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第一章
1-25 ★
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「鈴虫、お前は寝てて良いから、体だけ貸せ!後始末しないと駄目なんだよ。」
佐吉は嘉平の手を制した。
「俺がやります。どうやれば良いんですか。…俺にやらせて下さい。」
佐吉の疲労感も限界に近かった。瞼を閉じればそのまま眠りに就いてしまいそうだ。それでも佐吉を突き動かしているのは、単純に鈴虫を守ってやりたいという想いだけであろう。それは一見にして嘉平にも判ることだった。もうこの二人の間には誰も入り込むことなど出来ない。嘉平はそう感じた。
「わかった。だがな、傷の有無だけはこの目できちんと確認させてくれ。中に傷があったら大変なんだ。」
「は、…はい、お願いします。いいね?お鈴ちゃん、俺に掴まってて。」
嘉平は目視と触診で傷の有無を調べた。節くれだった指が、散々擦り上げられて疲弊した粘膜に触れると、さすがに鈴虫も苦しそうだった。しかし、幸いにも出血も無く無事に終えることが出来たようだ。
「なかなか良い仕上がりだぞ!ほれ、良い具合に道が出来てるわっ。二、三日は固まったみたいに腫れるが、ちゃんと閉じるようになるから心配無い。その間は鈴虫よ、お前はたくさん食べて安静にしてなきゃ駄目よ。いいね?佐吉、その後は体を維持しなければならないからまた躾を頼むよ。
どれ、そこの襤褸布を何枚か使って…鈴虫が息めるようだったら自力で出して貰えば良いんだが、駄目な時はお前が指入れて掻き出してやってくれ。全部綺麗にとはいかないから凡そで構わんよ。後は、周りを拭き取ってお終いだ。洗って遣れれば尚のこと良いな。」
鈴虫に触れる佐吉の手にはもう劣情に絡むものなど何も無い。今あるのは病の人を助けるような慈愛と労わりだ。力を失って開いたままになった恥部をまじまじと見られるのは、鈴虫にとって当然厭な事だろう。しかしながら体は動かせないのだ。佐吉に出来ることは無機質な何かに成りすまして、無言のまま手早く終わらせてやる事だけだ。
「佐吉、終わったか?」
「はい、これで大丈夫だと思います。」
「じゃぁ、膝立ちで良いから鈴虫を起き上がらせてくれ。抱き合うみたいにしてお前が支えてやれば良いよ。」
「…嘉平さま…もう、赦してやってはくれませんか?」
「ん?まぁ、いいから。起こしてみなさい。これでお終いだから。」
仕方無しに佐吉は、鈴虫の腕を自分の首に廻し体を支えて抱き起こした。すると嘉平はせっかく整えてやった裾をたくし上げて帯紐に挟み込んで下半身丸出しにしてしまった。
「お願いです。もう、止めてやってくれませんかねぇ…!」
佐吉は鈴虫の肩越しに嘉平を睨みつけた。
それでもお構い無しに嘉平は鈴虫の脚の間を何やら弄くっているようだ。
「おぉっ!綺麗に剥けてるじゃないか。触るとまだヒリヒリするだろう?しこたま扱いた甲斐があったなぁ。」
鈴虫は擽ったいのか、時折ピクリと体を跳ねさせながらも我慢している。
「ふふんっ、可愛いだろう?」
鈴虫と佐吉が眉を顰めて顔を見合わせた。嘉平は手を離すと、二人に対して「見てみろ」という感じで目配せをする。二人が下を見ると鈴虫の股には真新しい褌が着けられていた。質素な白い布ではあるが、赤い糸で縫い取りされている。これはお妙からのささやかながらの贈り物だそうだ。
「鈴虫は褌祝いが未だなんだよ。鈴虫や、今日お前は大人のやる事を覚えたから、もっと…いや、本当はお前にこれ以上我慢を強いるのは可哀相な気はする。しかし、人は皆、生きている間はずっと何かを我慢したり、乗り越えてみたり…まぁ、何て言うか…山あり、谷ありだ!…だからもっと、強くなれよ。厭な事に遭っても負けんなよ。なぁ、鈴虫。」
嘉平は抱き合う二人の肩を包み込むように抱きしめた。その大きな腕の中で、小さな鈴虫はこくこくと頷いた。
「もう日が暮れるだろう。後で何か食うもの運んで貰うから、今夜はここに泊まっていけ。」
身形を直してもらうと、鈴虫は安心したのか佐吉の袖を握ってウトウトし始めた。
