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2 大魔女シルビア
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シェルティと兵士を一人乗せた馬車は猛スピードで王都から離れた岩だらけの荒野まで走った。
荒野の真ん中で馬車が止まると、兵士は少し哀れんだように私を見た。
「お嬢ちゃん、ただの箱入り娘だと思ったが大勢の衛兵をかわした技は見事だったな。だが悪いな、俺は仕事でお前を殺さなけりゃならない。」
──!!…私を殺す???…こ、この人、兵士じゃない!たぶん雇われた暗殺者だ!どどどどどうしましょうっ!!
まさか殺されるとは思っていなかったシェルティは、焦ってジタバタと動こうとしたが、全身を縄でぐるぐる巻にされてるのでまったく動けない。
兵士もとい暗殺者は馬車の扉を開けて、シェルティを掴んでヒョイッと立たせると、背中にナイフをブスッ!と刺して馬車から蹴り落としたのだった。
その間、まったく抵抗することもできず、そのまま硬い地面に顔面を打ち付けるように落ちたシェルティ。
扉がバタン!と閉まる音がして馬車は走り去り、シェルティは一人ぼっちで取り残されてしまった。
硬い岩だらけの地面に顔面をしたたか打ち付けた状態のまま身動きもとれない。
──すごく痛い。たぶん鼻が折れたし、目も潰れたし、刺された背中からも血がドクドクと出まくって、息も出来ない。く、苦しい…。し、死ぬのね、私…。
そして、シェルティは顔面を地面にのめり込ませたまま意識を失い、十六才という短い人生を終えた。
おわり
………………。
──ちょっとまてぇええい!!
まだ終わっとらんがな!!
「ぶっ、はぁああっ!!」
喉につかえていた血と共に止まっていた息を思い切り吐きだした。
吐き出した息は怒りによって半ば炎になり、猿轡は一瞬で灰になった。
そして、全身に巻き付いている縄を「ふん!」と魔法で消し去り、シェルティはよっこらしょと起き上がった。
──はー!ムカつくわっ!なんでまた私がこんな目に合わなければならないのよ!
「エイッ!ヤァアッ!」
気合を入れて、刺された背中や折れた鼻や潰れた目などの怪我を元通りに魔法で治した。
体中に凄まじいほどの強大な魔力がみなぎっていた。
──念の為、蘇生魔法をかけておいて良かったわ。
シェルティは理不尽に殺されたことで、前世、大魔女シルビアだったときにかけた蘇生魔法が発動したのだった。
そして蘇ると同時に前世の記憶も思い出し、六才から消えていた膨大な魔力が戻ったのだった。
ちなみに前世の記憶を思い出した時点で、性格は前世の気質に汚染され、いささか清純ではなくなってしまったが。
シェルティの前世である大魔女シルビアは強大な魔力を持ち、ありとあらゆる魔法を使いこなしていた。主に戦場で活躍したが、天災、疫病などからも国を救った英雄として讃えられている。
最後は国の最大の敵、魔王と戦い、魔王を封印して力を使い果たして死んだと伝えられている。
共に魔王と戦ったシルビアの婚約者だった王子は彼女の死を大変嘆き悲しみ、シルビアの銅像を王立公園に建立し、シルビアの功績を書籍化したのだった。
今から百年前のことである。
現在でも大魔女シルビアの功績を讃えた本は大変人気で、国中で知らぬ者はいない。
そして、シルビアと共に魔王と戦った王家は今日に至るまで国民から厚い信頼を得ている。
──内容は事実と違うけれどね。
パチッ!と指を鳴らすと、清楚なドレス姿から一瞬で黒のローブに黒のとんがり帽子という格好になった。
──魔女はやっぱりこれよね!しっくりくるわぁ。
しっかし、ひどいわね!こんな目にあわせるなんて!しかも冤罪!それにどこがいいのよ!あの女!
