サキュバスクラブ~最高ランクの精気を持つボクは無数の淫魔に狙われ貪られる~

ウケのショウタ

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7章

7章70話 沙月の査察1

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 数日後の深夜。
 咲蓮クラブの地下にあるサキュバスクラブ。
 淫欲の限りを尽くすサキュバス達の巣が今日の搾精を終え、営業を終了した店内。
 ほとんどのキャストも帰宅し、清掃と翌日の営業のための準備をする者以外がいなくなった店内は、数十分前の淫靡な狂乱から一転し静けさに満ちていた。

 そんな店内に新たな来訪者が訪れる。
 エレベーターから降りてきたその人物は、よく焼けた褐色肌の長身にきっかりとしたスーツを纏った女性だった。

「お待ちしておりました、斎賀沙月様。当店のオーナーのシャリアーデと申します」

 その女性を出迎えたのは、この世の美の化身とも言うべき存在。
 世界に数人しかいないプラチナランクのサキュバス、シャリアーデだった。

「応接室へご案内いたします」
「いや、VIPルームに案内しろ」
「……? VIPルーム、でございますか?」
「二度も言わせるな」
「……畏まりました」

 沙月はそんなシャリアーデを切れ長の瞳で一瞥すると、挨拶もなしにクラブ内を歩きだした。



 VIPルームに通された沙月はソファに座ると、アイドリングトークも抜きに数枚の資料をテーブルの上に並べた。

「小作清太。この少年を知っているな?」
「存じ上げません。紅茶はいかがですか?」
「貴様らの出す飲み物など間違っても口にするつもりはない」
「左様でございますか。ではわたくしだけいただきます」

 シャリアーデはティーカップを自分の分だけテーブルに置くと、たおやかに口をつけて紅茶を一口飲んだ。

「資料を見ろ。この日時に、この少年がこのクラブを訪れたはずだ。計三回。未成年者への接客は重大な規約違反だ」
「そのような記憶はございません。監視カメラにもそのような映像は映っておりませんでした」
「ああ、この日時……三日間だけ、何故か特定の監視カメラが特定の時間だけ、偶然録画できていなかったからな。……こんな露骨な隠ぺい工作で言い逃れできると本当に思っているのか?」
「こちらの設備の整備が行き届いておりませんでした不手際を深く陳謝いたします。以後このようなことがないよう再発防止に、」
「黙れ老獪が。管理局を舐めるなよ」

 沙月は敵意を剥き出しにしたまま、鞄から更に二枚の資料を取り出してテーブルの上に投げ出した。
 そこに映っていたのは二人の女性。
 女子高生サキュバス、ミカとマリだった。

「この二人が先日、クラブ外でこの少年を襲って管理局に移送された」
「存じております。その節は当店のキャストが大変ご迷惑を、」
「その際に私は直接この少年から話を聞き、彼はこのクラブで接客を受けたことを認めた」
「そう仰られましても」

 シャリアーデは沙月の追及などどこ吹く風と、すまし顔のまま紅茶を味わっていた。

「この二人のサキュバスを尋問したところ、二人もこの少年がクラブで接客を受けていたこと……そして、スメラギ・サリナを購入したことを認めた」
「そう仰られましても」
「……貴様」

 沙月の視線が更に鋭くなり、今にもとびかかりそうなほど危うい敵意が漏れ始める。

「何か物的証拠がございましたらわたくしも潔く認めさせていただきますが、その見ず知らずの男性のご発言だけではこちらとしてもご協力のしようがございません。監視カメラでもエレベーターの会員カード認証履歴でも、こちらが提供できるものは全て提供したはずでございます」
「偽装済みのものをな」
「そう仰られましても」
「スメラギ・サリナを購入したのは二十代後半の男性となっていたな。だがその男性は数日前に病で死亡していた」
「お悔やみ申し上げます」
「そしてそのスメラギ・サリナは現在、この小作清太と同棲生活をしている」
「左様でございますか」
「本当は小作清太に買われたんだろう。それを隠すために過去に存在した客のプロフィールを使い資料を偽装。そして口封じにその男性を……」
「そのような記録はございません」
「……スメラギ・サリナは本来の購入者とは別の男性と同棲していることになる。これも重大な規約違反だ」
「規約はサキュバスと一般男性の肉体的接触を禁じるだけで同棲を禁じていたわけではないはずだと記憶していますが」
「サキュバスと同棲して肉体的接触がないわけがないだろう」
「それはわたくしの知るところではございません。既にスメラギ・サリナは当店のキャストではございませんので。購入されたキャストのその後について当店は感知いたしません」
「……」

