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レイシック松村
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「やぁ!これは久しぶりだねぇ松村くん!僕の事をお忘れではないかい?」
そうやって急に頭上から話しかけてきた奇妙な人(ジン)がいた。
「…は?」
「なるほど?つまり君は“お忘れ”というんだね…残念だ!
まぁそりゃあ、10年越し、いやもっとの久しい再会だからねぇ!
会えて嬉しいよ松村くん…」
木に乗っていたジンはひょいひょいと音を立てそうなぐらい軽々と地上に降りてきて、俺の前で深々と頭を下げた。
「僕の事、覚えているかい?」
…見た目がおかしい、普通の人じゃない。
まずまず手足の関節より先がピンクの毛で覆われていて、なんならシッポ、動物的な大きい耳まで着いていて、見た目だけで言うとまんまチェシャ猫のようだ。
髪の色は銀髪で目の色はアルビノ、紅く猫目の男、クセの強い美人……
本当に記憶、いや会った事さえもない気がする。
「い、いえ……」
「うんそうかい残念だ!でもね松村くん、いやここは本名で行こう。
松村サギリくん、僕は君のことをよーくよーーーーーく覚えているんだ。
不思議だろう?ねぇ松村くん。」
そうしてチェシャ猫のジンは甲斐甲斐しく一歩こっちに近付いてきた。
「“イマジナリーフレンド”って知ってるかい?
ほらあの、幼少期に架空の友人を作って遊ぶアレだ。知識は?」
ハイテンションと博士的な喋り方、そして何よりマシンガントークが結構癪に障る。
いやこいつのことは本当に知らないのだ。
「あるけど……お前のことは知らない、」
「うん、そうかい。忘れてしまっても仕方がないね………
端的に言うと、僕は君の“ソレ”だ。さぁ、親近感が湧いてこないかい!」
そう言ってチェシャ猫のジンは宙へ踊り舞った。
「いや、信じたくないですね…」
「君もひどいことを言うようになったモンだねぇ!
僕は悲しいよ、五歳の頃とは大違いだね……まぁ、成長と捉えることにしようか。
あぁそうだ!本題に移ろう。」
チェシャ猫のジンはその状態のまま鼻先を左の人差し指でつつくように触ってきた。
「君、何か悩みがあるだろう。今君の年齢は十四ってところか?
まぁ、そりゃあ出てくるはずだね。言ってみろ」
俺はその辺で理解が追いつかなくなった。なんで今お前がここに居る?理由は?
何故俺に構う?今更?何をしたいのかが分からない。
そう思考が鼻先と脳でぐるぐる回り出した。
「慌てなくてもいいさ。ゆっくりでいい。
僕はきっと君の一番の友達で、君の中だけにいて、君にしか見えなくて、君の事をよく理解している。Space?」
最後の英単語の意味は理解出来なかったが、それを聞いて何かが吹っ切れた。
「……悩み…………?いや、特には……」
「本当かい?隠しても無駄だよ。僕には全てが見えて…………」
チェシャ猫のジンは一度目を閉じて、また開いた。
「……技力不足、ってところかね」
「うるさい、」
「まぁまぁ、そういう時期さ。僕に手助けなんて無理だろうね」
チェシャ猫のジンはやっと鼻先から指を離した。
そして空気に引っかかったようにしてぷらぷらしている。
……さっき言ったことは当たっていた。
最近、部活で成果が全く出ていない。
周りの人がいい成績を残す中、自分ぐらいがどうもまともにやれていない気がして、なんというか……鬱臭い。
「うん、そうかい。言わなくてもいいさ、どうせ言わなくてもわかる。」
そう言ったチェシャ猫のジンは少し悲しそうにした。
なんというか、それで記憶が掘り起こされてきた気が……
「……そういえばお前、名前は?」
「え、あぁ名前?名前かい?そう、名前は……」
チェシャ猫のジンは急に焦ったようにした。
それを不思議に思って、俺はチェシャ猫のジンの目だけを見ていた。
「……………そんなもの、無いさ。」
そう言ってチェシャ猫のジンはふっと消えてしまった。
そうやって急に頭上から話しかけてきた奇妙な人(ジン)がいた。
「…は?」
「なるほど?つまり君は“お忘れ”というんだね…残念だ!