確かにミミドーラの魔力は普通よりは少し多い。…メロン級の豊満な胸も魅力的だ。
シェルティは自身のささやかな胸を見下ろした。
──そういえば…前世もささやかだったわ。は~。
でも、王妃教育や武芸などの修行で忙しかった私はミミドーラに嫉妬する気持ちなんて微塵もなかった。もちろん、暗殺計画なんて企てるわけがない。
そういえば最近、ミミドーラの伯爵領にある鉱山から銀が大量に発見されたっけ。あー、きっとそれだな!王家はそれに目を付けて、魔力が戻らない私から乗り換えたんだな。
しかも正当な裁判もなく、ばっさりと切って捨てた訳だ。
シェルティはアリシアの記憶を思い出した時点でアファービア王太子への恋心がファサッと崩れたのだが、もはや最後の残り滓も消えて、好感度が急速にマイナスになっていくのを感じた。
──これは絶対に濡れ衣を晴らして、あいつらをギャフンと言わせてやる!
強大な魔力が戻った今なら思う存分ギャフンと言わせ放題だ。
それから、両親が心配だ。害されて無ければいいけれど。
シェルティはパチッ!と指を鳴らすと箒にまたがり、ピューン!と屋敷へ向かった。
心配していたとおり、屋敷には王家から衛兵が派遣されていて、両親が王宮に連行されるところだった。
父は暴行を受けたのか、右頬から血を流している。
私はカッとなって、思わず全員ぶちのめしたくなったが、こいつらは命令されただけだからな、と、ぐっと堪えて叫んだ。
「ちょっと待てぇええい!!」
シェルティは両親の前にストっと箒から降りた。
「シェ、シェルティ?!」
私はパチッと指を鳴らして瞬時に父の怪我を治した。
「お父さま、お母さま、心配おかけして申し訳ありません。私は無実です。これから私が全て解決してまいります。お父さまたちは、家で待っていてください。」
戸惑う両親を説き伏せて屋敷に結界を張り、誰も出入りが出来ないようにした。
そして衛兵に向かって早口でまくし立てた。
「本日アファービア王太子にいわれの無い罪で断罪されて王都を追放されたクロウ伯爵家のシェルティです。冤罪を晴らすというか、ギャフン!と言わせるために戻ってまいりました。なので、これから王宮へ向かいます。」
シェルティはパチッ!と指を鳴らすと、その場の衛兵たちを魔法で操り、王宮へと向かった。
向かう道中、父が傷つけられたことに、やはり腹の虫が収まらなかったので、仕返しに『全身蚊に刺されろ!』という魔法をかけた。
なので「痒い痒い!」という悲鳴の混じった呻き声が王宮に着くまで何度もこだましていた。
荒野の真ん中で馬車が止まると、兵士は少し哀れんだように私を見た。
「お嬢ちゃん、ただの箱入り娘だと思ったが大勢の衛兵をかわした技は見事だったな。だが悪いな、俺は仕事でお前を殺さなけりゃならない。」
──!!…私を殺す???…こ、この人、兵士じゃない!たぶん雇われた暗殺者だ!どどどどどうしましょうっ!!
まさか殺されるとは思っていなかったシェルティは、焦ってジタバタと動こうとしたが、全身を縄でぐるぐる巻にされてるのでまったく動けない。
兵士もとい暗殺者は馬車の扉を開けて、シェルティを掴んでヒョイッと立たせると、背中にナイフをブスッ!と刺して馬車から蹴り落としたのだった。
その間、まったく抵抗することもできず、そのまま硬い地面に顔面を打ち付けるように落ちたシェルティ。
扉がバタン!と閉まる音がして馬車は走り去り、シェルティは一人ぼっちで取り残されてしまった。
硬い岩だらけの地面に顔面をしたたか打ち付けた状態のまま身動きもとれない。
──すごく痛い。たぶん鼻が折れたし、目も潰れたし、刺された背中からも血がドクドクと出まくって、息も出来ない。く、苦しい…。し、死ぬのね、私…。
そして、シェルティは顔面を地面にのめり込ませたまま意識を失い、十六才という短い人生を終えた。
おわり
………………。
──ちょっとまてぇええい!!
まだ終わっとらんがな!!
「ぶっ、はぁああっ!!」
喉につかえていた血と共に止まっていた息を思い切り吐きだした。
吐き出した息は怒りによって半ば炎になり、猿轡は一瞬で灰になった。
そして、全身に巻き付いている縄を「ふん!」と魔法で消し去り、シェルティはよっこらしょと起き上がった。
──はー!ムカつくわっ!なんでまた私がこんな目に合わなければならないのよ!
