ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

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10甘:監禁

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その日の夕方、アルヴェードは帰宅。その頭の中は、ミルーネの病の件で一杯だった。エリザータは、そんな夫を迎えた。

「おかえりなさい。ミルーネの絵、どうだったのよ?」
「それは、もう、いい出来だった」

 エリザータは眉をひそめた。

「アルヴェード?どうしたの?心ここにあらずって感じだけど?」
「ああ、すまない。そのミルーネがな」

 と、アルヴェードが言った瞬間。エリザータ宛の電話が来たと使用人からの一言がかけられる。エリザータは、アルヴェードとの話を中断し、電話に出る。相手は、ランディレイだった。

「王子?どうなされたのですか?」
「今すぐ会いたい。王宮に来てくれ」
「わかりましたわ。少し、お待ちください。伺いますわ」
「車をそちらに向かわせている。来てくれ、エリザータ」

 ランディレイの声は、焦燥感溢れる物だった。エリザータは、電話を切ると、訪問の準備を完璧に済ませアルヴェードに言った。

「王宮に急遽行く事になったわ。迎えが来るまでの間、話の続き、しましょう?」
「いや、止めておく。俺の考えもなかなかまとまらない。おそらく、お前の帰りは明日以降になるだろう?それまで、色々、気持ちを整理しておく」
「ごめんなさい。『第五条』を守って、貴方の話を聞いてから王宮に行きたかったんだけど」
「その気持ちだけでいい。俺の事は一旦忘れて王子の愛を受けてこい」

 エリザータが頷くと、王子が寄越した迎えの車が来た事が知らされる。エリザータはアルヴェードの頬に軽くキスをし、出かけて行った。

 車は夕闇に包まれた王宮に着く。ランディレイの元へと案内されるエリザータ。目に飛び込んできたのは、悲壮な顔をしたランディレイであった。

「王子?」

 無言でランディレイはエリザータをきつく抱きしめる。ランディレイは、表情とは相反する荒い息をエリザータに聞かせた。そして、しばらくするとランディレイはこの日の第一声を発した。

「エリザータ、おいで」

 エリザータの腕は、ランディレイに強く引かれる。

「どちらに行かれますの?王子?」
「僕は、君を妃にする。エリザータ、君を君の夫から奪う!君を今度こそ夫の所に帰さない。絶対にね」
「王子、私は、王子と夫があっての私なのです。片方だけでは、生きてはいけませんわ」
「僕は!僕にはもう君しかいないと言うのに!!」

 エリザータは、ランディレイをなんとか引き剥がした。そして、問うた。

「何故?何故急にそんな考えを抱いたのです?」

 ランディレイは、押し黙った。しかし、返答をし始める。

「僕には、愛する人がいた。けれど、今日その人に会う事も、その先に夢見ていた結婚の事も禁じられた。だから、僕には君しかいなくなった。でも、君には夫がいる。夫から引き剥がし、僕は僕の力を行使し、君たち夫婦を離婚させる!」

 エリザータは、何度も首を横に振った。

「私は、妃になりたくて王子を愛したわけではありませんわ。もう一度言います。私は、夫と王子を同時に愛したい!2人がいなければ、私ではなくなってしまいます!!」
「エリザータ!」

 欲望がにじむ怒りの表情でランディレイが再びエリザータを抱きしめようとする。エリザータは、逃げた。そして、こう声をかけた。

「申し訳ありません。私は、王子を愛人以上の存在には見れません。これが不服なら、私の事を見捨てて構いませんわ」
「エリザータ!そんな事を言わないでくれ!君との愛の道まで僕に閉ざせと言うのか!!」
「それは、王子次第です。でも、今の王子はそのお心に傷がおありのようですから、私、貴方を愛する者として全てをかけてその傷を受け止めます。だから、王子の恋を諦めないでください。貴方が会えなくなった恋人への愛を、ここで閉ざさないでください!」
「エリザータ」

 ランディレイの声から怒りの色が解けた。それを確認すると、エリザータはランディレイを抱きしめる。

「そのお心が癒えるまで、私、王子のお傍におりますわ。貴方が恋人と会えなくなったように、私は夫としばらく会えなくなっても構いません」

 ランディレイは、その言葉を受け、涙を流した。一方、エリザータは心の中で、アルヴェードに謝罪した。「選択に迫られたら、アルヴェード、貴方を選ばなきゃならない第五条まで破ってしまったわ。本当にごめんなさい。」と。
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