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1 婚約破棄
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「うわあああ~ん!!ふぇっ!ふえっ!ふええええ~ん!!」
伯爵令嬢シェルティは盛大に泣きながら、王宮の回廊を走っていた。
今日はシェルティと婚約者であるアファービア王太子との定例のお茶会だった。
しかし、王宮のティールームに向かうと、アファービア王太子の隣には、シェルティの家と敵対している伯爵令嬢のミミドーラが勝ち誇った顔で寄り添うように立っていた。
「シェルティ、魔力の無い貴様との婚約を不服に思っていたが、まさか、ミミドーラの優れた魔力を妬んで暗殺を企てていたとは!そんな貴様との婚約は破棄する!貴様の顔は二度と見たくない!王都追放に処する!そしてミミドーラを新たに婚約者とする!」
アファービア王太子はシェルティを冷めきった眼差しで睨みながら、婚約破棄と王都追放を言い渡したのだった。
「私はそのような恐ろしいこと企てるはずもありません!濡れ衣です!」
真っ青な顔で否定するシェルティに対して、アファービア王太子は少しも動じることもなく、冷淡に衛兵に命令した。
「お前の弁解など不要だ!衛兵!シェルティを拘束しろ!」
「いやあああっ!」
腕をつかもうとする衛兵をとっさにかわしたシェルティは、後方に高く飛び上がり宙返りしてその場から脱出し、泣きながら全力で走って逃亡したのだった。
──今捕まったら、すぐに追放されちゃう。なんとか逃げて無実を証明しなければ!
さっきの殿下の冷たい目。悲しい。胸が張り裂けそう。なんで、私の魔力は戻らないのだろう。魔力さえ戻れば心変わりされずに済んだかもしれないのに。
今は魔力が全然無いが、元は魔力量を非常に多く持っていたシェルティ。
三才のときには高度な魔法が使えるようになり、将来を期待されていた。
この国のほとんどの人は魔力があり、火を灯したり水を出したり風を起こしたり、日常生活で魔法がかかせなかった。
しかし、シェルティほどの魔力豊富で高度な魔法を使いこなすことができる者は、いなかった。
そこに目を付けた王家は、同じ年であり第一王子のアファービア王太子と三才の時に王命で強引に婚約を結ばせたのだ。
婚約者として初めて対面したときにシェルティはアファービア王太子の神々しいほどの整った顔に一目惚れした。婚約者になれたことを心から嬉しく思った。
シェルティも容姿の整った美少女だったが、アファービア王太子は最初は興味がなさそうで不機嫌だった。
でも、次に会ったときに魔法をかけた虹色に輝く花束をプレゼントした途端、アファービアは目を瞬かせて、それを大層喜び態度を一変させた。そして、会うたびに王子に望まれるまま様々な魔法を繰り出すと「お前、すごいな!」と打ち解けていったのだった。
ところが、シェルティが六才のときに両親が事故で瀕死の重傷を負ってしまい、両親を助けるために魔力を命の限界まで使ってしまった。
両親は助かったが、シェルティはそのときから魔法が使えなくなってしまったのだった。
魔力を使い果たして死にそうになったため、防衛本能が働き、魔力を使わないように無意識に封印したのだろうと医師に言われた。戻るかどうかもわからないとも。
魔法が使えなくなって泣いていると、アファービア王太子は私の手をギュッと握って「いつか魔力は戻る。大丈夫さ。シェルティは大事な婚約者なんだから。」と私を慰めてくれた。
私はその時、胸がキュンと鳴って王太子がますます好きになったのだった。
しかし何年経っても、私の魔力は戻らなかった。
年数が経つにつれて、魔力の無い者は王妃に相応しくないという周りの声が大きくなっていった。
アファービア王太子もその意見の方にだんだんと考えが傾いていったようで、私に対する態度もよそよそしいものになっていった。
それでも私はアファービア王太子がずっと好きだった。
隣で胸を張って立てるように、様々な知識や教養を学んだ。
魔法が使えない分、剣術などの武術だって頑張って修得した。
そう、今まさに空中で宙返りしたり、側転したり、高く飛んで壁を蹴ってシャンデリアに飛び移り追手を避けながら逃げれるくらいに。
令嬢らしからぬ離れ技を次々と繰り出して逃げるうちに、衛兵たちの本気魂に火を着けてしまったようで、笛を鳴らして周辺の衛兵を導引し、シェルティを追う衛兵は数十人に増えていった。
──この本気の戦闘体制はなんなのよ?!これではまるで、本当に私が大罪人みたいじゃない。何も悪いことしてないのに!!これでもか弱い十六才の乙女なのよ!!