 まさにのれんに腕押し。
 沙月の追及を飄々と受け流すシャリアーデに、沙月の顔に目に見えて苛立ちが見え始める。

「……私の知り合いが、小作清太に直接事情聴取を行った」

 沙月はテーブルの上に、ゴト、とボイスレコーダーを置いた。

「これはその時の小作清太の供述を記録したものだ」
「……」

 シャリアーデは無表情のまま、沙月がレコーダーの電源を入れるのを見守った。
 そして――


『――僕とあのクラブは関係ありません』


 そんな清太の声がVIPルームに響き渡った。

『接客も……受けてません。何も……されてません』
『……それが君の答えなのね? 花宮さんがどうなってもいいの?』
『……僕は自分の欲望を制御できずに、詩織先輩に酷いことをしてしまいました。だから……また自分の欲望のために、他の人に迷惑をかけたくありません。……裏切りたくありません』
『……………………分かったわ。貴重なお話をありがとうございました』

 そうしてレコーダーは止まった。

「……」

 そのやりとりを黙って聞いていたシャリアーデは……このクラブの者たちですら滅多に見たことのないような、優しい微笑を浮かべていた。

「――何を嬉しそうにしている。気色悪い」

 吐き捨てるような沙月の声。
 沙月はボイスレコーダーを鞄にしまうと、鋭い目つきでシャリアーデを睨みつけた。

「愛くるしいお方だと思っただけでございます。一度お会いしてみたいものです」
「上手く手籠めにしたようだな。こんないたいけな少年を……このクズどもが。なぜこの少年に手を出した、シャリアーデ。普段の貴様は規約を重んじ、こんなリスクは絶対にとらなかったはずだ。なぜ今回に限ってこんなバカな真似をしでかした?」
「仰っている意味が分かりかねます」
「……ふう。そうか、よくわかったよ」

 相変わらず素知らぬ顔を続けるシャリアーデに、沙月は深いため息を一つ吐いて、少し脱力した様子を見せた。

「……素直に過ちを認めるならまだ酌量の余地はわずかにあったが、オーナーがこれではやはりこのクラブは徹底的に潰すしかないようだな」
「そう仰られましても」
「茶番は終わりだ」

 そう言うと、沙月は鞄から霧吹きのようなものを取り出し、シュッとVIPルームの床に液体を吹きかけた。

 ――すると次の瞬間、VIPルームの床が発光し、いくつかの足跡の形が浮かび上がった。

「……これは?」

 事情が呑み込めないシャリアーデに、沙月は鼻を鳴らした。

「小作清太と直接会って話したと言っただろ。そのとき、彼の靴の裏に特殊な塗料を吹きかけておいた。これは彼の靴の跡だ」
「…………」

 すっ……と、先ほどまですまし顔だったシャリアーデの表情が鋭さを増す。

「発信機や魔法の類は貴様も警戒していたんだろうが、こういうやり方もあるのさ。管理局を舐めるなと言ったはずだ」
「…………」
「VIPルームの監視カメラが一定時間録画されていなかった。つまり彼がここを利用したのは明白。案の定、彼の足跡がこの部屋の床に残っているわけだが……さて、これをどう説明するつもりだ?」
「…………」

 シャリアーデは沈黙したまま、床に刻まれた清太の足跡を見つめていた。

「物的証拠があれば潔く認めると言ったな? では早速このクラブの解体に同意してもらおうか」

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