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31甘:それぞれの愛人の戦いの始まり
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「父上、母上」
単身で王宮内の王の間に入ったランディレイの声が、国王マーディルとその傍らにいる王妃ランクーナの元へと届く。
「どうしたのだ?ランディレイ」
マーディルの威厳のある声が返ってくる。ランクーナは、わずかに首を傾げながら息子を見つめた。
「元ヒュラ一族、現シュク一族に対する王宮の対応を改めていただきたく参上しました」
「何を申すか」
「父上、脅威の排除とは言え、やはり長期間の国民の拘束は、人道上いかがなものかと思いまして。人質、ミルフォンソの解放を検討していただけないでしょうか?」
ランクーナは、頷きながら反応した。
「確かに、人道面では非道な対処ですわね。貴方様、解放を検討してはどうでしょうか?」
「うぬ」
思案顔になったマーディル。それに期待の視線を向けるランディレイ。しかし、その雰囲気は一転する。
「陛下!検討の余地はありません!!」
王の側近であるギャスバーが声を荒らげた。国王、王妃、王子の驚いた視線を浴びながらギャスバーは言葉を続けた。
「1世紀半前とは言え、民に仇を成したヒュラ一族の残党の動きは、わが国の脅威だと言うのが共通の認識でしょう。その一族を野放しにする事は、認められません!」
「わかっておる。ギャスバー」
マーディルは、眉間に皺を寄せる。それを見つつ、ギャスバーは演説をし始める。
「この度の策略、阻止出来た事を誇りに思っていただきたい。あの時は、民に矛先を向けたヒュラ一族でしたが、今度は王宮内に仇を成すかもしれません。そうなれば、国が傾き、多くの民が路頭に迷う可能性があると思いませんか?私は、その方が人道上問題と思います!」
「ギャスバー、落ち着くのだ。そなたらエウル一族の提案はもっともだ。それは変わりない」
「父上、それでは、人質は?」
「現状のままとする」
「父上!」
ギャスバーは、ランディレイに詰め寄る。
「ランディレイ王子、まだあの女、ミルーネの色香を忘れてないのですか!何度も申し上げた筈、騙されるなと!!」
「ギャスバー。僕は、ここに自分自身の意思で来ている!ミルーネは関係ない!!」
ランディレイとギャスバーの口論に、ランクーナは苦言を呈した。
「王の間での口論は、控えなさい。陛下の御前ですよ?」
「すみません、母上」
「お、王妃様。申し訳ありません」
結局、この日のランディレイの要望は、聞き入れてもらえなかった。
一方、ミルーネの自宅兼アトリエ。玄関の方からミルーネの聞き慣れない男性の声が響く。
「ごめんください」
ミルーネは、目のみを露出した姿でその男性を迎え入れる。
「どちら様?」
「ええと、セブレーノと申します。スティン医師から紹介状をいただいた者です」
「お、お医者様でしたか。失礼しました」
「いいえ」
セブレーノは、そう返すと急ぐような様子を見せる。
「早めに暗い部屋へと移動しましょう」
「はい」
そして、分厚いカーテンが引かれた応接間にセブレーノは通された。
「万全ですね」
「ありがとうございます」
「現在の状況を確認します。スティン医師から処方された軟膏は効きますか?」
「それは、ありがたい事にすぐ効いてくれます」
「それはよかった。まだ、手元にありますか?」
「そんなに残っていません」
「なら、新しいのを今日置いておきますね」
「はい」
と、当たり障りのない診察が進む。
「ミルーネさん、紹介状に書いていない事をお話いただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「どのような?」
「症状を自覚した時から、症状は重かったんですか?」
「いいえ」
それから、ミルーネは10代になったばかりの頃に、わずかな違和感を持った後、光過敏症と診断され、現在の状況に陥るまでの説明をセブレーノにした。セブレーノは、キャンドルに照らされつつ、思案顔に。
「ストレスですね。環境の激変と、周囲のプレッシャーなどが症状を重くしていると考えます」
「やっぱり、私がこの一族を助けようと思った事が悪かったんですね。スティン先生の治療も難しい物にしてしまって、私、本当に駄目な人」
「そこで自責しないでください。ストレスを増大させてしまいますよ」
多少の沈黙が流れる。セブレーノは、しばらくした後、こんな提案をする。
「ミルーネさんの光過敏症自体は、自宅療養でいい物なんですが、精神的な疲労が溜まっている状況は見逃せません。少し、入院してその心を休めた方がいいでしょう。あまり、このような対応は取らないんですがね」
「入院っ?」
「はい。しかし、今の状況だと、病院までの道中で皮膚の状態が悪化する事は目に見えています。内服薬で症状を抑えて安定した後、病院まで移動しましょう」
「わ、わかりました」
「副作用として、吐き気などがある薬ですが、少し、耐えてくださいね」