まぁそりゃあ、10年越し、いやもっとの久しい再会だからねぇ!
会えて嬉しいよ松村くん…」
木に乗っていたジンはひょいひょいと音を立てそうなぐらい軽々と地上に降りてきて、俺の前で深々と頭を下げた。
「僕の事、覚えているかい?」
…見た目がおかしい、普通の人じゃない。
まずまず手足の関節より先がピンクの毛で覆われていて、なんならシッポ、動物的な大きい耳まで着いていて、見た目だけで言うとまんまチェシャ猫のようだ。
髪の色は銀髪で目の色はアルビノ、紅く猫目の男、クセの強い美人……
本当に記憶、いや会った事さえもない気がする。
「い、いえ……」
「うんそうかい残念だ!でもね松村くん、いやここは本名で行こう。
松村サギリくん、僕は君のことをよーくよーーーーーく覚えているんだ。
不思議だろう?ねぇ松村くん。」
そうしてチェシャ猫のジンは甲斐甲斐しく一歩こっちに近付いてきた。
「“イマジナリーフレンド”って知ってるかい?
ほらあの、幼少期に架空の友人を作って遊ぶアレだ。知識は?」
ハイテンションと博士的な喋り方、そして何よりマシンガントークが結構癪に障る。
いやこいつのことは本当に知らないのだ。
「あるけど……お前のことは知らない、」
「うん、そうかい。忘れてしまっても仕方がないね………
端的に言うと、僕は君の“ソレ”だ。さぁ、親近感が湧いてこないかい!」
そう言ってチェシャ猫のジンは宙へ踊り舞った。
「いや、信じたくないですね…」
「君もひどいことを言うようになったモンだねぇ!
僕は悲しいよ、五歳の頃とは大違いだね……まぁ、成長と捉えることにしようか。
あぁそうだ!本題に移ろう。」
チェシャ猫のジンはその状態のまま鼻先を左の人差し指でつつくように触ってきた。
「君、何か悩みがあるだろう。今君の年齢は十四ってところか?
まぁ、そりゃあ出てくるはずだね。言ってみろ」
俺はその辺で理解が追いつかなくなった。なんで今お前がここに居る?理由は?
何故俺に構う?今更?何をしたいのかが分からない。
そう思考が鼻先と脳でぐるぐる回り出した。
「慌てなくてもいいさ。ゆっくりでいい。
僕はきっと君の一番の友達で、君の中だけにいて、君にしか見えなくて、君の事をよく理解している。Space?」
最後の英単語の意味は理解出来なかったが、それを聞いて何かが吹っ切れた。
「……悩み…………?いや、特には……」
「本当かい?隠しても無駄だよ。僕には全てが見えて…………」
チェシャ猫のジンは一度目を閉じて、また開いた。
「……技力不足、ってところかね」
「うるさい、」
「まぁまぁ、そういう時期さ。僕に手助けなんて無理だろうね」
チェシャ猫のジンはやっと鼻先から指を離した。
そして空気に引っかかったようにしてぷらぷらしている。
……さっき言ったことは当たっていた。
最近、部活で成果が全く出ていない。
周りの人がいい成績を残す中、自分ぐらいがどうもまともにやれていない気がして、なんというか……鬱臭い。
「うん、そうかい。言わなくてもいいさ、どうせ言わなくてもわかる。」
そう言ったチェシャ猫のジンは少し悲しそうにした。
なんというか、それで記憶が掘り起こされてきた気が……
「……そういえばお前、名前は?」
「え、あぁ名前?名前かい?そう、名前は……」
チェシャ猫のジンは急に焦ったようにした。
それを不思議に思って、俺はチェシャ猫のジンの目だけを見ていた。
「……………そんなもの、無いさ。」
そう言ってチェシャ猫のジンはふっと消えてしまった。
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