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4 魔力吸収
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シェルティは魔法で部屋の扉を閉めると、誰も入ってこられないように部屋に結界を張り、部屋の中にいる衛兵や侍女を魔法で眠らせた。
「さあ、私の魔力を返して貰うわよ!まず、君からね!」
アファービア王太子に向かって右手をかざした。
シュバー!!と彼の魔力を吸い出した途端に王太子は苦しみだした。
「ぐ、ぐわぁああー!!俺の魔力が吸い取られるぅうう!!」
魔力を無理やり吸い取られる側は身を引き裂かれるような激痛が走るのだ。
「俺の魔力って、何言ってるのよ!元々私の魔力じゃない。君は魔力がちょっぴりしか無くて、あまりにも嘆いているから、五才の時に私が魔力を分けてあげたんじゃない。そのときは君を好きだったからね。私を殺して口封じしようとしたのでしょうけれど、残念だったわね。」
「くそうっ!それは二人だけの秘密だったではないかぁああー!おのれぇええ!いでよ!ファイヤーボール!」
アファービアは魔力を吸い取られたのに性懲りもなく魔法で火の玉を作って攻撃しようとしたが、人差し指の先に小っちゃな火が灯り、それはプシュッとすぐに消えた。
「くそー!魔力を返せ!!」
逆上したアファービアは剣を抜いて私に切りかかってきた。
私は敢えて魔法は使わず、近くにいた眠らせた衛兵からサッと剣を拝借すると、王太子の剣を弾き飛ばした。剣を弾かれた衝撃で王太子は壁に激突した。
「そ、そんな、女の剣に弾き飛ばされるとは……。」
かなりショックだったのか、項垂れて動かなくなった。
──そうよ!君を守るために必死で鍛錬したのだから!そんじょそこらの男にゃ負けないわよ!……でも、それにしても、弱い!弱すぎる!明らかに、なまくら剣術だった。……こんな男のことを私はずっと好きだったのか、がっかりだ。
「魔法も使えない、剣も弱い、性格も悪い。良いのは容姿だけだったわね。……じゃあ、次は王様ね!」
王に向かって振り向くと、王は真っ青な顔をして震えた。
「確かに、そなた…あなた様は大魔女シルビア様の生まれ変わりなのは間違いなさそうだ。魔力を与えたり吸ったりする大魔法を赤子の手をひねるように簡単に行えるのは今も昔も大魔女シルビア様しかいないだろう。だがなぜ、こんなことを……。王家と共に魔王と戦ったあなた様は、王家の味方のはずだ。」
「あら?王家にも真実は伝わってないのね。シルビアについて書かれたあの本を王家も信じてるのかしら?あの本に書かれている王家と共に魔王と戦ったというのは真っ赤な嘘よ。魔王討伐に王家の者は誰一人として付いてくる者はいなかったし、私一人で戦ったのよ。」
「そ、そんな!あの本が嘘だとはとても信じられん!王家は王立公園に銅像まで作ってあなた様を讃えておるのに!」
顔面蒼白の王が少し怒気を含めて抗議すると、シェルティはがっかりしたように表情の抜け落ちた顔で淡々と言い放った。
「ああ、あの銅像もね~。しょせん、王家が銅像を建てたのも、嘘だらけの本を出版したのも、シルビアの人気を風化させずに国民からの信頼を王家のものにしたかっただけなのよね。」
シェルティはため息をつくと、パチ!っと指を鳴らした。遠くでドドドーン!!とまるで爆弾が落ちたような音がして、地響きで王宮がグラグラと揺れた。
「今、シルビアの銅像、木っ端微塵に破壊したわ!は~、少しだけスッキリしたわ!」
うっそりとした顔でシェルティは笑った。
王は急激に部屋の温度が下がったかのように寒気に襲われた。他の者も顔面から完全に血の気が引いている。
「あのね…百年前も婚約者の王子はちょっぴりしか魔力がなくて、惚れてた私は魔力を分けてあげたのよ。その後、魔力が充分じゃない状態で魔王と戦ったから手こずっちゃって、結局倒せなくて封印しか出来なかったわ。そして魔力をほとんど使い切って、死にそうになりながら王子の元へ帰ったら、王子は私の知らない令嬢とイチャイチャしているんだもの!驚いちゃって呆然としちゃったわよ!そのすきに王子の護衛にばっさり斬られて死んだのよ。」
──そう、前世でも私は王家に裏切られて殺されたのだ。
斬られて瀕死の状態の私に、令嬢とイチャイチャしてた王子が近づいてきて、ニヤニヤしながらシルビアの顔を覗き込んだのだった。
「シルビア、王家のために尽くし、私に魔力を分けてくれてありがとう。よって、私はそなたの功績を讃えることをここで誓おう。その代わり魔王討伐は我ら王家も行ったことにする。そうすれば王家はそなたの名声と信頼を得て未来永劫繁栄するだろう。しかし、これは秘密にしなければならない。だから、そなたはここで消えてもらう。」