「じゃぁ…儂はお前の親父様に今夜はうちに泊まると伝えて来るわ。」
堂の扉が開くと、すでにそこには夕焼けすら残っていなかった。青黒くなりかけた空には星が煌き、その星々が白く滲む光の帯を作っている。三人とも外がどうなっているかなんてすっかり頭から抜け落ちていた。まるで堂の中の三人を残して、時間だけが進んでしまったような感覚であった。夏の明るい星空の下、嘉平の背中が遠くに消えて行く。
「あっ!あの!喜一郎!喜一郎は…」
呼び止める佐吉の声には何も答えず、嘉平はひらひらと手を振って屋敷を出て行ってしまった。
嘉平が佐吉の家の前まで来ると中からは人の話し声が聞こえてきた。聞き耳を立ててみたが、会話の内容までは聞き取れない。しかし、なんとも楽しげな雰囲気だ。
「あのぉ、お晩方です。」
家の中がフッと静かになり、少しの間が空いてから戸が開いた。中から佐吉の父親が顔を出すと、嘉平は改めて深々と頭を下げて挨拶をした。「とりあえず立ち話もなんなので」と中へ招き入れられる。どうやら二人で佐吉の帰りを待っていたのだろう、囲炉裏には火が入り稗の混じった粥が湯気を上げていた。
嘉平には喜一郎が中にいることはもう判っているだろう。隠れても意味が無い。喜一郎は外から声が掛かった時点で腹を決めたのであろうか、入って来る嘉平から目を逸らす事もなく真っ直ぐに見据えている。喜一郎がここへ来てからだいぶ日が経つ。親子喧嘩をして家を出たと聞いているが、顔を合わせるのも久しぶりのはずだ。異様に緊張した空気を察して親父が中に割って入った。
「嘉平殿、佐吉がお屋敷でお世話になって…。」
「いえいえ、とんでもない!うちの方こそ馬鹿息子が長らくお邪魔してしまって誠に申し訳ない。なぁ!喜一郎、何か言わなければならない事があるんじゃないのか?」
喜一郎は無言で顔を叛けた。
「あっ、えっ、とぉ…嘉平殿?佐吉は一緒じゃぁなかったんですか…?」
「申し訳ない!佐吉殿はうちに泊まって貰おうと思ってなぁ、お許しをいただきに参ったところなんです。」
「えっ?あ…はぁ、お世話になります。」
佐吉の親父は頭を下げた。その後を直ぐ追うようにして嘉平も深々と頭を下げた。まずは話が長引きそうなので家に上がってもらおう。そう大きくは無い家の中に気まずい三人が各々に陣取る。嘉平は慎重に言葉を選びながら事の次第を伝えなければならない。
「実は…この村の秘仏が…ご存知とは思いますが…」
「あぁ、もうあの子はそんな年頃になりましたか。うちは出不精ですから巷の事には疎くて…」
喜一郎は何も話さなかったし、こちらからも敢えて聞こうともしなかったが、今回の喜一郎の家出の原因はどうやら村の秘密に関わることのだろう。皆まで言わずとも佐吉の父親には凡その察しはついた。
「実は…実はですね、佐吉殿が役立たずの馬鹿息子の尻拭いをしてくれまして…。」
「えぇっとぉ…それはどう言う意味でしょうか!?」
「儂がもう少し若ければ自分で何とかしましたが、なかなか歳には勝てませんで…。喜一郎が逃げ出して困っていたところ、代役を引き受けてくれたのです。将来のある方に面倒なものを押し付けることになってしまって申し訳ない!」
嘉平は何度も頭を下げた。
「そうですか…俺は佐吉には自分の生き方は自分で決めて欲しいと思っておりました。ですから佐吉がそれを望んでそうしたのならば、俺が口出しする事では無いでしょう。しかし…嘉平殿、村長の権限として、本来その役に就くべきではない者に遣らせるのであれば…どうか責任を持って佐吉が後悔しないようにお導き下さい。」
嘉平は答えに詰まった。嘉平も若かりし頃には同じ役目を負っていた。しかし、己の人生を振り返ってみて後悔が無いなんて言えるだろうか。雪虫にあの世で何て言って詫びようか考えない日など無いのだ。嘉平ははっきりと答えるべきだと思った。もし自分が佐吉の父親の立場であったならば倅の行く末を案じ、きっと同じ同じように言ったであろう。しかし生きてゆく限り現実は、親の望む幸せとは程遠い所にある事が往々としてあるものなのだ。
「…それは…お約束しかねます。」
佐吉の父親の表情が曇った。
