セイバー

森田金太郎

文字の大きさ
4 / 40

3話

しおりを挟む
◆ショー
 翌日、登校した勇は、元気になっていた。涼は言った。

「もう、大丈夫なのかい?」
「一晩ぐっすり寝たら、元気出た!」
「よかった」

 近くでそれを聞いていた晴は安堵のため息をついた。

 一方、勇は愛の所へ行き、こう言った。

「ね!愛ちゃん、今度の休みさぁ?『秘密ソルジャージュエル』のヒーローショーがあるんだ!一緒に行かない?」
「えっと、何で?何で私を誘ってくれるの?」
「えっ?『秘密ソルジャージュエル』をかっこいいって言ってくれたじゃん?」
「あ、うん、そうだね?」

 愛の顔色は、少し変な物だった。しかし、その愛は、こう返した。

「1回だけなら、行ってもいいよ?」
「わー!じゃあ行こう!!」

 それを遠目で聞いていた晴は勇と愛の所へ行き、言った。

「俺も、行っていいか?」

 晴に遅れて涼も言う。

「僕もいいかな?」

 勇は目をキラキラさせ、こう返した。

「もっちろんだよ!!4人で行こ!行こ!!」

 そして、休日が訪れる。勇、涼、晴、愛は集合し、「秘密ソルジャージュエル・ヒーローショー」を観始める。秘密ソルジャージュエルは、こう言った。

「シークレット・クリスタル!インストール!!」

 勇は言った。

「変身したぁ!!」
「輝き、無限大。秘密ソルジャージュエル!ここに降臨!!」

 ルビーを思わせるコスチュームに顔ごと包まれた秘密ソルジャージュエルを見る勇の目はキラキラ、その顔はニンマリ。それを涼、晴、愛は笑いながら見た。

 興奮する勇を3人が見守る時間が過ぎ、秘密ソルジャージュエルはこう叫ぶ。

「放出!プリズム・オブ・プロテクション!!」

 勇はすかさず言った。

「必殺技だっ!いっけぇ!!」

 そして、秘密ソルジャージュエルの「敵」は、撤退した。

 勇は恍惚の表情で言う。

「やっぱり、かっこいい!やめられないよー、秘密ソルジャーシリーズは」

 愛は言った。

「ヒーローショーなんて、初めて観たけど、意外と楽しかったよ」

 勇の目のキラキラさが増す。そして、言った。

「本当に?やっぱりかっこよかった?」
「う、うん。そうだね」

 そうして、4人は帰宅する事になった。勇は、帰り道他の3人に今日の興奮と「秘密ソルジャーシリーズ」のうんちくを聞かれてもいないのに話す。涼、晴、愛はそれを受け止めてくれた。

◆自分もヒーロー
 しかし、穏やかな時間は、そこまでだった。周囲が騒がしくなる。勇は言った。

「なんか、嫌な予感するんだけどっ?」

 涼と晴の顔は、険しい物だった。愛は戸惑うばかり。その愛はこう言った。

「えっ?何?」

 勇は叫ぶように言った。

「愛ちゃん!ごめん、先に帰ってて!!」
「う、うん」

 愛は、言われた通りにその場を離れたが、気になって物陰に隠れながら勇たちの様子を見ることにした。

 一方、勇たちは騒ぎがある方向に走って行く。すると、予感は当たり、カラミティがいた。晴が苦々しそうに言う。

「ふざけてんじゃねぇ!」

 勇、涼、晴は声を張り上げた。

「解き放て!守りの力!!」

 3人は、変身。そして、名乗る。

「はためく翼は強き盾!アースセイバーウイング!!」
「流るる水は大いなる癒し。アースセイバーウォーター」
「荒ぶる炎は確かな希望!アースセイバーファイア!!」

 最後に叫ぶように言った。

「レッツ!セイブ!!」

 ウイングは、先陣を切ってカラミティに対峙する。翼からの羽根の盾を早速人々に与え、カラミティにパンチを見舞わせる。そんな中、ウォーターは言った。

「バイオレットとオレンジはどこだい?」

 ウイングは返す。

「そう言われれば!どこっ?」

 ファイアは言った。

「どっかに隠れてんだろ?カラミティ倒して、引きずり出すしかねぇな?」

 ウイングは返した。

「よーし、やるぞぉ!!」

 ウォーターとファイアは先手必勝と水の洗い流しや炎の燃やし尽くしでカラミティを消滅に追いやる。
ウイングはひたすらパンチを繰り出すが、もっと強い力でパンチを出したいと思うようになった。

「どうしたらいいだろう?もっと!強くカラミティにパンチ、やりたい!!」

 それを聞いてか聞かずかウォーターが空に飛び上がる。ウイングは感嘆の声を上げた。

「えっ!僕たち飛べるっ?」

 試しにウイングは飛びたいと念じてみた。すると、飛べた。

「おおっ!飛べたぁっ!これならっ!!」

 落下の勢いを借り、強いパンチをウイングはカラミティに浴びせけける事が出来た。ファイアは言った。

「ナイス!!」

 そんな様子を、物陰で愛は見て、こう言った。

「ゆ、勇くんたち、つ、強い。で、でも、あの怪物?こわい」

 そうしていると、カラミティは全滅。この日は「補充」が無かった。ファイアは言った。

「これで、終わりか?」

 ウォーターは言った。

「そうみたいだね」

 ウイングは言った。

「バイオレット!オレンジ!どこっ?」

 そうウイングが言った瞬間、脅威が去った事を感知したのか、変身が解けた。勇は続けて言った。

「あの2人を倒さなきゃ、カラミティは止まらないみたいなのに」

 その様子を、バイオレットとオレンジはビルの屋上からスーツ姿の「地球人」として見ていた。バイオレットである男は言った。

「地球の守護者、俺様たちはここだぜ?」

 オレンジである女は言った。

「わざわざ顔を見せる程の事じゃないわ」

 そして、2人は、ビル内に消えて行った。

 一方、勇。愛に駆け寄られていた。

「勇くん!」
「えっ!愛ちゃんっ?帰ったんじゃ?」
「み、見てた」
「危ないよ!」
「ご、ごめん。で、でも、勇くんたち、かっこよかった。勇くんたちもヒーローじゃん!」

 疲労の色に染まっていた勇の目はその愛の言葉に、キラキラし始めた。

「僕!ヒーローに見えたっ?ホントっ?」

 そんな勇は、愛の頷きを見た。

「やったー!僕、ヒーローだー!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...