シルビアは虫の息で口と鼻から血を流し、目から涙を流しながら、
「な、なぜ…。」
と言ったとたん、隣の令嬢が豊満な胸をブルンッと揺らしながら前にのめり出た。
「大魔女シルビア様、ごめんなさい!魔王討伐に行かれている間、寂しそうな殿下をお慰めしていたら、好きになってしまったのっ。…だから、あなたが邪魔なのっ!」
「いや、そなたを好きになってしまった私が悪いんだ!」
「いえ!わたくしが悪いの!」
「いや、私が!」
涙を浮かべた豊満令嬢と明らかに欲情して鼻の下を伸ばしている王子が見つめあっている。
完全に二人の世界に入っていて、シルビアを殺める罪の意識は微塵も感じられない。
「……………。」
──ナニコノ茶番…。
シルビアは遠い目になった。
そして、この中身のないアホっぽい会話に呆れ返り、じわじわと腹が立ってきた。
失恋や裏切りのショックよりも、何だかわからない、腹の底から湧き上がるこの怒り。
しかし、もう魔力も命も尽きかけていた。
そんな中、こんなアホな奴らに残り少ない魔力を使って反撃するのもアホ臭いという気持ちに心底なったのだった。
──なんで、こんなアホに恋していたのかしら?アホに恋した私がバカだったわ。
…ああ、やっとわかった、この怒り…アホに恋した自分に腹が立っているのね…。
そして命が尽きる直前に、シルビアはスッパリと今世は諦め、来世の幸せな人生を願い、残りの魔力と生命力を使って大魔法を自身の魂にかけたのだった。
生まれ変わった未来で、もしもまた理不尽に殺されるようなことがあったなら、一度だけ生き返る、蘇生魔法を。
そしてその後、今度こそ、そんな目にあわせた奴らには絶対にギャフン!と言わせてやるのだ!!
「と、言う訳でね、魔王を封印した私は用済みで邪魔だったから排除されたのよ。恋は盲目と言うけれど本当ね。私は前世でも現世でも何も見えてなかった。」
ため息を吐きながらシェルティは王を見ると、王は真っ青な顔を通り越してもはやどどめ色になった顔で言った。
「で、でも!それは先祖がやったことで私達には関係ない!」
「いいえ!関係あるわ!百年前にあげた私の魔力を返してもらってないもの。っていうか、私をクロウ伯爵家ごと冤罪で始末しようとしていたじゃない。だから容赦なく魔力を返してもらうわね!」
私は王に右手をかざして、シュバー!!と魔力を吸った。王は苦しんで床にのたうち回って白目を剥いて気を失った。
「さあ、私の魔力を返して貰うわよ!まず、君からね!」
アファービア王太子に向かって右手をかざした。
シュバー!!と彼の魔力を吸い出した途端に王太子は苦しみだした。
「ぐ、ぐわぁああー!!俺の魔力が吸い取られるぅうう!!」
魔力を無理やり吸い取られる側は身を引き裂かれるような激痛が走るのだ。
「俺の魔力って、何言ってるのよ!元々私の魔力じゃない。君は魔力がちょっぴりしか無くて、あまりにも嘆いているから、五才の時に私が魔力を分けてあげたんじゃない。そのときは君を好きだったからね。私を殺して口封じしようとしたのでしょうけれど、残念だったわね。」
「くそうっ!それは二人だけの秘密だったではないかぁああー!おのれぇええ!いでよ!ファイヤーボール!」
アファービアは魔力を吸い取られたのに性懲りもなく魔法で火の玉を作って攻撃しようとしたが、人差し指の先に小っちゃな火が灯り、それはプシュッとすぐに消えた。
「くそー!魔力を返せ!!」
逆上したアファービアは剣を抜いて私に切りかかってきた。
私は敢えて魔法は使わず、近くにいた眠らせた衛兵からサッと剣を拝借すると、王太子の剣を弾き飛ばした。剣を弾かれた衝撃で王太子は壁に激突した。
「そ、そんな、女の剣に弾き飛ばされるとは……。」
かなりショックだったのか、項垂れて動かなくなった。
──そうよ!君を守るために必死で鍛錬したのだから!そんじょそこらの男にゃ負けないわよ!……でも、それにしても、弱い!弱すぎる!明らかに、なまくら剣術だった。……こんな男のことを私はずっと好きだったのか、がっかりだ。
「魔法も使えない、剣も弱い、性格も悪い。良いのは容姿だけだったわね。……じゃあ、次は王様ね!」
王に向かって振り向くと、王は真っ青な顔をして震えた。
「確かに、そなた…あなた様は大魔女シルビア様の生まれ変わりなのは間違いなさそうだ。魔力を与えたり吸ったりする大魔法を赤子の手をひねるように簡単に行えるのは今も昔も大魔女シルビア様しかいないだろう。だがなぜ、こんなことを……。王家と共に魔王と戦ったあなた様は、王家の味方のはずだ。」