※褌祝い=15~16歳で初めて大人の下着をつけるお祝い。本来は母方の年上の女性から褌を贈ってもらい、付け方も教えてもらう。(らしい。)
佐吉は嘉平の手を制した。
「俺がやります。どうやれば良いんですか。…俺にやらせて下さい。」
佐吉の疲労感も限界に近かった。瞼を閉じればそのまま眠りに就いてしまいそうだ。それでも佐吉を突き動かしているのは、単純に鈴虫を守ってやりたいという想いだけであろう。それは一見にして嘉平にも判ることだった。もうこの二人の間には誰も入り込むことなど出来ない。嘉平はそう感じた。
「わかった。だがな、傷の有無だけはこの目できちんと確認させてくれ。中に傷があったら大変なんだ。」
「は、…はい、お願いします。いいね?お鈴ちゃん、俺に掴まってて。」
嘉平は目視と触診で傷の有無を調べた。節くれだった指が、散々擦り上げられて疲弊した粘膜に触れると、さすがに鈴虫も苦しそうだった。しかし、幸いにも出血も無く無事に終えることが出来たようだ。
「なかなか良い仕上がりだぞ!ほれ、良い具合に道が出来てるわっ。二、三日は固まったみたいに腫れるが、ちゃんと閉じるようになるから心配無い。その間は鈴虫よ、お前はたくさん食べて安静にしてなきゃ駄目よ。いいね?佐吉、その後は体を維持しなければならないからまた躾を頼むよ。
どれ、そこの襤褸布を何枚か使って…鈴虫が息めるようだったら自力で出して貰えば良いんだが、駄目な時はお前が指入れて掻き出してやってくれ。全部綺麗にとはいかないから凡そで構わんよ。後は、周りを拭き取ってお終いだ。洗って遣れれば尚のこと良いな。」
鈴虫に触れる佐吉の手にはもう劣情に絡むものなど何も無い。今あるのは病の人を助けるような慈愛と労わりだ。力を失って開いたままになった恥部をまじまじと見られるのは、鈴虫にとって当然厭な事だろう。しかしながら体は動かせないのだ。佐吉に出来ることは無機質な何かに成りすまして、無言のまま手早く終わらせてやる事だけだ。
「佐吉、終わったか?」
「はい、これで大丈夫だと思います。」
「じゃぁ、膝立ちで良いから鈴虫を起き上がらせてくれ。抱き合うみたいにしてお前が支えてやれば良いよ。」
「…嘉平さま…もう、赦してやってはくれませんか?」
「ん?まぁ、いいから。起こしてみなさい。これでお終いだから。」
仕方無しに佐吉は、鈴虫の腕を自分の首に廻し体を支えて抱き起こした。すると嘉平はせっかく整えてやった裾をたくし上げて帯紐に挟み込んで下半身丸出しにしてしまった。
「お願いです。もう、止めてやってくれませんかねぇ…!」
佐吉は鈴虫の肩越しに嘉平を睨みつけた。
それでもお構い無しに嘉平は鈴虫の脚の間を何やら弄くっているようだ。
「おぉっ!綺麗に剥けてるじゃないか。触るとまだヒリヒリするだろう?しこたま扱いた甲斐があったなぁ。」
鈴虫は擽ったいのか、時折ピクリと体を跳ねさせながらも我慢している。
「ふふんっ、可愛いだろう?」
鈴虫と佐吉が眉を顰めて顔を見合わせた。嘉平は手を離すと、二人に対して「見てみろ」という感じで目配せをする。二人が下を見ると鈴虫の股には真新しい褌が着けられていた。質素な白い布ではあるが、赤い糸で縫い取りされている。これはお妙からのささやかながらの贈り物だそうだ。
「鈴虫は褌祝いが未だなんだよ。鈴虫や、今日お前は大人のやる事を覚えたから、もっと…いや、本当はお前にこれ以上我慢を強いるのは可哀相な気はする。しかし、人は皆、生きている間はずっと何かを我慢したり、乗り越えてみたり…まぁ、何て言うか…山あり、谷ありだ!…だからもっと、強くなれよ。厭な事に遭っても負けんなよ。なぁ、鈴虫。」
嘉平は抱き合う二人の肩を包み込むように抱きしめた。その大きな腕の中で、小さな鈴虫はこくこくと頷いた。
「もう日が暮れるだろう。後で何か食うもの運んで貰うから、今夜はここに泊まっていけ。」
身形を直してもらうと、鈴虫は安心したのか佐吉の袖を握ってウトウトし始めた。
「じゃぁ…儂はお前の親父様に今夜はうちに泊まると伝えて来るわ。」
