ブンボル王国の恋事情

森田金太郎

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50甘:王国の未来を紡ぐ者たち

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秋の風に、冷たさを一層強く感じる日であった。ミルーネがトゥルレ・ジェネラル・ホスピタルを退院する日が来た。

「お世話になりました。先生」
「いいえ、どういたしまして。また、来週の診察お待ちしてますね」
「はい」

 セブレーノと話すミルーネの表情は一片の曇りもなかった。そして、セブレーノが見送る中ミルーネは病院を出た。すると、ミルフォンソが車で待っていた。

「お待たせ、お兄様」
「行こうか」
「うん」

 大きな布を頭から被ったミルーネは、助手席で笑顔だった。何故なら、この足で王宮に行きランディレイと会えるのだから。その笑顔には気づく事はなかったが、ミルフォンソは運転しながら妹にこう言った。

「本当に、飲み薬の力は凄いね」
「そう!セブレーノ先生、とってもいい先生なの!」

 ミルーネの声は、弾んでいた。しばらくすると、王宮に到着。ミルーネの姿を見た守衛は、車を通した。そして、車を停めるとミルーネとミルフォンソは、王宮へと入って行き、ランディレイとの面会を果たした。

「ミルーネ!」
「王子っ!」

 2人の抱擁は、愛おしさ溢れる物であった。その光景を静かに見守るミルフォンソ。ひととおり抱擁に満足すると、ランディレイとミルーネは離れた。そのランディレイは、ミルフォンソに声をかけた。

「ミルフォンソ、元気そうでよかったよ」
「王子、その節は、解放していただき、ありがとうございました。その挨拶をしたく、参上しました」
「挨拶、ありがとう。ミルーネと共にゆっくりしていってくれ」
「はい。しかし、もしよければ別室にて待たせていただきたい。王子とミルーネの時間を邪魔したくないので」
「そんな、さびしいな。けれど、そのようにさせてもらうよ」

 ランディレイが用意させた別室に、ミルフォンソは移動した。そして、ランディレイとミルーネは2人きりとなった。ランディレイは長いソファに座り、ミルーネを脇に誘った。

「王子」
「ミルーネ」

 見つめ合う2人。自然に出会いの頃へと記憶が遡った。

 その日、宮廷画家を選ぶ選考会が王宮であった。集まった画家の中にミルーネ、王宮関係者にランディレイの姿があった。十数人いた画家に出された課題は、王宮の風景画であった。試験官の「始め!」という掛け声と共に一斉に絵を描き始めた画家たち。調度品や窓からの風景を切り取り描かれていくほとんどの絵。しかし、1人だけ風景画ではなく、人物画を書いた画家が。ミルーネだ。制限時間が終わり、絵が回収された後、ミルーネは個別に呼び出され、叱責された。「課題として出した風景画では無い物を描くとは言語道断」と。ミルーネはそれに返した。

「ごめんなさい」

 まだ10代のミルーネではあったが、誠心誠意謝罪の気持ちを込め、頭を下げた。ミルーネは、王子ランディレイに見惚れ、ランディレイを描いてしまったのだ。その後、追い出されるようにミルーネは王宮を退出させられた。しかし、後を追う声が。

「ミルーネ!」
「お、王子っ?」

 描かれた本人が問題の絵を持ち、追いかけて来た。

「僕の絵を描いてくれてありがとう!」

 こちらも10代のランディレイは輝く目でミルーネを見た。

「あの、ごめんなさい」
「いいんだ!とっても素敵に描いてくれて感動してるよ!また、会えないかな?」
「で、ても、変な事をしてしまったから、私、もう王宮には入れません」
「描かれた僕が許すよ!駄目って言う人がいたら、王子権限でその人クビにする!!」
「クビにしちゃ駄目ですっ!けど、会いに来ます」
「うん!」

 それから、王宮の反対を押し切り、ランディレイとミルーネは頻繁に会い、恋人同士となった。そして、ミルーネは病を告白。それをランディレイは受け入れてくれた。

 2人の思考は、現実に戻る。ランディレイは感慨深そうに言った。

「出会った頃の絵、捨ててないよ、ミルーネ」
「嬉しい。王子」

 ミルーネは、ランディレイにもたれかかった。そして、穏やかな吐息を漏らす。しばらくそうしていたが、ランディレイは立ち上がる。その様子を目で追うミルーネ。そのミルーネの視線の先に、ランディレイの右手にある小箱が。

「ミルーネ」

 ランディレイはソファに座すミルーネの目の前で跪いた。ミルーネは、胸の高鳴りを抑えつつ、短く言った。

「はい、王子」
「ミルーネ、僕の妃になってくれ」

 ランディレイが開けた小箱には豪華な指輪が入っていた。ミルーネは涙に歪む視界の中、指輪に手を伸ばし、触れると返答をした。

「はい、喜んで」
「ミルーネ!!」

 ランディレイは、ソファに飛び込むようにしてミルーネを抱きしめた。そして、2人は熱烈なキスを交わした。

「絶対に幸せになろうね?ミルーネ」
「はい!王子!!」

 その後、婚約指輪を左手の薬指にはめたミルーネは、ミルフォンソと共に帰宅して行った。
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