「あら?王家にも真実は伝わってないのね。シルビアについて書かれたあの本を王家も信じてるのかしら?あの本に書かれている王家と共に魔王と戦ったというのは真っ赤な嘘よ。魔王討伐に王家の者は誰一人として付いてくる者はいなかったし、私一人で戦ったのよ。」
「そ、そんな!あの本が嘘だとはとても信じられん!王家は王立公園に銅像まで作ってあなた様を讃えておるのに!」
顔面蒼白の王が少し怒気を含めて抗議すると、シェルティはがっかりしたように表情の抜け落ちた顔で淡々と言い放った。
「ああ、あの銅像もね~。しょせん、王家が銅像を建てたのも、嘘だらけの本を出版したのも、シルビアの人気を風化させずに国民からの信頼を王家のものにしたかっただけなのよね。」
シェルティはため息をつくと、パチ!っと指を鳴らした。遠くでドドドーン!!とまるで爆弾が落ちたような音がして、地響きで王宮がグラグラと揺れた。
「今、シルビアの銅像、木っ端微塵に破壊したわ!は~、少しだけスッキリしたわ!」
うっそりとした顔でシェルティは笑った。
王は急激に部屋の温度が下がったかのように寒気に襲われた。他の者も顔面から完全に血の気が引いている。
「あのね…百年前も婚約者の王子はちょっぴりしか魔力がなくて、惚れてた私は魔力を分けてあげたのよ。その後、魔力が充分じゃない状態で魔王と戦ったから手こずっちゃって、結局倒せなくて封印しか出来なかったわ。そして魔力をほとんど使い切って、死にそうになりながら王子の元へ帰ったら、王子は私の知らない令嬢とイチャイチャしているんだもの!驚いちゃって呆然としちゃったわよ!そのすきに王子の護衛にばっさり斬られて死んだのよ。」
──そう、前世でも私は王家に裏切られて殺されたのだ。
斬られて瀕死の状態の私に、令嬢とイチャイチャしてた王子が近づいてきて、ニヤニヤしながらシルビアの顔を覗き込んだのだった。
「シルビア、王家のために尽くし、私に魔力を分けてくれてありがとう。よって、私はそなたの功績を讃えることをここで誓おう。その代わり魔王討伐は我ら王家も行ったことにする。そうすれば王家はそなたの名声と信頼を得て未来永劫繁栄するだろう。しかし、これは秘密にしなければならない。だから、そなたはここで消えてもらう。」
シルビアは虫の息で口と鼻から血を流し、目から涙を流しながら、
「な、なぜ…。」
と言ったとたん、隣の令嬢が豊満な胸をブルンッと揺らしながら前にのめり出た。
「大魔女シルビア様、ごめんなさい!魔王討伐に行かれている間、寂しそうな殿下をお慰めしていたら、好きになってしまったのっ。…だから、あなたが邪魔なのっ!」
「いや、そなたを好きになってしまった私が悪いんだ!」
「いえ!わたくしが悪いの!」
「いや、私が!」
涙を浮かべた豊満令嬢と明らかに欲情して鼻の下を伸ばしている王子が見つめあっている。
完全に二人の世界に入っていて、シルビアを殺める罪の意識は微塵も感じられない。
「……………。」
──ナニコノ茶番…。
シルビアは遠い目になった。
そして、この中身のないアホっぽい会話に呆れ返り、じわじわと腹が立ってきた。
失恋や裏切りのショックよりも、何だかわからない、腹の底から湧き上がるこの怒り。
しかし、もう魔力も命も尽きかけていた。
そんな中、こんなアホな奴らに残り少ない魔力を使って反撃するのもアホ臭いという気持ちに心底なったのだった。
──なんで、こんなアホに恋していたのかしら?アホに恋した私がバカだったわ。
…ああ、やっとわかった、この怒り…アホに恋した自分に腹が立っているのね…。
そして命が尽きる直前に、シルビアはスッパリと今世は諦め、来世の幸せな人生を願い、残りの魔力と生命力を使って大魔法を自身の魂にかけたのだった。
生まれ変わった未来で、もしもまた理不尽に殺されるようなことがあったなら、一度だけ生き返る、蘇生魔法を。
そしてその後、今度こそ、そんな目にあわせた奴らには絶対にギャフン!と言わせてやるのだ!!
「と、言う訳でね、魔王を封印した私は用済みで邪魔だったから排除されたのよ。恋は盲目と言うけれど本当ね。私は前世でも現世でも何も見えてなかった。」
ため息を吐きながらシェルティは王を見ると、王は真っ青な顔を通り越してもはやどどめ色になった顔で言った。
「で、でも!それは先祖がやったことで私達には関係ない!」
「いいえ!関係あるわ!百年前にあげた私の魔力を返してもらってないもの。っていうか、私をクロウ伯爵家ごと冤罪で始末しようとしていたじゃない。だから容赦なく魔力を返してもらうわね!」
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