その後、セブレーノは追加の軟膏と新たな内服薬をミルーネに渡し、その場を後にした。
単身で王宮内の王の間に入ったランディレイの声が、国王マーディルとその傍らにいる王妃ランクーナの元へと届く。
「どうしたのだ?ランディレイ」
マーディルの威厳のある声が返ってくる。ランクーナは、わずかに首を傾げながら息子を見つめた。
「元ヒュラ一族、現シュク一族に対する王宮の対応を改めていただきたく参上しました」
「何を申すか」
「父上、脅威の排除とは言え、やはり長期間の国民の拘束は、人道上いかがなものかと思いまして。人質、ミルフォンソの解放を検討していただけないでしょうか?」
ランクーナは、頷きながら反応した。
「確かに、人道面では非道な対処ですわね。貴方様、解放を検討してはどうでしょうか?」
「うぬ」
思案顔になったマーディル。それに期待の視線を向けるランディレイ。しかし、その雰囲気は一転する。
「陛下!検討の余地はありません!!」
王の側近であるギャスバーが声を荒らげた。国王、王妃、王子の驚いた視線を浴びながらギャスバーは言葉を続けた。
「1世紀半前とは言え、民に仇を成したヒュラ一族の残党の動きは、わが国の脅威だと言うのが共通の認識でしょう。その一族を野放しにする事は、認められません!」
「わかっておる。ギャスバー」
マーディルは、眉間に皺を寄せる。それを見つつ、ギャスバーは演説をし始める。
「この度の策略、阻止出来た事を誇りに思っていただきたい。あの時は、民に矛先を向けたヒュラ一族でしたが、今度は王宮内に仇を成すかもしれません。そうなれば、国が傾き、多くの民が路頭に迷う可能性があると思いませんか?私は、その方が人道上問題と思います!」
「ギャスバー、落ち着くのだ。そなたらエウル一族の提案はもっともだ。それは変わりない」
「父上、それでは、人質は?」
「現状のままとする」
「父上!」
ギャスバーは、ランディレイに詰め寄る。
「ランディレイ王子、まだあの女、ミルーネの色香を忘れてないのですか!何度も申し上げた筈、騙されるなと!!」
「ギャスバー。僕は、ここに自分自身の意思で来ている!ミルーネは関係ない!!」
ランディレイとギャスバーの口論に、ランクーナは苦言を呈した。
「王の間での口論は、控えなさい。陛下の御前ですよ?」
「すみません、母上」
「お、王妃様。申し訳ありません」
結局、この日のランディレイの要望は、聞き入れてもらえなかった。
一方、ミルーネの自宅兼アトリエ。玄関の方からミルーネの聞き慣れない男性の声が響く。
「ごめんください」
ミルーネは、目のみを露出した姿でその男性を迎え入れる。
「どちら様?」
「ええと、セブレーノと申します。スティン医師から紹介状をいただいた者です」
「お、お医者様でしたか。失礼しました」
「いいえ」
セブレーノは、そう返すと急ぐような様子を見せる。
「早めに暗い部屋へと移動しましょう」
「はい」
そして、分厚いカーテンが引かれた応接間にセブレーノは通された。
「万全ですね」
「ありがとうございます」
「現在の状況を確認します。スティン医師から処方された軟膏は効きますか?」
「それは、ありがたい事にすぐ効いてくれます」
「それはよかった。まだ、手元にありますか?」
「そんなに残っていません」
「なら、新しいのを今日置いておきますね」
「はい」
と、当たり障りのない診察が進む。
「ミルーネさん、紹介状に書いていない事をお話いただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「どのような?」
「症状を自覚した時から、症状は重かったんですか?」
「いいえ」
それから、ミルーネは10代になったばかりの頃に、わずかな違和感を持った後、光過敏症と診断され、現在の状況に陥るまでの説明をセブレーノにした。セブレーノは、キャンドルに照らされつつ、思案顔に。
「ストレスですね。環境の激変と、周囲のプレッシャーなどが症状を重くしていると考えます」
「やっぱり、私がこの一族を助けようと思った事が悪かったんですね。スティン先生の治療も難しい物にしてしまって、私、本当に駄目な人」
「そこで自責しないでください。ストレスを増大させてしまいますよ」
多少の沈黙が流れる。セブレーノは、しばらくした後、こんな提案をする。
「ミルーネさんの光過敏症自体は、自宅療養でいい物なんですが、精神的な疲労が溜まっている状況は見逃せません。少し、入院してその心を休めた方がいいでしょう。あまり、このような対応は取らないんですがね」
「入院っ?」
「はい。しかし、今の状況だと、病院までの道中で皮膚の状態が悪化する事は目に見えています。内服薬で症状を抑えて安定した後、病院まで移動しましょう」
「わ、わかりました」
「副作用として、吐き気などがある薬ですが、少し、耐えてくださいね」
その後、セブレーノは追加の軟膏と新たな内服薬をミルーネに渡し、その場を後にした。
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