「エイッ!ヤァアッ!」
気合を入れて、刺された背中や折れた鼻や潰れた目などの怪我を元通りに魔法で治した。
体中に凄まじいほどの強大な魔力がみなぎっていた。
──念の為、蘇生魔法をかけておいて良かったわ。
シェルティは理不尽に殺されたことで、前世、大魔女シルビアだったときにかけた蘇生魔法が発動したのだった。
そして蘇ると同時に前世の記憶も思い出し、六才から消えていた膨大な魔力が戻ったのだった。
ちなみに前世の記憶を思い出した時点で、性格は前世の気質に汚染され、いささか清純ではなくなってしまったが。
シェルティの前世である大魔女シルビアは強大な魔力を持ち、ありとあらゆる魔法を使いこなしていた。主に戦場で活躍したが、天災、疫病などからも国を救った英雄として讃えられている。
最後は国の最大の敵、魔王と戦い、魔王を封印して力を使い果たして死んだと伝えられている。
共に魔王と戦ったシルビアの婚約者だった王子は彼女の死を大変嘆き悲しみ、シルビアの銅像を王立公園に建立し、シルビアの功績を書籍化したのだった。
今から百年前のことである。
現在でも大魔女シルビアの功績を讃えた本は大変人気で、国中で知らぬ者はいない。
そして、シルビアと共に魔王と戦った王家は今日に至るまで国民から厚い信頼を得ている。
──内容は事実と違うけれどね。
パチッ!と指を鳴らすと、清楚なドレス姿から一瞬で黒のローブに黒のとんがり帽子という格好になった。
──魔女はやっぱりこれよね!しっくりくるわぁ。
しっかし、ひどいわね!こんな目にあわせるなんて!しかも冤罪!それにどこがいいのよ!あの女!
確かにミミドーラの魔力は普通よりは少し多い。…メロン級の豊満な胸も魅力的だ。
シェルティは自身のささやかな胸を見下ろした。
──そういえば…前世もささやかだったわ。は~。
でも、王妃教育や武芸などの修行で忙しかった私はミミドーラに嫉妬する気持ちなんて微塵もなかった。もちろん、暗殺計画なんて企てるわけがない。
そういえば最近、ミミドーラの伯爵領にある鉱山から銀が大量に発見されたっけ。あー、きっとそれだな!王家はそれに目を付けて、魔力が戻らない私から乗り換えたんだな。
しかも正当な裁判もなく、ばっさりと切って捨てた訳だ。
シェルティはアリシアの記憶を思い出した時点でアファービア王太子への恋心がファサッと崩れたのだが、もはや最後の残り滓も消えて、好感度が急速にマイナスになっていくのを感じた。
──これは絶対に濡れ衣を晴らして、あいつらをギャフンと言わせてやる!
強大な魔力が戻った今なら思う存分ギャフンと言わせ放題だ。
それから、両親が心配だ。害されて無ければいいけれど。
シェルティはパチッ!と指を鳴らすと箒にまたがり、ピューン!と屋敷へ向かった。
心配していたとおり、屋敷には王家から衛兵が派遣されていて、両親が王宮に連行されるところだった。
父は暴行を受けたのか、右頬から血を流している。
私はカッとなって、思わず全員ぶちのめしたくなったが、こいつらは命令されただけだからな、と、ぐっと堪えて叫んだ。
「ちょっと待てぇええい!!」
シェルティは両親の前にストっと箒から降りた。
「シェ、シェルティ?!」
私はパチッと指を鳴らして瞬時に父の怪我を治した。
「お父さま、お母さま、心配おかけして申し訳ありません。私は無実です。これから私が全て解決してまいります。お父さまたちは、家で待っていてください。」
戸惑う両親を説き伏せて屋敷に結界を張り、誰も出入りが出来ないようにした。
そして衛兵に向かって早口でまくし立てた。
「本日アファービア王太子にいわれの無い罪で断罪されて王都を追放されたクロウ伯爵家のシェルティです。冤罪を晴らすというか、ギャフン!と言わせるために戻ってまいりました。なので、これから王宮へ向かいます。」
シェルティはパチッ!と指を鳴らすと、その場の衛兵たちを魔法で操り、王宮へと向かった。
向かう道中、父が傷つけられたことに、やはり腹の虫が収まらなかったので、仕返しに『全身蚊に刺されろ!』という魔法をかけた。
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