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7章
7章69話 九条彩音との取引
しおりを挟むこの学校には三大美女と呼ばれる女性がいる。
一人は花宮詩織先輩。もう一人は保険の白鳥先生。
そして最後の一人が九条彩音。
今僕の前を歩いている三年生の女子生徒だ。
「入って」
九条先輩はとある部屋の扉を開けると僕を中へ案内した。
「ここは……」
「風紀委員が使ってる部屋よ。今は誰もいないわ」
そう、九条先輩はこの学校の風紀委員なのだ。
彼女はこの学校の風紀を乱す者を決して許さず、毎月行われる服装チェックもかなり厳しい。
毎週金曜日に校内の清掃活動を行い、教師からの評価も絶大だ。
中でも特に厳しく取り締まっているのが校内での不純異性交遊。
校内でいかがわしい行為を行った者は徹底的に追求し、卑猥な本の持ち込みなども見つけたら即没収。
特に男子の下世話な会話を嫌い、冷たい軽蔑の眼差しを向けられれば、なまじ美人な分男子の精神的ダメージは計り知れない。
男子人気の高い詩織先輩や白鳥先生とは違い、圧倒的な女子人気を誇る九条先輩が……
「……先輩って、クラブの関係者なんですか?」
僕はおずおずとそう尋ねた。
「私は管理局の人間よ」
「学生なのに……ですか?」
「そうよ。今はアルバイトっていう形だけど、大学卒業後に管理局に内定がもう決まってる」
「ええ……」
な、なんか本当に僕のすぐ傍に僕の知らない世界が横たわっていたんだと実感させられるなあ……。
「それで、クラブの話っていうのは……?」
「あなた、あのクラブに出入りしてるわよね?」
「……」
どう答えるべきか迷う。
あのクラブに出入りしてることは極力隠しておきたいし、でも九条先輩はもういろいろ知ってるっぽいし……あとなにより、僕があのクラブでいろんなことをしてたって学校の先輩に知られるの恥ずかしい……。
「私の質問に答えてくれたら、花宮さんのことについて教えてあげる」
「……ッ!」
詩織先輩のこと……そうか、この人は管理局の人間で、昨日あそこにいたから詩織先輩がどうなったのか知ってるんだ。
「僕を事情聴取して、何の意味があるんですか?」
「実を言うとあなたがあのクラブに出入りしてることは知ってるの。斎賀さんから聞かされた」
「斎賀……斎賀沙月さんですか」
僕が二人の女子高生サキュバスに襲われたときに助けてくれた、管理局のエリート調査員。
九条先輩はあの人と繋がりがあるようだ。
「あの人は未成年の君をクラブで接待してる規約違反であのクラブを摘発するつもりみたい。当然よね、そんな汚らわしいこと許されない。だからそのためにあなたの協力や証言が必要なの。あなたがあのクラブを庇いたがる気持ちは分かるけど、協力して」
「……僕のこと、軽蔑しますか? 変態だって……」
「いいえ」
九条さんは茶化すことなく、大真面目な表情で即答した。
「蚊に刺されると痒くて掻かずにはいられないでしょ? 痒みに負けて掻いてしまう人を変態とか意志が弱いなんて思わないわ。それは人間の反応として当然だもの」
「……」
「サキュバスは人間の男を虜にして堕落させる……そういう習性を持った害獣なの。あなたは大量の蚊に刺されてどうしようもなく痒くなってるだけ。だから蚊の発生源に対処しなくちゃならない。そうすればじきに痒みも治まる。言ってる意味、分かるわよね?」
「……」
なんとなく、この人が沙月さんと繋がりがあるのがよくわかった。
あの人も九条さんも、サキュバスのことを徹底して侮蔑してる。
サキュバスは見た目はよくて懐いてくれるけど本質は害のある生き物なんだと……ネズミか何か程度にしか捉えていない。
「あのとき、あなたは性欲を抑えられずに花宮さんを襲った。でもその標的を別の女子生徒に向けることだって容易いのよ? そうなれば、君は強姦罪で逮捕されて……君の人生はめちゃくちゃになってた」
「そ、そんなこと……」
「彼女らにはできるのよ、そういうことが。……こんなのは序の口。骨の髄まで調教された男はいずれ、一回の射精のためにサキュバスのどんな恐ろしい命令だって喜んで聞くようになる。過去の歴史において、そんなことが横行してた。一般人ならともかく、国の要人がそんなことになったらどうなると思う?」
「……だから、人間とサキュバスは戦争したんですか?」
僕の言葉に、九条先輩は少しだけ不愉快そうな表情を浮かべた。
「戦争だなんて、対等みたいな言い方はやめて。駆除よ。人間社会を自分の欲望のために面白半分でめちゃくちゃにする害獣を駆除したの。奴らが生きていられるのは、特定の種を絶滅させるのはやり過ぎだという人間側の情けによるものよ」
「そんな言い方……」
「花宮さんも結局、あなたを誘惑して情事に及ぼうとした。神聖な学び舎で……汚らわしい」
「詩織先輩はどうなったんですか?」
九条先輩は沙月さんと同じく、相当サキュバスを毛嫌いしているようだ。
そんな人に捕まった詩織先輩がどうなったのか、僕は気が気ではなかった。
「教えてあげるから、あなたも私たちに協力して」
九条先輩は机の上にボイスレコーダーを置いた。
「『僕が会員カードを手に入れたのはサキュバスがそうなるよう仕組んだからです』。『クラブは僕を未成年と知りながら接客し、バームホールを利用するよう促しました』。『もう行きたくないと思っていたのに、購入したサキュバスが僕を快楽で支配し、無理矢理クラブに出向くことを強要しました』。そう言いなさい」
「……」
…………ぜ、全部本当のことじゃないか。
こういうのって普通嘘の証言をでっちあげたりするようなシーンじゃないの?
全部本当にあったことだからイマイチ強く反論も反抗もできない……。
「……」
それにしてもすごい……どうやったのか知らないけど、サリナさんとの個人的な密室での出来事までバレてる。
本当にサキュバスを監視することに特化した組織なんだ……。
「その証言を元に斎賀さんが査察を行い、あのクラブを摘発するでしょう。あなたはもう自由よ」
「自由……サリナさんはどうなるんですか?」
その名前を出すと、九条先輩は眉をひそめて苦虫を嚙み潰したような表情を見せた。
「……スメラギ・サリナはもうあなたに購入されてクラブの関係者じゃなくなってるから、規約上は摘発できないわ。書類や手続きも偽装されて証拠をつかむのが難しくなってる。あなたが全面的に協力してくれれば可能性もあるけど……」
「……できません」
「まあそうでしょうね」
どんなに罠だと言われても、サリナさんを売り渡すようなことは絶対にしたくない。
「……花宮さんのこと知りたくないの? あなたの協力次第で彼女の対応が変わるかもしれないわよ」
「……司法取引みたいなものですか?」
「そうね。こんな人質を取るみたいなやり方は私の好みではないけど……あのクラブを潰すためなら仕方ないわ」
九条先輩はそう言って、ボイスレコーダーの電源を入れた。
「さあ、どうするの?」
そう促され、僕は重苦しい表情のままそのボイスレコーダーを見つめ、やがて口を開いた。
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