「それにぃっ、この技は王太子を守るために身に着けたのよぉおおお!こんなことに使うためじゃなかったのにぃいい!!ふぇええ~ん!!」
号泣しながら、かなりの数の追手をかわしまくったが、数で勝ち目があるはずもなく、あと一歩で宮殿から外へ出られるときに、とうとう捕まり、頭部以外を縄でぐるぐる巻に縛られ、口は猿轡をされて粗末な馬車に押し込められてしまった。
伯爵令嬢シェルティは盛大に泣きながら、王宮の回廊を走っていた。
今日はシェルティと婚約者であるアファービア王太子との定例のお茶会だった。
しかし、王宮のティールームに向かうと、アファービア王太子の隣には、シェルティの家と敵対している伯爵令嬢のミミドーラが勝ち誇った顔で寄り添うように立っていた。
「シェルティ、魔力の無い貴様との婚約を不服に思っていたが、まさか、ミミドーラの優れた魔力を妬んで暗殺を企てていたとは!そんな貴様との婚約は破棄する!貴様の顔は二度と見たくない!王都追放に処する!そしてミミドーラを新たに婚約者とする!」
アファービア王太子はシェルティを冷めきった眼差しで睨みながら、婚約破棄と王都追放を言い渡したのだった。
「私はそのような恐ろしいこと企てるはずもありません!濡れ衣です!」
真っ青な顔で否定するシェルティに対して、アファービア王太子は少しも動じることもなく、冷淡に衛兵に命令した。
「お前の弁解など不要だ!衛兵!シェルティを拘束しろ!」
「いやあああっ!」
腕をつかもうとする衛兵をとっさにかわしたシェルティは、後方に高く飛び上がり宙返りしてその場から脱出し、泣きながら全力で走って逃亡したのだった。
──今捕まったら、すぐに追放されちゃう。なんとか逃げて無実を証明しなければ!
さっきの殿下の冷たい目。悲しい。胸が張り裂けそう。なんで、私の魔力は戻らないのだろう。魔力さえ戻れば心変わりされずに済んだかもしれないのに。
今は魔力が全然無いが、元は魔力量を非常に多く持っていたシェルティ。
三才のときには高度な魔法が使えるようになり、将来を期待されていた。
この国のほとんどの人は魔力があり、火を灯したり水を出したり風を起こしたり、日常生活で魔法がかかせなかった。
しかし、シェルティほどの魔力豊富で高度な魔法を使いこなすことができる者は、いなかった。
そこに目を付けた王家は、同じ年であり第一王子のアファービア王太子と三才の時に王命で強引に婚約を結ばせたのだ。
婚約者として初めて対面したときにシェルティはアファービア王太子の神々しいほどの整った顔に一目惚れした。婚約者になれたことを心から嬉しく思った。
シェルティも容姿の整った美少女だったが、アファービア王太子は最初は興味がなさそうで不機嫌だった。
でも、次に会ったときに魔法をかけた虹色に輝く花束をプレゼントした途端、アファービアは目を瞬かせて、それを大層喜び態度を一変させた。そして、会うたびに王子に望まれるまま様々な魔法を繰り出すと「お前、すごいな!」と打ち解けていったのだった。
ところが、シェルティが六才のときに両親が事故で瀕死の重傷を負ってしまい、両親を助けるために魔力を命の限界まで使ってしまった。
両親は助かったが、シェルティはそのときから魔法が使えなくなってしまったのだった。
魔力を使い果たして死にそうになったため、防衛本能が働き、魔力を使わないように無意識に封印したのだろうと医師に言われた。戻るかどうかもわからないとも。
魔法が使えなくなって泣いていると、アファービア王太子は私の手をギュッと握って「いつか魔力は戻る。大丈夫さ。シェルティは大事な婚約者なんだから。」と私を慰めてくれた。
私はその時、胸がキュンと鳴って王太子がますます好きになったのだった。
しかし何年経っても、私の魔力は戻らなかった。
年数が経つにつれて、魔力の無い者は王妃に相応しくないという周りの声が大きくなっていった。
アファービア王太子もその意見の方にだんだんと考えが傾いていったようで、私に対する態度もよそよそしいものになっていった。
それでも私はアファービア王太子がずっと好きだった。
隣で胸を張って立てるように、様々な知識や教養を学んだ。
魔法が使えない分、剣術などの武術だって頑張って修得した。
そう、今まさに空中で宙返りしたり、側転したり、高く飛んで壁を蹴ってシャンデリアに飛び移り追手を避けながら逃げれるくらいに。
令嬢らしからぬ離れ技を次々と繰り出して逃げるうちに、衛兵たちの本気魂に火を着けてしまったようで、笛を鳴らして周辺の衛兵を導引し、シェルティを追う衛兵は数十人に増えていった。
──この本気の戦闘体制はなんなのよ?!これではまるで、本当に私が大罪人みたいじゃない。何も悪いことしてないのに!!これでもか弱い十六才の乙女なのよ!!
「それにぃっ、この技は王太子を守るために身に着けたのよぉおおお!こんなことに使うためじゃなかったのにぃいい!!ふぇええ~ん!!」
号泣しながら、かなりの数の追手をかわしまくったが、数で勝ち目があるはずもなく、あと一歩で宮殿から外へ出られるときに、とうとう捕まり、頭部以外を縄でぐるぐる巻に縛られ、口は猿轡をされて粗末な馬車に押し込められてしまった。
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