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第四章
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しおりを挟む彼女の能面の様な表情に変わりはない。
しかし、その瞳には涙が滲んでいる様に見える。
「美波はその時の事故の目撃者でもあったので、犯人は直ぐに捕まるものかと思っていた。だが、蓋を開けてみれば母親の飛び出しが原因の事故という事で処理されてしまった」
倫太郎が言葉を選びながら、美波へと視線を向ける。
「倫太郎さんの言う通りですよ、何度も警察へ行って抗議しました。母は悪くない、信号無視をしたのは車の運転手の方だと。しかし烏間家は権力を使って真実を捻じ曲げました。唯の中学生だった私が、大きな権力に勝てる訳が無かったんです。その時に思いました、自分の手で復讐をするしかないと。母を殺した烏間真琴と渡部杏奈、そしてその真相を揉み消した烏間秀治を私が殺すしかないと」
ホール内に悲痛な叫びが響く。
美波はずっと一人で戦っていたのだ。
母が着せられた濡れ衣を暴く為に戦っていたのだ。
それが殺人という、最も犯してはいけない罪に彼女を繋げてしまったのだ。
「毎日悪夢に魘されて眠れたものではありませんでした。母親の最後の姿が脳裏に浮かぶんです。睡眠薬も段々と効かなくなり、正常な判断は出来なくなっていたと思います。烏間真琴と渡部杏奈については自分なりに調べて、二人が同じ大学に所属している事が分かったので私もその大学へ入学しました。そして二人に近づく為に推理サークルへと入り、殺害の機会を今か今かと待ち侘びていました」
美波は何かを見つめる様に視線を遠くへ移す。
彼女の目線を辿ると、その先には聖母マリアの石像が建っていた。
「そんなある日、烏間真琴が私に声をかけてきたんです。慎二さんを殺害するのに協力してくれたら、大学の費用は自分が負担しても良いと。何処からか私に家族がいなくて、学費の為にアルバイトをしているとでも聞きつけたのでしょう。そして私の事を慎二さんの殺害計画に利用できるとでも思ったのかもしれませんね。私はあの男の提案に乗った振りをして、逆に利用してやろうと思いました。烏間真琴が慎二さんを自殺に見せ掛けて殺害したかった理由は単純です。お金ですよ、烏間家の正当な当主になる予定の慎二さんがいなくなれば、自分に当主の座が回ってきて莫大な資産を手にする事が出来るかもしれないとあの男は話していました。私はそれを聞き心の底から思いました。この男はこの世にいるべきではないと。人の皮を被った悪魔なのだと」
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