 それとなく聞く――俺が院瀬見に聞けるはずが無い。

「あれ? そこの間抜け面……じゃなくて、女子棟にのこのこ来ているのはじゃないですか。期末の結果が悪すぎてわたしになぐさめてもらいに来たんですか?」

 何でこいつは普通に挨拶が出来ないんだ?

 そして何故、俺の成績のことを悪い前提で話すんだよ。そもそも終わったばかりで結果なんて出ているはずも無いというのに。

「そうだと言ったらどうするんだ? 
「さすがに廊下ここでは出来ませんから、談話室か保健室でならなぐさめてあげますけど?」
「――えっ」
「え? 何を驚いてるんですか? 何をされると思ってるのか分かりませんけど、言葉攻めでなぐさめるって意味です」

 言葉攻めは攻めだろ。

「あぁ……悪い」

 とはいえ、ここは素直に謝ろう。

 それなのに、

「不気味ですね。あなたがそんな弱気になるなんて。とりあえずわたしも話したいことがありますので、ついて来てください」

 やっぱりこいつの反応はそうだよな。俺が少しでも弱そう、もしくはその辺のモブ男子と似た態度を取ると俺よりも塩対応になる。

「へいへい、どこにでも行きますよ」
「……そう言って逃げられても困るので――」 
「――!? え、おい」
「しっかり握らせて頂きますね! 翔輝さんもその手も逃しませんから!」
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