62 / 67
62甘:想いはその心に
しおりを挟む
ミルフォンソとキャナリーンは2人で心の傷に向き合う約束をした。しかしその後、お互いの仕事が忙しくなりその合間を縫って会う日々を強いられた。そのうちに夏が来た。
そんなある日、アルヴェードは自宅にてエリザータにとある報告をしていた。
「冬のベルカイザ号の航海だが、ようやく全てのチケットが売れた」
「あら!そうなの?よかったわ」
すると、呼び鈴が鳴った。その後、使用人から客の名前を聞く。応接間に行ったエリザータとアルヴェード。エリザータが第一声を上げた。
「ミルフォンソさん!」
「キャナリーンさん!」
アルヴェードもそれに続いた。そして、4人が席に着くと、キャナリーンが言った。
「あの、私たちお付き合いを始めたんです」
「その報告をしたくて来ました」
ミルフォンソのその言葉が終わるや否や、エリザータとアルヴェードは顔を見合わせて喜んだ。
そんな夫婦の顔を見ながらミルフォンソとキャナリーンの思考は、過去に遡る。
キャナリーンは、ある日言った。
「ねぇ、ミルフォンソさん、私たちこれから好きな人にしてもらいたかった事とかしてあげたかった事をお互いにし合いませんか?」
「それ、いいですね」
「だから、今日から敬語の仲もやめません?」
「そうですね」
キャナリーンは、ミルフォンソを少々不服そうな目で見た。ミルフォンソは、一旦怯んだが、気を取り直しこう言い直した。
「あ、いや、そうだね。キャナリーン」
「わかってくれて、ありがとう、ミルフォンソ。これから、恋人ごっこみたいな事、私たちするんだからって思ってね」
それからと言うものの、2人はお互いに奉仕した。想い人と一緒にやりたかった事をしたり、行きたかった所へと行ったり、相手にとことん付き合う日々を過ごした。
そして、別の日。2人にとって転換点となる日が来た。その日のミルフォンソは、多少挙動不審であった。
「ミルフォンソ?どうしたの?」
キャナリーンの問いが投げかけられる。ミルフォンソは多少長い時間、躊躇の態度を見せた。キャナリーンは首を傾げるばかり。
「もしかして、この恋人ごっこ、嫌になった?ミルフォンソ?」
「違うよ。あの、とても頼みづらい事を考えてて」
「何?」
「その、キスをしたいんだ」
キャナリーンの目が丸くなる。そして、赤い顔になり、短く答えた。
「私も、キス、して欲しかった」
ミルフォンソは、同意が得られた事から、キャナリーンの唇を確認すると瞳を閉じた。目の前にいるのは、ミルーネだと考える為に。キャナリーンもそんなミルフォンソに続き、瞳を閉じる。これから自分とキスをするのはセブレーノだと考える為に。そして、唇は重ねられた。
注ぎたかった愛をぶつけた。注がれたかった愛を貪った。お互いの唇が痺れてくるまで唇を離さなかった。しかし、それは永遠に続ける物ではない。名残惜しそうに離れる2人の唇。
「ミルフォンソ」
「キャナリーン」
ミルフォンソは熱のこもった目でキャナリーンを見た。キャナリーンは潤んだ目でミルフォンソを見た。
「ミルフォンソ、好き」
「僕も好きだよ。キャナリーン」
もはや2人はわからなかった。その愛の告白がお互いの想い人の代わりに聞いてもらったのか、本当にお互いへ向けた物なのかが。しかし、それはどうでもよかった。心の中を支配する幸福感が、それを有耶無耶にした。
ミルフォンソとキャナリーンの思考は、現実に戻る。その目の前には微笑ましい視線で見つめるエリザータとアルヴェード。エリザータは言った。
「何か、幸せな事でも思い出してたんですか?」
傍らのアルヴェードは本人たちに代わって返す。
「それは、そうだろう?心が結ばれた時でも思い出してたんだろう」
ミルフォンソとキャナリーンは顔を赤くした。しかし、気を取り直しキャナリーンが言った。
「恥ずかしながら、そうです」
ミルフォンソも続く。
「それから、僕たち決めました。好きだった気持ちは、お互いの心に預けるって」
エリザータは感嘆の声を上げた。
「まあ!素敵!!」
アルヴェードもそれに続いた。
「なかなかそんな考え、浮かびません。立派です」
ミルフォンソは言った。
「だから、僕がミルーネを愛していた事」
「私がセブレーノを愛していた事は、私たちと」
「お二人だけの秘密にしたいと思います」
「だから、そこの所、配慮をお願いしたくて」
エリザータとアルヴェードは顔を見合わせた後、声を揃えて「勿論!」と答えた。それにミルフォンソとキャナリーンは「ありがとうございます!」と声を揃えた。
その後、少々世間話をした後、ミルフォンソとキャナリーンは腕を組みながら帰宅して行った。それを見送ったエリザータは、アルヴェードにもたれかかり言った。