堂の扉が開くと、すでにそこには夕焼けすら残っていなかった。青黒くなりかけた空には星が煌き、その星々が白く滲む光の帯を作っている。三人とも外がどうなっているかなんてすっかり頭から抜け落ちていた。まるで堂の中の三人を残して、時間だけが進んでしまったような感覚であった。夏の明るい星空の下、嘉平の背中が遠くに消えて行く。
「あっ!あの!喜一郎!喜一郎は…」
呼び止める佐吉の声には何も答えず、嘉平はひらひらと手を振って屋敷を出て行ってしまった。
嘉平が佐吉の家の前まで来ると中からは人の話し声が聞こえてきた。聞き耳を立ててみたが、会話の内容までは聞き取れない。しかし、なんとも楽しげな雰囲気だ。
「あのぉ、お晩方です。」
家の中がフッと静かになり、少しの間が空いてから戸が開いた。中から佐吉の父親が顔を出すと、嘉平は改めて深々と頭を下げて挨拶をした。「とりあえず立ち話もなんなので」と中へ招き入れられる。どうやら二人で佐吉の帰りを待っていたのだろう、囲炉裏には火が入り稗の混じった粥が湯気を上げていた。
嘉平には喜一郎が中にいることはもう判っているだろう。隠れても意味が無い。喜一郎は外から声が掛かった時点で腹を決めたのであろうか、入って来る嘉平から目を逸らす事もなく真っ直ぐに見据えている。喜一郎がここへ来てからだいぶ日が経つ。親子喧嘩をして家を出たと聞いているが、顔を合わせるのも久しぶりのはずだ。異様に緊張した空気を察して親父が中に割って入った。
「嘉平殿、佐吉がお屋敷でお世話になって…。」
「いえいえ、とんでもない!うちの方こそ馬鹿息子が長らくお邪魔してしまって誠に申し訳ない。なぁ!喜一郎、何か言わなければならない事があるんじゃないのか?」
喜一郎は無言で顔を叛けた。
「あっ、えっ、とぉ…嘉平殿?佐吉は一緒じゃぁなかったんですか…?」
「申し訳ない!佐吉殿はうちに泊まって貰おうと思ってなぁ、お許しをいただきに参ったところなんです。」
「えっ?あ…はぁ、お世話になります。」
佐吉の親父は頭を下げた。その後を直ぐ追うようにして嘉平も深々と頭を下げた。まずは話が長引きそうなので家に上がってもらおう。そう大きくは無い家の中に気まずい三人が各々に陣取る。嘉平は慎重に言葉を選びながら事の次第を伝えなければならない。
「実は…この村の秘仏が…ご存知とは思いますが…」
「あぁ、もうあの子はそんな年頃になりましたか。うちは出不精ですから巷の事には疎くて…」
喜一郎は何も話さなかったし、こちらからも敢えて聞こうともしなかったが、今回の喜一郎の家出の原因はどうやら村の秘密に関わることのだろう。皆まで言わずとも佐吉の父親には凡その察しはついた。
「実は…実はですね、佐吉殿が役立たずの馬鹿息子の尻拭いをしてくれまして…。」
「えぇっとぉ…それはどう言う意味でしょうか!?」
「儂がもう少し若ければ自分で何とかしましたが、なかなか歳には勝てませんで…。喜一郎が逃げ出して困っていたところ、代役を引き受けてくれたのです。将来のある方に面倒なものを押し付けることになってしまって申し訳ない!」
嘉平は何度も頭を下げた。
「そうですか…俺は佐吉には自分の生き方は自分で決めて欲しいと思っておりました。ですから佐吉がそれを望んでそうしたのならば、俺が口出しする事では無いでしょう。しかし…嘉平殿、村長の権限として、本来その役に就くべきではない者に遣らせるのであれば…どうか責任を持って佐吉が後悔しないようにお導き下さい。」
嘉平は答えに詰まった。嘉平も若かりし頃には同じ役目を負っていた。しかし、己の人生を振り返ってみて後悔が無いなんて言えるだろうか。雪虫にあの世で何て言って詫びようか考えない日など無いのだ。嘉平ははっきりと答えるべきだと思った。もし自分が佐吉の父親の立場であったならば倅の行く末を案じ、きっと同じ同じように言ったであろう。しかし生きてゆく限り現実は、親の望む幸せとは程遠い所にある事が往々としてあるものなのだ。
「…それは…お約束しかねます。」
佐吉の父親の表情が曇った。
※褌祝い=15~16歳で初めて大人の下着をつけるお祝い。本来は母方の年上の女性から褌を贈ってもらい、付け方も教えてもらう。(らしい。)
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