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8 求婚
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──そして、今。
「シェルティ。私と結婚してください。」
「えっ?……あのっ……いやっ……そのっ。」
「私と結婚して、私の隣で王家の罪を償う姿を一生見ていて下さい。」
「あのっ……そのっ……こ、こっち来ないで!」
クリストファーは魔王の巨大な首を持って、シェルティに求婚を迫っていた。
魔王は頭がトカゲで長い角が二本生えている。
その生首の角を持ちながら、クリストファーがジリジリとシェルティに近づいてくる。
クリストファーは頬を赤くし、とろけそうな極上の笑みを浮かべて、どこからどうみてもシェルティに恋する男にしか見えないのだが、瞳だけは獲物を狙う獣のように爛々と輝いてシェルティをじっと見つめている。
近づいたら食べられちゃいそうで、でもちょっと食べられたいなんて思う気持ちもあって、とにかく、なんだかクリストファーが怖くて後ずさるシェルティだった。
前世も現世も婚約者に裏切られ失恋したシェルティは恋に対して非常に臆病になっていた。
「シェルティ、王家の悪行は決して許されるものではないですが、その償いの一つとして、私が魔王を倒したなら、結婚してくれると約束したではないですか。」
「そ、それは……。そのとおりだけれど。」
まさか、こんなにあっさりとクリストファーが魔王を倒してくると思わなかったのだ。
戦いが長引くと思っていたので心の準備がまだできていなかった。
そんなシェルティの乙女心なんてお構いなしに、クリストファーがとろける様な眼差しでさらに近づいてくる。魔王の首を持って。
「シェルティ。愛しています。さあ、この魔王の首を受け取ってください。」
「うん、で、でも……。」
──これを受け取ったら、きっとこの後……キャッ、恥ずかしい!
「さあ!シェルティ。」
「うん、はい……でも、まだ……心の準備が……ちょっと待って。」
「シェルティ、もう、待てないよ。」
クリストファーもシェルティも真っ赤な顔で甘~い雰囲気の中、そんなやり取りを繰り返していたら……。
『いいかげん、早く余を浄化してくれ!』
二人のじれったいやり取りに痺れを切らしたのか、魔王の首から念波で言葉が放たれた。
「わ、わかったわ!」
はっとして我に返ったシェルティは、魔王の首に飛び付くと、浄化魔法をかけた。
『ああ、やっと楽になれる……。敵である我が身に情けをかけてくれて恩に着る。二人共、幸せにな…。』
魔王の首は小さな光の粒になって消えていった。
そう、通常は胴体と首を切り離されても、魔王はすぐに死ねない。肉体が腐ちて風化して無くなるまでの長い間、動くことも出来ずに苦しまなければならないのだ。
それをシェルティは『一瞬で浄化させたい』と、魔王の首を持ってくるように伝えてあったのだ。
魔王の浄化いう高度な魔法を使えるのは魔力豊富なシェルティしかできない。
──苦しむ時間は短い方が良い。
大魔女シルビアだったときに、戦場で敵も味方も苦しんで死んでいく姿を見て培った彼女の信念だった。
そして、魔王の首と共に王宮の中庭に持ち込まれていた胴体も同時に浄化されて光の粒になって消えた。
「シェルティ。こっち向いて。」
魔王が浄化されて消えたとたん、シェルティはクリストファーに抱きしめられて腕の中にいた。
そして、背の高いクリストファーを見あげるようにそっと顔を向けさせられた。
「シェルティ、結婚してくれる?」
目の端に魔王を討伐した精鋭部隊が勢ぞろいして固唾を呑んで見ているのが映っている。
みんなに注目されてとても恥ずかしかったが、シェルティは観念して蚊の鳴くような声で返事をした。
「はい。」
周りは大歓声に包まれた。
「シェルティ。私と結婚してください。」
「えっ?……あのっ……いやっ……そのっ。」
「私と結婚して、私の隣で王家の罪を償う姿を一生見ていて下さい。」
「あのっ……そのっ……こ、こっち来ないで!」
クリストファーは魔王の巨大な首を持って、シェルティに求婚を迫っていた。
魔王は頭がトカゲで長い角が二本生えている。
その生首の角を持ちながら、クリストファーがジリジリとシェルティに近づいてくる。
クリストファーは頬を赤くし、とろけそうな極上の笑みを浮かべて、どこからどうみてもシェルティに恋する男にしか見えないのだが、瞳だけは獲物を狙う獣のように爛々と輝いてシェルティをじっと見つめている。
近づいたら食べられちゃいそうで、でもちょっと食べられたいなんて思う気持ちもあって、とにかく、なんだかクリストファーが怖くて後ずさるシェルティだった。
前世も現世も婚約者に裏切られ失恋したシェルティは恋に対して非常に臆病になっていた。
「シェルティ、王家の悪行は決して許されるものではないですが、その償いの一つとして、私が魔王を倒したなら、結婚してくれると約束したではないですか。」
「そ、それは……。そのとおりだけれど。」
まさか、こんなにあっさりとクリストファーが魔王を倒してくると思わなかったのだ。
戦いが長引くと思っていたので心の準備がまだできていなかった。
そんなシェルティの乙女心なんてお構いなしに、クリストファーがとろける様な眼差しでさらに近づいてくる。魔王の首を持って。
「シェルティ。愛しています。さあ、この魔王の首を受け取ってください。」
「うん、で、でも……。」
──これを受け取ったら、きっとこの後……キャッ、恥ずかしい!
「さあ!シェルティ。」
「うん、はい……でも、まだ……心の準備が……ちょっと待って。」
「シェルティ、もう、待てないよ。」
クリストファーもシェルティも真っ赤な顔で甘~い雰囲気の中、そんなやり取りを繰り返していたら……。
『いいかげん、早く余を浄化してくれ!』
二人のじれったいやり取りに痺れを切らしたのか、魔王の首から念波で言葉が放たれた。
「わ、わかったわ!」
はっとして我に返ったシェルティは、魔王の首に飛び付くと、浄化魔法をかけた。
『ああ、やっと楽になれる……。敵である我が身に情けをかけてくれて恩に着る。二人共、幸せにな…。』
魔王の首は小さな光の粒になって消えていった。
そう、通常は胴体と首を切り離されても、魔王はすぐに死ねない。肉体が腐ちて風化して無くなるまでの長い間、動くことも出来ずに苦しまなければならないのだ。
それをシェルティは『一瞬で浄化させたい』と、魔王の首を持ってくるように伝えてあったのだ。
魔王の浄化いう高度な魔法を使えるのは魔力豊富なシェルティしかできない。
──苦しむ時間は短い方が良い。
大魔女シルビアだったときに、戦場で敵も味方も苦しんで死んでいく姿を見て培った彼女の信念だった。
そして、魔王の首と共に王宮の中庭に持ち込まれていた胴体も同時に浄化されて光の粒になって消えた。
「シェルティ。こっち向いて。」
魔王が浄化されて消えたとたん、シェルティはクリストファーに抱きしめられて腕の中にいた。
そして、背の高いクリストファーを見あげるようにそっと顔を向けさせられた。
「シェルティ、結婚してくれる?」
目の端に魔王を討伐した精鋭部隊が勢ぞろいして固唾を呑んで見ているのが映っている。
みんなに注目されてとても恥ずかしかったが、シェルティは観念して蚊の鳴くような声で返事をした。
「はい。」
周りは大歓声に包まれた。
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