「本当に、よかったわ」
「ああ、よかったな」
そんなある日、アルヴェードは自宅にてエリザータにとある報告をしていた。
「冬のベルカイザ号の航海だが、ようやく全てのチケットが売れた」
「あら!そうなの?よかったわ」
すると、呼び鈴が鳴った。その後、使用人から客の名前を聞く。応接間に行ったエリザータとアルヴェード。エリザータが第一声を上げた。
「ミルフォンソさん!」
「キャナリーンさん!」
アルヴェードもそれに続いた。そして、4人が席に着くと、キャナリーンが言った。
「あの、私たちお付き合いを始めたんです」
「その報告をしたくて来ました」
ミルフォンソのその言葉が終わるや否や、エリザータとアルヴェードは顔を見合わせて喜んだ。
そんな夫婦の顔を見ながらミルフォンソとキャナリーンの思考は、過去に遡る。
キャナリーンは、ある日言った。
「ねぇ、ミルフォンソさん、私たちこれから好きな人にしてもらいたかった事とかしてあげたかった事をお互いにし合いませんか?」
「それ、いいですね」
「だから、今日から敬語の仲もやめません?」
「そうですね」
キャナリーンは、ミルフォンソを少々不服そうな目で見た。ミルフォンソは、一旦怯んだが、気を取り直しこう言い直した。
「あ、いや、そうだね。キャナリーン」
「わかってくれて、ありがとう、ミルフォンソ。これから、恋人ごっこみたいな事、私たちするんだからって思ってね」
それからと言うものの、2人はお互いに奉仕した。想い人と一緒にやりたかった事をしたり、行きたかった所へと行ったり、相手にとことん付き合う日々を過ごした。
そして、別の日。2人にとって転換点となる日が来た。その日のミルフォンソは、多少挙動不審であった。
「ミルフォンソ?どうしたの?」
キャナリーンの問いが投げかけられる。ミルフォンソは多少長い時間、躊躇の態度を見せた。キャナリーンは首を傾げるばかり。
「もしかして、この恋人ごっこ、嫌になった?ミルフォンソ?」
「違うよ。あの、とても頼みづらい事を考えてて」
「何?」
「その、キスをしたいんだ」
キャナリーンの目が丸くなる。そして、赤い顔になり、短く答えた。
「私も、キス、して欲しかった」
ミルフォンソは、同意が得られた事から、キャナリーンの唇を確認すると瞳を閉じた。目の前にいるのは、ミルーネだと考える為に。キャナリーンもそんなミルフォンソに続き、瞳を閉じる。これから自分とキスをするのはセブレーノだと考える為に。そして、唇は重ねられた。
注ぎたかった愛をぶつけた。注がれたかった愛を貪った。お互いの唇が痺れてくるまで唇を離さなかった。しかし、それは永遠に続ける物ではない。名残惜しそうに離れる2人の唇。
「ミルフォンソ」
「キャナリーン」
ミルフォンソは熱のこもった目でキャナリーンを見た。キャナリーンは潤んだ目でミルフォンソを見た。
「ミルフォンソ、好き」
「僕も好きだよ。キャナリーン」
もはや2人はわからなかった。その愛の告白がお互いの想い人の代わりに聞いてもらったのか、本当にお互いへ向けた物なのかが。しかし、それはどうでもよかった。心の中を支配する幸福感が、それを有耶無耶にした。
ミルフォンソとキャナリーンの思考は、現実に戻る。その目の前には微笑ましい視線で見つめるエリザータとアルヴェード。エリザータは言った。
「何か、幸せな事でも思い出してたんですか?」
傍らのアルヴェードは本人たちに代わって返す。
「それは、そうだろう?心が結ばれた時でも思い出してたんだろう」
ミルフォンソとキャナリーンは顔を赤くした。しかし、気を取り直しキャナリーンが言った。
「恥ずかしながら、そうです」
ミルフォンソも続く。
「それから、僕たち決めました。好きだった気持ちは、お互いの心に預けるって」
エリザータは感嘆の声を上げた。
「まあ!素敵!!」
アルヴェードもそれに続いた。
「なかなかそんな考え、浮かびません。立派です」
ミルフォンソは言った。
「だから、僕がミルーネを愛していた事」
「私がセブレーノを愛していた事は、私たちと」
「お二人だけの秘密にしたいと思います」
「だから、そこの所、配慮をお願いしたくて」
エリザータとアルヴェードは顔を見合わせた後、声を揃えて「勿論!」と答えた。それにミルフォンソとキャナリーンは「ありがとうございます!」と声を揃えた。
その後、少々世間話をした後、ミルフォンソとキャナリーンは腕を組みながら帰宅して行った。それを見送ったエリザータは、アルヴェードにもたれかかり言った。
「本当に、よかったわ」
「ああ、よかったな」
0
あなたにおすすめの小説
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる