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3章
3章31話 隷属の代償3
しおりを挟む「いらっしゃいませー」
近くの携帯ショップにサリナさんと一緒に入店した。
番号札を取ると案内人が話しかけてきた。
「本日はどのようなご用向きでしょうか」
「スマホを買い替えたいの。本田亜衣さんっていう店員はいるかしら?」
「本田……? はい、あちらにおりますが」
「彼女に接客してほしいんだけど、いいかしら」
案内人は少し困った顔で視線を泳がせた。
「申し訳ございません、当店ではそのような指名制は……」
「大丈夫ですよー」
窓口の方から声が投げられる。
本田亜衣と呼ばれていた女性が軽く手を振っていた。
「……あー、ではこちらへどうぞ」
席に案内されて着席する僕たち。
「……うわぁ」
思わず声が出た。
サリナさんが指名した本田亜衣という店員は、驚くほど美人だった。
二十代前半くらいの見た目。つややかな黒髪にキリッとした目元。
サリナさんとはまた違ったタイプの大人の女性だった。
「ご指名ありがとうございまーす。シャンパンはいかがですか?」
「言えば出てくるの?」
「水なら」
気さくに話す二人。
……知り合いなのかな?
「最新スマホを頂戴。一番いい奴で。プランも全部乗せていいわ」
「成金の買い物は下品で嫌ね。カラーはどれになさいますか?」
「清太、好きなものを選びなさい」
「は、はい」
カタログを眺めながらも、僕の意識は亜衣さんに向けられていた。
二人はどういう関係なんだろう。
「さっそく猫可愛がりしてるのね。愛しのご主人様を見せびらかしにきてくれて感激だわ」
「いいじゃない、清太は先に私にクラブポイントを投資してくれたんだから」
「まあ私たちにとってはスマホなんかよりもよっぽど価値のある投資ね」
「……え?」
ぽかんと目を丸くしてしまう。
クラブポイント……ってことは。
「ひょっとして、あなたも……」
「あら冷たいこと言うのね」
言って、ちろ、と亜衣さんは自分の唇を舌で舐めた。
「――たっぷり中出ししたくせに♡」
「――ッ!?」
ずくん、とおちんちんが疼く。
心臓の鼓動が早くなり、亜衣さんのことを凝視してしまう。
「そ、その……」
「気持ちよかった? 私のおまんこ」
「……ッ」
「あれだけの数に群がられたらいちいち覚えてないでしょ」
そ、それはその通りなんだけど、でも……。
「い、いたんですか、昨日……バームホールに」
「美味しかったわぁ……ねえ、次はいつ来るの?」
「……わ、わかりません」
この人もサキュバスなんだ……。
サリナさんの言ってた通り、サキュバスは本当に、当たり前みたいに人間社会に紛れ込んでたんだ。
「えーなんでぇ? サリナばっかりずるいじゃない。また私たちとも遊びましょうよ」
「うぅ……」
い、意識しちゃう……。
バームホールの中に誰がいたのか知らなかったから、こうして実際にあの場にいた人と直接会うと……うぅ、どうしてもそういう目で見ちゃう。
「照れてる顔も可愛いわね。あーあ羨ましい。こんな子を昨日一晩中犯したんだ?」
「愛し合ったって言ってちょうだいよ」
「調教してるんでしょ? いい感じになったらまた私たちにもおすそ分けしてよ?」
「だってさ。清太、どうする?」
「ど、どうって……」
どうしても目が滑る。
亜衣さんの綺麗な顔や胸元……カウンターテーブルに隠れて見えない下半身。
僕……したんだよね、この人と。
セックス……いや、あれはほとんど逆レイプに近かったけど……この人のおまんこに、僕のおちんちんが入ったんだよね……?
そう考えると……なんか、意識しちゃって……。
「勃っちゃったね」
亜衣さんの声にびくんと肩が震える。
亜衣さんからはテーブルで僕の下半身は見えないはずなのに、サキュバスである亜衣さんには僕のことなんてお見通しみたいだった。
「したくなったらいつでも言ってね清太。私がいくらでも気持ちよくしてあげるから」
「私で欲情したのにサリナが絞るの? やってらんないわね。ねえ清太君だっけ? 私のことも買ってよ。私ブロンズだから安いわよ?」
「ちょっと亜衣? 自分を売り込むのはクラブのルール違反よ?」
「よく言うわ。あんたこそそれでこの子に買ってもらったくせに」
「シャリアーデにも詰められたわ。危うく管理局送りになるところだったけど、この子をバームホールに送ったことで不問にしてもらったわ」
「はぁ……仕事なんてなんでもいいと思って適当にショップ店員やってるけど、そういう処世術は学んだ方がよかったのかな」
僕を差し置いてどんどん話を広げる二人。
多分、クラブでも仲がよかったんだろう。
こうして楽しそうに話しているのを見ると本当に普通の人間にしか見えない。
でも……亜衣さんから向けられるいやらしい視線は、まぎれもなくあのクラブのキャストの人たちと同じだった。
「あ、あの……これ」
話がどんどんと過激になりそうだったので、僕はカタログから適当なスマホを選んで指さした。
このまま美人の女性二人が僕に関するエッチな話をするのを目の前で聞き続けるのは精神衛生上つらすぎた。
「はーい。じゃあ手続き進めるわね」
「買ったらお寿司でも食べに行く? それとも……家に帰っていいことする?♡」
「え、えっと……」
それから、ジト目で僕たちを睨む亜衣さんの視線に晒されながら、僕たちはスマホを買って店を後にした。
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